勇者エリちゃん(憑依)勇者の旅へ出ます。   作:小指の爪手入れ師

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ふぅ、一話に一つ二つ過激な表現が入るな……
気を付けろ、この先は地獄だぞ?


脱ぐなって言ってんだろ(血涙)

 マシュにドナドナされていた所までは覚えている。でも、でもよ、何故私は─

 

「──なんで縛られてるわけ!?」

 

 そう現在私、勇者エリザベートは─

 

──テルマエに入っている。

 

 いや、お風呂は良い。気持ちがいいし、ローマ朝のお風呂は圧巻だ。しかし、手首を縛られているのはなんだ?私にそんな趣味は無いわよ!いや縛るのは最早本能的に得意だけれども!!

 

「むぅ、そう叫ぶでないわ。此処ではそなたの声は良く響く」

 

 湯煙の奥から来たのはネロだ。やったなお前ら!風呂回だ!!

 

 私は勿論目を背けます。そりゃそうでしょ!私は心まで女になった訳じゃ無いんだからね!

 

「ウム、思った通り美しい身体をしている。やはり美少女は良いな!実に良い!控えめに言って最高だな!」

 

 そう言いながら私の身体をペタペタと触ってくる全裸皇帝…AUOキャストオフ……う、頭が痛い。

 理由の分からない頭痛に襲われる私。念入りに身体に触れてくるネロ。もう分かんねぇなコレ……

 

 現実逃避を止め、改めて自身に置かれた現状を見る。縛られている。具体的には柱に着けられた金具に引っ掛けられており、そこから伸びるソレに拘束されている。太もも辺りまで湯に浸かっているためそれ程肌寒い訳では無いが、勿論私もZENRAである。

 

「このロリコン!離しなさいよ。手を縛ってこんな事するなんて最低よ!」

 

「ん?流石に意識が無い状態で湯に浸かるのは死ぬぞ?」

 

「あら、お気遣い痛み入るわ、ありがとう」

 

 そうかぁ、ただの親切心。気遣いだったかぁ…悪い事しちゃったわね。

 

「ウム、素直は美徳ぞ。ささ、身体をしっかり清めるとしようか!」

 

 そう言って私の拘束を取らない。何故だ!?

 

「不服か?ローマ皇帝たる余が奴隷の真似後をしていると言うのに…」

 

 ネロは目をギラギラと輝かせている。

 

「余が嫌いな事の一つは節制よ。その証明に見よこのテルマエを!贅を凝らした物だろう?薔薇を散りばめたこの湯は余のお気に入り。この場に連れてこられたこと、誇っても良いのだぞ?良いのだぞ!」

 

 裸でそう言われてもイマイチ格好付いていないが、それでいいのだろうかこの皇帝。

 

「それで、だ。この様に馳走が目の前にある状況下…余が自制するとでも?」

 

「いや、この戦時中にそれは…」

 

「なに、余にもこの様な息抜きは必要だろう?ローマは余と共にある。余はローマ皇帝ゆえな」

 

 このネロは生前、故にビーストである。さて、どうしたものかな。魔力放出を使えばこの拘束を振り切ることは可能だ。だがしかし、それをすると此処が吹き飛ぶ。それは流石にマズイ、野宿を進んでする程マゾではないから。

 

「案ずるな、直ぐに具合いも良くなる」

 

 ヌルヌルとした動きで迫ってくるネロに私は足をバタつかせる事しか出来ない。ネロはそれを愉快そうに眺め口元を歪ませる。完全に状況を愉しんでいるネロはゆっくり私の脇部分を撫で回していく。

 

「くすぐったッ!?」

 

「良い反応をするなエリザは…」

 

 少年が悪戯に成功したかのような顔を浮かべるネロはどうにもやめる気がないらしい。

 私は最期の手段に出るしかないのかと下唇を噛み締める。本当は使いたくなかった。でも貞操を奪われるくらいだったら─

 

「…けて……め」

 

「ん?何か言ったか?」

 

 私は加減はしつつも声を張る。

 

「──助けて、清姫ェーーッ!!!!」

 

 辺りの湯気が消え去る。ネロも私の声に吹き飛ばされかける、だが私の尻尾を掴んで耐えた。……尻尾ォ!?

 身体が硬直する。ピリピリとした感覚とチカチカとする視界に酔いそうだ。そして自然と涙が流れるのが分かった。

 

──┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

 

 何処からか聞こえる轟音。湯から来る熱気とは違う熱が何処からか来ている。そして薄く聞こえていた声は鮮明化した。

 

エリザ(安珍様)を泣かせた愚か者は何処ですかァ!!」

 

 最早、育ちの良さを感じさせる甘い声はなく、ただそこには愛おしい人を思う人間の咆哮があった。彼女もまた竜、肺活量が違った。道が開かれたように湯気が飛び去る。

 

エリザ(安珍様)大丈夫です。私が来ました!」

 

「清姫ェ!」

 

「え?余が悪者!?」

 

ㅤ清姫は私を見つけたと同時に正義のヒーローの様にセリフを言い放つ。そして急加速、清姫の影がブレたと思ったらネロと私の間に立っていた。顔には慈愛の笑があったが、それ以上に口から時折漏れる発火音が異様だった。

 

「よくも、よくもやってくれましたね…」

 

「そ、そうよ清姫。このアホ毛皇帝に一言言ってやって!!」

 

ㅤ私はネロがしようとしていた事を思い出し、羞恥に駆られながらも清姫を煽った。鏡を見たら目にグルグルがある事だろう。

 

「正妻はネロでは無く、この清姫デスッ!!」

 

「ナヌゥ!?」

 

「違うでしょ!!?」

 

ㅤ頓珍漢な発言をバーサーカーした清姫はネロにサマーソルトキックを繰り出す。ネロは咄嗟に身を仰け反らせるが、顎に決まってしまった。ネロは宙空に投げ出される。

 

「まだまだァ!」

 

ㅤ清姫サンはこのままでは終わらないと着地した後跳躍。宙に浮いたネロの腹にドロップキック。顎を蹴られスタン状態のネロは勿論避けられない。くの字に折れるネロはテルマエ中心地へと吹き飛ばされる。

 

「チェストォ!」

 

ㅤなんと清姫サンのバトルフェイズは終了しない。最早何がどうなっているのかわからないが、清姫サンは破裂音と共に宙を駆けた。そしてトドメとばかりにネロの背に踵を振り下ろし、テルマエへと叩き落としたのだ。

 

ㅤ湯はネロが落とされた所から波が発生し、私を飲み込んだ。

 

「わっプ!?」

 

ㅤ抜け出そうとしたが手元がカチャカチャするだけで抜け出せない。呼吸を忘れて清姫サンを見ていた私の意識は遠のく。

ㅤ最後に見た光景は─

 

─元気に清姫サンから逃走するZENRA皇帝の姿だった。

 

ㅤあの人本当に生身かよ…

 

ㅤ私の意識は暗転した。

 

 

◇◆◇

 

 

 

ㅤ耳鳴りがしてる、何処からか聞こえる喧騒が煩わしい。心做しか下腹部が圧迫されている気がする。ちょっとだけ心地良いと思ってしまった私は変態の素質があるのかと若干落ち込んだ。

 

ㅤゆっくり瞼を上げると─

 

「知らない天井だわ…」

 

ㅤ定番のセリフを吐いた後、圧迫されていた下腹部を覗けば掛けれていた布が丸いシルエットを映していた。布を取り去ると舌をチロチロさせる清姫(変態)が居た。

 

「きぃいいえぇえああああ!!?」

 

ㅤ何故彼女を変態と称したのか、それは至極真っ当な事だ。この清姫、ZENRAである。

 

「なんで服着てないのよこのド田舎子ジカ!!?」

 

「意味は無い!と言いたいところですが、強いて言うなら…対抗心?」

 

ㅤこんな事に対抗心を燃やさないで欲しい。これも全て赤いセイバー顔の皇帝が悪いんだ!

 

ㅤそして奥の扉が音を立てて開いた。

 

「大丈夫かエリザ!」

 

ㅤ来たのはネロ。そしてその皇帝も…もう何も言うまい。

 

「服着ないなら寄越しなさいよ!」

 

◇◆◇

 

ㅤあの後私は服を着た。そして私の聖杯探索(グランドオーダー)は終わりを告げた。皆、今までありがとう!勇者エリちゃんの次回作ご期待ください。

 

 

 

 

 

ㅤえ?ダメですか?アッハイ……

 

 

 

 

 

 

「ガリア遠征?」

 

「あぁ、いつまでも此処でふんぞり返っているわけにもいかないだろう?余が出れば兵の士気も上がる、余もこの舞台を華麗に舞いたいしな!」

 

ㅤ後者が本音だとこの短い間で察する事は出来た。いつの間に霊地へと行っていたリツカたちも若干苦笑しているように見える。

ㅤだが、私が行くとは言っていない。そもそも行く必要ははっきり言って無いだろう。もとより私という存在はイレギュラーなのだから。

 

「私は遠慮するわ。気を付けて行ってらっしゃい」

 

ㅤ本音は「服手に入れたからニートでいいや」であったりする。

 

「余はストリップショーが見たいなぁ」

 

「行きます!行かせてくださいお願いします!!」

 

「エリちゃんェ…」

 

ㅤ止めて!そんな目で見ないで!しょうがないじゃないの。私はもうビキニアーマーなんて嫌なの!お金積まれても嫌なの!!

 

ㅤこうして遠征が余儀なくされた。

 

ㅤ道中も色々あったものだ。連合軍をイライラして焼いたり、連合軍をむしゃくしゃして内部破裂させたり、服を着るって素晴らしいと再実感したりと色々だ。

 

ㅤそして清姫とネロの正妻問答を冷たい目で眺めていたらキャンプ地が見えてきた。あとネロの「余がルールだ」は流石に暴論過ぎやしないだろうか?

 

ㅤネロがキャンプ地に着いた途端歓声が上がる。流石に地元固定ファンが多い、私の勇者系アイドルの本能が注目されろと囁いているが少々分が悪いと言える。

ㅤそんなネロも笑顔で応えている、時折私の方にチラチラ視線をよこすがプイッと顔を逸らすことで突っぱねた。横目でネロの様子を覗き見れば、とってもいい笑顔をしていた。

 

「ヒエッ…」

 

ㅤアレは獲物を見る目だ。どの様に喰い殺そうかと夢想し、その時の愉悦を疑似体験しているのだ。私は彼女の暴君の片鱗を見た。味方が敵で敵も敵。逃げ場には既に(そら)に続く壁を形成してしまっていた

 

「やぁやぁ来たね」

 

ㅤ気安い口調の女性の声がした。声のした方向見れば赤毛のお姉さんと─

 

 

──筋肉(マッスル)が居た。

 

 

「うわぁ…」

ㅤ思わず声が出た。貼り付けたような不気味な笑顔を見せる金髪モリモリマッチョマン。見事にいじめ抜かれた強靭な、いや狂人な肉体は脈動する度に筋繊維の漲る音が聞こえてきそうだ。私はそれを筋肉楽団(マッスル・オーケストラ)と呼称しよう。

 

「ネロ皇帝陛下…ちょっとネロ。アンタ凄い顔してるよ」

 

「ん?そ、そうか?」

ㅤ黒い笑顔に赤毛のお姉さんこと、ブーティカもドン引き。引き攣った表情をしている。そして、ブーティカはネロの視線の先をなぞる。筋肉(マッスル)も何故か貼り付けたような不気味な笑顔のまま見る。全く、アイドルもびっくりな表情筋だぜ。

 

「な、何よ…」

 

「いや、ネロが入れ込む子が気になってね。でもそうかぁ、確かに可愛い子だね。面食いのネロが入れ込むわけだ」

 

「当然ですネ。エリザは最高ですから!」

 

「清姫、ややこしくなるからそういうの止めて」

 

ㅤ清姫は落ち込み、ブーティカは撫でてくる。髪型が崩れないように撫でてくる当たり、熟れているのか…いや子持ちだったなこの人。

 

「子供扱いしないで、よ!」

 

「うんうん、そういう事言っている間は子供かな」

 

ㅤクッ、悔しい!でも、心地良い!!

 

ㅤブーティカが私の頭から手を退ける。頭から温もりが去っていく感覚がある。私はテンプレの様に「あっ…」と声を漏らした。

 

ㅤブーティカはそれに気付いたのか片膝立ちになり、私に目線を合わせニッコリ笑う。

 

「また後で、ね?」

 

ㅤ堕ちそう……

 

ㅤポンポンと私の頭を叩けばリツカ達の方へ行ってしまった。

 

ㅤそして、筋肉(マッスル)はまだ私を見ている。ジーっと見ている。もしやファン?と思ったらズシズシと協奏曲を奏でながらやって来た。普通に不審者である。半裸だし、パンイチも変わらない恰好だし。

 

「君は圧制者か?」

 

「ふぇ?」

ㅤ疑問の声が上がるとブーティカたちもこちらを見ている。彼女の顔はギョッとしているのは仕方が無いだろう。だが、筋肉(マッスル)の質問はそれだけだと言わんばかりに黙っている。

 

「いや、圧制者じゃないけど。勇者だし、寧ろ立ち向かう側?」

「そうか!叛逆の勇者!素晴らしいな。ならば我が前に口上と証明を示すのだ」

 

「エ、エリザベート・バートリー。職業勇者兼アイドルやってます…で、証明ってなに?」

 

「見よこの身体、これぞ叛逆の証!さぁ叛逆の勇者!!」

 

筋肉(マッスル)は見せつける様にモストマスキュラー。目で私に促してくる。筋肉が盛り上がり軋む。そんなものを見せつけられた私は─

 

「いや…ちょっとそういうのはマネージャーを通して欲しいんだけど」

 

──ドン引きである!

 

ㅤだが、筋肉(マッスル)は無言の圧力を持って私に強制する。と言うかグイグイ来る。

 

ㅤ怯んだ私は見様見真似でお腹辺りで手を組む。

 

「勇者よ。肉体を晒すのだ!証を、示せ」

 

ㅤ詰まるところこの筋肉(マッスル)、脱げと言っている。筋肉モリモリマッチョマンの変態って本当に居たんだ……

 

ㅤ私が遠い目をしていると、空かさず筋肉(マッスル)はサイドチェスト。

「いや、そんな出来るわけ─」

 

ㅤ拒否をしようと声を上げれば、首にガチャりと無骨なブロードソードが添えられた。

 

「ちょちょちょ、おいおいスパルタクス!その子は味方だって!!それにそろそろ止めないと…あの二人に切り刻まれた後で灼かれるよ?」

 

ㅤブーティカは筋肉(マッスル)を諌めるが頑として私の首に添えられた凶器は動かない。彼の笑顔が私の精神を侵していく。

 

「私、脱ぎます…脱ぐから。ソレ退けて…」

 

ㅤそう言えば凶器は退かされた。ネロから着せられた露出の多いドレスを布音とともにシュルりと脱いだ。

 

ㅤ私はされるがままにヒクッとしゃくり上げながらサイドトライセプスをする事になった。

 

ㅤ終始笑顔を絶やさない筋肉(マッスル)に対する恐怖はきっと私は忘れない……

 

 

 

 




私は悪くない!自然と書けたのがコレだったんだ!!

それと素晴らしいことに清エリをテーマにした絵が届きました。最大限の感謝としてここに貼っておきます。

RAELさんが書いてくださいました!

【挿絵表示】


次回?あるといいなぁ…

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