ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第10話『グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第10話『グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えた日曜日の早朝………

 

舩坂家の玄関にて………

 

「…………」

 

戦闘服姿の弘樹が、神妙な面持ちで、足にゲートルを巻きつけている。

 

「………良し!」

 

巻き終わると、気合を入れる様にそう言って立ち上がり、戦闘帽を被り直す。

 

「お兄様………」

 

とそこで背後から声を掛けられて振り返ると、何時の間にか紬姿の湯江が立っていた。

 

「! 湯江! 早いから寝てて良いと言っただろう」

 

「いえ、大切な試合の日ですから。ちゃんとお見送りしないとと思いまして」

 

前日に湯江を気遣って見送りは入らないと言っておいた弘樹だったが、湯江はそう言い返す。

 

「全く、誰に似たんだか………」

 

「フフフ、お兄様に似たんですよ。妹ですから」

 

呆れる弘樹に、笑いながらそう言う湯江。

 

「やれやれ………じゃあ、言ってくる」

 

「御武運を、お兄様………試合の様子も、お友達と一緒に見させていただきますね」

 

「期待を裏切らないよう善処する」

 

そして、湯江に見送られて、弘樹は家を出るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

通学路………

 

「よう、舩坂くん! 早いね!!」

 

早朝のジョギングをしていた近所の中年男性が、弘樹を見てそう声を掛ける。

 

「お早うございます。今日は練習試合がありまして」

 

「おお、そうか! 是非見に行かせてもらうよ! 頑張るんだぞっ!!」

 

「ハッ! ありがとうございますっ!!」

 

そう会話を交わして、弘樹は再び大洗女子学園へと向かい始める。

 

すると………

 

背後からエンジン音と共にキャタピラの鳴る音が聞こえて、細かな振動が伝わって来る。

 

「あ! 舩坂くんっ!!」

 

と、その音と振動が弘樹の背後まで来たかと思うと止まり、そう言う声が振って来る。

 

振り返った弘樹が見たのは、Ⅳ号戦車と、そのキューポラから上半身を出しているみほの姿だった。

 

「やあ、お早う、西住くん。如何したんだ、戦車で? 女子学園の方に集合だったんじゃなかったのか?」

 

「えっと、冷泉さんを迎えに行ってて………」

 

「成程………それで彼女は起きれたのか?」

 

「一応………」

 

弘樹とそう会話を交わし、みほは車内を見やる。

 

「………眠い」

 

そこには、砲手席に座らされた、未だに寝ぼけている麻子の姿が在った。

 

「舩坂くん、良かったら乗ってかない?」

 

とそこで、通信手席から顔を出した沙織が、弘樹にそう言う。

 

「そうさせてもらうよ」

 

それを聞くと、弘樹はⅣ号の車体の上に攀じ登る。

 

「それじゃあ、改めて学校に向かって、パンツァー・フォーッ!!」

 

みほがそう言うと、Ⅳ号は再び前進し始めた。

 

「いよいよだね………」

 

「ああ………」

 

「アインシュタインさん………姿を見せてくれるかな?」

 

「分からんが………今となって信じるしかないな」

 

不安げに表情を浮かべるみほに、弘樹はそう言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後………

 

大洗女子学園に集合した機甲部隊の面々は、全員の集合を確認すると移動を開始。

 

現在は学園艦の昇降用ドックで、一般車と共に、学園艦が大洗の港に着くのを待っている。

 

「陸が見えてきたぞーっ!!」

 

くろがね四起の助手席に居た地市がそう声を挙げると、全員が学園艦の進路上を見やる。

 

彼の言葉通り、そこには陸の………

 

大洗町が広がっていた。

 

「久しぶりの陸だー。アウトレットで買い物したいな~」

 

「試合が終わってからですね」

 

久しぶりの上陸ではしゃぐ沙織に、華がそう言う。

 

「ええ~~っ! 昔は学校が皆陸に在ったんでしょう? 良いな~。私その時代に生まれたかったよ~」

 

「私は海の上が良いです。気持ち良いし、星も良く見えるし」

 

「…………」

 

沙織と優花里がそんな事を言い合っている中、みほは大洗の町を見つめていた。

 

「西住さんは、まだ大洗の町、歩いた事無いんですよね?」

 

そんなみほに、華がそう声を掛ける。

 

「あ、うん」

 

「後で案内するね!」

 

すると沙織も、みほに向かってそう言う。

 

「ありがとう」

 

「序にデートなんか………」

 

「試合を前に、何を浮ついた気持ちでいる?」

 

すると、ドサクサに紛れて、了平がみほをデートに誘おうとしたが、弘樹がそう言って了平を睨み付ける。

 

「ハイ、スミマセン………」

 

「何で片言なんですか?」

 

恐怖のあまり片言になる了平に、楓が突っ込みを入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして小1時間後………

 

学園艦は大洗町の港に入港。

 

大洗機甲部隊の一同は、専用のタラップを使って下船を始める。

 

すると………

 

そんな一同に突如影が掛かる。

 

「「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」

 

何事かとみほ達と弘樹達が頭上を見上げると、そこには………

 

大洗の学園艦よりも何倍も大きな学園艦が、大洗学園艦が入港している隣の港へと入港して来ていた。

 

「デカッ!!」

 

「オイオイ、デカ過ぎだろうっ!?」

 

沙織と了平が思わずそう声を挙げる。

 

「アレが………『聖グロリアーナ女学院』と『聖ブリティッシュ男子高校』の学園艦か………」

 

「…………」

 

地市がそう呟く隣で、弘樹も無言で聖グロリアーナ女学院と聖ブリティッシュ男子高校の学園艦を見上げている。

 

「! 楓! 双眼鏡を貸してくれっ!」

 

するとそこで弘樹は、何かに気づいた様に楓にそう言う。

 

「えっ? あ、ハイ」

 

一瞬戸惑いながらも、偵察兵用の双眼鏡を弘樹へ手渡す楓。

 

「…………」

 

楓から受け取った双眼鏡で、弘樹は聖グロリアーナ女学院と聖ブリティッシュ男子高校の学園艦の側面部を見やる。

 

そこには、まるで軍事パレードの様に騎馬兵を混じえ、バグパイプを中心とした軍楽隊が奏でる行進曲と共に、綺麗な隊列を組んで下船準備に掛かっている聖グロリアーナ女学院戦車部隊と聖ブリティッシュ男子高校歩兵部隊の姿が在った。

 

「アレが聖グロリアーナ女学院戦車部隊と聖ブリティッシュ男子高校歩兵部隊か………」

 

「まるで本当にイギリスみたいですね」

 

「アイツ等も俺等と同じで大半日本人の筈なんだがなぁ………」

 

十河、清十郎、俊が聖グロリアーナ女学院戦車部隊と聖ブリティッシュ男子高校歩兵部隊を見てそんな事を呟く。

 

「…………」

 

そんな中、弘樹は注意深く、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の様子を伺っている。

 

と、その弘樹の目がとある歩兵で止まる。

 

それは、馬に跨って腰にフルーレを差した、第二次世界大戦時のイギリス陸軍の戦闘服を着た歩兵………『アールグレイ』だった。

 

(あの歩兵………)

 

双眼鏡越しの遠目でも分かる程に、アールグレイからは気迫が溢れている。

 

それと同時に、まるで騎士の様な気高さも感じさせられる。

 

(………強い)

 

それだけで、相手がかなりの手練である事が、弘樹には見て取れた。

 

「…………」

 

すると、アールグレイが双眼鏡を覗いている弘樹の方を見やる。

 

「!?」

 

「…………」

 

双眼鏡を通して、弘樹とアールグレイの視線が交差する。

 

「…………」

 

そんなアールグレイの視線を暫く真正面から見据えていたかと思うと、弘樹は双眼鏡を離した。

 

「如何したんだ? 弘樹?」

 

知らずの内に険しい表情を浮かべていた弘樹に、地市がそう声を掛ける。

 

「いや………何でも無い」

 

しかし、すぐにいつもの仏頂面に戻ると、そう言いながら双眼鏡を楓に返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、聖グロリアーナ女学院と聖ブリティッシュ男子高校の学園艦の昇降用ドッグの方でも………

 

「…………」

 

弘樹が双眼鏡を外した後も、アールグレイは弘樹の方を見やっていた。

 

「如何した? アールグレイ?」

 

そんなアールグレイの様子に気づいたセージが声を掛ける。

 

「いえ………何でもありません」

 

アールグレイはそう言うと、視線を前に戻した。

 

「珍しいですわね。試合に臨む前の貴方がボーッとするなんて………」

 

と、すぐ前を進んでいた『チャーチル歩兵戦車Mk.Ⅶ』の砲塔ハッチから上半身を出していたパンツァージャケット姿のダージリンが、アールグレイの方を振り返りながらそう言う。

 

「そう言うワケではない………」

 

「なら大丈夫ですわね。頼みますわよ………我が騎士(ナイト)さん」

 

ダージリンはそう言って、不敵に微笑む。

 

「………イエス、マイ・ロード」

 

アールグレイはそう答え、騎士が忠誠を示すポーズを取るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に小1時間後………

 

大洗の町で、練習試合に便乗した催しや、試合観戦の準備が整う中………

 

戦闘開始前の集合場所に先に集合した大洗機甲部隊は、戦車を横一列に整列させ、その前に其々の随伴歩兵分隊が総隊長である迫信を先頭にし、その後ろに各分隊長が整列。

 

そしてその後ろに、各随伴分隊の隊員達が整列している。

 

更に最前列には各戦車の車長達が整列し、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊が来るのを待っている。

 

「………来たか」

 

と、迫信がそう呟いたかと思うと………

 

土煙を上げる1両のチャーチル歩兵戦車と4両のマチルダⅡ歩兵戦車と共に、『英国擲弾兵連隊行進曲』を奏でながら、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊が姿を現した。

 

「何や………けったいな連中やなぁ」

 

「パレードやってんじゃねえんだぞ」

 

そんなグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の姿を見て、大河と秀人がそう呟く。

 

その間に、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊は、大洗機甲部隊の眼前までやって来て、同じ様に戦車を横一列に整列させ、其々の戦車の随伴歩兵分隊を前に整列させる。

 

そして、チャーチル歩兵戦車からダージリンが出て来て、マチルダⅡからも各車長が出て来て、歩兵達の前に整列し、大洗機甲部隊と同じ状態となる。

 

「本日は急な申し込みにも関わらず、試合を受けていただき、感謝する」

 

両校が整列したのを確認すると、大洗側の代表として、桃がダージリンに向かってそう言う。

 

「構いません事よ………」

 

ダージリンは笑みを浮かべてそう返す。

 

「それにしても………個性的な戦車と歩兵の方々ですわね」

 

しかし次の瞬間には、口元を手で隠してそう言う。

 

「なっ!?」

 

「まあ、そうですよね………」

 

『何を!』と言いたげな桃に対し、逞巳は同意する様にそう呟く。

 

戦車はピンク1色や金ピカにされ、歩兵部隊は色々な国の戦闘服を来た面子が乱雑しており、纏まりに欠けていると言われればその通りだと言わざるを得ない。

 

「ですが、私達はどんな相手にも全力を尽くしますの。サンダースやプラウダみたいに下品な戦い方は致しませんわ。騎士道精神でお互い頑張りましょう」

 

ダージリンは大洗機甲部隊の面々に向かってそう言い放つ。

 

(やっぱり如何見ても寄せ集めの急造部隊って感じだな)

 

(ああ、悪いけど、こりゃ戴きだな)

 

一方、後方に並んでいるブリティッシュ歩兵部隊の中には、大洗機甲部隊のチグハグぶりを見て、そんな事を呟く者が居た。

 

「…………」

 

そんな中、アールグレイは大洗機甲部隊を1人1人、車両や装備の1つ1つに至るまで観察し、データとして脳へとインプットして行く。

 

と、やがてその視線が、弘樹へと向けられる。

 

(! あの男………)

 

弘樹を見た途端、アールグレイは何かを感じ取り、視線に力が入る。

 

「………!」

 

すると、その視線に気づいた弘樹が、アールグレイを見返す。

 

「「…………」」

 

弘樹とアールグレイは、そのまま互いに鋭い視線で相手を見合う。

 

「それではコレより! グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊対大洗機甲部隊の試合を始める!」

 

するとそこで、今回の試合で審判を勤める『篠川 香音』、『高島 レミ』、『稲富 ひびき』の3人の内、主審である香音がそう声を挙げる。

 

「「!!」」

 

それを聞いて、両者は視線を互いの部隊全体へと移す。

 

「一同! 礼っ!!」

 

香音がそう言うと、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊と大洗機甲部隊の面々は、互いに一斉に礼をしたのだった。

 

そして礼が終わると、両者は踵を返して自軍の元へと戻り、互いに戦闘開始地点へ移動を始める。

 

「………ダージリン。気をつけろ」

 

すると、愛馬へと跨り、チャーチル歩兵戦車の横へ付けて来たアールグレイが、ハッチから上半身を覗かせていたダージリンにそう言った。

 

「ええ………あの歩兵ですわね」

 

ダージリンは分かっていると言う様にそう返す。

 

「歩兵が如何かしたんですか?」

 

すると、装填手席のオレンジペコが、ダージリンの事を見上げながらそう尋ねる。

 

「大洗の歩兵部隊の中に1人………少々気になる人が居まして」

 

「高々歩兵1人がですか?」

 

歩兵1人を妙に警戒するダージリンを、砲手席のアッサムも、らしくないと言う様に見上げる。

 

「高が歩兵1人………されど歩兵1人ですわ」

 

しかし、ダージリンは真面目な顔でそう言う。

 

「彼には例えるなら、そう………炎の臭いが染み付いているわ」

 

「炎の臭い?」

 

「ええ………まるで『むせる』様な………」

 

ダージリンの脳裏に、燃え盛る炎を背に、ゆっくりと歩いてくる弘樹の姿のイメージが広がる。

 

「奴は巨大な不発弾の様なモノだ………巧まずして仕掛けられた地中の闇に眠る殺し屋………それは突然に目を覚まし、偽りの平穏を打ち破る」

 

アールグレイも、詩的な言い回しと共に、弘樹への警戒感を露にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数10分後………

 

スタート地点へと移動した大洗機甲部隊は………

 

「いよいよ試合開始か………」

 

「アインシュタインさんは………来てくれるかな?」

 

試製四式七糎噴進砲のチェックをしている地市と、Ⅳ号のキューポラから上半身を出した状態で居たみほがそう呟く。

 

「少なくともオペレーターの件は承知してくれていた筈だ………必ず来る筈だ」

 

三八式歩兵銃に銃弾を装填しながら、弘樹がそう言う。

 

「間も無く試合開始時間だな………」

 

と、迫信がそう呟いた瞬間………

 

「………ん? オイ! アリャ何だっ!?」

 

するとそこで、磐渡が何かに気づいた様に声を挙げる。

 

見れば、大洗機甲部隊に向かって近づいて来る、1両の装甲車………『AEC 四輪駆動装甲指揮車』の姿が在った。

 

「! アレはっ!?」

 

「イギリスのAEC装甲指揮車ですぅっ! AEC マタドールを基とした四輪駆動のタイプですね!!」

 

「うむ。北アフリカ戦線で3両がドイツアフリカ軍団に鹵獲され、それ等の内の2両はマックスとモーリッツと名付けられ、作戦中ずっとエルヴィン・ロンメルと幕僚たちに使用されたな」

 

みほが驚きの声を挙げると、優花里が嬉しそうな声を挙げ、エルヴィンも笑みを浮かべる。

 

やがて、AEC 四輪駆動装甲指揮車は大洗機甲部隊の一同の前で停車。

 

そして、側面のドアが開いたかと思うと………

 

「…………」

 

そこから、痩せ形の体型で、目の下に隈が有り、髪は黒く眉が隠れる程に長くて猫背な男が姿を現した。

 

「………アインシュタインか?」

 

「そうだよ、白狼」

 

白狼がそう尋ねると、猫背の男………『アインシュタイン』こと『平賀 煌人』はそう答える。

 

「貴方が………アインシュタインさん?」

 

「ハイ、そうです………コレで満足ですか? 西住 みほさん」

 

みほの言葉に、煌人はそう返す。

 

(アレがアインシュタインの正体………)

 

(つーか、某死神ノートの探偵じゃねえ?)

 

大洗男子校の面々も、初めて目にするアインシュタインの姿に内心で様々な感想を抱く。

 

「よく来てくれた、平賀くん。早速だが………」

 

「分かっている。説明は不要だ………全員、コレに目を通してくれ」

 

迫信がそう言って今回の試合での計画について話そうとしたところ、煌人はそう言って迫信の言葉を遮り、何かの用紙を全員に回す。

 

「!? コレはっ!?」

 

用紙を受け取ったみほと一同は驚愕する。

 

何故ならそこには………

 

グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊が今回使用している戦車や車両、武器の詳細スペックデータ、更にグロリアーナの戦車兵、ブリティッシュの歩兵1人1人の詳細なデータ、更にはグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の過去の戦歴や戦術分析データが事詳細に記されていた。

 

「今回の試合のルールは殲滅戦………つまり、相手の戦車を全て行動不能にした方が勝ちです………更に、この前の学内練習試合と違い、随伴する戦車がやられてしまった歩兵部隊は部隊へ合流する事で戦闘を継続する事が出来る………歩兵が上手く立ち回る事が勝利のファクターとなるワケです」

 

驚いている一同に向かって、煌人はそう言いながら、戦車道や歩兵道のルールなどを全文ペラペラと説明し始める。

 

「アインシュタイン。あんさん、何時の間にそんなに戦車道や歩兵道に詳しくなったんや?」

 

すると、そんな煌人に向かって、豹詑がそう言う。

 

「あんなモノは覚えようと思えばすぐに覚えられる」

 

「天才の言う事は違うぜ………」

 

当然の様にそう答えを返す煌人に、海音が呆れる様に呟く。

 

「でも、この情報は一体何処から?」

 

「………国家機密です」

 

グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の詳細な情報データについて問い質す優花里に、素っ気無くそう返す煌人。

 

「ま、兎に角、出来るだけその情報を頭に叩き込んでおいて下さい。作戦については、皆さんが立てたのを遵守させてもらいます。細かな指示は此方から出しますので」

 

最後にそう言うと、煌人はAEC 四輪駆動装甲指揮車の中へと引っ込んで行った。

 

「ふむ、コレは心強いね」

 

「態度には多少問題が有りますが、是ほどの情報を用意・処理出来る………非常な優秀な人物である事が窺えます」

 

迫信と弘樹がそんな事を言い合う。

 

『間も無く、試合開始となります! 両部隊とも、準備は宜しいでしょうか!?』

 

するとそこで、全体アナウンスで香音のそう言う声が響いて来た。

 

「おっと、来たか………全員、準備に掛かれっ!!」

 

それを聞いた迫信がそう号令を掛けると、大洗男子校歩兵部隊の面々は、一斉に車両や装甲車、兵員輸送車に野戦砲や対戦車砲の牽引車へと乗り込む。

 

「皆さん、乗車して下さいっ!」

 

更にみほもそう呼び掛け、大洗女子学園戦車部隊の面々も、其々の戦車へと搭乗して行く。

 

『用意は良いか? 隊長?』

 

と、みほが席へと座ると、Eチームの桃がそう通信を送って来た。

 

「あ、ハイ」

 

『全ては貴様に掛かっている。しっかり頼むぞ』

 

「ハイ………」

 

全てが自分に掛かっていると言う言葉に、みほの顔が緊張で強張る。

 

『心配しなくても良い。基本的には戦車隊の隊長である君の指揮権が優先されるが、歩兵部隊の隊長として、私も出来る限りサポートする。あまり気負い過ぎてはいけないよ』

 

とそこで、それをフォローするかの様に、迫信がそう通信を送って来た。

 

「ありがとうございます………」

 

みほは迫信へそうお礼を言うと、キューポラのペリスコープ越しに弘樹を見やる。

 

「…………」

 

すると、まるで弘樹が視線に気づいた様にⅣ号の方を振り返る。

 

「!?」

 

「…………」

 

一瞬驚いたみほだったが、弘樹は黙って力強く頷いた。

 

「…………」

 

その頷きに、みほは不思議と心が落ち着くのを感じ、緊張が大分緩和される。

 

『では! 試合開始っ!!』

 

そこで、香音が遂に試合開始のアナウンスを発した!

 

「全戦車、パンツァー・フォー!!」

 

「アールハンドゥガンパレード! 全軍突撃! 我に続け!!」

 

そして、みほと迫信の号令で、大洗機甲部隊は前進を始める。

 

遂に、大洗機甲部隊VSグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の戦いの幕が、切って落とされたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合会場の一部………

 

大洗町の外れ・露出している荒野にて………

 

砂埃を上げて、大洗機甲部隊の面々が前進している。

 

「いよいよ始まりましたね!」

 

「うん」

 

Ⅳ号の車内と、みほと優花里がそう言葉を交わす。

 

「罰ゲームの件も有るし、ゼッテェーに負けらんねえな」

 

「当たり前だ。勝つ積もりで行かなければ勝てるモノも勝てん」

 

くろがね四起の後部座席でそう呟く地市に、隣の弘樹がそう言う。

 

「あの~、それで如何するんでしたっけ?」

 

するとそこで、Dチーム・M3リーの通信手である優季がそう質問を飛ばす。

 

「えっ? この程説明された通り、今回は殲滅戦ルールが適用されますので、どちらかの戦車が全てやられたら負けになります」

 

「そうなんだ~」

 

「先ず我々α分隊がAチームと共に偵察へ出ます。各チームは100メートル程前進した所で待機していて下さい」

 

「但し、砲兵部隊と工兵部隊の半数は予め大洗の市街地へ向かい、市街戦を想定しての砲の配備、並びにトラップの設置を行ってくれたまえ」

 

みほと迫信が、改めて作戦を説明する。

 

「「「分かりました!」」」

 

「「「は~い!」」」

 

「「御意!」」

 

「「「「「「「「「「ラジャーッ!!」」」」」」」」」」

 

各戦車チームと歩兵分隊から、多種多様な返事が返って来る。

 

「何か作戦名無いの?」

 

するとそこで、例によって干し芋を齧っている杏が、そんな事を言う。

 

「えっ? 作戦名は………え~と………『コソコソ作戦』です! コソコソ隠れて相手の出方を見て、コソコソ攻撃を仕掛けたいと思います」

 

杏の無茶振りとも言える言葉に、みほは少し悩んだ様子を見せた後、『コソコソ作戦』と言う作戦名を思いつく。

 

「姑息な作戦だな」

 

「第1の作戦を考えたのは桃ちゃんと神居副会長さんじゃない」

 

少なくとも前半部分の作戦は自分と十河が立てた筈なのに、それを忘れて作戦を批判する様な桃に、柚子がそうツッコミを入れる。

 

「α分隊・舩坂 弘樹より西住隊長へ。作戦名は『コソコソ作戦』ですね?」

 

するとそこで、弘樹がみほへそう通信を送る。

 

「あ、うん」

 

「では、略称としまして『コ号作戦』で宜しいでしょうか?」

 

「えっ? 略称?」

 

「咄嗟に言う時に、略称が有った方が宜しいかと思いまして」

 

「う、うん、そうだね………じゃあ、略称は『コ号作戦』でお願いします」

 

本当の軍隊染みた弘樹のやり方に、みほは戸惑いながらもそう返すのだった。

 

『指揮車より全軍へ。予定通りならば間も無く敵の進行予測地点に入る。注意しろ』

 

とそこで、指揮車の煌人から全員にそう通信が送られる。

 

大洗機甲部隊は、荒野が広がっている崖の上に辿り着こうとしていた。

 

「西住隊長。我々が先行して偵察します」

 

「了解しました。全軍、一旦停止して下さい」

 

弘樹がそう進言すると、みほは全軍停止の指示を出し、大洗機甲部隊は停止する。

 

そして、弘樹達の乗るくろがね四起だけが更に進み、姿を隠しながら崖のギリギリまで近づく。

 

くろがね四起を荒野から見えない様に止めると、双眼鏡を手にした弘樹と楓が、崖の傍で伏せて、荒野を見やる。

 

するとそこには………

 

砂煙を上げ、バグパイプを中心とした軍楽隊が奏でる行進曲と共に進軍しているグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の姿が在った。

 

「敵部隊を発見」

 

「スタート地点から東へ向けて進行中………予想通りですね」

 

弘樹と楓がそう言いながら、双眼鏡を覗き込む。

 

『様子は如何ですか?』

 

「敵は隊列を維持して前進しています」

 

「アレだけ綺麗な隊列を組めるなんて………それだけでウチとの錬度の違いが分かりますね」

 

みほの質問に弘樹が回答していると、楓がそんな感想を漏らす。

 

『正面からの撃ち合いは避けるんだ。此方の戦車砲、及び対戦車砲の徹甲弾ではチャーチルとマチルダの正面装甲を抜くのは不可能だ。対戦車兵も攻撃する為には至近距離まで近づかなくてはならない』

 

するとそこで、煌人がそう注意して来る。

 

『分かってる………そこは戦術と腕かな?』

 

(………戦術と腕か)

 

みほの言葉に、弘樹は内心で考え込む。

 

果たして、ほぼ素人しかいない大洗機甲部隊が、みほの期待する戦術や腕を発揮出来るのかと………

 

みほ自身もそれに気づいているのか、声色から少々困った様な様子が感じられた。

 

隊長として弱気は見せられないという責任感と、厳しい現実の前に、彼女なりに何とか出した言葉なのかも知れない。

 

(いや、考えても仕方あるまい………自分達に出来る事を可能な限り実行するまでだ)

 

しかし、そう思ってその考えを振り払う。

 

そして、楓と共にくろがね四起へと戻ると、そのまま本隊へと合流する。

 

「全車、エンジン音が響かない様に展開して下さい」

 

弘樹達が合流したのを確認すると、みほはそう指示を出し、大洗機甲部隊は再度移動を始める。

 

AチームのⅣ号と車両に乗ったα分隊を先頭に進軍する大洗機甲部隊。

 

「敵は東へ向かって進軍中です。再度作戦を確認しますが、私達とα分隊が囮となりますので、皆さんは例の峠で待機していて下さい」

 

「尚、この第1作戦が失敗した場合は、速やかに市街地を利用したゲリラ戦に移る。砲兵部隊と工兵部隊の半分は市街地へ向かってくれ」

 

「ではコレより、コソコソ作戦を決行します!」

 

「「「「「「は~いっ!」」」」」」

 

「「「「「「「「「「ラジャーッ!!」」」」」」」」」」

 

迫信とみほがそう言うと、戦車を中心にした部隊が待ち伏せ地点である峠へ。

 

砲兵部隊と工兵部隊の半分が、市街地へと向かう。

 

そして、Ⅳ号と車両に乗ったα分隊の一部が、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の誘い出しに掛かる。

 

「あの、私達は?」

 

「砲撃を仕掛けて、相手を誘い込む予定なんだけど………上手く行くかな?」

 

華の質問に、みほは若干不安そうにそう言う。

 

「西住戦車隊長。隊長がそんな弱気では困りますぞ」

 

するとそこで、弘樹がそう言って来る。

 

「あ、ゴ、ゴメン………」

 

「もし負けたら、あんこう踊りだしね」

 

「うう………」

 

沙織もそんな事を言い、みほの表情が曇る。

 

「此方は初めての試合なんですし、精一杯やるだけです。頑張りましょう」

 

「そうですよ。教官も言ってましたけど、胸を借りる積もりで行きましょう」

 

そこで華がそうフォローする様に言うと、飛彗もそう言う。

 

「だね。やるしかないじゃん」

 

「俺たちゃ西住ちゃんを信じてやるだけだ」

 

沙織と地市もそんな事を言う。

 

「………うん!」

 

「私はイギリス戦車が動いているところを生で見られるだけで幸せです」

 

そこでみほが笑みを浮かべると、優花里が実に嬉しそうな顔でそう言う。

 

「本当に幸せそうだね………」

 

「分かるな~。俺も待ち望んでたエロゲーのPVが出た時には………!? ゴヘッ!?」

 

「女性の前で何を言っているんだ、お前は」

 

沙織が呆れる様にそう呟くと、了平が余計な事を言おうとして弘樹にど突かれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後………

 

Aチームとα分隊の一部は、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の進行ルート上へ先回り。

 

「敵、前方より接近中。砲撃準備」

 

グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊から見て左前方側の崖の上、岩陰に隠れる様に陣取ると、Ⅳ号が戦車砲の発射態勢に入る。

 

「装填完了」

 

優花里がハッチを開けて、キューポラから上半身を出して双眼鏡でグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の様子を窺っていたみほにそう報告する。

 

「え~と、チャーチルの幅は………」

 

「3.25メートル」

 

「4シュトリヒだから………距離、810メートル」

 

華が照準器を覗きながら、微調整を行う。

 

「良いか。Ⅳ号が砲撃したら、命中の有無に関わらず撤退だ」

 

「「「「「ラジャーッ!」」」」」

 

その横で、弘樹が念を押す様にα分隊員達にそう言う。

 

「撃てっ!!」

 

と、そして遂に、みほの号令でⅣ号が発砲した!!

 

轟音と共に放たれた砲弾は、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の先頭を行っていたチャーチルの隣に居たマチルダⅡの手前に着弾!

 

派手に土煙を上げる。

 

「! 敵襲っ!!」

 

セージがそう叫ぶと、ブリティッシュ歩兵部隊は全員顔を強張らせる。

 

「仕掛けて来ましたわね」

 

「此方もお相手しますか」

 

一方、チャーチル内のオレンジペコとダージリンは、さして慌てる様子も見せず、優雅に紅茶の入ったティーカップとソーサーを手に、無線機で部隊に応戦指示を出す。

 

「発見! 左前方、10時の方向!!」

 

ブリティッシュ歩兵部隊の偵察兵の1人が双眼鏡を覗きながらそう報告を挙げると、チャーチルとマチルダⅡの砲塔が旋回し、照準器内にⅣ号を捉える。

 

「すみません」

 

「大丈夫。目的は撃破じゃないから」

 

「よし、撤退! 敵を引き付けるぞっ!!」

 

華とみほがそう言い合っている間にⅣ号は反転し、α分隊も弘樹の号令で撤退行動に移る。

 

「全部隊、前方Ⅳ号と随伴歩兵部隊に攻撃開始」

 

ダージリンの指示が下ると、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊は陣形を維持したままⅣ号とα分隊の追撃に入る。

 

逃げるⅣ号とα分隊に向かって、口火を切る様にチャーチルが発砲した!!

 

「敵戦車発砲っ!!」

 

くろがね四起の後部座席で身を屈めながら様子を窺っていた弘樹がそう叫ぶと、直後にチャーチルが撃った砲弾が、撤退するⅣ号とα分隊の背後に落ちる。

 

「うひぃっ!?」

 

「慌てるな! 行進間射撃はそうそう当たるモノではない!!」

 

着弾に怯みそうになった了平を、弘樹が叱咤する。

 

「なるべくジグザグに走行して下さい。コッチは装甲が薄いから、まともに喰らったら終わりです」

 

「了解………」

 

みほの指示に、麻子はⅣ号をジグザグに走行させる。

 

「此方もまともに喰らえば終わりだ。絶対に当たるなよ」

 

「無茶を言いますね………」

 

それに倣い、α分隊自動車部隊もジグザグに走行する。

 

そんなⅣ号とα分隊に、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊は陣形を維持したまま、容赦無い行進間射撃を見舞いつつ、徐々に追い縋って来る。

 

「チッ! 好き勝手やりやがってっ!!」

 

と、それに我慢の限界だったのか、白狼が今回の獲物として選んだシュミット・ルビンM1889を後ろを向いて構えると、追跡して来ていたグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の中に居た1両のSASジープに向かって発砲する!

 

「!? うわぁっ!?」

 

「危ねえっ!?」

 

弾丸はSASジープのフロントガラスを割ったが、乗員には命中しなかった。

 

「やったなぁっ!」

 

「お返しだっ!!」

 

すると、助手席に居た歩兵が、反撃とばかりにヴィッカーズ機関銃を発砲開始する。

 

.303ブリティッシュ弾が、岩肌の地面や崖に命中し、砂煙を上げる。

 

更に、それが合図となった様に、ブリティッシュ歩兵部隊の面々も、機関銃やライフルによる攻撃。

 

そして、装甲車部隊からもオードナンス QF 2ポンド砲やボーイズ対戦車ライフルでの攻撃が開始される。

 

「うおっ!?」

 

「この馬鹿野郎! 敵の攻撃が増したじゃねえかっ!!」

 

「スマン! 辛抱堪らなくてよぉ!」

 

地市が白狼に怒声を飛ばすが、白狼はそう返す。

 

「慌てるな。向こうが撃ってる砲弾の殆どは徹甲弾だ。歩兵の様な軟目標には直撃させない限り効果は無い」

 

するとそこで弘樹がそう言って、皆を落ち着かせようとする。

 

「確か、歩兵に対しては炸裂する砲弾………榴弾を使うのが普通なんでしたっけ?」

 

「何で向こうは榴弾を撃ってこないんだ?」

 

飛彗がそう言うと、了平が首を傾げながらそう言う。

 

「オードナンス QF 2ポンド砲は榴弾が撃てない仕様になっているからだ」

 

「えっ? オイ、待てよ、弘樹。俺の記憶が確かなら、装甲車の方は兎も角、同じ砲を搭載しているマチルダ戦車ってのは、歩兵を支援する目的で作られてるんだよな?」

 

「その通りだ」

 

「じゃあ、何で歩兵に撃つべき榴弾が撃てないんだよ!?」

 

地市が『何でだよ!?』と言う様な顔で言う。

 

「イギリス軍は運用思想として、対戦車用と対軟目標用の砲を別に搭載した戦車の方が効率が良いと考えていたからだ。後は車載機銃の面制圧能力を過剰評価していたと言うのも有るな」

 

「イギリス人の考える事は良く分かりませんね」

 

弘樹の説明に、楓は呆れた様にそう言う。

 

「だが、チャーチルは別だ。奴の主砲であるオードナンス QF 75mm砲は榴弾を撃てる。注意しろ」

 

と、弘樹がそう言った瞬間………

 

当のチャーチルが、主砲を発射した!!

 

「! 西住隊長っ!!」

 

「!?」

 

放たれた砲弾がⅣ号を狙っているモノだと気づいた弘樹が声を挙げ、みほは後方を振り返る。

 

幸いにも、砲弾は外れ、Ⅳ号の左隣の地面が爆ぜただけだった。

 

「ふう~~………」

 

「みぽりん! 危ないって!!」

 

みほが安堵の息を吐いていると、通信席のハッチを少し開けて、沙織が身を隠したままみほにそう呼び掛ける。

 

「えっ? ああ、戦車の車内はカーボンでコーティングされてるから大丈夫だよ」

 

「そう言うんじゃなくて! そんなに身を乗り出して、当たったら如何するの!?」

 

沙織にそう返すみほだったが、沙織はそうじゃないと言う。

 

「まあ、滅多に当たるものじゃないし、戦闘服を着ていない人に当たりそうになった砲弾は自爆するから。それに、こうしていた方が状況が分かり易いから」

 

「でも、みぽりんにもしもの事があったら大変でしょっ! もっと中に入って!!」

 

「そうですよ、隊長。状況は逐一我々が報告します。ご自分の安全も考えて下さい」

 

そう沙織が呼び掛けると、弘樹もそう進言する。

 

「2人共、心配してくれてありがとね。じゃあ、お言葉に甘えて………」

 

しかし、そうは言ったものの、みほは10cmほど車内に引っ込んだだけだった。

 

「彼女、意外と度胸がありますね」

 

そんなみほの様子を見て、飛彗がそう呟く。

 

「ハッ! 逃げてばかりで碌に攻撃もしてこないぞ!!」

 

「やっぱり楽勝だぜ! 一気に決めてやるっ!!」

 

とその時!

 

逃げの一手のⅣ号とα分隊の姿に痺れを切らしたのか、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の中の1台のSASジープが、隊列を飛び出して加速する。

 

「! 勝手な事を!!」

 

「オイ、止めろ! 隊列を乱すな!!」

 

ダージリンが不快感を露にし、セージもすぐにそう命令する。

 

「心配しないで下さい、隊長方!!」

 

「高が弱小チームの戦車1両! すぐに仕留めてやりますよっ!!」

 

しかし、SASジープに乗っていた隊員達はそう返し、Ⅳ号とα分隊へと更に接近。

 

そして、後部座席に居た対戦車兵の隊員が立ち上がり、PIATを構えた。

 

「! 弘樹ぃっ! 敵の対戦車兵だっ!!」

 

「!!」

 

それを見た地市が叫びを挙げると、弘樹はすぐさま、三八式歩兵銃に二式擲弾器を装着して構える。

 

「了平! 手榴弾を投擲しろっ!!」

 

更に了平にそう指示を下す。

 

「!? お、おうっ!?」

 

一瞬戸惑いながらも、了平はM24型柄付手榴弾・俗称ポテトマッシャーのピンを抜き、迫って来ていたSASジープ目掛けて投げつけた!

 

「手榴弾だぞっ!」

 

「分かってるって!」

 

地面の上をバウンドしながらSASジープへと向かっていたM24型柄付手榴弾だったが、SASジープは寸前でハンドルを切って回避する。

 

「そんな物にやられるかってんだっ!!」

 

そう言って、後部座席の居た対戦車兵が、PIATの照準器にⅣ号を捉えたが………

 

「!………」

 

SASジープの回避先を読んでいた弘樹が、二式擲弾器から30mm榴弾を発射!

 

30mm榴弾はSASジープの車体前部へと直撃!

 

エンジンが爆発して車体が前転する様に回転!!

 

「「「「!? うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」」

 

搭乗員達は全員投げ出されて地面を転がった!!

 

「おおっ! やったじゃねえか、弘樹!!」

 

「流石です、舩坂さん!!」

 

「油断するな。我々の任務は飽く迄囮だ。目的を履き違えるな」

 

地市と楓が歓声を挙げるが、弘樹は三八式歩兵銃から二式擲弾器を外しながら、冷静にそう返すのだった。

 

「大丈夫かっ!?」

 

セージが乗っていたSASジープが、投げ出されて地面に転がった隊員達の傍で停まる。

 

「な、何とか………」

 

「すみません………自分は戦死です」

 

無事な隊員が返事を返すが、PIATを持っていた対戦車兵が戦死判定を受けた事を報告する。

 

「全く………だから油断するなと言っただろう! ダージリン隊長。隊員の回収は私が行います。隊長達は追撃を続けて下さい」

 

「ええ、その積もりですわ」

 

そんなセージの乗ったSASジープを残し、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊はⅣ号とα分隊の追撃を続ける。

 

「………アールグレイ。先程の攻撃………見ていましたの?」

 

「無論だ」

 

とそこで、ダージリンはアールグレイへそう通信を送る。

 

「あの距離………しかも悪路で揺れる車上から擲弾器で正確にSASジープのエンジンを直撃させましたわ」

 

「やはりあの男………相当の手練だな。恐らく、歩兵道の経験者だろう」

 

先程、SASジープを仕留めた弘樹に様子を思い出し、そんな事を言い合うダージリンとアールグレイ。

 

「よもやこの学園艦にアレ程の歩兵が居たとはな………」

 

「嬉しそうね、アールグレイ」

 

と、僅かにアールグレイの声色に高揚の色を感じたダージリンがそう言う。

 

「…………」

 

アールグレイはその言葉には返事を返さず、ただ無言で脇腰に挿していたフルーレの柄を握り締めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

大洗機甲部隊が、待ち伏せしているポイントでは………

 

崖に挟まれた1本道を見渡せる峠の上に、大洗女子戦車隊の戦車が1本道を睨む様に整列している。

 

更に砲兵達も、野戦砲や対戦車砲を向けており、築かれた塹壕や岩陰には、対戦車兵を中心にした大洗男子歩兵部隊が展開している。

 

「かっくめーいっ!」

 

「しまった、如何しよう~?」

 

「何時も心にバレーボールッ!!」

 

「そーれっ!」

 

しかし、待機と言われたにも関わらず、1年生達のDチームは全員が戦車の上でトランプに興じ、バレー部のBチームは、車外に出てバレーの練習をしている。

 

「遅い!」

 

「待つのも作戦の内だよ~」

 

「いや~、しかし………」

 

生徒会のEチームも、桃は即応出来る態勢で居るものの、柚子と杏は完全に車外に出ている。

 

特に杏など、戦車の上にサマーベッドを乗せて、その上に寝転んでいる。

 

待機の状態が守れているのは、歴女達のCチームだけと言って良い。

 

「お前達! 待機を何だと思っているんだ!! ちゃんと戦車に乗り込んで即応出来る態勢で居ろっ!!」

 

そんな光景に、十河がそう叫んだが………

 

「ええ~っ? 別に良いじゃ~ん」

 

「そうそう。ただ待ってるんじゃ退屈だし~」

 

Dチームのあやと優季が、そう暢気そうに言葉を返す。

 

「西住総隊長の命令だぞ! くだらない事をしてないで命令を遵守しろっ!!」

 

「くだらない事っ!?」

 

「私達のバレーに掛ける思いをくだらない事だなんて言わせないよ!!」

 

とイラついた十河がそう言ってしまうと、典子と忍が噛み付いてきた。

 

「な、何をする!? 止めろっ! 俺はε分隊の副隊長だぞ!? オイッ!? うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」

 

「ふ、副会長~!?」

 

「お~い、試合中に揉め事起こさんときぃ」

 

バレー部にボコボコにされる十河を見て顔を青褪めさせる逞巳と、暢気そうにそう言う大河。

 

「会長が居てくれればビシッと纏めてくれたんだろうけどなぁ………」

 

「市街地に配置する砲兵部隊と工兵部隊の指揮を取る為に、アインシュタインさんと一緒に行っちゃいましたからね」

 

第2作戦の為に市街地に配置した砲兵部隊と工兵部隊の指揮を取る為、煌人のAEC 四輪駆動装甲指揮車で市街地の方へ行ってしまった迫信の事を思い出しながらそう言い合う俊と清十郎。

 

「ねえ、皆! 取り合えず、戦車の中には居た方が良いよぉっ!!」

 

と、38tのハッチを開けて、蛍が皆にそう呼び掛けた瞬間………

 

『此方Aチーム! 現在敵を引き付けつつ待機地点に後3分で到着します!』

 

みほからの通信が、全戦車の通信兵と随伴歩兵分隊の分隊長へ送られて来た。

 

「Aチームが戻って来たぞっ! 全員戦車に乗り込めっ!!」

 

「ええ、嘘~?」

 

「折角革命起こしたのに」

 

「ボールはチャンと持って!」

 

「ハイ、キャプテンッ!!」

 

桃の言葉に、1年生チームが不満を露にM3リーの中へと戻り、他のバレー部も次々に八九式へ乗り込む。

 

「よっしゃあっ! いよいよやでぇっ!!」

 

「フフフ………ルートには既に対戦車地雷を中心にした地雷を多数設置済み。予め全ての地雷の位置を把握しているⅣ号とα分隊が通り過ぎた後に立ち往生したところを一斉砲撃だ! 第2作戦を使うまでも無い! この作戦の手柄は頂いたっ!!」

 

大河がそう声を挙げていると、何時の間にか復活した十河が自信満々に笑いながらそう言う。

 

しかし、この直後………

 

第1作戦は思わぬ形で頓挫する事になる………

 

『後600メートルで敵部隊射程内です!』

 

みほの通信を聞きながら、敵部隊の登場を待ち構える大洗機甲部隊。

 

やがて、敵を引き付けて来たⅣ号とα分隊がキルゾーン内へと入り込む。

 

と、その瞬間!!

 

「! 撃て、撃てぇっ!!」

 

「!? 何ぃっ!?」

 

桃がそう命令を下し、十河が驚いていると、全戦車から一斉に砲撃が開始される!!

 

「うわああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」

 

「喰らえ喰らえ喰らえぇっ!!」

 

更に、その命令で勘違いしてしまったδ分隊の1年生達を中心に、歩兵部隊の面々も射撃と砲撃を開始した!!

 

「!? 何っ!?」

 

「あっ!? 待って下さいっ!!」

 

弘樹とみほの驚きの声が挙がる中、Ⅳ号とα分隊の車両のすぐ傍に銃弾や砲弾が着弾する!

 

「馬鹿! 止めろっ!! フレンドリーファイヤだっ!!」

 

「味方を撃って如何すんのよぉっ!?」

 

「クソッ! 冗談だろ!!」

 

地市と沙織が悲鳴の様に叫び、白狼も悪態を吐く。

 

「オ、オイッ!? 味方だぞっ!!」

 

「皆さん! ストープッ! ストープッ!!」

 

勘違いをして攻撃を始めた味方部隊に、磐渡と清十郎が慌ててそう呼び掛ける。

 

しかし、攻撃はすぐには止まず、暫しの間行われる。

 

「「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」」

 

運悪く(恐らく38tの物と思われる)砲弾の直撃を浴びたくろがね四起が爆発し、乗員は全員投げ出されて戦死判定となった。

 

更に別の九三式装甲自動車が、砲弾を回避しようとハンドルを切ったところ、対戦車地雷を踏ん付けて爆発し、車両は大破して搭乗員も全員戦死判定となる。

 

また、外れた砲弾や銃弾が、事前に仕掛けておいた地雷を爆発させてしまう。

 

「あああ~~っ!? 折角仕掛けた地雷がぁ~~~っ!?」

 

「クッ! いきなり作戦が頓挫か!?」

 

十河が絶望した様な悲鳴を挙げる中、如何にか友軍の誤射を交わして合流出来た弘樹達が、くろがね四起を止めると、同時に飛び降り、塹壕の中へと転がり込む。

 

Ⅳ号も如何にか味方と合流する。

 

その直後に、本命であるグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊がやって来る。

 

「こんな安直な囮作戦………私達には通用しないわ」

 

「しかも、先程の誤射で向こうの配置は予測済みだ」

 

チャーチルの中で優雅に紅茶を飲みながらダージリンがそう言うと、追い付いたセージもメガネをクイッと上げる。

 

そして、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊は、進軍速度を変えずにキルゾーンへ堂々と進入して来る。

 

「撃てぇっ!!」

 

再び桃が勝手に命令し、再び大洗機甲部隊は一斉攻撃を開始する。

 

「撃て撃て撃てぇっ!!」

 

桃がそう叫ぶ中、攻撃は続けられるが、先程の混乱の事もあり、敵に全く損害を与えられない。

 

オマケに、設置しておいた地雷を自分達で殆ど破壊してしまった為、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊は優々と左右に分かれて展開し、大洗機甲部隊を包囲に掛かる。

 

「そんなバラバラに攻撃しても、履帯を狙って下さい!!」

 

「河嶋広報官殿! 落ち着いて下さいっ!!」

 

みほと弘樹がそう言うが、完全に頭が沸騰している桃の耳には入らない。

 

「も、桃ちゃん、落ち着いて………」

 

「五月蝿いっ! とっとと弾を込めろぉっ!!」

 

「ヒイッ!? わ、分かったよ!!」

 

38tの装填手をしている蛍も桃を止めようとしたが、完全に血走った目でそう言う桃に逆らえず、装填に従事させられる。

 

「あっちゃ~、またかぁ」

 

「桃ちゃんの悪い癖が………」

 

そして他人事の様にそう呟く杏と、そう言いながらも操縦で手が離せず、桃を止める事が出来ない柚子。

 

他の戦車隊も、そんな桃のトリガーハッピーに釣られる様に、バラバラのまま砲撃を続けている。

 

そうこうしている内に、遂にグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊は、大洗機甲部隊を左右から挟み込み、包囲した。

 

「もっと撃てぇーっ! 次々撃てぇーっ! 見えるモノは全て撃てぇーっ!!」

 

「オイ………誰かあの馬鹿を黙らせろ」

 

そんな中でも勝手に命令を出し続ける桃に、熾龍が切れ気味の様子でそう言う。

 

『こちら砲兵部隊。砲の設置、完了しました』

 

そこで、ブリティッシュ歩兵部隊の砲兵隊から、砲の設置が完了したとの報告が、ダージリンに挙げられる。

 

「了解しましたわ。では、砲撃を始めて」

 

『イエス・マイ・ロードッ! 支援砲撃! 始めっ!!』

 

ダージリンが命令を下すと、砲兵隊を中心とした部隊から支援砲撃が開始された!!

 

オードナンス QF 18ポンド砲、オードナンス QF 3.7インチ山岳榴弾砲、SBML 2インチ迫撃砲の砲弾が、大洗機甲部隊へと降り注ぐ。

 

「! 敵の砲撃だぁ! 伏せろぉっ!!」

 

弘樹がそう叫んだ次の瞬間には、大洗機甲部隊が展開している陣地の彼方此方で爆発が挙がる。

 

「うわぁっ!?」

 

「うひぃっ!?」

 

「キャアァッ!?」

 

「怖いよぉっ!!」

 

敵の砲爆撃前に、大洗機甲部隊は、戦車隊、歩兵隊共に浮き足立ち始める。

 

「全車両、前進」

 

そして、その混乱を突いて、グロリアーナ戦車隊と、砲兵を除くブリティッシュ歩兵部隊が前進を開始した。

 

「………攻撃」

 

砲爆撃を浴びている大洗機甲部隊に、容赦無く戦車砲での攻撃を開始するグロリアーナ戦車隊。

 

「撃ち方始めっ!!」

 

更に、ブリティッシュ歩兵部隊も、機関銃での掃射を始める。

 

岩肌の地面が、弾丸によって耕される。

 

「うわあっ!?」

 

「チキショウッ!!」

 

やられてばかりでは居られないと思ったのか、1人の突撃兵が塹壕から身を乗り出し、MAS 36小銃で射撃を始めたが………

 

「馬鹿っ! 今出たらっ!!………」

 

「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」

 

地市が慌てて叫ぶが時既に遅く、1人だけ身を乗り出した為に良い的となってしまった突撃兵は、集中砲火を浴びて塹壕の中に転がる。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「す、すみません………やられました………」

 

転がった突撃兵に声を掛ける楓だったが、既に戦死判定が出されていた。

 

「ええいっ! まどろっこしいでぇっ!!」

 

塹壕から身を出さず、一〇〇式機関短銃だけを向けて適当に弾幕を張っていた大河が愚痴る様にそう声を挙げる。

 

「砲兵っ! 援護砲撃は如何したんだよっ!!」

 

「無茶言わないで下さいっ! コッチが援護して欲しいくらいですよっ!!」

 

磐渡が砲兵隊に向かってそう叫ぶが、砲兵隊も敵の砲兵隊からの砲爆撃を集中的に浴びており、反撃に精一杯で歩兵達を援護する暇が無かった。

 

「チキショウッ! ブリテン気触れ共めぇっ!!」

 

そう悪態を吐きながら、塹壕から身を乗り出してM1 60mmバズーカを、チャーチル目掛けて放つ重音。

 

しかし、バズーカから放たれたロケット弾は外れ、チャーチルの傍の地面を爆ぜさせただけだった。

 

重音は逆に位置を特定され、車載機銃の7.92mmベサ重機関銃の銃撃を浴びる。

 

「うわあぁっ!? バンド万歳ぃっ!!」

 

「! 重音ううううううぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーっ!!」

 

バンドへの情熱を叫びながら戦死判定を受けた重音を見て、磐渡が叫びを挙げる。

 

徐々にグロリアーナ戦車隊が距離を詰めて来て、砲撃の激しさが増す。

 

余りの激しさの前に、砲撃を止め始める戦車や砲兵が出始める。

 

「落ち着いて下さい! 攻撃止めないで!」

 

と、みほが落ち着けと叫んだ次の瞬間!!

 

「無理ですぅっ!!」

 

「もう嫌ぁっ!!」

 

Dチームのあゆみと優季の悲鳴が通信回線に響いたかと思うと、何とDチームの全乗員が、M3リーを放棄し、車外へと脱出。

 

そのまま砲弾を銃弾が飛び交う戦場を走り抜けて、逃亡してしまった。

 

「!? コラッ! 貴様等何処へ行くっ! 戻れ! 戻らんかぁっ!!」

 

「アチャ~、敵前逃亡かよ………やっぱ士気が低過ぎたなぁ………」

 

必死に塹壕の中に伏せながら、逃亡するDチームに向かってそう喚く十河と、まるで他人事の様にそう呟く俊。

 

「ちょっ! 澤さん! 大野さん! 宇津木さん! 丸山さんまで、何処へ行くんですか!?」

 

「Wa、 wait! Getaway during the game 's risk」

 

「だからジェームズ! 日本語で喋ろうって!」

 

一方、随伴している戦車チームの戦車兵が逃亡してしまい、δ分隊の面々は浮き足立つ。

 

「戦車道の選手が逃げたら俺達如何すりゃいいんだよ!」

 

「み、皆! 慌てないでよ!」

 

「そうさ、こう言うときこそ………」

 

するとそこで、δ分隊の分隊長である勇武が徐に立ち上がる。

 

「おお! 部隊長が立ち上がった!」

 

その姿に、分隊員達は期待の眼差しを向けるが………

 

「逃げるが勝ちだ!!」

 

勇武はそう言うと、塹壕から飛び出し、Dチームの後を追いかけ始めた!!

 

「って、やってる事が変わらねーじゃねーか!!」

 

「この人でなし!」

 

分隊長の逃亡に、δ分隊員達から罵声が挙がる。

 

「!  Face down everyone!」

 

「だから日本語で………って! ええええええええええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーっ!!」

 

正義がジェームズにツッコミを入れていると、ブリティッシュ歩兵部隊の対戦車兵が放ったPIATの弾が、1年生の乗っていたM3リーに命中!!

 

「!? ギャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!?」

 

真っ先に1人だけ逃げていた勇武はその爆風に巻き込まれダウン、戦死と判定される………

 

「分隊長おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!?」

 

「分隊長がやられたぁっ! もうお終いだぁっ!!」

 

「逃げろぉっ!!」

 

更にそれに触発された様に、δ分隊メンバーを中心に戦意喪失したメンバーが戦線を放棄し始める!!

 

「! イカンでござる!」

 

「マズイなぁ………」

 

その光景に小太郎が冷や汗を浮かべ、大詔も苦い表情を浮かべる。

 

「敵前逃亡した奴は………後で銃殺刑だ」

 

「! 怖ぇよ! ドスが効いた低い声で物騒な事言うなっ!!」

 

額に青筋を浮かべた熾龍が呟く様にそう言い、それを近くで聞いた秀人はビビりながらツッコミを入れる。

 

とそこで、砲撃を続けていた38tに至近弾が着弾。

 

車体が一瞬浮き上がったかと思うと、左の履帯が脱落した。

 

「アレ? アレレッ!?」

 

「ど、如何したの!?」

 

「ああ~、外れちゃったね~、履帯。38tは外れ易いからなぁ」

 

突如コントロール不能になった38tに困惑する柚子と蛍と、冷静に状況を分析する杏。

 

履帯が脱落した38tは、左に流される様に、窪地へと落ち込んだ。

 

「武部さん! 各車状況を確認して下さい!」

 

「あ、う、うん!」

 

そこでみほは、各戦車チームに状況報告を求める。

 

「えっと………Bチーム、如何ですか!?」

 

「何とか大丈夫です!」

 

Bチームの妙子がそう返信する。

 

「Cチーム!」

 

「言うに及ばず!」

 

勇ましい返事を返すエルヴィン。

 

横ではカエサルも頷いている。

 

「Dチーム!」

 

全員が脱出してしまったDチームのM3リーからは、当然応答が無い。

 

「Eチーム」

 

「駄目っぽいね」

 

そして、Eチームは必死に窪地から脱出しようとしている柚子の横で、まるで他人事の様に杏がそう言う。

 

「無事な車両はトコトン撃ち返せぇっ!!」

 

「誰か桃ちゃんを止めて~っ!」

 

そして相変わらずトリガーハッピーに勝手に命令を下す桃と、戦々恐々で装弾を続ける蛍。

 

「私達、如何したら?」

 

「隊長殿! 指示を!!」

 

「撃って撃って撃ちまくれぇーっ!!」

 

総隊長であるみほに指示を求める典子とエルヴィンと対照的に、桃は頭に血が上り切っている状態で攻撃指示を勝手に出し続ける。

 

その間にも、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊は包囲を完了しようとする。

 

「全滅するぞぉっ!!」

 

「このままじゃやられるっ!!」

 

「俺達も逃げようっ!!」

 

「どうやってだよぉっ!!」

 

歩兵部隊も最早瓦解寸前であり、反撃も出来ずに悲鳴を挙げて塹壕の中に蹲るばかりだった。

 

「クソォッ!………!? うおぉっ!?」

 

試製四式七糎噴進砲でマーモン・ヘリントン装甲車を1両撃破した地市だったが、ブリティッシュ歩兵部隊の機関銃射撃が目の前の地面を耕し、慌てて塹壕の中へと引っ込む。

 

「駄目だ、弘樹! もう持たねえぞっ!!」

 

新しいロケット弾を試製四式七糎噴進砲に込めながら、近くに居る弘樹へそう叫び掛ける地市。

 

「…………」

 

しかし、何故か弘樹は塹壕の中で姿勢を低くしたままで黙り込んで居る。

 

「? 弘樹?………!? うおぉっ!?」

 

地市は弘樹の顔を覗き込み、驚愕する。

 

何故なら今の弘樹は………

 

『鬼』と表現するのが相応しい、怒りの表情を浮かべかけていたのだ。

 

「ひ、弘樹さん?………」

 

「うわあぁっ!? もう駄目だぁっ!!」

 

思わずさん付けで地市が声を掛けた瞬間、歩兵の誰かがそんな悲鳴を挙げる。

 

と、その次の瞬間!!

 

「喧しいぃっ!! 全員黙れえええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーっ!!」

 

戦場中に響き渡る程の大声で、弘樹がそう怒鳴った!!

 

「「「「「「「「「「!?!?」」」」」」」」」」

 

その余りの声の大きさに、大洗機甲部隊は元より、敵のグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊も動きを止める。

 

「ふ、舩坂………くん?」

 

「さっきから見っとも無くギャーギャーと喚きおってっ! 貴様等それでも日本男児かっ!? 大和撫子かっ!? 情けないとはこの事だぁっ!!」

 

唖然とした一同の中で、みほが何とか通信を送ろうとしたが、それを遮って弘樹は叫びを挙げる。

 

「我々はまだ敗北したワケでは無いっ! 例え最後の1兵となろうと、決しては戦う事を止めるなぁっ!! 栄えある大洗機甲部隊の意地! 見せてやれぇっ!!」

 

「…………」

 

「あの男………」

 

味方を鼓舞する様にそう叫ぶ弘樹の姿に、ダージリンは唖然としてティーカップから紅茶がだだ零れとなっており、アールグレイはそんな弘樹の姿に見入っている。

 

「大洗の荒廃、此の一戦に在り! 各員一層奮励努力せよっ!! 大洗! バンザーイッ!!」

 

最後にそう叫んで弘樹が万歳をしたかと思うと………

 

「「「「「「「「「「バンザーイッ!!」」」」」」」」」」

 

呼応するかの様に、生き残っていた大洗男子校歩兵部隊の面々も、一斉に万歳を行った!

 

「………凄い」

 

「皆さん、元気を取り戻しています」

 

「アイツは生まれる時代を間違ったんじゃないのか?」

 

「流石英霊の子孫です! 味方の士気崩壊を持ち直させましたよっ!!」

 

沙織、華、麻子、優花里がそんな感想とツッコミを漏らす。

 

「舩坂くん………」

 

みほも、そんな弘樹の姿に見入っていた。

 

『α分隊分隊長舩坂よりAチームへっ!! 西住隊長をお願いしますっ!!』

 

「!? ふえっ!? あ、ハイッ!!」

 

とそこで、当の本人から通信が入って来て、沙織が慌ててみほへと回線を繋ぐ。

 

『西住隊長! 意見具申させて頂きます!!』

 

「! どうぞ!!」

 

『残念ながら第1作戦は失敗です! 直ちにこの場より撤退し、第2作戦の市街地を使ったゲリラ戦へと持ち込む事を提案致しますっ!!』

 

「その意見を許可します! 全部隊、この場より撤退!! 市街地へ移動しゲリラ戦を仕掛けますっ!! 作戦名は『もっとコソコソ作戦』っ!! 略称、『コ二号作戦』です!!」

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

弘樹とそう言葉を交わすと、みほは全部隊に撤退を命令。

 

第2作戦を実行する為、市街地への移動に入る。

 

恐らくみほは気づいていないだろうが、日本兵と化した弘樹に対応するかの様に、みほの口調まで軍人調になっていた。

 

「煙幕手榴弾及び発炎筒投擲ぃっ! 砲兵! 煙幕弾を撃てっ! その後砲は放棄して構わん!! 西住総隊長に続けぇっ!!」

 

「「「「「「「「「「了解ぃっ!!」」」」」」」」」」

 

弘樹がそう叫ぶと、大洗男子校歩兵部隊の面々は、一斉に煙幕手榴弾と発炎筒を投擲。

 

更に砲兵部隊も、煙幕弾を撃ち始める。

 

忽ち辺り一面が、濃い煙幕に覆われ、視界がまるで効かなくなる。

 

「!? 私とした事が………戦闘中に呆然とするなど………」

 

とそこで我に返ったダージリンが、零れた紅茶を見ながら悔しそうにそう呟く。

 

「ダージリン、如何するの?」

 

「大洗機甲部隊を追撃しますか?」

 

するとそこで、同じ様に我に返ったアッサムとオレンジペコが指示を求める。

 

「いえ、一旦煙幕が晴れるまで待ちますわ。敵陣だった場所を進むのに、視界が効かない状態なのは望ましくありませんわ。敵が自陣に罠を残していないとは限りませんから」

 

先程まで紅茶をだだ零ししていたのを忘れる様に、ダージリンは飽く迄優雅に、煙幕が晴れるまで待機を命じる。

 

「確かに………ココは一旦待った方が良さそうだ」

 

セージもダージリンの意見に賛成し、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊は、一旦煙幕が晴れるまでの間、その場で待機するのだった。

 

大洗機甲部隊の逆転なるか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

いよいよガルパン人気に火が付いた切っ掛け………
グロリアーナとの練習試合です。
歩兵が居る分、様子が変わってますが、基本的な流れは一緒です。

今回は最初の待ち伏せが失敗するシーンまでを書かせていただきました。
次回はあの名シーン………
大洗町での市街戦となります。

そして今回………
主人公の舩坂 弘樹が、大日本帝国軍人の血を引いている事を思わせる一端を見せました。
今後もこういうシーンが出てきたりしますので、ご了承ください。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。
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