勇者エリちゃん(憑依)勇者の旅へ出ます。 作:小指の爪手入れ師
書いては消して、書いては消して、私いったい何をしたかったのか…
アビゲイル引けて舞い上がったのが悪かったのだろうか…
クリスマスイベント頑張ろ……
話の端々にシリアスを演出したかったが、最終的に耐えられずギャグに逃げた作者の心の弱さが読み取れる事と思います。広い心を持ち、自分たちで描写を補完しながら見てください。
ㅤ私はエリザベート・バートリー。今を輝く勇者でアイドルよ。そんなベリーキュートな私の最近夢中な趣味は─
ㅤ─命懸けのテニスよ!!
ㅤ唸る肉体に迸る血流の熱量は常に循環し滾り続ける。沸騰したポットの様に口から吐き出されるのは甘い蒸気か。斯くしてその頑健でありながら矮軀と言う矛盾を抱えた肉体から放たれるエネルギーはどれ程か本人でさえ図りえないだろう。
ㅤ筋肉が脈動し奏でる
「どおりゃぁああああ!!」
ㅤ彼女の持つ
ㅤ私は避けられたならば失点になると理解した上でこの戦法を取った。だがそれは、ヘラクレスが避けずに打ち返すだろうと確信した上で実行に移したのだ。
「■■■■■■■■ッッ────!!」
ㅤやはりと言うべきか、ヘラクレスは打ち返す構えを取った。
ㅤヘラクレスは半回転を加えて打つポイントをずらした。更に回転のエネルギーを逃がさずそのまま膂力に上乗せした上で私の顔面に返して来る。
「舐めんじゃないわよォ!!」
ㅤ迫る
ㅤさて世の豚やリスは頭にクエスチョンマークを乗せている事だろう。そんな憐れな者共に私から囁かな状況説明をしようと思う。私もまとめていなければ脳が爆発四散してしまいそうだからしょうがなくよ。
ㅤでは前回から現在に掛けての道程を説明しよう。
ㅤあれからもヘラクレスと死闘を繰り広げた。しかし、このままでは一歩も進めないと思い至った私は当初の予定通り海賊二人組と塵一盛りを子ジカに加勢させる事にした。
ㅤ勿論援護が減る分の皺寄せが此方に来る。それは身を以て理解している。だがそれも致し方ないこと、清姫も付いているのだからと無理矢理納得した。
ㅤだが私も自己犠牲を進んでする程愚かではない。あわよくば、倒してしまっても構わんのだろう、の精神で受けて立った。
ㅤと言っても真っ向勝負では分が悪い。そこでエリちゃん玉を作り出したのだ。
「説明しよう。エリちゃん玉とはエリザニウムの集合体であり、変幻自在でありながらなんやかんや素晴らしい物質である!」
ㅤ誰だ今の……まぁ合っているとは思うけれど。
ㅤ要は直接攻撃を避けながらも逃げられないようにその場に拘束するためにテニスの様な形態を取ったというわけよ。
ㅤあ、清姫は一人だけ置いてきぼりでアワアワとしてる。ラケット持ってないし仕方ないのよね。流石に扇子じゃあ細すぎ短すぎ脆すぎと三拍子揃っている訳だし、何より危険だから審判でも務めていて欲しい所。
ㅤ
ㅤ力強く握りしめ、感触をしっかり確かめた。
「吹き飛びなさいィィ──!!」
ㅤ限界まで引き絞った腕を一気に前へと突き出す。右腕が引き千切れないように許容限界まで魔力を通した為か激突時に押し返される事はなかった。
ㅤ盾から腕に伝わる痺れから未だに盾の面に光弾はあるらしい。
ㅤ私は気合いで腕を振り切った。
ㅤ空気が裂ける音と共に光弾は弾かれた。いや、弾かれるなんて陳腐な表現では収まらない。対城宝具を受け止めた時と同じ様な衝撃が私の細腕に伝わって来ている。
ㅤ距離は短い。私がそう仕組んだからだ。ヘラクレスは避けると言う選択肢を除外されている。私がそう仕向けたからである。
ㅤ頭部に着弾を確認。ヘラクレスは尚も倒れない。
「何の為に打ち合ってたと思ってるのよ!」
ㅤエリちゃん玉に蓄積されたエネルギーが外殻から漏れ出した。ヘラクレスとのラリーで加速度的に上昇していった熱量は確かにヘラクレスにダメージを与えた。
ㅤ膨張と縮小を繰り返す光弾は彼の頭部を丸々吹き飛ばし、胸に亀裂を入れる程の威力を生んだ。
「本当に規格外ねあの宝具…」
ㅤ失われた頭部が蒸気と赤い発光と共に形を取り戻していく。それは時間を巻き戻している様にも感じる。通常のサーヴァントであればこの時点で消滅するところだが、ヘラクレスは
ㅤここまで来て、ただ再生されるなんて─
「─たまったもんじゃないわよォ!」
ㅤ即座に拘束系拷問器具を幾つか召喚した。
ㅤ鎖で四肢を拘束。その上から釘を打ち込み固定する。そこから大中小の様々な大きさを持つ
「処女の抱擁、漏れ出すのは嬌声か流血か。貴方を捉えて離さない
ㅤ詩に乗せて閉じられていく
ㅤ息も絶え絶えな私は鍵を閉めた瞬間倒れ込む。甲板とキスするのはもうこれっきり御免だわ。
「エリザ!」
ㅤ可愛らしい足音をたてて清姫がやってくる。
ㅤ仰向けになる為に寝返りを打つことにした。だが、途中で引っかかった。首痛い…
「角あったの忘れてたわ」
「エリザ!!」
「あぁ清姫。ごきげんよう」
「あっはい、ごきげんよう」
ㅤちゃんと答えるのねこの娘。しかも礼儀正しく背筋を伸ばして扇子で口元を隠すんだから律儀と言うか天然と言うか。
「可愛くて変な子…」
ㅤ思わず口から零れた本音はしっかり彼女の鼓膜を振動してしまったようだ。頬を染めているのが分かる。どうやら思った以上に私はヘラクレス戦で疲労しているみたい、清姫がこうも可憐に見える。
「可愛いなんて。ほ、褒めても何も出ませんからね…何か食べたいものは?」
「寿司」
「握らせて貰います!」
ㅤ握れるんだ…
「それよりお怪我はありませんか!? 痛い所は? 外傷確認、脚、腕、顔、胸…は元よりありませんでしたね。一応私自ら触診を」
「おい、胸だけ意味が違ってたでしょ? 目を逸らすなコラ!」
「触診を始めます──ッ!!」
ㅤそう言ってグッタリした肢体に手を伸ばす清姫の息は何処と無く荒い。褒めた傍から変態行為とは、やっぱり清姫は清姫だなぁ。
ㅤいや変態行為をするのが普通みたいに成っているけれど大丈夫だろうか? 元々こんな娘じゃなかった気がする。
「アンタってそんなキャラじゃ無かった気がするんだけど…」
「玉藻さんが言ってました。想い人を射止めるのであれば、日頃からボディタッチを増やすべきだと!」
ㅤと、清姫は熱弁する。
ㅤその狐巫女は本当に許さん。会ったら絶対に殴るんだと心に決めている。
ㅤどう殴るか思案中の間も清姫は忙しなく私の身体に指を這わせる。時々ねっとりとした視線を顔とか下腹部に感じる気がしないでもないが、至って真面目に取り組んでいる
ㅤだって清姫は医療知識なんて無いもの。
「結局無茶、しましたね?」
「…ごめん」
「でもやめる気は無いのでしょう?」
「それも…ごめん」
ㅤ顔を逸らす。ばつが悪いから。
「良いんですよ別に」
「え?」
ㅤ顔を戻す。清姫の顔が見えた。
ㅤ笑顔だった、と思う。
「その隣に私が居れば、ですがね」
ㅤ適わないって言うのかしら、言い負かせる気がしないって感じだわ。結婚したら速攻で尻に敷かれる。
「ごめんね清姫」
「…良いんですよ。ええ良いんですとも」
ㅤ彼女は私の謝罪の意味を理解しているんだろうか。勘のいい彼女なら気付いても不思議では無い。
ㅤ普段見せない奥ゆかしさが胸に沁みた。
ㅤそれでも私は顔を逸らす。やっぱりばつが悪い。
「■■■■■■■────ッッッ!!!!」
ㅤ棺が激しく震える。籠った絶叫がさっきまでの雰囲気を吹き飛ばす。
「もう休ませてよね!」
ㅤダルい身体をゆっくりと持ち上げる。
ㅤと言っても閉じ込めてしまった物を再び出すなんて阿呆な事は出来るわけもなく、ぶっちゃけ立ったはいいが何すればいいか手を拱いているのが現状である。
「海に落とす? 窒息とか水圧とかメガロドンとか…死ななそうだわ。寧ろ新たな力に目覚めて帰ってきそうで怖いわね」
ㅤ顎を摩りながら考える。
ㅤ拘束した後の事を全くもって考えてなかった。何をしても帰ってくる要らない安心感が私を悩ませる。
「では常に手元に置く他無いのでは?」
ㅤ取り敢えずそうしよう。棺を肩に預け、子ジカの所に急ぐ。
ㅤ─エリザベートはㅤ
◇◆◇
ㅤ場は戦場とは掛け離れた静寂に支配されていた。
ㅤ皆呆然と一方向に視線を集めている。
ㅤ地獄だ。地獄がそこに広がっている。
ㅤしかしながらそこは喧騒で溢れていた。世界でそこだけは動き続けている様な錯覚がこの場の誰もが感じているだろう。
「あぁ^〜メディアたーん待って〜!!」
「何なんですかこの男は、こっち来ないでください! 早く起きてくださいイアソン様ァ!!」
ㅤ地獄だ。
ㅤ誰もが目を背けたくなる血腥い
ㅤカルデアのマスターとそのサーヴァントは元凶に改めて畏怖の念を感じ、幾多の嵐を越えた女海賊達は頭部に激痛を訴える。牛の男は女神を奴に見せまいと屈んで壁となり、その女神は当然とばかりにただじっと護られる。
「ヘクトール!」
「それはちょっと無理な相談だァな。見ての通りオジサンは首しか動かせねぇよ、イツツ…」
ㅤ伸びている
「そんなぁ…」
「さぁ聖杯を渡して拙者と楽しい事をするでござる。メディアたーん」
「キャーッ!!」
ㅤパニックで上手く魔術を行使できないメディアは生娘の様に悲鳴と恐怖を抱いて逃げ回る他ない。魔術に置いてメディアほどの逸材は少ない。そんな彼女に此れ程のトラウマを植え付け始めようとしている
ㅤ私はそっと─ヘラクレス入りの棺を担いだまま─アステリオスの影に─ヘラクレスの棺を担いだまま─隠れる。
「なにそれ…」
「ヘラクレス」
「…馬鹿なの?」
「いいえエリザはアホです」
「あっそう、もうどっちでもいいわ」
ㅤいきなりの罵倒にステンノとの共通点を見つけた私は蟀谷に血管が浮き出そうになるのを耐えつつ状況を聞くことにした。
ㅤ女神エウリュアレ曰く、ヘラクレスが消えたと思ったらイアソンたちが来て、それを追うように黒髭たちがやって来た。
ㅤ自分たちでヘクトールを相手をしている間にイアソンが気絶しており、黒髭がメディアを追いかけ始めた。
ㅤとの事らしい。
ㅤいや、イアソンは何故気絶したのかが聞きたいんだけれど。
「知らないわよそんなの。興味も無いわ。それより貴女!」
「何よ…」
ㅤ嫌な予感を感じながら聞き返した。
ㅤエウリュアレは思った以上に真剣味を帯びた目で私の瞳を覗いてきた。無言で見てくるので居心地が悪い。
「目を逸らすな」
ㅤ急に高圧的になったエウリュアレは首筋と瞳を交互に見る。
「何だってんのよ!?」
ㅤ私はあまり気が長くない。
ㅤ口を閉ざしたままのエウリュアレに怒気をぶつける。アステリオスはビクりと震えたが当人は何故か悲しそうに私を見てくる。本当になんだって言うのよ。
「珍しいこともあると思って見てみたら、可哀想な娘ね貴女。
「…訳分かんない」
ㅤ彼女の言葉は独り言のように要領を得ない。
ㅤ何で偉ぶってる輩はこう毎回遠回しにしか話せないんでしょう。私の理解力が乏しい訳では無いわよね!
「ぐぅ!? 流石の私も頭に来ました! 聖杯からの魔力さえあればこういう事も出来るんですよ」
ㅤどうやらアッチも動きがあったようだ。いや常に動き回っていたとかそういうツッコミは要らないからね。
ㅤメディアは聖杯から魔力を汲み上げている様だ。彼女の周りには循環する魔力が有り、徐々に取り込んでいる。
「『
「にゃにぃ!?」
ㅤ奇妙な形の短剣がメディアの手に握られ、にじり寄って来る黒髭の肩に刺した。
「あぁ〜なーんか心が澄み渡っている様なぁ……」
「黒髭が浄化された!?」
「浄化されても変わらずキモいですわぁ…」
ㅤ胸を広げてフワフワし出した黒髭は浄化されても変わらず不憫だという結果だけが残った。是非も無いよネ!
「いつまで寝てるんですかイアソン様!」
ㅤそう言ってメディアは聖杯を伸びたイアソンに全力投球。漏れなく彼の頭部を捉えた。そして─
ㅤ─聖杯はイアソンに取り込まれた。
ㅤいや、取り込まれたと言うよりも聖杯に侵食されたと形容したほうが正しいのかもしれない。
ㅤ人型はドロドロと崩れ始め膨張を始めた。どこのワカメポジション何だろう…ただ違うのは最終的に魔神柱に変わるという完成系を用意されているくらいだ。
ㅤ序列三十、魔神フォルネウスが勢いで顕現した瞬間である。
ㅤメディアもこれには「やっちゃいました…テヘ」と可愛さアピールをしてしまうくらいだ。
『いや、固まってる場合じゃ無いよみんな!?』
「はっ!? そうでした、先輩指示を!!」
ㅤ各自戦闘態勢を取る中、私は浄化されている黒髭の肩に刺さったままの
ㅤ私の口は弧を描いた。
次回でオケアノスは終わり、座で繰り広げられる清姫とのアレやソレや色々を書くことでしょう。戦闘よりは早くこちらを書きたいですね!