今回は初日の放課後、部屋割りとかです。
どうぞ、お読みください。
「うう……」
放課後、隣の親友は頭を抱えている。理由は簡単、参考書を読んでないからだ。
「い、意味がわからん……。なんでこんなにややこしいんだ……?」
「最新技術ってのは大概が適当な言葉がないから専門用語や新語になるのは当然だ。そのために参考書を読むよう渡されてんだろうが。」
「そうは言ってもあの参考書は……」
確かにアレを1週間で覚えるのはツラいだろうな。俺の記憶では一夏の頭はそれほど良くなかったはずだし……
「それにしても、一日中この視線はツラいな……」
一夏の言うとおり、このクラスはまた他学年・他クラスの女子が押し掛けていて廊下は通行止め状態だ。無論、昼休み、食堂でも俺達に付いてくるような形で視線が休まる時は無かった。世界で二人だけの存在で珍しいのも分かるが、少しは俺達の気持ちも考えてほしい。
「ああ、織斑くん、甲斐谷くん。まだ教室にいたんですね。ちょうどよかったです。」
声が聞こえたので視覚補助をオンにしてそちらを見ると、山田先生が書類を片手に立っていた。
「えっとですね、寮の部屋が決まりました。」
そう言って部屋番号の書かれていると思われる紙と鍵を渡してくる山田先生。このIS学園は全寮制の為、生徒全員が学園の敷地内に寝泊まりしている。まぁ学園内と言っても小島一つ分の大きな敷地ではあるんだが。全寮制の理由は簡単で優秀なIS操縦者を管理しやすいからだ。
「俺の部屋って決まってないんじゃなかったですか? 前に聞いた話だと、一週間は自宅から通うって聞いたんですけど。」
「俺も寮の話は聞いてないんですが……」
「そうなんですけど、事情が事情なので一時的な処置として部屋割りを無理やり変更したらしいです。甲斐谷くんは部屋数の都合上、教師と同室になってしまって申し訳ないのですが。……そのあたりのことって政府から聞いてます?」
最後のあたりは俺達にだけ聞こえるように小声で言ってきた。なるほど、下手に外に出すと誘拐や暗殺とかの危険もあるし、保護と監視ってところか。
「そういうわけで、政府特命もあって、とにかく寮に入れるのを優先したみたいです。一か月もあれば部屋の調整もできると思うので、しばらくは織斑くんは女子と、甲斐谷くんは教師と相部屋ですが我慢してください。」
「はぁ、わかりました。」
「イレギュラーだから仕方ないですね。」
教師と相部屋か……千冬さんあたりだと気を使わずに済むから助かるな。
「それで、部屋はわかりましたけど、荷物は一回家に帰らないと準備できないですし、今日はもう帰ってもいいですか?」
「俺も引越しの準備はしてますが取りに行かないといけないので……」
一人暮らししていたから荷物は昨日の内にある程度まとめておいた。
「あ、いえ、荷物なら――」
「私が手配しておいてやった。ありがたく思え。」
山田先生が説明しようとしたところで、千冬さんが説明してきた。千冬さんの言ってるのは一夏の事か?
「ど、どうもありがとうございます。」
「まぁ、生活必需品だけだがな。着替えと、携帯の充電器があれば十分だろう。甲斐谷の方は槍も用意しておいたぞ。」
何とも大雑把な。確かに食堂もあるし勉強道具はあるが……あれ? なんで俺の分まで用意してあるんだ?
「織斑先生、鍵を渡した覚えは無いんですけど、どうやったんですか?」
鍵は俺しか持ってないはずなんだが……
「大家に事情を話して開けてもらったからだ。」
「わざわざ、ありがとうございます。」
「ふん。気にするな。知らない仲でもないしな。」
これからも千冬さんには世話になりそうだな。
「じゃあ、時間を見て部屋に行ってくださいね。夕食は六時から七時、寮の一年生用食堂で取ってください。ちなみに各部屋にはシャワーがありますけど、大浴場もあります。学年ごとに使える時間は違いますけど……えっと、その、織斑くんと甲斐谷くんは今のところ使えません。」
そりゃ当然だな。本来なら女子校だし、女子と風呂に入る趣味は無い。いや、女子に興味がないわけではないが、一緒に風呂に入るのは別だ。
「え、なんでですか?」
コイツは本当に馬鹿だな。確かに一夏は風呂好きって言ってたけど。
「アホかお前は。まさか同年代の女子と一緒に風呂に入りたいのか?」
「あ~……」
千冬さんに指摘され納得する一夏。
「おっ、織斑くんっ、女子とお風呂に入りたいんですか!? ダ、ダメですよ!」
「い、いや、入りたくないです。」
山田先生の言葉に少し大声で答える一夏。ん? なんか廊下の方がざわついてるような。
「ええっ? 女の子に興味がないんですか!? そ、それはそれで問題のような……」
「一夏。俺はそんな趣味は無いぞ。」
山田先生の思考回路はどうなっているんだろうか? このまま行くと巻き込まれそうなので否定しておく。廊下から聞こえてくる『月茂×一夏』やら『一夏×月茂』やらの言葉は聞かなかった事にしよう。寝覚めが悪くなる。
「月茂!! お前は俺をどう見てんだ!?」
一夏の事か……馬鹿、朴念仁、唐変木、鈍感、シスコン……だめだ。あげだしたらキリがない。
「織斑くん、男にしか興味がないのかしら……?」
「それはそれで、……いいわね。」
「中学時代の交友関係を洗って! すぐにね! ……明後日までには裏付けとって!」
廊下では婦女子談義が始まってた。女子校にはいるって言うが本当にいるのか。出来れば俺を巻き込まないでほしいが……。
「えっと、それじゃあ私たちは会議があるので、これで。織斑くん、甲斐谷くん、ちゃんと寮に帰るんですよ。道草食っちゃダメですよ。」
山田先生にとって俺らはどう思われているんだ? 寮まで50mも無いっていうのに。あ、でも少し走っておくか。たしか部活動も本格的には始まってないし、グラウンドはまだ空いてるだろ。
「月茂、これからどうする?」
「俺は少し走ってくる。入学手続きとかのごたごたで最近は運動できてなかったからな。一夏は?」
「俺はさっさと部屋に戻る。この視線から逃れたいしな。」
一夏は荷物を持つと扉の方へと向かって行った。俺もグラウンドに行くか。
◇
コンコン
グラウンドでの走りこみを終えたので渡された紙に書いてあった部屋の扉をノックする。思った通りグラウンドは空いていたので視覚補助をオフにして走っていたらいつの間にか日も落ちていた。軽く汗を流して飯を食うか……ISの操縦するから軽めにしとこう。
「誰だ?」
室内からよく知る女性の声が聞こえてきた。よかった、千冬さんが相手なら気が楽だ。
「甲斐谷月茂です。」
「月茂か。鍵は空いてるから勝手に入れ。」
ん? 名前呼びってことはオフモードか?
「失礼します。」
一応、礼儀は通しておこう。
「固くなるな。もう、放課後だ。それと、鍵はあるんだからノックはいらんぞ。」
部屋に入るとジャージ姿の千冬さんが缶ビールを傾けていた。
「じゃあ、千冬さん、これからしばらくお世話になります。」
「ああ、よろしくな。ところでこんな時間までどうしたんだ?」
軽く挨拶をした後に千冬さんが聞いてきた。別に隠すことでもないか。
「グラウンドで走ってたら、いつの間にかこんな時間になってました。」
「ほどほどにしろよ。」
「へ~い。汗流したいんでシャワー使ってもいいですか?」
「ああ、勝手にしろ。食堂の時間を考えて行動しろよ。」
「わかってますって。」
シャワーを浴びた後に食堂に入ると、閉まる時間も近いからか割りと空いていた。食堂が広いからそう感じるのもあるんだろうな、食堂にいる女子は俺が入ってくると一斉にこちらに視線が向いた。授業が終わってしばらく経っているのでラフなルームウェアを着ている者も多い……正直、目のやり場に困る。視覚補助をオフにしようかとも考えたが、疲れている状態で視覚補助がないのは危険なのでやめた。
「かいたんは~、夕ご飯は~あんまり食べないの~?」
俺がかけそばの小盛りを持って席に着くときぐるみパジャマを着た女子が話しかけてきた。ん? 確か同じクラスの子だよな……見た目の印象が強すぎて名前が思い出せないが。
「いや、今日はこのあとにちょっと訓練するから、少なめにしたんだ。ところで、名前を聞いていいか? まだ覚えきれていないからさ。」
「私は~、布仏 本音だよ~。よろしく~」
「布仏か……よろしくな。ところで、かいたんってのは俺のあだ名か?」
「うん。甲斐谷だから~かいたんだよ」
独特のネーミングセンスがありそうだな。
「じゃあ、俺は訓練があるから、布仏、また明日な。」
「うん。また明日~。」
俺は布仏と別れて千冬さんから預かった第六アリーナの鍵を取り出す。中央タワーと繋がっていて高速機動実習用に作られたものらしいので月光の高速機動訓練にはピッタリだ。普通の機動なら人目を盗んで訓練してきたが高速機動は人目を引くし、場所がなかなか見つからないからな。
ノリでのほほんさんを出してしまった。
オリ主とどうかかわるかは未定です。
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単純な作者はコメント一つで喜びます。……このへんテンプレになってきてるな