IS - ヴァルキリーの弟 -   作:sata-165

20 / 32
今回は長いです。
クラス対抗戦を終わらせようとした結果5千文字オーバー
それと月茂を活躍させるために一部設定が変更されてますのでご注意ください。


第18話 クラス対抗戦(改)

鈴との模擬戦をしてから数週間、五月の連休も終わり今日はクラス対抗戦の当日。

今日は試合の為に全ての授業が中止になっていてほとんどの生徒、教員、および一部関係者が試合を見る為アリーナ内部の客席は満員だ。

加えてアリーナに入りきらなかった人用に体育館や各教室で試合の内容がリアルタイムで中継されている。

鈴から聞いたところ一夏から謝ってくることも無く賭けを持ちかけたらしい。

で、今は一回戦第一試合の最中、組み合わせは何の因果か鈴VS一夏なんだが……

 

「完全に鈴に主導権握られてるな。」

 

開始直後に鈴が先制攻撃をして、一夏は何とか初撃は防いだんだが、鈴は二本の双天牙月を連結させバトンのように縦横無尽にぶん回して一夏を押し始めた。

一夏はその状況を打開しようと思ったのか距離を取ろうとしたが衝撃砲で牽制された後に強力な衝撃砲をくらって地面に叩きつけられた。

 

『よくかわすじゃない。衝撃砲《龍砲》は砲身も砲弾も目に見えないのが特徴なのに。』

 

オープンチャネルでの会話は会場のスピーカを通して観客席にも流れている。

鈴の言うとおり衝撃砲は空気に対して圧力をかけて、その復元力を利用して砲弾のようにエネルギーを伝える。

砲身も砲弾も空気のようなものなので風のように肉眼では確認できない。

月光ならば視覚補助などの関係で感知、検知、分析能力がかなり高いのである程度の予測、判別が可能だが普通のISのハイパーセンサーでは衝撃砲が発射されてやっと検知できるレベルだ。

その証拠に一夏はまともに被弾はしていないが掠ったり手足の装甲に被弾している。

まぁ、鈴の視線を見れば撃つ場所の見当ぐらいは付くんだけどな。

 

『鈴。』

 

『なによ?』

 

『本気で行くからな。』

 

一夏が鈴を見据えて宣言する。鈴はその雰囲気に呑まれたのか、見惚れたのか動きを止めた。

 

『な、なによ……そんなこと、当たり前じゃない……。とっ、とにかくっ、格の違いってのを見せてあげるわよ!』

 

鈴は気持ちを切り替えられたのか連結した双天牙月をバトンのように一回転させて構えなおす。

対する一夏は加速体勢に入ると一気に加速すると同時に、雪片弐型からエネルギー刃が形成される、零落白夜だ。

 

『うおおおおっ!』

 

ズドオオオオンッ!

 

一夏の攻撃が鈴に当たりそうになった時に会場に轟音が轟くと同時に地震かと思うほど観客席が揺れた。

アリーナの中央には土煙が上がっている、おそらくアレがこの衝撃の原因だろう。

 

― 未確認IS反応を確認

詳細データ……不明

機体名……不明

操縦者……不明

所属……不明     ―

 

土煙の中のモノの情報を月光が分析するがわかったのはソレがISであるということだけ。

 

「ちょっと! なんでドアが開かないのよ!」

 

俺が侵入者について考えていると後ろの方から焦ったような声が聞こえてきたのでそちらに目を向けると避難しようと思ったのか出入り口のドアの所に人だかりができていた。

 

「わりいけど、すこし退いてくれ。」

 

月光に謎のISの監視、分析を任せると人だかりに近づいて声をかける。

するとモーセの海割りのように人だかりが割れてドアへの道ができた。

自分のナリがガラ悪い自覚はあるんだがこの扱いは軽くショックだな。

そんなことを考えていても仕方がないと思ったので俺はドアの近くにある制御パネルを開いて入出力端子を露出させ月光からケーブルを伸ばして接続する。

 

「なるほどな。完全にコントロール権が奪われてるな。」

 

右手に展開したキーボードを少しいじってみたところIS学園のセキュリティのアリーナに関する部分が完全にハッキングされていた。

 

「ま、このぐらいなら問題ないか。」

 

左手にもキーボードを展開して両手の下にそれぞれ一個ずつ、計二個のキーボードを展開する。

本来なら両手の上下、光彩入力、声紋入力なども使いたいが月光に分析をさせているので負担がかからないように二個のキーボードで我慢する。

 

カタタタタタタタタ

 

まずは避難経路と……管制塔から避難指示が出せるようにできれば十分か。

 

パシュッ

 

「織斑先生、通信回線と避難経路は確保したんで避難指示お願いします。」

 

ドアが開くと同時にオープンチャネルで千冬さんに避難指示を出してもらえるように頼む。

 

『わかった。避難指示は任せろ。それで、お前はこの後どうするんだ?』

 

「シールドを破って中に合流します。」

 

『か、甲斐谷君!? いくらなんでも危険――』

 

通信の向こうで山田先生が何かを叫んでいたが無視して回線を切り、まだ避難しきれていない生徒がいるドアから離れた位置まで行き月光と白虎を展開する。

 

「失敗作だと思っていたがこんなとこで役立つとは……」

 

エネルギーを右足だけに集中させて白虎の形態を変化させると右足の脚甲が割れて青白いエネルギー刃を形成する。白虎の形態の一つ、ブレードモードだ。

このエネルギー刃は白式の零落白夜を参考にしたエネルギー無効化性質のものを設計したんだが、出来たものはシールドエネルギーの消費が激しい上にエネルギー無効化能力だけで攻撃力が無いという欠陥品。やはり単一仕様能力をマネするのは簡単じゃないみたいだ。

 

ヒュン

 

アリーナの遮断シールドに蹴りを入れるとその部分のエネルギーが無効化されて裂け目ができる。

エネルギー消費の激しいブレードを格納してシールドの裂け目からアリーナの中に入る……さっきのだけでシールドエネルギーが200も減るなんて、大飯ぐらいにもほどがあるだろ。

 

― 被弾回数……0

コア識別番号(シリアルナンバー)……識別不能

操縦者生体反応……無し             ―

 

コア識別番号が識別不能? 月光の分析能力で識別できないってことは登録されてないコアってことか……そうなると生体反応が無い理由は操縦者がいないってことだな。

不気味な雰囲気を纏っている異形のISがそこにいた。全身装甲(フルスキン)なのは無人であるのを隠すためだとしても、深い灰色の機体は腕に当たる部分が異常に長くつま先よりも下まで伸びている。しかも肩と頭が一体化しているような見た目で首が無い。

異常に長い手の平と肩の部分にはそれぞれビームの発射口が付いていて計4門の砲口が開いている。

 

「アレって本当に人が乗っているのか?」

 

「お、一夏、良い着眼点だな。」

 

「「月茂!?」」

 

空中で静止して話していた二人に近づくと驚かれた。観客席にいた俺がいるんだから当然か。

 

「シールドを無効化して入ってきたんだ。ただ、観客の避難はまだかかりそうだな。」

 

観客席の方に意識を向けるとまだドア付近に人だかりができている。立ち見が出るほど観客席は埋まっていたし仕方ねえか。

 

「それよりも月茂、一夏の着眼点が良いってどういう意味? ISは人が乗らないと絶対に動かないはずでしょ? それなのに――」

 

「非公式な実験だが操縦者を乗せて遠隔操作でISを動かせたって実験データがあるって噂だ。搭乗者が操作しなくても動かすことはできる。それに――」

 

そこで言葉を区切って鈴と一夏の方を向く。

 

「――月光の分析データだとあのISからは生体反応が無い。」

 

「仮に月茂が言ってることが当たってたとして、アレが無人機だとしてアンタは勝てるの?」

 

鈴はまだ納得がいかないといった様子で一夏に尋ねる。いきなり無人のISなんて突飛な考えを信じれる方がおかしいか。

 

「ああ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だしな。」

 

「全力も何もその攻撃事態が当たらないじゃない。」

 

「次は当てる。」

 

「言い切ったわね。じゃあ、そんなこと絶対あり得ないけど、アレが無人機だと仮定して攻めましょうか。」

 

話に注意が言っている二人をよそに俺は無人(仮)ISを注視する。月光が分析した結果からみると二人が会話している時は攻撃していないが油断はできない。ビームはエネルギー質だし白虎のブレードで無効化は出来るか……

 

ギュオオオン

 

「なっ!?」

 

「させっかよっ!」

 

突然ビームを放ってきたことに驚いて反応が遅れた一夏と無人機の間に入って白虎のブレードでビームを無効化させる。

 

「さ、サンキュー月茂。」

 

「ああ、だがさっきので月光のエネルギーはほぼカラだ。もう援護は無理だ。」

 

ただでさえ大飯ぐらいの白虎のブレードで大量のエネルギーを無効化したせいで残りのシールドエネルギーは一桁になっていた。しかも白虎自体がビームの熱で一部損傷していて形態変化すらできない、赫槍に切り替えとくか……

 

「一夏。」

 

「ん?」

 

「どうしたらいい?」

 

「俺が合図したらアイツに向かって衝撃砲を撃ってくれ。最大威力で。」

 

「? いいけど、当たらないわよ?」

 

「いいんだよ、当たらなくても。」

 

当てる必要が無い……なるほど少し無茶な作戦だが今はそれぐらいしかできないか。

 

「じゃあ早速――」

 

一夏が突撃姿勢に入ろうとした時にアリーナのスピーカーから大声が響いた。

 

『一夏ぁっ!』

 

キーン……というハウリングが尾を引く声は箒のものだった。中継室の方に目を向けるとのびている審判と実況の姿があった。

 

『男なら……男なら、そのくらいの敵に勝てなくてなんとする!』

 

― エネルギー反応を確認 ―

 

月光の示した情報を確認すると同時に無人機に視線を向けると両肩の砲口にエネルギーを充填していた。

一夏も気付いてないしヤバいな。今のエネルギーだと加速が間に合わないし、時間が足りない。仕方ないか。

赫槍を右手に持ち、腕を一気に引いて全エネルギーを込めて赫槍を投げる。

 

「間に合えぇぇっ!」

 

ガッ ドゴオオォォン!

 

赫槍は無人機の左肩に当たると溜っていたエネルギーが暴発、右肩の砲口まで連鎖爆発を起こした。

 

「後は任せた。」

 

機体を維持できるだけのエネルギーすらなくなった月光は待機状態になり視覚補助も無くなってしまったので残りは一夏と鈴に任せる。

 

         ☆

 

エネルギーが切れたのか月茂のISが待機状態に戻った。援護は無理だとか言っておきながら相変わらず良い仕事をするな、俺も負けていられないか。

再び無人機へと意識を向けると月茂の攻撃で崩していた体勢を立て直して箒の方を向いていた。

さっきの放送で興味を持ったのかじっとその方向を見つめた後にゆっくりと右手を箒の方向へと向ける。さっきの攻撃で潰れたのは肩の砲口だけ。つまり両手の砲口は健在で、その威力はアリーナの遮断シールドを貫通するほど、そんな威力に中継室が耐えられるはずがない。

 

「鈴、やれ!」

 

「わ、わかったわよ!」

 

俺は加速姿勢に入ると同時に鈴に声をかけると鈴は驚きながらも龍砲の射撃姿勢になる。

そして俺は、その射線上に躍り出る。

 

「ちょ、ちょっと馬鹿! 何してんのよ!? どきなさいよ!」

 

「いいから撃て!」

 

「ああもうっ! どうなっても知らないわよ!」

 

『瞬時加速』は一度外に出したエネルギーを取りこんで圧縮後に放出、そのエネルギーで加速する。

つまり外からエネルギーを取りこむときに別の外部エネルギーを上乗せすることができるということだ、しかもその速度は取りこんだエネルギーに比例する。

俺は背中に衝撃砲の砲弾を浴び骨が軋むのを感じながら加速する。

 

「――オオオッ!」

 

零落白夜を発動して一気に距離を詰めて無人機の右腕を切り落とす。

無人機は痛みを感じないからか切り落とされた右腕を気にもせず左手で白式の胸部を掴む。

 

― 接触面から熱源反応 ―

 

白式の警告表示が出る。どうやら零距離でビームを叩きこむらしい。さっきのでシールドエネルギーもほぼなくなったしこのまま食らえば無事ではいられないだろう。

 

「「一夏っ!」」

 

鈴と箒の叫びが聞こえた――大丈夫だ、考えがあるって言ったろ?

 

「……狙いは?」

 

『完璧ですわ!』

 

さっきの攻撃で破壊した遮断シールドからブルー・ティアーズの四機同時狙撃が零落白夜でシールドを消された無人機を撃ち抜く。

エネルギーが尽きたのであろう無人機は重力に従って地面に落ちる。

 

『ギリギリのタイミングでしたわ。』

 

「セシリアならやれると思っていたさ。」

 

『そ、そうですの……。……。とっ、当然ですわね! 何せわたくしはセシリア・オルコット。イギリス代表候補生なのですから!』

 

なんでセシリアはこんなにうろたえてるんだ?

 

「ふぅ。何にしてもこれで終わ――」

 

― 敵ISび再起動を確認 警告 ロックされてます ―

 

「!?」

 

片方だけ残った左腕。地面に横たわった無人機は最後の力でそれを俺の方に向けていた。

残り少ない白式のエネルギーで零落白夜を発動させてそれに立ち向かう。

 

         ☆

 

「はぁ~。こりゃ修復しないと無理だな。」

 

爆発の衝撃で穂先が砕けて三分の一ほどの長さになってしまった赫槍を拾いながら呟く。

 

ドズゥゥン

 

近くで何かが落ちる音と共に地震のように地面が震えた。どうやら一夏が無人機を堕としたようだな。

月光のエネルギーもいくらか回復したので消費を押さえたモードで視覚補助を入れる。

省エネなので視界にノイズもありモノクロで画質も悪い。

音がした方に視線を向けると右腕を失った無人機が横たわっていた。

 

「終わったようだな。」

 

俺が無人機を見ながら一息ついていると無人機の目が光りゆっくりと左手を空中に居る一夏へと向けた。

どこにそんな(エネルギー)が残ってるんだよ?

 

「いい加減諦めろよっ!」

 

俺は渾身の力で赫槍の残骸を無人機の左手に投げつける。正直言うと人間の力じゃどうにもならないのは分かっているが何もしないで黙ってるわけにもいかない。

 

案の定、残骸は当たっただけで効果は無く、ビームは一夏に直撃、……せずに零落白夜によって無効化されると、そのまま突っ込んで無人機の左手を切り落とした。

 

「今度こそ終わりだな……」

 

無人機の活動が完全に停止したことを確認して呟く。

 

「「「一夏っ(一夏さん)!?」」」

 

無人機を停止させると同時に白式が解除されて、一夏が地面に倒れる。

 

「大丈夫だ。バイタルは安定してるし、多分ダメージと疲労で防衛本能が働いたんだろ。」

 

一夏の心配をする箒達を安心させるために、そう告げると一夏を担いで保健室へと向かった。




この話を書きあげた時のやりきった感が半端なかったです。

感想・コメント・指摘・質問・誤字報告などあったらお気軽にどうぞ。
今日は時間が無いので後で前書き、後書きを付け足すかもしれません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。