IS - ヴァルキリーの弟 -   作:sata-165

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やっと、シャルのことに関わっていきます。それと、月茂の強さの核も。




第28話 彼女の真実《トゥルース・オブ・ハー》

「それじゃ、お願いします。」

 

ピッ

 

ガチャ……

 

電話を切り一息ついて、ベッドに寝転がったところでシャワールームのドアが気持ち控えめに開ける音が響いた。

 

「あ、上がったよ……」

 

「ん、ああ。」

 

シャルルに声をかけられ、上体を上げると、いつもシャルルが着ているスポーツジャージを着ている女子がいた。

 

(やっぱ、あの女子=シャルルだったのか。)

 

「ふぅ……茶でも淹れるからその辺に座ってろ。」

 

緊張した様子のシャルルを見かねて、茶でも淹れるかと立ちあがると、シャルルがビクッと肩を震わせたのでオレは少し苦笑しながらミニキッチンへ向かう。

 

「……………………」

 

「……………………」

 

電気ケトルのスイッチを入れてから茶を淹れるまでのわずかな時間が、沈黙のせいか嫌に長く感じる。

 

「ほれ、できたぞ。」

 

「あ、ありがと――きゃっ」

 

「っと、あぶねえな。」

 

湯呑を渡す時に指が触れあいシャルルが手を引っ込め、落としそうになった湯呑を慌てて握り直す。

 

「別に尋問しようってわけじゃねえんだから、もう少し気楽になれ。」

 

「う、うん。」

 

緊張からか体がこわばってるシャルルに改めて湯呑を渡す。

 

「……………………」

 

「……………………」

 

(何から話せばいいんだ?)

 

茶を飲んで喉を潤したものの、何から話すべきかがわからん。

 

「……何も聞かないの?」

 

オレが黙っていたのが気になったのかシャルルの方から話しかけてきた。

 

「あ~、何から話すべきか迷っててな。」

 

「もうバレちゃったことだから何でも話すよ。」

 

「そうか。……なら順番に聞いていくか。」

 

どこか諦めている様子のシャルルを見て、心が痛むが情報を聞き出すことにする。

 

「まず、ここに来た理由は、オレと一夏、自身と機体の情報を取る事か?」

 

IS学園に来る理由として、『専用機持ちは、干渉されずに機体データを取ること。国や企業に所属する人間としては、他国・他企業の機体情報を得ること、または他国の人間とのコネを作ること。』がある。

 

「そこまで分かってるんだね。」

 

「確証は無かったけどな。IS学園に来る理由は主に三つ。専用機の機体データの収集、所属の異なる機体の情報の入手、所属の異なる人間と親しくなること。」

 

オレは指を立てながら説明する。

 

「この中で機体データの収集は、量産機にもなってる第二世代の機体ってことで論外。」

 

いくらカスタム機と言っても、さほど重要ではない。

 

「残りの二つは、世界初の男性操縦者のオレや一夏のことを考えれば、かなりの需要がある。しかも、わざわざ男装してくるってことは、同性なら近づきやすいってことだろ?」

 

「すごい推理力だね。全部当たっているよ。」

 

「まぁ、いろいろと鍛えられたからな。」

 

少し呆れた様子のシャルルに、苦笑しながら返す。忍術と体術とかで馬場さんとこで1年は修行して、さんざん扱かれたからな。

 

「次の質問だが、お前をここに送ったのはフランス政府か、それともデュノア社か、どっちだ?」

 

コレに関しては情報が無いので予想がつかん。経営不振のデュノア社の線もあるが、第三世代に関して目処の立ってないフランス政府の線もある。

 

「デュノア社の方だよ。社長に直接命令されたんだ。」

 

「社長っつーと、お前の父親だよな? なんでそんなこと――」

 

「僕はね、愛人の子なんだよ。」

 

馬場さんの手伝いで、浮気調査やらしてるから、その辺の話はある程度分かる。特に権力者で出世欲が満たされた人間なんかに多い。

 

「引き取られたのが二年前。ちょうどお母さんが亡くなった後にね、デュノア社の人が来たの。その後、いろいろと検査をするうちにIS適性が高い事が分かって非公式なテストパイロットになったんだ。」

 

シャルルは感情を押し殺したような、抑揚のない声で話していく。話を聞く限り、唯一の肉親が亡くなった後に悲しむ間もなく道具のように扱われた、その辛さはオレが味わった『両親を失う辛さ』を遥かに超えるだろう。

だからこそ、オレは話を聞くことに徹した。

 

「父にあったのは二回、会話は数回くらいかな。普段は別邸で暮らしてるんだけど、一度だけ本邸に呼ばれてね。あのときはひどかったなぁ。

本妻の人に殴られたよ。『泥棒猫の娘が!』ってね。参るよね。母さんもちょっとくらい教えてくれたら、あんなに戸惑わなかったのに。」

 

あはは、と乾いた声で笑うシャルルを見て何もできない自分に腹が立った。

 

「父親とサシで話した事はあるのか?」

 

ただ、父親の対応に疑問が湧いたので質問をする。普通に道具として扱ってるんだったら、別邸を宛がうことに疑問が残る。どんな扱いだったかは知らないが、いまいちピンとこない。

 

「無いよ。二回のうち一回はさっきも言ったけど、本妻の人がいたし、もう一回も本社で警護の人がいたからね。」

 

(なるほど。つまり、脅されてそう振る舞ってた可能性もアリか……。これは馬場さんの調査結果次第だな。)

 

「その後はデュノア社の経営不振で、世間へのアピールとオレと一夏のデータ取りで、男装をして入るよう言われたわけか。」

 

「うん。僕の話はこんなところかな。でも、月茂にバレちゃったし、僕は本国に呼び戻されて、デュノア社は潰れるか、他企業の傘下に入るだろうね。」

 

シャルルの顔はスッキリとしたような顔をしてるが、隠し事が無くなったから、それが理由だろうな。

 

「なんだか話したら楽になったよ。聞いてくれてありがとう。それと、今までウソをついていてゴメン。」

 

深々と頭を下げるシャルル、コイツの中ではこれで終わりだと思っているんだろうな。

 

「いや、嘘については謝る必要はねえよ。『騙される方が悪い』って師匠にも言われてるからな。……それと勝手に話を終わらせんじゃねえ。」

 

――だが、オレはそんな結末は認めねえ。

 

「性別の事はオレが黙ってりゃ問題ないし、何よりお前はIS学園の生徒だ。」

 

「え……?」

 

「IS学園の生徒はどこにも属さないうえに、法律だろうとなんだろうと本人の同意がなきゃ意味をなさない。つまり、ここを卒業するまでは自由がある。」

 

オレの言葉の意図が分からない様子のシャルルに、特記事項に明記されている内容を要約して説明をする。

 

「でも、性別を偽っていた事が分かったら退学になるかも――」

 

「普通に考えてレアケースの男性操縦者を細かい検査しないで入学させてる事を考えれば、誰か権力者が一枚噛んでいる。そんな人間がいるのに簡単に退学にはされねえよ。」

 

入学させる事ができる人間なら、意味のない退学を取り消すくらいなら出来るだろう。

 

「まぁ、女だと知ってて泳がせてる人間もいるだろうな。」

 

「え!?」

 

「千冬さんと生徒会長だよ。千冬さんの場合、勘づいてるだろうし、生徒会長はお前の事を『ちゃん』付けで呼んでたからな。」

 

あの世界最強(ブリュンヒルデ)を簡単に騙せるとは思えないし、調べればボロが出てきそうだからな。

 

「月茂は生徒会長と関わりがあるの?」

 

「あ~、言ってなかったが、一応、生徒会庶務だからな。」

 

「そうなんだ。……でも、そんな人たちにバレてるならどうしようもないね。やっぱり牢屋行きかな。」

 

さっきまで、わずかな希望が見えたせいか、余計に落ち込むシャルル。

 

「おいおい、そんぐらいで諦めんなよ。千冬さんの方は事情を話せば何とかなるだろうし、生徒会長の方もなんとか交渉してやるよ。」

 

「ねえ、月茂。なんで僕の為にそこまでしてくれるの? 昨日会った人間の為になんで!?」

 

「なんでって、フランスじゃ困ってる人間を見捨てるのか?」

 

正直に話すのはハズいので、おどけた様子で誤魔化すが――

 

「困っている人を助けるのは分かるけど、限度があるよ!」

 

(誤魔化せねえか……、仕方ねえ正直に話すか。どうも、シャルルは人の厚意に猜疑的になってるようだな。)

 

「ふぅ……、オレはな、シャルル。両親の死を目の当たりにしたんだよ。だからこそ、親を失う辛さってのは分かる。」

 

「あ……」

 

資料で知っていたのか、急にシャルルが申し訳なさそうな顔になる。

 

「その……ゴメン。」

 

「気にすんな。オレの場合は星姉がいたし、お前の辛さとは比べ物にならないのはわかる。」

 

代わりにはならないが、心の傷は早く治る。そういったものが無い辛さは想像出来るものじゃないだろう。

 

「だからオレは些細なものであろうと、自分と繋がりのある人間にできるだけその辛さを味わってほしくないんだ。」

 

今でこそ、こう考えているが、事故の直後は周りに当たり散らしていた。

 

「そのために力も付けたし、役立つ知識も身に付けた。……会ったのが昨日だからって、そんなのは関係ねえ! オレはダチを助けるんならなんだってしてやる!」

 

話しているうちに無意識に力が入っていたのか、持ってた湯呑が割れたが気にせずに続ける。

 

「これが、お前を助ける一番の理由だ。まぁ、結局、自己満足だし何言ってんだ、ってとこもあるけどな。」

 

オレは自嘲しながら割れた湯呑の破片を拾う。頭に血が上っていて何言ったか覚えてねえし、支離滅裂な事を言っていた気がする。

 

「ここまで言っといてなんだが、決めるのはお前自身、自分の意見で決めてくれ。別に急ぐことじゃねえが、先に千冬さんと生徒会長の方はオレから話は通しておく。」

 

『考える前に退学』ってなったらシャレじゃすまねえから根回しは重要だ。

 

「うん、そうするよ。ありがとうね、月茂。」

 

「気にすんな。しょせん自己満足、自分の為だからな。」

 

面と向かって礼を言われた恥ずかしさから、顔を逸らして返事をする。仕事の件もあるし、明日にでも千冬さんに話に行くか。

 




月茂が力を求めた理由は『過去の経験を繰り返さない』ためです。
その目標の為、たった3年でかなり鍛えあげました。

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