話を早く進めたいんですが、なかなか思ったように話が進みません。
就活も不採用ばっかで、鬱になりそうです。
「こんな短時間で、もう障害物に当たらないなんてすげ~な。」
第六アリーナでの特訓を始めておよそ30分、シャルルは3秒ごとにランダムで配置の変わる障害物を躱せるようになっていた。飲み込みが早いというか、順応性が高いって感じだな。
「僕のリヴァイブは
(もともとリヴァイブは第二世代ながら初期第三世代に劣らないスペック、それが専用機仕様にカスタマイズされてんだから当然か。
普通の量産機ならカスタマイズしたらピーキーな仕様になるが、リヴァイブの汎用性ならそれも抑えられるしな。)
「オレはこの後、用事があるんだが、シャルルはどうする?」
生徒会に顔出すのと、差し入れを用意するのを考えると、そろそろ行かなくちゃいけねえからな。
「えっと……僕はもう少し訓練していくよ。」
「そうか。このプログラムは使うか?」
「ううん。微調整とかをするだけだからいらないよ。ありがとうね。」
「あ~そうだ。遅くなるかもしれねえから、シャワー使いたかったら勝手に使ってくれ。」
端末を操作してプログラムを終了させ、シャルルに一声かけてからアリーナを後にする。
◇
「失礼しま~す。」
調理室で用意しといた差し入れを持って生徒会室に入ると、楯無さんと虚先輩が机に向かって作業をしていて、……布仏は応接用のテーブルによだれを垂らして寝ていた。
「あら? 月茂くん、どうしたの?」
「しばらく差し入れ持ってきてなかったんで、作ってきたんですよ。」
ここに来た理由を尋ねてきた楯無さんに持ってきた紙袋を掲げながら返事をする。
「ちょうどいいからお茶にしましょ。虚ちゃんお願い。」
「わかりました、会長。……ほら。本音、起きなさい。」
「あれ? もしかして仕事の邪魔でしたか?」
作業していたと思われる書類を置いて、席を立った二人を見て声をかける。
「ちょうど今終わったから問題ないわよ。虚ちゃんもあのくらいなら片付いたでしょ?」
「ええ、私が受け持った分は処理いたしました。」
(仕事を手伝うために入れられたが、オレが手伝う必要あるのか?)
そんなことを考えながらソファに腰掛け紙袋の中から取り出したタッパーの蓋をあける。中に入っていたのは
「コレって、フィナンシェよね? 月茂くんってフランス菓子も作れるの?」
フランスの代表的な金塊型の焼き菓子、フィナンシェだ。
「コレを作ったのは初めてですけど、レシピがあればだいたいは作れますよ。あ、味見はしたんで味は心配ないはずです。」
『フランスの菓子』で検索して最初に出てきたのがこれだったからな。
「さくさくで、おいし~よ~。」
「甲斐谷くんの作るお菓子は優しい味ですね。」
「いっそのことお菓子職人でも目指せばいいんじゃない?」
「はははっ、ISに関わってなかったらそれもアリだったかもしれませんね。」
楯無さんの冗談を笑って受け流す。もしそんなことをすれば、IS委員会やらなんやらが黙ってないだろうし面倒な事になるのは予想できる。
「そう言えば、月茂くん、本音ちゃん。」
楯無さんが少し真面目な顔になってオレと布仏に声をかけてきた。
「ラウラ・ボーデヴィッヒちゃんとシャルル・デュノアちゃんの様子はどう?」
(シャルル・デュノア『ちゃん』?)
「シャルルは問題ないですけど、ボーデヴィッヒは『馴れ合うつもりはない』って感じで浮いてますね。」
「いきなり~、おりむ~をビンタしてました~。」
「織斑くんが胸でも触ったの?」
布仏の言葉に真面目な顔で聞き返す楯無さん。
(この人の中で一夏はどう思われてんだ? まぁ
「いや、一方的に因縁吹っ掛けてきた、って感じでしたね。『貴様があの人の弟であるなど、認めるものか。』なんて言ってましたし……」
「ふ~ん……『認めない』か……」
最後の方は沈んだ声で呟いていたが、この人も何かワケありなのかね。
(ひとり言のようだし、ヘタに首突っ込むのは止めておくか。)
「二人ともありがとうね、参考になったわ。」
楯無さんはこの話はこれで終わりといった様子で紅茶を口にしたので、追求する事も無く虚先輩の入れた紅茶を飲んだ。
◇
「結局何もしなかったな。」
オレが行く前に仕事は片付いていたらしく、お茶を飲んだだけで終わり、今は寮の自室へと向かってる。
(しかし、なんでオレや一夏は『くん』でシャルルは『ちゃん』なんだ?)
寮の廊下を歩きながら何の気なしに先程の楯無さんの発言を思い出し、その理由を考える。
(確かにシャルルは中性的ってか、女みたいな感じはあるが、それだけじゃない気が済んだよな~。)
根拠なしの100%勘だが、何か理由があってそう呼んでるような気がする。
「たっだいま~。」
「えっ……!?」
考え事をしながら歩いていたら自室に着いたので、鍵を開け中に入ったら目の前にバスタオルを巻いた女子がいた。女子と分かった理由は簡単だ、胸に丸みを帯びた膨らみがある。どう鍛えたってあんな風にはならん。
くだんの女子はボディーソープを片手に驚きで固まってしまっている。
(そう言えばシャルルがボディーソープが切れたって言ってたな~。)
「すまん!」
現実逃避してる場合じゃないと考え、すぐに頭を下げ部屋から出てドアを閉める。
(ここってオレの部屋で間違いないよな?)
ゴシゴシ パァン
月光を外し目をこすって、頬を軽く叩いて部屋番号を再確認する。微妙な時間のため周りに他の生徒がいなかったのは幸運だな。
(1027……間違いないな。つーことはあの女子はシャルルなのか?)
冷静に考えてみると顔立ちはほぼ一緒だし、身長もあのぐらい、髪はブロンドでアメジストの瞳。
(むしろ、シャルルじゃないって言う方が難しいんだよな……性別以外は。)
その身体的特徴を考えると彼女がシャルルって考えるのが妥当だろう。問題は性別だけだ。
コンコンコン
「入っていいか?」
考えても仕方ないと結論付けて部屋をノックする。
「……ど、どうぞ。」
中から入室の許可が出たのでドアを開けて入ると、さっきの女子がシャワールームから怯えた様子で顔だけ出してこちらを見ていた。やっぱどう見てもシャルルだな。
「ふぅ、シャワーが途中ならちゃんと浴びて髪乾かせよ。この時期でも風邪ひくぞ。」
髪が濡れたままの様子を見て、急に肩肘張ってた自分が馬鹿らしく思えて、いつもの様に声をかける。
「う、うん……」
シャワールームのドアが閉まったのを確認してから、ベッドの所へ行き腰掛ける。
(シャワー浴びている間に少し考えをまとめるか……)
ベッドに寝転がり天井を見上げてシャルルが男として入ってきた理由を考える。
(楯無さんが『ちゃん』付けで呼んでいた理由はこの事を知っていたからだろうな。あと千冬さんも気付いてるだろうな。
男として入ってきた理由はデュノア社が経営不振なのと関係アリか?)
IS関連のニュースでデュノア社の経営不振ってのもあったし、『父が社長をしている』とも言っていた。
(娘にこんなことさせるってのは気に障るが今は置いておくか。)
親がそんなことをさせることには腹が立つが、居ない相手に怒っていても仕方ない。
(代表候補生の事を考えると、デュノア社だけじゃなく、フランス政府も関わってるんだろう。
学園上層部にも関わっている人物はいるんだろうな。)
代表候補生なのに身体検査をしないのは考えられない、男ってなればなおさらだ。
学園入学の際も特に引っ掛かってないとなると、IS学園に顔の効く人間がいるって考えられる。
プルルルル プルルルル
『月茂か? どうした。』
考えてると少し気になる事があったのである人物に電話をする。まだシャワーの音が聞こえるからシャルルが来るまで余裕はある。
「馬場さん、実は調べてもらいたい事があるんですが……」
馬場信輝さん、甲陽流忍術の祖である馬場信春の子孫で、オレに忍術を教えてくれた人だ。現代で忍者の需要なんかないのでその技や諜報技術を利用して、護衛や探偵まがいの事をしている。
今回は探偵の依頼として電話をしている。
『なんだ、男だと思ってたやつが女だったりしたのか?』
「えぇ、まあ……そんなところです。」
余り時間が無いので、何故知ってるかとか突っ込まずに話を続ける。
「それで……デュノア社と、社長について調べてもらいたいんです。それと、社長の個人的な連絡先もお願いします。」
いくら学園に顔が効くって言っても、そんな簡単に入れるとは思えないし、なんかきな臭い感じがする。
それに、そんな父親には直接文句を言ってやりたい。
『それは急ぎの用件か?』
「はい。出来るだけ早くお願いします。」
『…………一週間ほど俺の仕事の代わりをするのが依頼料だ。』
馬場さんは少し考えた後に、条件を言ってきた。
(千冬さんに頼んで休みを貰うしかないな。)
「わかりました。なんとかします。」
『依頼のスケジュールはメールで送る。そんな面倒な仕事じゃないから3,4日あればなんとかなるだろ。連絡先は分かり次第伝える。』
今回はシャルロットとの初の邂逅です、原作より早めになりました。
それと、月茂の師匠に関しては数人いますが、馬場さんはその一人です。
次回の更新はいつになるか分かりませんが、これからシャルル救っていく予定です。