IS - ヴァルキリーの弟 -   作:sata-165

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なかなか話が進まない。
第3話目です。どうぞお読みください。


第3話 休み時間と二時間目

「しかし、この視線はキツイな。」

 

一時間目のIS基礎理論授業が終わり休み時間になると隣の席の親友が話しかけてきた。

 

「確かに、この手の視線には慣れているがこれだけの視線が集まるとな……」

 

俺も一夏の意見には賛成だ。現在廊下には他クラスの女子と二、三年の先輩が詰めかけている。ただIS学園にいる生徒はほとんどが女子校からこの学園に来ているので男子の俺達に話しかけようとはしてこない。クラスの女子も同様で『あなた話しかけなさいよ。』とか『まさか抜け駆けする気じゃないでしょうね。』などと言う声がかすかに聞こえる。

 

「そういや、星華さんの居場所は月茂も知らないのか?」

 

一夏が思い出したかのように聞いてきた。星姉が失踪したのは転校してからだし一夏に話した事は無かったな。

 

「仕送りは世界中から送られてくるからさっぱりわからねぇよ。」

 

「そうか。心配はしてないのか?」

 

「気にはなるが仕送りも送られてくるし、心配はしてねぇよ。第一あの星姉だぞ? 心配するだけ無駄だ。」

 

「言われてみればそうだな。あの3人の中で唯一まともだからな。」

 

「……ちょっといいか?」

 

俺と一夏が話していると、女子が話しかけてきた。女子同士のけん制に競り勝ったのかとも思ったが、声を聞いて違うのが分かった。さっき聞いた幼馴染の声だからな。

 

「……箒?」

 

「………………」

 

一夏は目の前に現れた幼馴染に目を丸くしていて、対する箒は一夏に名前を呼ばれて一夏を睨んだ。一夏に名前を呼ばれて嬉しいのを隠そうとするからああなるんだよな。一夏に用がありそうだし一夏を押しつければいいか。

 

「俺はもう話したし、どうぞご自由に~」

 

「待て月茂。お前も来い。」

 

俺は一夏を箒に押しつけようとしたが捕まってしまった。

 

「廊下でいいか?」

 

箒は俺達の意見も訊かずに俺たちに背を向ける。

 

「早くしろ。」

 

「お、おう。」

 

「へいへい。」

 

ツカツカと廊下へと出ていく箒に俺らも従う。箒に気圧されたのか廊下にいた女子も道を開ける。と言っても俺達の会話に聞き耳を立てていて俺らを中心に輪ができる。

 

「そういえば。」

 

「何だ?」

 

一夏が何か思い出したかのように箒に話しかける。ってか箒は呼び出して話さないって何この新感覚。

 

「去年、剣道の全国大会で優勝したってな。おめでとう。」

 

「一昨年に続いて二連覇なんてすげえな。」

 

「……………………」

 

箒は口をへの字にして頬を赤くした。嬉しさや恥ずかしさを押さえてるんだろうな。

 

「な、なんでそんなこと知ってるんだ。」

 

「なんでって、新聞で見たし……」

 

「ネットのニュースにも載ってたからな。」

 

「な、なんで新聞やニュースなんか見てるんだっ。」

 

俺らには情報を得る自由すらないようだ。

 

「あー、あと」

 

「な、何だ!?」

 

「箒、そう睨まれると話しづらいぞ。」

 

「あ、いや……」

 

俺に注意されてバツが悪そうになる箒。

 

「久しぶり箒。六年ぶりだけど、すぐに箒だって分かったぞ。」

 

「え……」

 

「ほら、髪型一緒だし。」

 

一夏は自分の頭を指しながら言うと箒は自分のポニーテールをいじりだした。さっきから俺が空気な気がするがなんで俺まで呼ばれたんだ? 余計な事言うと箒の機嫌を損ねるし黙ってるか。

 

「よ、よくも覚えているものだな」

 

「いや、忘れないだろ、幼馴染のことぐらい。」

 

またコイツは余計な事を言いやがって。

 

「………………」

 

案の定 一夏は箒に睨まれた。

 

キーンコーンカーンコーン。

 

二時間目を告げるチャイムで、さっきまで俺らを遠巻きに見ていた包囲網は瓦解し自分のクラスへと戻って行く。

 

「俺達も戻ろうぜ。」

 

「わ、わかっている。」

 

一夏に促されスタスタと歩き出す箒。やはり、俺らを待つつもりは無いらしい。

 

「…………」

 

再び箒は一夏を睨む。余計な事を考えたんだろうな。箒はその辺の勘が鋭いし。っとチャイムが鳴っているし俺も自分の席に着くか。

 

パアンッ!

 

俺が席に着くと教室の入り口から破裂音が響いてきた。そちらに目を向けると一夏と出席簿を振り下ろした姿の千冬さんがいた。

 

「とっとと席に着け、織斑。」

 

「……ご指導ありがとうございます、織斑先生。」

 

一夏は頭を押さえながら席に着いた。ぼーっとしてる方が悪いな。

 

        ◇

 

「――であるからして、ISの基本的な運用は現時点で国家の認証が必要であり、枠内を逸脱したIS運用をした場合は、刑法によって罰せられ――」

 

すらすらと教科書を読んでいく山田先生。横では一夏が頭を抱えている、参考書を見てないし仕方ないか。俺は既知の事柄なので視覚補助をオフにして話だけを聞く。

 

「織斑くん、何かわからないところがありますか?」

 

一夏の様子に気づいたのか、山田先生がわざわざ訊く。

 

「あ、えっと……」

 

一夏は一旦分からない事を確認してるのか言い淀んだ。

 

「わからないところがあったら訊いてくださいね。なにせ私は先生ですから。」

 

自信満々に言い切る山田先生。たぶんその自信も無くなるな。

 

「先生!」

 

「はい、織斑くん!」

 

やる気に満ちた返事。この先生はいい先生なんだな。

 

「ほとんど全部わかりません。」

 

「え……。ぜ、全部、ですか……?」

 

わかりやすく困った感を出す山田先生。さっきまでのやる気もどこへやら。

 

「え、えっと……織斑くん以外で、今の段階でわからない人ってどれくらいいますか?」

 

挙手を促す山田先生だが手を挙げるものはいない。

 

「えっと……甲斐谷くんは大丈夫ですか?」

 

男だからか俺に振ってくる山田先生。

 

「隣の馬鹿と違って、ちゃんと参考書読んでるんで問題ないです。」

 

俺がそういうと教室の隅にいた千冬さんが出てきた。

 

「ISはその機動性、攻撃力、制圧力と過去の兵器をはるかに凌ぐ。そういった『兵器』を深く知らずに扱えば必ず事故が起こる。そうしないための基礎知識と訓練だ。理解ができなくても覚えろ。そして守れ。規則とはそういうものだ。」

 

『事故』……か。あの一件も公には事故扱いなんだよな。

ISのコアは核燃料並みのエネルギーを秘めているし、単純な力に関しても車を軽々と投げられる力がある。それが暴走したら被害も甚大だ。

 

「……貴様、『自分は望んでここにいるわけではない。』と思っているな?」

 

一夏の事を睨みながら言う千冬さん。さすが姉弟、以心伝心だな。

 

「望む望まざるにかかわらず、人は集団の中で生きなくてはならない。それすら放棄するなら、まず人であることを辞めることだな。」

 

さすが千冬さん。家族に厳しいな、それ以上に自分に厳しいが。

 

「…………」

 

一夏は息を吐くと何か意を決したような表情になる。覚悟が決まったのか。

 

「え、えっと、織斑くん。わからないところは授業が終わってから放課後教えてあげますから、がんばって? ね? ねっ?」

 

山田先生は一夏に近寄って両手をぐっと握る。本当にいい先生なんだな。

 

「はい。それじゃあ、また放課後によろしくお願いします。」

 

一夏は山田先生にそれだけ言うと席に着く。

 

「ほ、放課後……放課後にふたりきり――」

 

山田先生はいい先生なんだが、男性に免疫がないからかトリップし始めた。

 

「あー、んんっ! 山田先生、授業の続きを。」

 

「は、はいっ!」

 

トリップしていた山田先生は千冬さんの咳払いによって呼び戻された。

 

ドタン

 

呼び戻された山田先生は教壇に戻って――こけた。

 

「う~、いたたた……」

 

さっきのやり取りで動揺してたのか? 『この先生大丈夫か?』と思ったのは俺だけではないだろう。

 




次回は金髪ドリルロールことセシリアの登場です。
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