IS - ヴァルキリーの弟 -   作:sata-165

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う~ん、なかなか話が進まない。



第21話 疾走と着替え

「織斑、甲斐谷。デュノアの面倒を見てやれ。同じ男だろう。」

 

当然っちゃ当然か。

 

「君たちが織斑君と甲斐谷君? 初めまして。僕は――」

 

「自己紹介は後だ。女子が着替え始まるからさっさと行くぞ。」

 

「そういうことだ。早く行くぞ。」

 

俺が先に教室を出ると、一夏がデュノアの手を掴んだ状態で後についてきた。

 

「とりあえず男子は空いてるアリーナ更衣室で着替え。これから実習のたびにこの移動だから、早めに慣れてくれ。」

 

「今日は第2アリーナの更衣室だが、その日によって違うから気をつけろよ。女子の着替えに遭遇とかシャレにならねえからな。」

 

一夏の説明に補足する。女子率99%以上のこの学園でそんなことしたら、3年間を無事に過ごせるとは思えない。

 

「う、うん……」

 

ん? 少し様子が変だな。どうしたんだ?

 

「トイレか?」

 

「トイ……っ違うよ!」

 

「そうか。それは何より。」

 

ひとまず1階へと降りる。ここから降りるのが最短ルートだからな。

 

「あぁっ! 転校生発見!」

 

「しかも織斑君と甲斐谷君も一緒よ!」

 

やっぱ転校生、しかも男子ってなったら質問攻めにあうよな。ここで捕まれば授業に遅刻して、千冬さんの特別カリキュラムを受けなきゃいけなくなるな。少し疲れるが遅刻するよりましか。俺は視覚補助を切って聴覚に意識を集中する。

声の方向、距離、声の種類。

 

「デュノア、こっちだ! 一夏、ちゃんと付いてこいよ!」

 

俺はデュノアの腕を掴んでアリーナとは違った方向へ走る。……腕も細いな。

 

「お、おう。」

 

「えっ? アリーナは向こうじゃないの!?」

 

「そっちはかなりの人数がいるんだよ。少し遠回りになるがこっちの方が早い。」

 

さっき聞いた感じだと30人近くいるだろう。そこを抜けようとしたらギリになるからな。

 

「そ、そうなの?」

 

「まあ信じなくてもいいが、遅刻すると面倒だからな。」

 

俺はデュノアの手を引きながらアリーナへと向かった。

 

         ◇

 

「ふぅ~到着。7分前か、わりと時間があるな。」

 

視覚補助を入れながら更衣室の中に入る。

 

「あ、あの……甲斐谷君……」

 

「っと、すまん。」

 

デュノアが申し訳なさそうに俺に握られてた手を見ながら、声をかけてきたので慌てて手を離す。

 

「時間もあるし軽く自己紹介しとくか。俺は甲斐谷月茂、気軽に名前で呼んでくれて構わない。」

 

「俺は織斑一夏、一夏って呼んでくれ。月茂は見た目は怖いけどいい奴だから、俺共々仲良くしてくれ。」

 

「うん。よろしくね、一夏、月茂。僕の事もシャルルでいいよ。」

 

「わかった。よろしくな、シャルル。」

 

俺と一夏はシャルルと軽く握手をする。

 

「っと。そろそろ時間に余裕が無くなってきたな。着替えちまおうぜ。」

 

「そうだな。時間前についてたのに話してて遅刻とか馬鹿な真似したくねえからな。」

 

少し時間に余裕が無かったのでロッカーの方を向いて、上着のボタンを一気に外して、中のTシャツも脱ぎ捨てた。

 

「わぁっ!?」

 

「?」

 

「どうかしたか?」

 

突然声を上げたシャルルに背中越しに声をかける。何か見つけたのか?

 

「荷物でも忘れたのか? って、なんで着替えないんだ? 早く着替えないと遅れるぞ。シャルルは知らないのかもしれないが、うちの担任はそりゃあ時間にうるさい人で――」

 

一夏はシャルルの方を見たようだな。……それとも男の着替えに興味あるのか?

 

「う、うんっ? き、着替えるよ? でも、その、あっち向いてて……ね?」

 

なんか様子が変だが気にしても仕方ねえし、さっさと着替えを済ませるか。今日から本格的な実戦って言っていたが何させられんだ?

 

「これ、着替えるときに裸っていうのがなんか着づらいんだよなぁ。引っかかって。」

 

着替え終えたので思考を切り替えて、振り返ると一夏のそんな台詞が聞こえてきた。何の話してたんだ?

 

「ひ、引っかかって?」

 

「おう。」

 

「…………」

 

「おい、一夏。いきなりの下ネタでシャルルが反応に困ってんだろうが。」

 

一夏の発言で赤くなってしまったシャルルに助け船を出す。

 

「す、スマン。シャルル。」

 

「そ、そんなに気にしなくていいよ。」

 

「一夏、シャルル。時間があんまねえし、そろそろ行くぞ。」

 

「う、うん。」

 

「ちょっと待てって……おしっ。」

 

俺とシャルルに少し遅れて、更衣室から一夏が出てきた。

 

「月茂のもそうだけどシャルルのスーツも着やすそうだな。どこのやつ?」

 

ちなみに俺のISスーツはタンクトップと短パンを合わせた感じだ。

 

「あ、うん。デュノア社製のオリジナルだよ。ベースはファランクスだけど、ほとんどフルオーダー品。」

 

「デュノア社っつーとラファールの?」

 

確かラファールのシェアは世界3位だったか?

 

「うん。そうだよ。一応フランスでは一番大きいIS関連の企業だと思う。」

 

「デュノア? デュノアってどこかで聞いたような……」

 

「シャルルのファミリーネームだろ。フルオーダーってことは関係者か?」

 

「うん。僕の家だよ。父がね、社長をしてるんだ。」

 

「へえ! じゃあシャルルって社長の息子なのか。道理でなあ。」

 

「うん? 道理でって?」

 

「いや、なんつうか気品っていうか、いいところの育ち! って感じがするじゃん。納得したわ。」

 

「いいところ……ね。」

 

シャルルが視線をそらす。声のトーンも少し下がったし家族の話は禁句なのか?

 

「それより一夏や月茂の方がすごいよ。あの織斑千冬さんや甲斐谷星華さんの弟だなんて。」

 

「まぁ俺らは普通の男子高校生だけどな。星姉たちと比べられたら足元どころじゃねえよ。」

 

「確かにな。千冬姉たちには敵わねえ。」

 

「そ、そんなにすごいの?」

 

「ああ、千冬姉と星華さんは人間超えてるぞ。」

 

人間超えてるって……超えてるな。モンドグロッソの部門優勝者(ヴァルキリー)は、ほとんどそのレベルの強さ持ってるってのが信じられないけど。

 

「そ、そうなんだ。あはは……」

 

「そんなことより、そろそろ時間がヤベエからさっさと行こうぜ。」

 

苦笑しているシャルルと一夏に声をかける。月光で時間を見たところ授業まで2分、ここから第2アリーナだと少し余裕がない。

 

「お、おう。」

 

「う、うん。」

 

俺らは少し小走りで第2アリーナへと向かった。

 

 

 




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