今回でクラス代表決定戦は終わりです。
「うおおおーーーっ!!」
ブザーが鳴ると同時に俺は一夏に近づいて連続で突きを放つ。
ガン ギン キンッ ガギン ガン
「くっ――!」
一夏は俺の突きを雪片の腹で何度か防ぐと後退して距離を取った。
「ふぅ、少しは捌けるようになったみたいだな。」
俺は構えを解かないで一夏に話しかける。一週間前の一夏だったら今のを凌ぐことすら難しかっただろう。
「まぁ、箒に一週間も剣道の稽古を付けてもらったからな。近接武器なら体で覚えたさっ!」
今度は一夏が距離を詰めて雪片を振り回す。
ギン キンッ ガキン キィン
「にゃろっ!」
ブンッ
俺はその攻撃に焦れて赫槍を右手一本で持って横薙ぎに振るったが、一夏は軽く後退して避けると、上段から袈裟切りを振るってきた。
「貰ったっ!」
ガギンッ
俺は空いている方の左手で防ぐがシールドエネルギーが削られてしまった。
「お返しだっ!」
俺は体を回転させて左足の回し蹴りと振り切っていた赫槍を振り回す。
「っぶねえ。」
一夏が後退したせいで急所は外してしまった。シールドエネルギーは余り削れてないだろう。
「さすが月茂だな。あの状況でカウンターを入れられるとは……」
「一夏も昔の感覚を思い出したみたいだな……」
「「こっからは本気で行くぞ!!」」
二人の言葉が重なると同時に俺の赫槍と一夏の雪片が何度もぶつかりあう。
◇
「…………はぁ……はぁ……はぁ。」
「…………はぁ……はぁ……はぁ。さすがにエネルギーが無くなってきたな。」
あれから三〇分ほど、俺達は大きな有効打は入れられていないが、何度も攻撃は食らっているのでお互いにシールドエネルギーは50を切っているだろう。
「なあ一夏。一つ提案があるんだが。」
俺は槍を肩にかけて一夏に問いかける。隙といえば隙になるが最初に男同士の闘いと言っているし、不意打ちのようなことはしないだろう。
「提案? なんだ?」
一夏も構えを解いてこちらに耳を傾ける。
「残りのエネルギーも少ないし、次の一撃で終わりにしないか?」
赫槍を一夏に向けて挑発する。
「おもしれえ。乗ってやるよ。月茂!」
「応、一夏!」
俺達は距離を取って互いに向かい合う。
俺はバイザーを閉じて視覚補助をオフにする。この方が一撃に集中できる。
「準備できたぞ。」
「ああ、こっちもだ。」
俺が背を屈め赫槍の石突を右手で握りしめ、左手を添えるようにしてビリヤードのように構える。防御を度外視した攻撃の型だ。
「じゃあカウント3でいくぞ。」
「おう。」
「3,2,1……」
俺は赫槍を握りなおす。
「0!」
「おおおおおっ!」
「うおおおーーっ!」
ガギィィィィン――!
俺と一夏は同時に突進し、一夏は上段からの袈裟切り、俺は全身のバネを使った突きを放つ。
ブーーーッ!
『試合終了。――引き分け!』
試合終了のブザーが鳴り、アリーナ中に試合結果のアナウンスが流れる。ふぅ、目に浮かぶようないい闘いだったな。
「いい闘いだったな、一夏。」
俺は一夏の方を向いて声をかける。
「ああ、引き分けに持ち込めるとは思ってなかったけどな。」
一夏は苦笑しながらも答えた。
「次はオルコットと、か……」
代表候補生相手に三分か……我ながら無茶な条件付きつけてしまった。
「あのセシリア相手に『三分』で大丈夫なのか?」
一夏は気になったのか声をかけてきた。
「正直後悔はしているが、今更 撤回するつもりはない。一夏とは本気で闘ったがコイツの本気はあんなもんじゃないからな。」
今回は一夏と実力でぶつかり合いたかったから機動力などを白式に合わせて落としていたからな。
「ってことは手を抜いていたってことか?」
「いや、機体の性能の差を無くしてただけで、俺は本気だったさ。白式の性能も訓練次第でもっと引き出せるから頑張れよ。」
「結局訓練するしかないのか……」
俺は一夏に別れを告げるとピットへと戻って行った。
『甲斐谷、次の試合は四時間後だ。準備しておけ。お前のピットは先ほどと一緒だ。』
「わかりました。」
ピットに戻った辺りで千冬さんから通信が入る。
◇
「――さて、そろそろ行くか。」
月光のコンソールを閉じてピット・ゲートへと向かう。
「月茂、頑張れよ。」
「ああ、月光の真価を見せてやるよ。」
俺は一夏の声援を受けてアリーナへと向かった。
「お待ちしてましたわ。甲斐谷さん。」
俺がアリーナの規定の位置に行くとオルコットが腰に手を当てたいつもの姿でいた。もう一方の手には大口径ライフルを構えて。
「待たせちまったか? だが、まだ試合時間の前だぞ。」
試合開始までは一分ほどある。
「ふふっ、殿方として女性を待たせるのはどうかと思いますわよ。」
オルコットは今までとは違った笑みを浮かべた。どうやら一夏との一戦で気が変わったようだな。
「そりゃ御忠告どうも。まぁ、淑女の国のお嬢様の忠告なら、今後は気を付けるさ。」
俺は言いながら赫槍を展開して肩にかける。
「あなたも”一夏さん”と一緒で近距離格闘武器ですの? おあいにく様、わたくしは先ほどのような失敗は二度も犯しませんわ。」
≪試合開始一五秒前。≫
会場にアナウンスが響く。
「一夏に格好いいとこ見せたいだろうが、俺も負けるわけにはいかないんでな。」
『な、な、何を仰っていますの!?』
俺はアナウンスを聞いてプライベート・チャネルでオルコットに話しかける。言った途端真っ赤になって否定した。分かりやすいな。
≪試合開始一〇秒前≫
「まぁ、一夏に惚れてるかなんてどうでもいいか。それと、俺のことは名前で呼んでくれて構わない。」
『わ、分かりましたわ。わたくしのことも、ファーストネームで呼んでくださって構いませんわ。』
≪試合開始三秒前≫
「なら、セシリア一つ忠告だ。」
≪二≫
『なんですの?』
≪一≫
「相手の間合いは把握しておくもんだぜ。」
ピーーーッ!
ガンッ キィィィンッ ドォン ガッ パシッ
試合開始のブザーが鳴ると同時に赫槍を手放し両膝、両足のスラスターを最大出力で吹かし宙返りする。その時に赫槍の石突を蹴り一つのビット兵器に向かって飛ばす。
一回転してすぐに背部スラスターの出力を全開にして瞬時加速で飛び、残りのビット兵器の一つの後部スラスターを叩き壊し、蹴り飛ばした赫槍を掴む。
「なっ!? 一瞬でブルー・ティアーズを二機も!?」
「油断大敵ってな。月光のスピードは代表候補生程度には捉えられねえよ。」
瞬時加速を使ったからエネルギーが一割ほど減ったか。思ったより燃費が悪いな、出力調整しておくか。
「まだブルー・ティアーズは二機ありましてよ!」
セシリアが指示するとビット兵器が俺を狙ってレーザーを放ってくる。
「ははっ、さすが代表候補生。狙いが精密だな。」
各部のスラスターを吹かして、ビット兵器とセシリアが撃ってくるライフルのレーザーを曲芸のようにかわしていく。キリンさんとこでやった『掻い潜れ ビームくん』に比べたら砲口も少ねえし、ある程度癖もあるから楽だな。
「その割には躱してますが……」
「これでも対IS戦は二度目だぞ? 正直心臓バクバク。」
軽口をたたきながらも次々と放たれるレーザーを旋回、加減速して避けていく。
◇
『試合開始から二分経ったぞ。甲斐谷、遊んでないで決めるなら決めろ。』
宙返りなどをしてレーザーを避けていると千冬さんから注意された。遊んでるわけではないんだが……
「これでも真剣ですよ。代表候補生との戦いなんて貴重なんで月光に経験積ませたいんですから。」
「月茂さん、本気でいらっしゃってください。」
プライドの高そうなセシリアにあの態度はまずったか。エネルギー残量は……十分だな。
「わかった。最高の技を見せてやるよ。」
赫槍をビリヤードのキューのように構え、バイザーを閉じて視覚補助をオフにする。
「なっ!? その技は一夏さんの時に――」
「見誤るなよ!」
エネルギーを最大にした瞬時加速を使ってセシリアの右後ろにあるビット兵器に向かって突進する。
ドォン!
ビット兵器の爆風を背中に感じながら、背部、腰部のスラスターを最大出力にして右後方やや下よりから四連突きを放つ。
「くっ……ティアーズ!!」
セシリアはすぐに姿勢を立て直して、飛ばされた反対方向、つまり俺の居た方向へミサイルを放つ。
「どこ狙ってんだい、お嬢さん?」
「う、後ろ!? きゃあっ。」
――が、俺はセシリアの後ろから声をかけ、一気に連続突きを放つと、
『試合終了。勝者――甲斐谷 月茂。』
試合終了のブザーが鳴り俺の勝利を告げるアナウンスが鳴り響く。
「わたくしが捉えきれないとは……」
「セシリアの操縦技術も相当だけど、圧倒的に格闘戦の経験が少ないんだろ? 経験を積めば最初のスピードくらいなら捉えられるさ。」
もっとも、展開装甲を使えば簡単にはとらえられないけどな。
「ふふっ、ご助言ありがとうございます。」
セシリアは俺に一礼してからピットの方に帰って行ったので俺もそれに倣って自分のピットへと戻った。
やっと代表決定戦が終わった。
長くなりました~。次話はクラス代表が決まる予定です。
クラス代表決定戦も終わったのでアンケートの方は打ちきらせてもらいます。
ご意見を頂いたディーンさん、デジデジさん、澪刹弥凪さん、叢雲の鞘さん、バルサさん、武御雷参型さん、indexさん、アキさん、泡泡さん、銀閣さん
ありがとうございました。
他のキャラに投票いただいた皆様には申し訳ありませんが、一夏のヒロインは更識姉妹にしてプロットを書いて行きます。