勇者エリちゃん(憑依)勇者の旅へ出ます。 作:小指の爪手入れ師
待っていた人はごめんなさい。待ってなかった人は正しい判断です。
執筆中に著しいIQダウンがあった気がする。誰かにデバフでも掛けられたのだろうか……
遅かった理由は簡単です。
モチベーションの維持が難しい!
これに尽きる。
チェイテのとあるワンフロア。
そこはどう形容すればいいのか困る場所。
そう一言で言えばロボット工場だった。いやロボットと言うのは怒られるので言い直します。
そう一言で言えば──メカ工場!!
「ふっふっふっ、清姫くん見たまえよ素晴らしい数だ。具体的な数は把握してないけど、取り敢えず凄い数だわ!」
「えぇ、右を見ても左を見ても何処を見てもエリザがいっぱいです。いい景色ですねぇ」
日がな一日ドラゴンやらバイコーンやらの討伐に明け暮れ、驚きのスピードで貯まる金と素材。さてどの様に消費すべきかと悩んだ。それはもう悩んだ。どれくらい悩んだか。言うなれば三日くらい清姫に介護されるくらいには悩んだ。あとその時の清姫はとても満足げだった。私は楽だった。
そして私は気付いたのだ。メカな私を量産すれば良いじゃない、と。統率機を2体、量産機を沢山、超弩級を1体。メイガス・エイジス・エリザベート・チャンネル略してメカエリチャンの大量生産ラインを確保。物量作戦を可能にし、人海戦術を用いて特異点の修復を図る。
かがく(?)のちからってすげー!
これで私は世界を救う。一切血を─メカだから─流さず世界を救ってみせる。これはクレバーでスマートな作戦だ。更に燃料は『エリザ粒子』なる私から無意識で漏れ出る謎物質。
教授? いらないわそんな犯罪紳士。我がチェイテの科学力()で成したのだ。──我がチェイテ城の科学力は世界一ィィ!!!
「勝ちましたね」
「えぇ」
この聖杯探索我々の勝利だ。
「ただ動力源がエリザである以上全力出撃は……」
「一度持てば良いのよ。それに現地で補給も出来るし案外どうにかなるかも」
ゲリラライブで相当量のエリザ粒子を捻出する事が可能だとココ最近の実証実験で分かっている。
統率機は既に本格稼働、問題は量産機が何処まで動くのか、そしてエリザ粒子の消費量。超弩級は量産機を射出・収容する母艦の役割が強いからそこまで気にしてない。あとミサイル打つ為の固定砲台としても有用。スゴいぞ、強いぞ、メカエリ軍団!
「税金で国力の強化と技術の発展。まさに求められていたのはテクノロジーのエボリューションによるレボリューション! ぶっちゃけ宝物庫に死蔵するばかりのQPたちを解き放てて良かったッ!!」
「危うく宝物庫を増設に着手する所でしたものね。いえ、いっそ作ります?」
「まぁ最悪空間を広げればいいし後回しで良いんじゃない?」
「言うことのレベルが可笑しい事にいい加減ツッコミを入れるべきですね。私たち以外が」
それはないものねだりって奴でしてよ。あと私の領域で常識の方が非常識だってこのエリザ人生で大いに学んだわ。たぶんやろうと思えばなんでも出来るんじゃない?
──勇者よ……
「あ、プロデューサー?」
──フッ、出撃だ
「ぁ、うん勇者エリザベート・バートリー出撃しマース」
なんか今日はプロデューサーもノリノリだな。
「じゃあ行くわよ清姫!」
「はい!」
◇◆◇
引っ張られる感覚と白い視界という最早慣れて特別感も完全に失われた召喚。晴れた光景は荒野であった。そして黒き槍兵の王とピンクの女王。
この特異点のラスボスの姿である。
「こういう時のラスボス戦は負けイベントって相場が決まって居るのよ!」
「……なんだコイツは、敵か?」
「さぁ、抑止力に召喚された野良でしょどうせ。クーちゃんの敵じゃないわ」
クー・フーリン〔オルタ〕に女王メイヴ。後者はチーズの弾丸を打ち続ければその内勝てるとして、問題は前者の方だ。正直バサクレスといい勝負でキツい。スカサハを打倒する実力は生半可じゃあ勝てないってよく分かる。あとギャグ時空に持ってくるのに苦労しそう。
なんも小細工も無しに挑むのは無謀。なので私は清姫を抱き寄せてトンズラこく準備に入る。
「まぁ敵かそうじゃないかなんて言うのは関係ねぇか」
「えぇそうね殺るなら思いっ切りがいい方が素敵。私の為に思う存分力を使って。虫の様に叩いて潰して。私たちの進む道に足を踏み入れたらそれはもう敵よ」
既に清姫は抱き上げた。魔力放出の準備も問題はない。逃げる算段はついている。
しかし唯一済んでいない事項を挙げるなら。
「飛ぶわよ清姫。舌噛まないでよね!」
「はぁい」
清姫への確認くらいだったかしら。
「逃がすか」
「いいえ逃げるわ!」
能面の様な顔からは想像だにしない威圧感と濃密な死の気配を孕んだ槍の刺突は僅かに頬を掠め、猛追をもって私の心臓を穿たんと振るわれた。
けれど初撃で私を倒せない時点で私の逃走は阻止出来ない。
「この傷の礼は高くつくわよ」
脚力に回した魔力を一気に解放し、蜘蛛の巣上に砕かれた地面を残してその場を離脱する。現在は上空に吹っ飛んでいる。
このままではただの凄い跳躍になる所だが私にはそろそろ忘れたか羽がある。飛行訓練したかいがあったのが少し悲しい。逃走手段として使う事になるとは思わなかった。
「取り敢えず拠点と服の確保が必要ね。特に服!」
「私はそのままでも一向に構いません」
「私が構うのよ」
「寧ろ推奨致します」
うんいつも通り人の話を聞いちゃくれない。清姫らしいのでこの際目はつむっちゃいますが、小言のひとつでも効いてくれれば良いのに。
「──ッ!?」
「……来ますね」
背後に高魔力反応。ドスの効いた朱色に輝く一条の光と言えば思い浮かぶのは単純な事。
「宝具の真名解放!? 確殺しに来てる!!?」
「そういえば何処かのエリザが言ってましたね。こういう時に遭遇するらすぼすは負けいべんとだと」
私が悪いの?
いやごめんって、まさかアレが本当にフラグになるとは思わないって。というかアレはアレだよね『
いや逃げたら案外そのまま逃がすと予想していただけにこれは予想外。まさかいきなりクライマックス宝具ブッパだなんて。限凸のカレスコでも積んでるんですかね。
「まぁ近距離だともっとエグいの来る可能性あったしマシかな」
「これはこれでピンチですが」
「この程度をピンチに数えてたらアイドルなんてやってられないっての!」
答えは得た。大丈夫だよ清姫私もこれから、というか今から頑張って行くから。
虚空から取り出したるは勇者の盾。その特性は持ち主である私の心が折れない限り破壊されない。欠けることや罅が入る事さえない。物足りなくなるほどシンプルだが、盾としてはこれ以上ない程に強力な我が宝具。
さぁ穿けるものなら穿いてみろ。私の心臓は此処にあるわよ。
「──『
中空で翻り私は宝具の名を叫ぶ。金槌で鉄を叩く様な音が直後に響くと続いて耳に障る甲高い金属音が突き出したレトロニアから聞こえる。火花が散るたびに盾を握る手が震え、身体にくる衝撃が私に冷たい汗を流させにくる。
そういえばこの火花って盾が削れてるのか槍が削れてるのかどっちなんだろうか。私の盾は削れないっていうのが売り文句なはずだから槍だよねたぶん。もしかしてゲイボルクって脆いんかな。案外膝でポッキリ折れるのでは。よしもしも心臓を穿たれたら腹いせに絶対に折ろうそうしよう。というか頬に掠った時にスッパリ切れて血が出てるし問答無用で折りに掛かっても良いんじゃないか。だって私はアイドルで美少女。お顔は命。これはもう心臓を穿たれたも同然ですよ。よし折ろう。絶対折ろう。──て言うか折る!
「折れろォ!!!!」
エリザの吼える。
ゲイボルクは逃走した。
180度綺麗にターンして全速力で担い手の元へと帰った。ゲイボルクは賢い槍だ。後でキャットにニンジンをやろう。……まずい思考がバーサーカーに乗っ取られそうだ。
「バーサーカーは使用容量を守って服用しましょう……」
何はともあれ逃げ切った。三点ヒーロー着地を決めきった私は片腕に収まる清姫を降ろして名剣エイティーンを地面へ突き刺す。使う機会がそこそこ多い陣地作成のお時間だオラァン。
「媒介は私で十分。リソースはちょっと龍脈から拝借。いくわよ、いでよ我がチェイテの技術により完成した圧倒的武力!!」
剣を起点に現れた魔術陣は巨大なメカを構築する。私たちを覆うように作られていくのはコックピットと言うには些か大き過ぎる機体内部。
その場所こそメカの中枢である事は間違いない訳だが本当に大きい。某宇宙戦艦か此処はと言わんばかりの全容であり、嘘か誠かそれぞれの機器は全て正常に役割を果たすと言う。理由は製作者にも不明だ。
巨大さ、強さ、可愛さ。全てが世界水準を大きく超える。それこそが超弩級メイガス・エイジス・エリザベート・チャンネルである。震えるがいいこの圧倒的な力と驚愕的可愛さに。
「超弩級メカエリチャン。起動ッ──!!」
台座に収まるエイティーンにエリザ粒子を何となくで注ぎ込む。超弩級メカエリチャンの瞳は『キュピーン』と妖しい光を放ち、滑走路になる両腕を地面と平行になる様に左右へと伸ばす。これがこの機体の基本となる状態にある。
《システム・オールグリーン》
《エリザ粒子のエネルギー総量85%を維持》
《統率機2体の起動準備完了》
《量産機1620万7907体の起動準備完了まで約3分》
《
お湯を入れて3分間で出来上がる即席麺の様な手軽さで猛威を振るうメカエリチャン軍団。ケルト? 機械化歩兵? 所詮奴らは『質』か『量』かの片方しか実現出来なかった敗北者よ。
質で勝り、量でも勝る。
「メカエリチャン、メカエリチャンⅡ号機を起動」
《両機の起動を確認。モニターに出すわ》
二つに並ぶモニターにはそれぞれのメカエリチャンの姿が映る。鮮やかな配色が施された『メカエリチャン』、鈍色でメカメカしさを残す『メカエリチャンⅡ号機』。
『予定の時間に幾らかの遅れが出てる件について勿論説明はありますね艦長?』
『無駄な雑談に興じる時間は無いわ。速やかに敵を排除しましょう。それで敵は何処なの?』
『無駄とはなんなのⅡ号機。空白の時間を知ることにオイル一滴足りとも意味は無いとでも言うのかしら?』
『フッ()』
『ムカつきました。やはり雌雄を決する必要があるようですねⅡ号機』
『巨大ロボの建造計画さえ話に出ないⅠ号機に勝ち目はないわ』
『構想から一歩も進まない建造計画でマウントなんて恥ずかしくないのかしら、人心回路がショートしてるの? 言っておくけど私たち姉妹機に性能差は無いわ』
根元は同じ統率機2体、けれど絶対に相容れない。起動してたった数秒で喧嘩する程姉妹仲はよろしくない。何故私をモデルに作られたのにここまで違ってしまったのか皆目見当がつかない。いやエリちゃんはエリちゃんだったと考えたら辻褄が合ってしまうな!?
まぁ何はともあれこの2体は私である事に間違いない。故に─
「あらあら駄目ですよ二人とも。姉妹は仲良くです。あんまり聞き分けが悪いと私としてはとても困ったことになります。言いたいこと分かって頂けますか?」
『『……はい』』
──清姫に滅法弱い。
モニター越しの一睨みで鋼鉄の肌を青褪めさせるメカエリ姉妹。情けないメカたちだと言い捨てられたらどれ程楽か。残念ながら私もあの笑顔の裏から滲み出た黒い物を見たならば同じかそれ以上に酷い醜態を晒す自信がある。
《3分経過、量産機の全力出撃準備完了》
「じゃあ作戦準備も出来たって事でブリーフィングはササッと済ませるわよ。まず今回の勝利条件は言われるまでもなくメイヴの持つ聖杯の回収よ」
今はまだメイヴが聖杯を所持している。実際私のエリザセンスで確認もしたので間違いない。初っ端会えたのはある意味では運が良かったのかも。
「メイヴには常にクー・フーリンのオルタが張り付いてる。更にしぶといケルト兵と英霊までも居る。だからⅠ号機は量産機を率いてケルト兵を撃滅し敵の力を削いで。削げば削ぐほど子ジカたちが動きやすい環境が作れるはずよ」
『了解よ』
「Ⅱ号機は野良サーヴァントの捜索。アタシが間違いなく居るので即刻確保してちょうだい。居るであろう野良サーヴァントのリストは既にインプット済みだから移動中に閲覧して。再三言うけどアタシは確保よ!」
『……』
Ⅱ号機の言いたいことは分かる。でもこればかりは仕方がないのよ。私はエリザベート・バートリー、アレもエリザベート・バートリー、大体同じ存在で理論上は今作戦のキーマンになり得る存在。まぁ賭けではあるけれど。
「私は?」
「清姫は私の横に居れば良いわ。と言うか下手に動かないでお願いだから!」
「では遠慮なく」
「ピッタリくっ付けとは言ってない!!?」
一応補足しますと巨大メカエリチャンと超弩級メカエリチャンは同一の機体ではありません。
Q.何故こうなった?
A.知らんがな……やっぱ眠い時に書くのはダメかもしれん。
感想は私のモチベーションに変わるので随時募集中です。評価は暇な方だけどうぞ。