ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース 作:宇宙刑事ブルーノア
主人公の設定として使った、実在の人物の孫であるというのが規約に引っ掛かってしまい、一時的作品を削除させていただいておりました。
その後、運営様と話し合った結果、孫ではなく子孫ならば問題無いとのご回答をいただきましたので、該当部分を修正し、再投稿させていただく事にしました。
読者の皆様を混乱させ、ご迷惑をお掛けした事を、深くお詫び申し上げます。
どうかこれからも、『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』をよろしくお願いします。
なお、1~3話の後書きは、保存しておいたものを一部手直して再掲載させていただいておりますので、予めご了承下さい。
追記(8月17日)
内容を修正させていただきました。
篝 火蝋の存在が消えていますが、消滅したわけではなく、
まるで別物のキャラとして後で登場します。
ご了承ください。
第1話『戦車道と歩兵道です』
『戦車道』
茶道、華道、香道、書道、弓道、長刀道、合気道、仙道、忍道と並ぶ、女子の嗜み。
礼節のある、淑やかで慎ましく、そして凛々しい婦女子を育成する事を目指した武芸である。
そして………
男子にも、女子の戦車道に該当する武芸が存在する。
その名は………『歩兵道』
男性の嗜みとして受け継がれてきた伝統的な文化。
礼儀を弁え、信義を重んじ、男らしい教養の高い立派な紳士を育成する事を目指した武芸である。
また、歩兵道と戦車道は非常に親密な関係を持っている。
歩兵道を嗜む男性は、戦車に乗る女性を守る事が出来るのだ。
男性からすれば、戦車に乗っている女性を守るのは名誉な事であり、また女性にとっても歩兵の男性に守られる事は憧れなのである。
コレは、そんな戦車道にトラウマを抱えた1人の少女と、只管に歩兵道を突き進む不器用な男の物語である………
『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』
第1話『戦車道と歩兵道です』
時は近未来………
大洗学園艦………
大きく世界に羽ばたく人材の育成と生徒の自主独立心を養う為に建造された、全長7キロ以上にも及ぶ空母に似たこの船は、飛行甲板に相当する部分に学校を中心として都市が広がっている。
学園以外にも大小の住宅、ホームセンターやコンビニ等が在り、道路には自動車も走っている他、広大な自然が形成されているなど陸上同様の環境が形成されている。
そんな学園艦都市の中心部からやや外れた場所に、小さな昔ながらの純日本風の平屋が在る。
「…………」
まだ日が昇り切らぬ時間のその庭に、1人の男が佇んでいた。
道着に身を包み、若干濃い顔つきの男は、目を閉じて、鞘に入った日本刀を居合いの姿勢で構えている。
男の前には、藁束が立てられている。
「…………」
男は無言で目を瞑ったまま意識を集中しており、時だけが過ぎて行く。
と、その時!!
近くに在った電柱の上に止まっていたカモメが、羽音を立てて飛翔した。
「!! ハアッ!!」
その瞬間に、男は気合の掛け声と共に神速とも言える速さで抜刀した!
鋭い太刀筋を喰らった藁束が、斜めに切断され、上部が地面の上に落ちる。
「…………」
男は一定に残心を保ったかと思うと、静かに刀を鞘へと戻す。
「………ふう~~」
刀が独特の音を立てて鞘に納まると、男は大きく息を吐いて姿勢を解いた。
「お早う、舩坂くん! 朝から精が出るね!!」
とそこで、垣根の向こうの道路から、自転車に乗った壮年の警察官が男に声を掛けて来る。
「ああ、巡査長さん。お早うございます」
警察官の姿を確認すると、舩坂と呼ばれた男は警察官の方に向き直り、深く頭を下げて挨拶をする。
「いや~、相変わらず礼儀正しいね。今時の若い子とは思えないよ」
「巡査長さんはコレから勤務ですか?」
「ああ、今日は早番でね。それじゃあ!」
「御気を付けて」
警察官はそれだけ言うと、真剣を持っていた事を問い質す様な事はせず、去って行く。
舩坂と呼ばれた男がそれを見送っていると、縁側の窓が開き、割烹着姿で小柄な体格のおかっぱの黒い髪が特徴的な少女が姿を現す。
「お早うございます、弘樹お兄様。朝食の用意が出来ました」
「ああ、湯江。お早う。今行く」
男………『舩坂 弘樹(ふなさか ひろき)』は、妹の少女………『舩坂 湯江(ふなさか ゆえ)』にそう言うと、玄関から家へと上がるのだった。
小一時間後………
朝食を終えた2人は、学校に行く為に其々の部屋で着替えを始める。
湯江は洋服姿になると、赤いランドセルを背負い………
弘樹は詰襟の黒短ランとズボンを着て、庭で振るっていた刀を腰に差すと、その上から黒い外套(マント)を羽織り、白線の入った学帽を被ると言う、まるで大正時代の旧制高校や師範学校生を思わせる格好となる。
そして、学生鞄を手に取ると、廊下で湯江と合流し、玄関で靴を履いて外へ出た。
「では、行くか」
「ハイ、お兄様」
玄関の戸締りをすると、弘樹と湯江は通学を開始する。
通学路………
他愛の無い会話をしながら、暫く2人で歩いていると………
「湯江~!」
「おう、弘樹ぃ!」
後方からそう呼ぶ声が聞こえて来て、弘樹と湯江が振り返ると、ロングの黒い髪で湯江より背が高く、まるでモデルの様な体型をしたランドセルを背負った少女と、まるで一昔前の学園漫画に出て来そうなバンカラスタイルの男が、此方に向かって歩いて来ていた。
「遥ちゃん。大河さん。お早うございます」
湯江は2人に向かって深々と頭を下げながら挨拶をする。
「相変わらず礼儀正しいのう~。ウチの妹にも見習わせたいくらいや」
「もう~、相変わらず固いんだから~」
バンカラ男とモデル少女は笑いながらそう言う。
バンカラ男の名は『黒岩 大河(くろいわ たいが)』
弘樹が通う学校の3年生で、義理人情で涙もろいが喧嘩は強い典型的な親分肌の不良で、学校の不良達を粗束ねている、見た目通りの番長なのである。
そしてモデル体型の少女は、その妹『黒岩 遥(くろいわ はるか)』
このバンカラな大河の妹とは思えない程の自他ともに認める美少女であり、小学生でありながら地元情報誌で、専属モデルの仕事をしている。
以前は大阪に住んでいたが、大河が3年に進級する直前に、両親がある事件で死亡。
それを機にこの学園艦へと引っ越して来ており、大河のバイト先でもある酒屋で2人揃って居候して生活している。
舩坂兄妹との出会いは、大河の舎弟がうっかり彼等に絡んでしまい、一触即発となっていたところで割って入って来たのが始まりである。
大河は、舎弟の非を認めさせて、一緒に謝罪した。
その際に、舩坂兄妹も両親が事故で死んでおり、この学園艦に引っ越して来た身と知り、境遇に共感を覚え、弘樹の事を気に入り、妹共々親睦を深めたのである。
「やあ、2人供。お早う」
とそこで、弘樹が2人に向かって頭を下げながら挨拶をする。
「お早う、湯江ちゃんのお兄さん」
「お早うさん、弘樹」
それに対し、遥と大河も挨拶を返す。
「それじゃあ、お兄様。私は遥ちゃんと学校へ行きますから」
「ああ、車に気を付けるんだぞ」
「ハイ。では、失礼します………遥ちゃん、行こう」
「OK~。それじゃあ、兄貴。湯江ちゃんのお兄さん。またね~」
湯江はそう言うと、遥と共に小学校へと向かう。
「気い付けるんやで~」
「…………」
その姿を大河と弘樹は手を振って見送ると、自分も高校へ向かうべく、再び歩き出すのだった。
暫く歩いた弘樹と大河は、交差点へと差し掛かる。
「む? 少しのんびりとし過ぎたか?」
「ん? そうか?」
大河と雑談しながら歩いていた弘樹は、携帯電話で時間を確認したところでそう呟く。
如何でも良いが、まるで大正時代からタイムスリップして来たとしか思えない学生が、バンカラな学生と共に携帯電話を見ている姿は、非常にミスマッチである。
「少し急ぐか………」
「しゃあないなぁ」
弘樹と大河がそう言った瞬間………
「わ~っ! 遅刻遅刻~!!」
そんな声を挙げながら、弘樹と大河から見て対角線上の交差点の角に、茶髪のショートボブカットヘアで県立大洗女子学園の制服を着た少女が、走りながら姿を現した。
「?」
「ありゃあ、大洗女子学園の制服やな………」
先程の声で、その少女の存在に気付いた弘樹と大河が視線を向ける。
すると、少女は焦っていたのか、歩行者用信号が変わりかけている事に気付かずに横断歩道を横断し始める。
「! イカン!」
「オイ! 危ないで!!」
「えっ!?」
声を掛ける弘樹と大河だったが、突然声を掛けられて、少女は思わず交差点の途中で立ち止まってしまう。
その瞬間に信号が変わり、トラックが交差点に進入して来た!!
パッパーッ!!
トラックは横断歩道の途中で立ち止まっていた少女に気づき、慌ててクラクションを鳴らす。
「! アカン!!」
大河がそう声を挙げた瞬間!
「!!」
弘樹は反射的に駆け出していた!!
「!? キャアアアアアァァァァァァーーーーーーーっ!!」
少女はクラクションを鳴らされた事で逆に委縮してしまい、悲鳴を挙げてその場に立ち尽くしてしまう。
「くうっ!! ハアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!!」
と、その次の瞬間!!
弘樹は少女へと飛び付く様にしながら、少女を抱えて、自分の身体ごと歩道へと転がった!!
「馬鹿野郎ぉっ!! 気を付けろぉっ!!」
トラックの運転手が罵声を浴びせて去って行く中、弘樹と少女は路肩に転がった状態で倒れている。
「弘樹! 大丈夫か!?」
信号が変わると、慌てて大河が駆けて来る。
「う、ううん………!?」
思わず目を閉じていた少女が恐る恐る目を開けると、視界いっぱいに弘樹の顔が広がって驚く。
そして、自分が今弘樹に抱えられた状態で歩道に倒れている事を確認すると、ボッと赤面する。
「あ、あああ、あの!!………」
「………怪我は無いか?」
テンパりながら少女が何か言おうとしたところ、弘樹がそう尋ねる。
「えっ!? あ、ハ、ハイ!」
「そうか………」
それを聞くと弘樹は身を起こし、少女に手を貸して立ち上がらせる。
「無事で良かった………」
「あ、あの………えっと………ありがとうございます!」
弘樹がそう言うと、少女は弘樹に向かって深々と頭を下げる。
「………! あ!? 怪我を!?」
「うん?」
するとそこで、少女がそう言ったので、弘樹が少女の視線を追うと、自分の左手の甲から血が流れている事に気づく。
「問題無い。かすり傷だ」
「で、でも! ばい菌が入ったら大変ですよ!!」
少女はスカートのポケットからハンカチを取り出すと、弘樹の左手に巻き始める。
「オ、オイ、君………」
「うん、コレで良し!」
弘樹が何か言う間に、少女はハンカチを巻き終える。
「いや、申し訳ない………」
「そんな! 助けてもらったんですから、これぐらい当然です!」
「ええのう~。ワシャ、こういうのに弱いんや………あ、コレ嬢ちゃんの鞄やで」
その様子に感動していた大河が、路肩に転がっていた少女の鞄を拾って手渡す。
「あ、ありがとうございます」
少女は鞄を受け取ると、改めて弘樹と大河の姿を見やる。
(な、何だか………凄い格好してるなぁ………)
若干失礼だと思いつつも、少女は心の中でそんな感想を抱いてしまう。
しかしまあ、無理も無い………
片方は完全なバンカラの番長。
もう片方は某デビルサマナーを思わせる様な大正時代の学生姿。
現代の人間である少女から見れば、十分異質と言って良いだろう。
「! ああ! いけない! 遅刻しそうだったんだ!! あの! 失礼します!!」
とそこで、遅刻しそうだった事を思い出した少女は、2人に向かって一礼すると、そのまま走り去って行った。
「あ! 嬢ちゃん!!………行ってもうたで」
「しまった………名前を聞くのを忘れていた………」
左手に巻かれていたハンカチを解きながらそう言う弘樹。
左手の傷は既に塞がっており、血は流れていない………
「相変わらず便利な身体しとるのう………」
「さ、俺達も急がんと遅刻だぞ」
自分の学生鞄を拾い上げると、弘樹と大河は再度学校へと向かい出す。
(しかし、さっきの子………何処かで見た気がするな)
先程の少女に見覚えを感じながら、『県立大洗国際男子高校』へ急ぐ弘樹だった。
*
『県立大洗国際男子高校』
大洗女子学園と同じく、古来の文道・武道が必須選択科目となっている男子高校である。
国際高校の為、留学生も多数存在しており、全校生徒数が実に1万人以上と言う超々マンモス校だ。
非常に自由な校風を保っており、生徒の恰好からしても、学ランを着ている者も居れば、ブレザーの者も居り、イートンジャケットを着ている者も居れば、私服姿の生徒も居る。
また、この学校の生徒会………と言うよりも生徒会長は非常に強い権限を持っており、学校職員やPTA、教育委員会、果ては文部科学省や総理大臣さえも彼に逆らう事が出来ないらしい。
ギリギリのところで学校へと辿り着いた弘樹と大河は、階段で別れ、大河は3年の教室へ、弘樹は2年の教室へと向かったのだった。
大洗男子校・2年1組教室………
「間に合ったか………」
弘樹は、窓際の後ろから2番目に位置する自分の席に辿り着くと、学生鞄と学帽を机の脇に下げ、外套を椅子の背凭れに掛けて席へと腰掛ける。
「よう、弘樹! 珍しいな、お前が遅刻ギリギリだなんて」
すると、前の席に居たメガネを掛けたブレザー姿の生徒が、弘樹にそう声を掛ける。
「偶にはこんな事もある………」
「何々? ひょっとしてパンを咥えて遅刻遅刻なんて言ってた女の子と衝突したとか? ヤッベェーよ、フラグじゃん、ソレ!」
そう言うと、今度は右隣の私服の生徒がそんな事を言って来る。
「了平………貴方って人は………」
そこで弘樹の後ろの席に座って居たイートンジャケット姿の生徒が、そんな私服の生徒の様子に呆れた様に呟く。
メガネのブレザーの生徒の名は『石上 地市(いしがみ ちいち)』
特撮ヒーローをこよなく愛する正義感の強い熱血漢。
なお、メガネは伊達で、掛けている理由は女子は知的な男に憧れる者だと思っているからである(メガネ=知的という安易な発想)
私服の生徒の名は『綿貫 了平(わたぬき りょうへい)』
エロゲーマニアで無類の女好きである。
しかし、ナンパしたのにも関わらずスルーされたり、痴漢呼ばわりされたりするなど、女性から良い印象をもたれる事はまず無い。
所謂馬鹿だが、運動神経は良い。
そしてイートンジャケット姿の生徒は『大空 楓(おおぞら かえで)』
航空会社女社長と有名なスポーツメーカー社長の夫婦の間に生まれた子息。
運動神経抜群で、学年成績も優秀である。
その文武両道ぶりから様々な部活から助っ人を頼まれている、
容姿も端麗な為、大洗の貴公子とも呼ばれ、女子校では下級生や上級生にファンクラブが存在する程である。
皆、弘樹の親友や悪友達である。
「まあ似た様な事には遇ったな………」
「えっ!? マジで! フラグ立てたのかよ!?」
「ば~か、コイツが女の子とフラグ立てられる程の器用モンかよ」
了平が驚きの声を挙げ、地市が何を馬鹿な事をと言う様に言う。
「静かにしろ~! 出席を取るぞ~!!」
とそこで、担任の先生が教室に姿を見せ、そう言った。
「起立! 礼! 着席!」
クラス委員長の号令が終わると、担任によって出席が取られる………
*
そして時間は流れて昼休み………
弘樹達は学生食堂へ移動し、昼食を取っている。
「そう言やぁ、明日は必修選択科目のオリエンテーションだな………皆如何すんだ?」
焼肉定食を食べていた地市が、弘樹、了平、楓にそう尋ねる。
「俺は落語かな? やっぱ面白い話が出来る男はモテるだろうし」
下心を丸出しにして、ラーメンを啜っていた了平がそう答える。
「僕は書道をやってみようかと思っています」
チャーハンをれんげで掬っていた楓はそう答える。
「成程な~。弘樹は………」
「小官は歩兵道だ」
それを聞いた地市が、今度は弘樹に尋ねようとしたところ、それに先んじる様にそう言い、焼魚定食の焼魚を齧る。
「だろうな」
「お前もホント物好きだよなぁ。この学園艦じゃ、女子校の方は戦車道を廃止しちまってるってのに………」
地市が苦笑いしながら言い、了平は不思議そうにそう言う。
『歩兵道』………
男性の嗜みとして受け継がれてきた伝統的な文化。
礼儀を弁え、信義を重んじ、男らしい教養の高い立派な紳士を育成する事を目指した武芸である。
また、歩兵道と戦車道は非常に親密な関係を持っている。
歩兵道を嗜む男性は、戦車に乗る女性を守る事が出来るのだ。
男性からすれば、戦車に乗っている女性を守るのは名誉な事であり、また女性にとっても歩兵の男性に守られる事は憧れなのである。
しかし、それ故に男子の中には、歩兵道は戦車道をやっている女子と交流を持つ為のものと考える者も居る。
その為、ここ大洗の学園艦では、女子校側が20年程前に戦車道を廃止しており、男子校側の歩兵道受講者は減る一方なのである。
噂では近々この歩兵道も廃止されると言われている。
「女子学園の戦車道が存在しない事は関係無い………小官が歩兵道の道を進みたいだけだ」
そう言って食後の茶を啜る弘樹。
「相変わらずだなぁ、お前も」
「まるっきり昭和の男だぜ、お前」
「けど、舩坂さんらしいですね」
そんな弘樹の様子に呆れながらも笑みを零す地市、了平、楓だった。
*
そしてまた時は流れて学校が終わり………
弘樹は湯江を迎えて帰路に着き、途中で夕飯の買い物をして、自宅へと辿り着く。
「じゃあ、私は夕食の準備に取り掛かりますので、申し訳ありませんが、お兄様はお風呂の用意をお願いします」
買い物した品物を入れた買い物袋を持ちながら家に上がった湯江が、弘樹にそう言う。
「ああ、湯江すまない。先にコレを洗濯してくれないか?」
と、そこで弘樹は、今朝の件で少女に巻いてもらった血の付いたハンカチを取り出す。
「アラ? 女性のハンカチ? それに血が………お兄様。これは一体如何したんですか?」
「実は………」
怪訝な顔をする湯江に、弘樹は今朝あった事を話す。
「まあ、そんな事があったんですか」
「ああ、名前を聞くのを忘れてしまったのだが、何とか返さなければならんのでな」
「お兄様らしいですね。では、このハンカチは洗っておきますね」
「すまない。頼むぞ」
弘樹はそう言い、湯江にハンカチを渡すのだった。
その後、2人は夕食を取り、テレビを見ている………
「それにしても………やはり、あの子………何処かで見た気がするな」
「今朝お兄様が助けた大洗女子学園の方ですか?」
弘樹がふと呟くと、湯江がそう尋ねて来る。
「珍しいですね。お兄様が女性にそんなに熱を上げられるなんて」
「そんなんじゃないさ。しかし、本当に何処かで見た気が………」
と、弘樹が考え込む様な素振りを見せた瞬間………
[ではココで、昨年の戦車道の全国大会での決勝戦を振り返ってみましょう]
テレビからそう言う音声が聞こえて来た。
如何やら戦車道の特集の番組が始まった様である。
すると次の瞬間………
画面に、黒森峰女学院の制服に身を包んだ今朝弘樹が助けた少女………『西住 みほ』の姿が映し出される。
「! ああ! この子だ!!」
それを見た弘樹が、思わず声を挙げる。
「この方って………西住 みほさんですか?」
「ああ、間違いない。確かに彼女だった」
軽く驚いている故に、弘樹はそう言う。
「ですが、西住と言えば、由緒正しい戦車道の流派の家の方ですよね? それが如何して、戦車道の無い大洗女子学園に?」
「恐らく………この事が関係しているんだろう」
テレビを見ながらそう言う弘樹。
番組では、川に落ちた味方の戦車の乗員を助ける為に、戦車から降りて行ったみほの姿が映し出されている。
その直後に、彼女の乗っていた黒森峰のフラッグ車が、対戦相手に撃破されてしまう。
「この事の責任を感じた、若しくは取らされたのか………あるいはこの出来事自体がトラウマになってしまったのかも知れないな」
弘樹がそう言う中、番組では嫌味そうな顔をした評論家が、渋面でみほを批判している。
「酷いですわ。西住さんがした事は立派な事です。なのに責められるなんて………」
「…………」
湯江が悲しげな表情をしながらそう言うと、弘樹も不愉快そうな表情となって黙り込むのだった。
つづく
いよいよ始めさせてもらいました、私のガルパン二次創作………
『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』
この作品を思いついた経緯は、あらすじにも書いた通り、通常、戦車にはその行動をサポートする歩兵………『随伴歩兵』が付き物。
それをガルパンの世界に当てはめて、男子の武道としたら、随伴歩兵は女性を守る騎士(ナイト)的な立場になるのではないかと考え、この作品を思いつきました。
どうも、私は登場キャラが女子だけの作品を見ると、男子を放り込んでラブコメをやってみたいという衝動に駆られる傾向がありまして………
ガルパンに男子を登場させるのは、人によっては拒否反応が大きいのは重々承知しておりますが、どうしてもやりたかったので。
あらすじにも書きましたが、オリ主を初めとして男子が多数登場し、原作キャラとの恋愛描写なんかも入りますので、申し訳ありませんが、それらが受け付けられない方にはお勧め致しません。
さて、肝心の作品内容ですが、まだ冒頭ですので、まだ登場キャラの一部紹介的な紹介となっております。
何せ、原作キャラも多いですが、その原作キャラ達が乗る戦車を守る随伴歩兵を出すので、名の無いモブも含めてかなりのキャラが登場する予定です。
また、歩兵道って危ないって思われるかも知れませんが、戦車道と同じで絶対に死人は出ないという設定になっています。
歩兵道をやってるキャラ達も、並外れた連中ばかりですので。
では、長くなりましたがこの辺で。
ご意見・ご感想をお待ちしております。