勇者エリちゃん(憑依)勇者の旅へ出ます。   作:小指の爪手入れ師

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…原作に沿うのって難しくネ?ウチの娘たちが勝手に動き回り過ぎて書き手が置いてきぼりにされるんだが!?

テンポの良さがホスィ…

それと少しいつもより会話が多いと思います。


失念していた!

ㅤガリア遠征は私たちの活躍もあって安定した。敵司令官を落としたのでしばらく進行しては来ないだろう。ただの兵であればあの二騎で十分だ。

 

「と言うことで船に乗るぞ!操舵は余に任せよ。フフフ、久々に腕が鳴る」

 

「という事ってどういう事?」

 

「噂を確かめるためだと思いますよ先輩。確か古き神が出たとか何とかで」

 

「神?ドクターがサーヴァントとして神様は召喚は出来ないって…まさかの嘘情報!?」

 

『人聞きが悪いな立香ちゃん!?』

 

ㅤカルデア組は神霊の考察をしている。私はと言うと…

 

「神?絶対会っても碌な事に、事実どうでも良い試練をするだけなのに……寄らなくても良いんじゃない?」

 

「そうは言いますが、あの皇帝はやる気満々のようですよ?」

 

ㅤネロは既に船に兵を乗せ始め、自身はウキウキしながら舵を握る。鼻歌交じりでステップまで踏んでいる彼女に行かない旨を話せばどうなるか、想像に難くない。

 

「言いづらい…」

 

ㅤこうして乗船以外の選択肢を封印され、神が顕現されたと言う島へと向かうのだった─

 

─だがしかし!!

 

ㅤ事はそれだけで済まされ無い!!

 

─何故ならば!?

 

「見るがいい!これぞ余のドライビングテクニック!!」

 

「急上昇、急降下、急旋回!?訳が分かりません…これ船ですよ!?船ですよね!!?」

 

「ちょっ落ちる!シートベルト!!シートベルトは何処(いずこ)に?」

 

「先輩、しっかりしてください!先輩、先輩ッーーー!!」

 

ㅤ明らかのスピード違反─舟が出して良いスピードではない─に激しい動き─舟がしていい動きではない─をしている。これでは安全装置無しのジェットコースターに乗っているのと同じである。

 

ㅤそんな無茶苦茶な運転を続ける皇帝はと言うと…

 

「この先の五連続ヘアピンで決めるぞ!どおぉりゃああ!!」

「ヘアピンって、まず海上にコーナーなんて無いわよ!?バカバカバカァ!!こぅのアホ皇帝ェ!!…ウップ」

 

ㅤ完全にグロッキー状態の私。マストにロープを括りつけて身体を固定しても右へ左へ上へ下へと引っ張られ揺れに揺れる。更に容赦なく海水が降りかかる。髪が痛まないか不安だ。ぁ、私英霊だった…

 

ㅤ清姫はと言うと、コレが好機かと言わんばかりの正面から抱き着いてくる。ロープに捕まれと言っても「安心感が違います」と訳の分からない供述をしており、この先おかしな行動をしないか警戒しなければならないだろう。

 

「ほれほれ次は溝に─」

 

「海だって言ってんだろ!!」

 

◇◆◇

 

ㅤ口の中が酸っぱい。プールから上がったような脱力感に時折聞こえる呻き声が鬱陶しい。

 

ㅤズサァっと砂浜を割く音が聞こえ、ネロが声を上げる。

 

「到着ッ!ウム、良き航海だったな。機会があったらまた乗り回すとしよう」

 

─やめてくださいしんでしまいます。

 

ㅤ幽鬼のようにユラユラと立ち上がる兵士達は各々目に光が無く、恐らく忠誠心だけで立っている。私は彼等の生き様に涙を流しそうだ。いや、流さないけどネ!

 

ㅤ身体を起こし、辺りを見渡せば、まぁ十中八九島がある。

 

『わわっ、本当にサーヴァントが居るぞ!?』

 

「既に連合に取り込まれていたか…」

 

「いえ、まだそうと決まったわけではありません」

 

ㅤどうやら女神様がエンカウントしたようだ。正直私は会いたくないし、出来れば帰りたい。

 

「あら、お客さんなんて珍しいわ。ようこそ()の島へ、歓迎するわ。サーヴァントが混ざってるみたいだけれど…まぁ瑣末なことよね?」

 

「えっと、貴方が古き神、と言うことでよろしいでしょうか?」

 

「古き、なんて言って欲しくは無いのだけれど。貴方達からしたらそうでしょうね」

 

ㅤ話は途中から聞いていない。関わってもどうせ碌な事にならない。よって、私は砂浜で城を作る作業に没頭している。砂に水を混ぜて強度を上げるのだが、ボロボロにならない様にするのが難しい。時折火で炙って見るのだが、どうにも綺麗に出来ない。

 

「貴女…」

 

ㅤ何か近くに気配を感じるが、まぁ清姫だろう…いや、清姫は目の前で穴を開けてる。

 

「貴女よ貴女…」

 

「え、私?」

 

「そう貴女」

 

ㅤ振り返れば女神がいた。比喩ではなくそのままの意味で、美を集結した偶像がそこにはある。昔の男達は揃ってロリコンなのかと見紛う美幼女だが、纏う神気は本物でプレッシャーもキチンと感じる。

 

ㅤ女神ステンノは私の瞳を覗く行為を止めない。そこにどんな理由が介在しているのかは凡そ察することが出来るが、やはり碌な事にならないので視線を砂の城に移そうとする。

 

「本来女神の姿を覗き見る行為自体万死に値するのに、それに加えて私の許可無しで目を逸らすだなんて、とんだ無礼者ね貴女」

 

「はい?そっちから話し掛けといて一言も発さないのが悪いんでしょ!?」

 

(私達)は得てしてそういう者よ。それで、話し掛けた理由なのだけど…まずは、名前を教えて下さる?」

 

ㅤ本当にこの女神は良い性格をしている。サラッと全て流して自分の意見を突き通してくる。妹さんをもっとリスペクトするべきだと思う。

 

「エリザベート・バートリーよ」

 

ㅤ私が素直に答えると意味有り気に「ふぅん」と声を漏らし、立香たちに向き直って試練(御褒美)と言ってから洞窟へと進ませた。

 

ㅤ私も行こうとしたが、面倒だと思い、結局同行はしなかった。もちろん清姫は私から離れない。

 

「清姫、ここの部分をもっと…こんな感じに」

 

「んぅ…こう、でしょうか?」

 

「そう、そんな感じ。だけどもっと優しくして、壊れちゃう」

 

「楽しそうね」

 

ㅤ横目でステンノを見れば、傍らで屈んでいる。スカートに砂が付くか付かないかが気になる…

 

「さっきから何?言いたい事があるならハッキリ言いなさいよ…」

 

「─貴女は誰?」

 

ㅤゾクりと背筋に怖気が走った。この女神は名前を尋ねているんじゃ無いことが私には分かる。何処までも見透かした様な視線は、私のガワを見ていないのでは?魂を覗き見ているのでは?そう、何処までも感じさせる。

 

「わ、私はエリザベート─」

 

「違うでしょ?」

 

ㅤ私はステンノの顔を見た、逸らせなかった。今、私の中で確信に変わった。この女神はエリザベート・バートリーを知っている。だから私がエリザベート・バートリー本人ではないと否定できるのだ。

 

「もうそろそろじゃないかしら…」

 

「え?」

 

ㅤ足音が聞こえる。軽い足音が二人分。誰だなんて疑問は無い。きっと身近な存在だ。きっと私は会った瞬間逃げ出したくなる存在だ。きっと…きっと─

 

 

─それは()だ。

 

 

「ん?どんな美少女が居るかと思ったら、なんだ…アタシじゃない」

 

ㅤ金属音が鳴っているんじゃ無いのかと思う程首の回り具合が悪い。瞼は閉じる事を忘れ、口の中は干上がっている。汗腺は緊張からガバガバ、止めどなく汗は噴き出し、作った砂の城に滴り落ちる。

 

ㅤ体感時間が程良く引き延びに引き延ばされた辺りで漸く声の主を突き止めた。そこにはエリザベート・バートリーが居た。

 

ㅤついでにタマモキャットも居たがニンジン投げたので既に居ない。投げたのは私で、具体的にはピ〇ミンを投げる様に投げた。恐らく彼女は途中、自分が何故ニンジンを追い掛けたのかさえ忘れて帰ってくる事だろう。

ㅤさて、シリアスに戻そうか…ニンジンのくだりで既にシリアルになった様な気がしないでも無いが、まだセーフだと信じておくこととしよう。

 

「同じサーヴァントが同じ場所に居るなんて思わなかったわ。やっぱりアレよね、人気アイドルだから引っ張りだこってことよね?いやぁ困るわぁ、売れっ子アイドルって大変だわぁ!」

 

ㅤあるぇ?もしかして、このドラ娘、私の事に気付いてない……マジで?

 

 

 

──あぁ、(エリちゃん)ってアホの子だったわ…

 

 

ㅤ最終的に何事も無く─メンタルに多大な影響を及ぼしては居るが─無事に乗り越えた。

 

「思ったよりつまんない演し物だったわね…」

 

ㅤステンノは貼り付けたような笑顔を取り払い、退屈そうに顔を伏せる。本当に残念そうだ。私の身バレを期待した様だが……

 

ㅤ残念だったわね、(エリちゃん)はアホの子なのよ!

 

ㅤアレ?目からお水が漏れそうだわ…

 

「ん?エリザが二人…」

 

ㅤ清姫は徐に立ち上がるとおかしな行動を始めた。深呼吸は良いとして、何故高速で首を動かしているのだろう。あと、手をワキワキさせるのは止めてほしい。

 

「匂い、フォルム、呼吸リズム、瞬きの間隔、肌の予想弾力までは同じ。相違点は体温と服装と安珍様の有無。偽っている?つまり嘘?嘘は…いえ、安珍様は私に嘘を吐かない!」

 

「は?何この娘…アタシの熱烈なファン?」

 

「味もみてみないと分からない?味の比較もしてみませんと、イケナイノデハ?」

 

「イケナイのはアンタの思考回路よ!!」

 

ㅤ私は目にグルグルを召喚し始めた清姫に魔術で出したハリセンを叩き付ける。こぎみの良い音が周囲を包む。そして、清姫はコレをキッカケに嵌ってはいけない歯車を噛み合わせてしまった。

 

「問おう、貴女が私の安珍か?」

 

ㅤ何聞いてんだこの狂戦士(バーサーカー)!!?

 

「は?人違いよソレ」

 

ㅤ言うに事欠いてその返答ォ!?

 

「フフフ、フフフフ…」

 

ㅤ口から火花を散らす少女は想起したのだろう。愛する男を何処までも追いかけ、漸くその(まなこ)に愛おしい人物を映し込んだその時を、その問いかけを、その答えを、その憎悪を。

 

ㅤ真ん丸だった瞳孔は縦割れ、白く美しい柔肌は音と共に剥がれ鱗を覗かせる。綺麗な桃色をした唇から漏れる声は最早声として機能せず、音と形容した方が適切だろう。(まさ)しくソレは警戒音だった。彼女の口内を激しく蠢く舌は徐々に細く、徐々に長く成っていく。

 

ㅤ思い込みだけで竜に転身した少女は今─

 

ㅤ勘違いで竜に成ろうとしている……

 

ㅤ幾ら何でもフリーダム過ぎるでしょうがァッ!?

 

ㅤだが、この場にはまだ黙っている者が居ることを失念してはならなかった。それは何処までも美しく、何処までも冷酷で、何処までも残酷で理不尽な女神。

 

「ハイハイそこまで。此処は私の島なのだから好き勝手は止めておきなさい。蛇は好きだけど嫌いよ。そも話、ソレは嘘は吐いてないわ。だって知らない事だもの」

 

「アンタ人のことソレ呼ばわりしたわね!?」

 

「そう、でしたか。確かに無知では嘘の吐きようがありませんね」

 

「スルーすんなァ!!」

 

ㅤ回り回って私の方までダメージが通るお話は早々に切り上げ、私たち(エリちゃんズ)を置いてきぼりにこの二人は勝手に話をねじ込む。

 

「アレとソレは別人よ。外見はともかく中身はそう言い切れる。醸し出す色彩が全く違うもの」

 

「つまり安珍様の有無は確かに有ると、そういう事ですね。あぁ安珍様、それ程までに私に会いたがっていただなんて!清姫照れてしまいます」

 

「まぁ概ねそんな所よ」

 

「ちょっとアタシもなんか言ってやりなさいよ!」

 

「私に振らないでよ!?清姫のクラスバーサーカーだからね?」

 

「ウッソォー」

 

ㅤ何言ってんだこの(エリちゃん)

 

ㅤ清姫が嘘何か吐く訳無いでしょう。それとさっきからスルーしてたけど…私の事モロバレじゃない?プライバシーもデリカシーもあったもんじゃないわ!?

 

「ニンジン採ったどォ!!」

ㅤまたカオス要員が参戦した。敵、狂戦士(キャット)です!

 

「ニンジンは貰った。ならば此処は既にキャットの独壇場!さぁ今こそタマモナインが一角、タマモキャットの家事スキルを披露する時だワン!!」

 

ㅤタマモキャットがピクピ〇ニンジンを持って帰って来た。その後、辺りを見渡せば気付くだろう。そう、此処には戦場(キッチン)は無いのだと!

 

「何と!?独壇場はともかく、立つ壇さえ無いと?グヌヌ、これでは…」

 

ㅤ尻尾は垂れ下がり、持っていた数本の包丁は何処かに仕舞われた。私は何とも言えない気持ちになった。よってちょっとだけ助けようと思う。いや、子ジカ帰ってくるまで暇だからネ!

 

「調理場位は出せるわよ…」

 

ㅤそう言うと再度包丁を取り出し走り寄ってくる。包丁が私の髪の毛を数本持っていった。ぁ、コイツ確かにバーサーカーだわ…

「それは本当カ!?ではシステムキッチンをだな!」

 

「竈で妥協しろ!」

 

「任せろ!此処に酒池肉林を築いて見せよう─だワン!」

 

「ニンジンだけで出来るかァ!?」

 

「ニンジンフルコースをお見せしよう─だワン!!」

 

「語尾忘れるくらいなら止めなさいよ…」

 

「だワン?」

 

「何故疑問形ィイ!!?」

 

「ハッハッハ、面白いヤツだ。殺すのはオリジナルの後にしてやろう」

 

ㅤ会話がしたい。お願いだから会話をしてくれ。何故コイツらキャッチボールしないの?何故豪速球投げてくんの?ぁ、バーサーカーだからカ!?

 

「ネロォオオーーーーッッ!!!!」

 

「会話しろって言ってんだろォ!!」

 

ㅤ野太い声がした方向へ魔力放出×2を全力開放。勢いに任せて拳を振えば数十回水を跳ねる音がし、遠い所で着水する音が聞こえた。

 

「アレ?アタシってあんなこと出来たっけ?」

 

ㅤタマモキャットはせっせと料理に勤しみ、清姫とステンノは談笑。私たち(エリちゃんズ)は仲良くお互いを見て硬直。この光景はカリギュラ再出現まで変わることは無かったという…

 

 

 

 




グダってきたナ!ヤバいヤバいヤバい!?このままではヤバい!!

─評価が!!

ぁ、礼装がまた凸りました…辛い……


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