工作好き「最近ホモォ見ねぇな」
音楽家「そういやすっかり忘れてた」
漢女「ザウルスから正式依頼が来た!リーダー、許可くれ!」
You Die!「いいけど、『女の子』三人いるんだから無理しちゃダメだよ」
箒ちゃん「感謝する、You Die!」
ムカイギの家にお邪魔した私たちは、茶の間へと案内される。
ヨッコは霊の大本を探るために、別行動をすることになった。
本当は見えている私も着いて行こうとしたのだが、あくまで『視察』だからと断れたので、3人のいる茶の間で待つことにした。
「あ、忘れる所だった。ムカイギ、署名はこれでいいのだろうか」
ユーダイからムカイギへ、昨日から署名を渡す様に言われていることを思い出し、私はランドセルから取り出し、そのまま手渡した。
署名を手に取ったムカイギはパラパラと中身を確認し、頷く。
「………うん、とりあえずOKかな。一応、学校に来れるようになった日にはシンイチと一緒に最終確認するよ」
「やはり、私個人の証言だけでは足りなかったのだろうか」
「個人の被害なんて聞きわけて貰えないかもしれないだろうし、やっぱり近隣住民や先生にも署名を貰わなくちゃな。あと、出来れば証拠とかも」
「それはユーダイが用意すると言っていたから問題ない。………ありがとう、ムカイギ。まだ出会って間もない私一個人の為に、態々手伝ってもらって」
「出会って間もないって、もう1か月経ってるし、俺や皆はシキを認めてるんだからそう畏まるなよ。それにこういうことは、きっちりケリを付けておかないと後々訴えたとしてもどうせはぐらかされるだろうから、徹底的にやってるだけだよ」
「そうなのか?」
「シキがこの町に来る前、私たちが2年生の時に赴任してきた教師が理由もない体罰とか性的暴力とかやりたい放題だった時期があったのよ」
「なんだその反吐が出るほどの悪党は。それはもう教師の風上にも置けぬ真正の屑ではないか」
「ある程度証拠は揃ってたんだけど、その真正の屑が言葉巧みに躱していくからムカイギとザウルス小隊が徹底的に証拠集めて教育委員会、PTA、市議会に叩きつけてムショ送りにしてケリはつけたがな。……今回も、そんな狡い大人がいるかもしれねぇし、用意するに越したことはねぇだろ」
「…………なるほど」
皆の言う通り、やるなら徹底的にやらねばならないのか。
本人の証言だけでは、どうにもならないこと学んだところで、視察に行っていたヨッコが戻ってきた
「……ざっと見て回ったけどだいじょうぶ。おばけ、いなかったよムカイギくん」
「え?」
「あらっ」
「マジで?ヨッコ……」
「………」
「あらあら、もしかして皆それで心配してお見舞いに来てくれたのかしら?そうよね、おばけなんて出ないわよ。気のせいね」
「かーさん………」
確かにヨッコは、おばけはいないと言った。
だが、ムカイギの背後にいるあれは………いや、待て。考えろ。
家に上がる前、ムカイギの背中を見たとき、ヨッコに意識されない様に耳打ちされた。
次に家に上がって茶の間に案内されてから、ムカイギの背後のあれはハツミ、ナツメ、私の順々に観察してきた。それも、入念に。
そしてヨッコが「おばけがいない」と言った瞬間、ハツミとナツメの様子が微々たるものだが、僅かに変化があった。
意識されない、つまり、意識されると何かが起こるということ。
それはすなわち、ヨッコからの何かしらのサイン。
「疲れてると何でもない事でも気になっちゃいますから。なんにもなかったので、お母さんも安心してください」
「うふふ、子供の除霊師さんなんていたのね」
「あはは、ちょっとだけ詳しいだけですよ」
「…………おばけ、いないの?」
「でも何事も無くて良かったではないか。体調が戻るまで安静にしないとな、ムカイギ」
とりあえず、3人がこれといって何も行動を起こさない以上、私はムカイギの背後にいる存在を無視することに徹した。
そして夕刻、5時のチャイムが街中に響く頃。そろそろ帰らなければならない時間。
ムカイギのお母さんに挨拶を済ませた私たちは家を出る準備をする。
「なんか来てもらって悪かったな………やっぱり、霊なんていないよな。気のせいか」
『…………』
「あれ?どうした皆?」
「ぶはぁっ!!ヤッベ、緊張した!」
「ひ……久しぶりすぎて一瞬わかんなかったわ」
「…………はぁはぁはぁ。まったく、1時間以上無視し続けるのも精神にクるな」
「ん~~~~、まいったなぁこれは。ちょっと難しいかも………」
「!?」
あぁ、本当に辛かった。
あんなものを見せられながら何事もない様な態度で居続けるなど、父とやった精神統一以上の辛さだった。目を閉じようにも、あちら側に感づかれては拙い気がして出来ないし、本当に辛かったっ!
「な、なんだ、みんな。どうした」
「生きた心地がしなかったぜ。ヨッコの言う「おばけいない」は「ここヤバいから一旦退く」のサイン!」
「!?」
「霊的なものって、こっちが「気づいた」ってわかったら干渉して来るの。ごめんね。一回出直す!」
「大概の相手ならヨッコがその場でやっちゃうんだけど…………」
「なるほど。だからあの時、意識されない様に無視しろと言ったわけだ。それで視察というのは………あれ以上のものがいるかもしれないから、万が一「気づいて」干渉してくるのを防ぐためだな」
「うん、そういうこと」
「え、シキには見えてたの!?」
「ムカイギの家に上がる前でな。どうやら私にもヨッコの様に霊感があるみたいだ」
「だからあの時、ヨッコと二人で何か話してたわけか」
「…………えっと、つまり?」
「性質の悪いのがいるの。見たのが夜ならこれから危ないし、夜にもう一回来るよ。その時にムカイギくんにも協力してほしいけど……その前に『それ』、気になるから取っちゃうね」
「えっ」
スパアアアアアアアアアンッ!!
ハツミにランドセルを預けたヨッコはムカイギとの間合いを詰め、ムカイギの背後にいるそれ――――――『悪霊』を全力で叩いた。
背中から剥がれ落ちた悪霊の元へヨッコは歩み寄り、そして踏みつける。
グググググッ ミシッ!! グシャアア!!
「………よし、除霊完了」
「
「私の思っていた除霊とは、程遠いのだが………」
「ヨッコの除霊はだいたいこんなもんよ」
「今は見えてねーけど、ヨッコ経由でチャンネル合わせたら私でも殴りかかれるぜ!」
「あれ?心霊現象ってそんなお手軽に解決できるっけ!?」
霊体に物理攻撃が効くのか…………そんな事実、心霊番組やそういう専門の集英社が知れば冗談だろ?と聞き返してしまうほど驚くだろうな。
なるほど、物理が効くとなれば問題ないようだ。
見えるだけではどうしようもないから、どう対処すればいいのか悩んでいたことが割とすんなり解決した。見えていれば、後はどうにでもなれるな。
「お手軽ではないんだけどね。で、身体の方はどう?」
「あ、身体が軽い。ほ……ほんとに何か憑いてた……?どんな霊か、めっちゃ気になるんだけど」
「見えないに越したことはないぞムカイギ。あんな悍ましいもの、『普通』の子供が見れば発狂してトラウマになって長いこと夢に出てくるようになって毎朝おねしょに悩まされることになるぞ。それに……これから退治するであろう大本がどれほど恐ろしいのか、考えたくもない」
「………どんだけヤバいのが見えてんだよ。」
「シキちゃんの言う通り、見えないならそのままでいいんだけどね。それと………これ、持っててね、ムカイギくん」
「おまもり?」
「絶対に外さないでね…………絶対に」
「………お、おう」
真剣な表情で言うヨッコに、ムカイギは後ずさりながら頷く。
さっきの霊もそうだったが、あのお守りも……………。
「ムカイギ。この場合はちらっとでも外そうものなら場面スッパ抜かれてあっという間に死亡一直線だからホント気を付けなさいよ」
「ば、場面?」
「ナッちゃんうっすらメタい!」
―――――――――――そして、私たちは一旦ムカイギの家を後にして、各自準備を済ませてから真夜中に訪問することになったのだった。
▽
「…………そろそろか」
10時あたり、シキは雪子と広恵が眠ったことを確認し、竹刀の入った竹刀袋を背負って玄関口まで向かう。
すると階段を降りてすぐ、ユーダイが待ち構えていた。
どうやら、シキを見送りに来た様子。
「………気を付けてね。無理は絶対にしちゃダメだよ」
「うむ。出来るだけ善処しよう」
「善処じゃダメでしょうが、もう。怪我したら、伯母さんが心配するんだからね」
「なんだ、ユーダイは心配してくれないのか?」
「怒るよ、シキ?」
「冗談だ。心配してくれているのは分かっている。…………では、行ってくる。必ず無事で帰ってくるから、安心して待ってるといい」
「うん、それ死亡フラグだから。ホント無事に帰ってきてね、お願いだから」
死亡フラグを立てて、外で待っていたハツミとナツメ、ヨッコの3人と合流してムカイギの家へと向かって行くシキにユーダイは不安になりながらも、無事を祈るのだった。