ここが、マグノリアか。
「リンゴが今日は安いよ」
昼下がりの街中は、一様ににぎわっている。
そんな、街中を抜けて、とある場所に俺たちは向かっている。
「そういえば、兄ちゃんはどっから来たんだ?」
隣を歩く少年がそう尋ねてくるので。
「そうだな。遠い西のほうかな。こっちに来て以来、迷子続きで詳しくは忘れちゃったよ。」
「ふーん。そっちにも、魔法ギルドとかあったのか?」
「あったな、ここよりも。」
呟くように俺は言った。
「だから、兄ちゃんはそんな魔法が強いのか?」
「そうかもね。」
はぐらかすように、俺は答えた。
しばらく、世間話をしながら、中心街から離れたほうへと進んでいくと、一つの建物が見えてきた。
「兄ちゃん、これが俺たちのギルド、フェアリーテイルだよ。」
少年は、明るくふるまってはいるが、どこか少し寂しい雰囲気を出している。
だがそれは、この少年の問題だ。
部外者の俺が口を挟むことではないだろう。
「ただいまー!」
「ロメオ、帰ってきたか!無事にクエストを終わらしてきたか。」
「ま、まあね」
中に入ると、どこか活気のない雰囲気の中、少し明るい声で白髪交じりの青髪の中年が少年に尋ねる。
「ところで、その白髪のにーちゃんは、誰だ?」
「ええと、クエスト中に少し危なくなってね。その時助けてもらったんだ。」
中年の値踏みするような視線と、少年のどこかばつが悪そうにこちらを見る視線を受けながら、軽く頷く。
「そうか、息子が世話になったみたいだな。礼を言う。」
どうやら親子だったみたいだ。
「そうだ!兄ちゃん、なんだったら、このギルドは入ってくれよ!」
「おい、ロメオ!何勝手なこと言いやがる!」
「だって、父ちゃん!この人、かなり強い魔法使いだぜ!」
「そうは言ってもなー。」
中年は、少し溜息を吐き周りを見渡す。周りには、まばらに人がいて、それらがこちらを窺うように見ている。
「にーちゃんにも、予定とかあるだろうし、ほら。俺らのギルドに入ったところでいいことないぜ?」
そこでふと、フェアリーテイルについて思い出してみる。
このギルドこと、フェアリーテイルはフィオーレ王国でも名の知れたギルドだった。
だったというのも、6年前の天狼島での事件以降主力メンバーを欠いたこのギルドは、急速に力を失っていった。
今では、見る影もなく落ちぶれているのは、目に見えてわかる。
火竜 ナツ・ドラグニル
妖精女王 エルザ・スカーレット
鉄竜 ガジル・レッドフォックス
雷竜 ラクサス・ドレアー
ほかにも、元マスターマカロフやギルダーツ・クライヴなどといった大魔導士を失い、弱小ギルドとなった。
確か、いつだったかの大魔闘演武でも、最下位だったと記憶している。
「なあ、兄ちゃん。俺らのギルドはいらねーか?」
このギルドのことを考えていると、少年は気体に満ちた目で再び尋ねてくる。
ふむ。今の俺の旅の理由を考えると、このギルドに入るのは悪い選択ではないかもしれない。
「そうだな、もしそっちが困らないのなら、ここのギルドに入れてもらおうかな。」
「マジで!言ってみるもんだな!」
「まじか。そりゃ、大して困らないんだが、お前さんはそれでいいのか?」
「ああ。」
中年の再度の問いかけに、そうやって頷くと。
中年はすこし、ため息を吐いた後。
「わかったよ。ところでお前さん、名は?俺は、このギルドのマスターをやっているマカオってもんだ。」
「そういえば、俺も兄ちゃんの名前、聞いていなかったな。」
名前か。そういえば、最近名乗ったことなんてなかったな。今は。
「オルフェ・ブルー。オルフェとでも呼んでくれ。」
「オルフェか。ようこそ歓迎する。久々の新顔の加入だ!おめーらも白けてねーで、歓迎しやがれ!」
そういって、マカオがジョッキに酒を注いだで声を張り上げると、街中に負けないくらいには、明るさを見せた。
こうして、俺はギルドフェアリーテールへと入った。
ナツたちとの再会まであと1年。