ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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あけましておめでとうございます。

今年も、『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』をよろしくお願い致します。


第123話『西部学園です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第123話『西部学園です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空教官の厚意で、東富士演習場の一部を借り………

 

合宿による訓練を始めた大洗機甲部隊。

 

初日は士気を上げる為に楽しいキャンプと洒落込んだが………

 

その最中に………

 

ジェームズが走りの師であり、親友である『オリバー』と再会………

 

何と彼は今、西部学園で歩兵道をやっていた………

 

ライバルとして対決する事になったオリバーに、ジェームズは闘志を燃やす。

 

そして夜が明けて合宿2日目………

 

いよいよ本格的な訓練が開始される………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東富士演習場の一角………

 

「撃てぇっ!」

 

Ⅳ号のキューポラから姿を見せているみほの号令が掛かると、横一列に整列していた大洗戦車部隊の戦車が次々に発砲!

 

遠方に在った標的に向かって砲弾が飛んで行く。

 

その内の8割が、的を捉えて破壊する。

 

(皆の腕も上がって来てる。凄いな………まだ戦車道を始めてほんの数ヵ月なのに………)

 

戦車チームの皆の腕が上がっている事を見たみほが、ほんの数ヶ月前までは只の素人の集団だった事を思い出して、感慨深く感じる。

 

「いや~、それにしても凄いですね~。さしずめ、大洗戦車部隊総火演と言ったところでしょうか」

 

とそこで、装填手席側の砲塔ハッチが開いて、優花里が顔を出したかと思うと、砲撃を続けている周りの戦車を見回しながらそう言う。

 

そう………

 

今、大洗戦車チームが砲撃訓練を行っている場所は………

 

陸上自衛隊の富士総合火力演習………

 

俗に総火演と呼ばれている、陸上自衛隊最大の火力演習が行われている場所なのだ。

 

「こんな場所で訓練出来るなんて………もう空教官には、足を向けて寝られないであります!」

 

「未だにゆかりんのこういう時のテンションて慣れないなぁ………」

 

感激の余り、熱い涙を流している優花里を車内から見ながら、沙織はそう呟く。

 

「アハハハ………歩兵部隊の皆の方は如何かな?」

 

そんな優花里の様子に苦笑いしながら、別の場所で新規の装備の投入訓練を行っている歩兵部隊の事を考えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車チームが砲撃訓練を行っている場所から少し離れた場所にて………

 

「敵機来襲ーっ!!」

 

大洗歩兵部隊の隊員の1人がそう声を挙げたかと思うと………

 

無人標的機が、低高度から大洗歩兵部隊の頭上へと侵入して来る。

 

そのまま胴体部に装備されていた爆弾を落そうとするが………

 

「撃ち方始めぇーっ!!」

 

明夫がそう号令を掛けると、対空機関砲が火を噴き、対空砲火が張られた!!

 

曳光弾の混じった機関砲弾が、青い空に鮮やかな軌道を描く。

 

と、その内の1発が無人標的機の左翼を撃ち抜いた!

 

左翼に空いた穴から炎が上がると、無人標的機は錐揉み回転を始めて、そのまま墜落して爆散した。

 

「3時方向より新たな敵機!」

 

とそこで、1人の偵察兵がそう声を挙げ、3時方向からの新たな無人標的機の襲来を報告する。

 

「任せろ!」

 

すると、その3時方向から向かって来る無人標的機に対し、対空戦車『メーベルワーゲン』の砲塔に乗って居た砲兵がそう声を上げ、3.7cm FlaK43/1の照準を合わせる。

 

「喰らえっ!!」

 

そう叫んで引き金を引くと、曳光弾交じりの3.7cm機関砲弾が、山形の軌道を描いて無人標的機へと向かう。

 

機関砲弾は無人標的機のエンジンと胴体を撃ち抜き、無人標的機から炎が上がったかと思うと、そのまま空中で爆散する。

 

「まだ来るぞぉっ!!」

 

更に別方向から来た無人標的機を、ボフォース 40mm機関砲に付いた砲兵が機関砲弾を浴びせる。

 

「高高度に戦略爆撃機!」

 

とそこで、またも偵察兵からそう報告が挙がる。

 

その報告通り、大洗歩兵部隊の頭上の遥か上空に、戦略爆撃機を模した無人標的機の姿が在った。

 

高高度である為、対空機関砲や機銃では届かない。

 

戦略爆撃機型の無人標的機は、機体下部のハッチを開けると、大洗歩兵部隊に爆弾の雨を浴びせようとするが………

 

砲撃音が響き渡ったかと思うと、戦略爆撃機型の無人標的機の解放されたハッチ部から砲弾が飛び込み、爆発!

 

忽ち投下しようとしていた爆弾が誘爆し、戦略爆撃機型の無人標的機はそのまま空中で大爆発した!

 

「やったっ!!」

 

「流石だね………アハト・アハト」

 

竜真が思わず歓声を挙げ、砲撃した誠也も、それを行った高射砲………

 

俗に『アハト・アハト』と呼ばれている、『8.8 cm FlaK 36』の性能に、手放しで感動している。

 

「うむ、良い感じだね」

 

「コレである程度は敵の航空機による攻撃に対抗出来ますね」

 

一連の様子を見ていた迫信がそう呟き、傍に居た弘樹もそう言う。

 

そう………

 

大洗歩兵部隊に新たに配備された装備とは………

 

『対空火器』であった。

 

前回、クレオパトラ&スフィンクス機甲部隊との戦いで、大洗側の航空支援が敵の航空支援によって潰されかけた。

 

その事を踏まえ、今後の試合で、敵の航空支援が襲い掛かって来る事になると考え、自衛用の手段として、対空火器の配備が開始されたのである。

 

機関銃や機関砲に加え、整備部がⅣ号と38tの車体部品の予備を使って、『対空戦車』の製造にも成功した。

 

『対空戦車』とは、所謂自走式対空砲であり、その名の通り、車体に戦車の物が使われている。

 

しかし、その使用目的上、オープントップの状態でしか運用出来ない為、現状のレギュレーションでは戦車でありながら戦車道では使用出来ず、歩兵道側の装備となっている。

 

この他にも、非装甲車両や装甲車両の一部にも対空砲を搭載し、自走式対空砲化を行っている。

 

更に、高射砲も配備され、砲兵部隊の一部が高射砲兵へと兵種転換を行っている。

 

そして、その配備された高射砲の中には………

 

あのアハト・アハトも有ったのである。

 

「確かコイツはあのティーガーの主砲にもなったんだろう?」

 

「うむ、かのエルヴィン・ロンメル将軍が、僅か9門のアハト・アハトで、マチルダⅡを中心としたイギリス軍の戦車91両を葬り去った事は有名だな」

 

磐渡がアハト・アハトを見上げながらそう言うと、十河がロンメルのエピソードを持ち出してそう言う。

 

「って事は、コイツが有れば対戦車戦も安心ってワケだ!」

 

「いや、そうとも限らんぞ………」

 

弦一郎が歓喜の声を挙げるが、それに水を差す様に弘樹がそう言って来る。

 

「? 如何言う事だよ、弘樹?」

 

「確かに、コレを戦車砲に転用したティーガーを初めとしたドイツ戦車は驚異的な活躍を見せた。だが………コレは飽く迄『高射砲』だ」

 

「戦車砲に比べれば取り回しは格段に悪い。敵歩兵に肉薄されれば何も出来ない。オマケに装甲に守られているワケではないから、相手からの攻撃には非常に脆い」

 

弦一郎が尋ねると、弘樹と迫信がそう説明する。

 

そう………

 

高射砲としてだけでなく、対戦車砲としても優秀な戦果を挙げたアハト・アハトであるが………

 

飽く迄高射砲である為、その取り回しは悪く、肉薄攻撃には脆く、装甲が無いので敵からの攻撃に対する防御手段も皆無である。

 

完全無敵とまでには行かないのだ。

 

「何や、期待させといてソレかいな………」

 

「でもまあ、イザと言う時には頼りになる物があるのは安心出来ますよ」

 

大河がそう言って溜息を吐くと、楓がフォローの様にそう言う。

 

「ところで、了平達の方は如何だ?」

 

とそこで、弘樹が楓にそう尋ねた。

 

「今、地市が扱いてます。でも、ホントに良いんですか? アレは流石にやり過ぎじゃ………」

 

「不埒な真似をしようとした罰だ。ああでもしなければ示しがつかん」

 

「了平………死なないと良いですけど」

 

弘樹とそう会話を交わすと、楓はそんな心配をするのだった………

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

楓に心配されていた了平はと言うと………

 

「ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!! 助けてくれええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」

 

心の底からの悲鳴を挙げて、何人かの歩兵と共に逃げている了平。

 

それを追っているのは………

 

「了平ーっ! 逃げるなぁーっ! 向かって来いーっ!!」

 

M20装甲車に乗った地市だ!

 

了平と歩兵達を追い回し、轢こうとしている。

 

良く見れば、了平と一緒に居る歩兵達は………

 

昨晩、戦車チームの風呂を覗こうとした面子であった。

 

「何でこんな目に遭うんだよーっ!!」

 

「恨むんなら、不埒な事をしようとした自分自身を恨むんだなぁっ!!」

 

了平が悲鳴を挙げた瞬間、地市がそう言ってアクセルを踏み込む。

 

M20装甲車が一気に速度を上げ、了平達の中へと突っ込む!

 

「!? うわぁっ!?」

 

「あぶなっ!?」

 

慌てて横っ飛びする様に回避する覗き歩兵達。

 

「!? ぐへえっ!?」

 

しかし、了平は逃げ切れず、真面に跳ねられる!

 

勿論、戦闘服を着ている為、怪我は皆無だが、かなりの激痛である。

 

「綿貫さん!」

 

と、覗き歩兵の1人が了平を助け起こしていると、M20装甲車が反転して来る。

 

「!? うわぁっ!? また来たぁっ!?」

 

「逃げるなぁーっ! 車に向かって来いーっ!!」

 

了平達が逃げ出すと、地市がそう叫ぶ。

 

「地市ーっ! コレは一体何の拷問なんだよーっ!!」

 

「拷問じゃない! 特訓だっ!! かつて地球を守った獅子座から来た戦士は、この特訓で敵を打ち破ったんだ!! だからお前等もそれに倣えーっ!!」

 

「無茶苦茶だーっ!! ホントにこんな特訓した奴なんか居るかーっ!!」

 

居るんだなぁ、コレが………

 

その後、了平達は日暮れまで追い回され………

 

弘樹達が様子を見に来た時には、ボロ雑巾と呼ぶのも憚られる様な姿で倒れていたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜………

 

大洗戦車チームの宿営地・あんこうチームのテントにて………

 

「う~~ん………うん?」

 

寝ていた優花里がふと目を覚ますと………

 

「う~~ん………コレで良いかな?………いや、まだちょっと甘いな。もう少し見直しを………」

 

布団の上でうつ伏せになり、手元を携帯電灯で照らしながら、作戦計画書を必死に練っているみほの姿が目に入った。

 

「西住殿?」

 

「あ、優花里さん。ゴメンね、起こしちゃった?」

 

「いえ、偶々目が覚めただけです………まだ作戦を練ってるんですか?」

 

「うん、今度の西部もまた強敵だから………良く作戦を練っておかないと………」

 

そう言いながら、作戦計画書を書き進めるみほ。

 

「大丈夫ですか? 昨日も余り寝られなかったのでは?」

 

「! う、うん! だ、大丈夫だよ!」

 

優花里に昨日寝られなかったのではと言われ、弘樹の事を思い出して、みほは僅かに動揺する。

 

「………やっぱり、敵戦車の編制が分からないとコレ以上は無理か………」

 

「西部は試合ごとに使用する戦車を変えていましたからね………かなりの戦車を保有している様です」

 

西部機甲部隊はコレまでの試合で、まるで相手に合わせるかの様に使用する戦車を変えていた。

 

その変幻自在な機甲部隊に、みほは対策を立てあぐねている。

 

「せめて、今度の試合で使って来る戦車が分かればなぁ………」

 

「…………」

 

愚痴る様に呟いたみほの姿を見て、優花里の表情に何かを決意した様な様子が浮かぶ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそれから数日が経過………

 

結局、西部機甲部隊への具体的な対策は立てられぬまま、大洗機甲部隊は学園艦への帰還日を迎えた。

 

まだ試合までは数日あるが、その期間は戦車や戦闘車輌、兵器や武器の整備に充てなければならない。

 

しかし、その帰還日に………

 

ある事が起きた………

 

 

 

 

 

東富士演習場・大洗機甲部隊の宿営地………

 

「秋山くんが居ない?」

 

宿営地の撤収作業を行っていた一同の中、みほから報告を受けた弘樹がそう声を挙げる。

 

「今朝起きたら姿が無くて………こんな書置きが………」

 

みほはそう言って、優花里が残して行ったと思われる書置きを見せる。

 

『誠に勝手ではありますが、極秘任務の為、単独行動を取ります。自分で学園艦までは帰還致しますので、心配しないで下さい 秋山 優花里』

 

「極秘任務?………」

 

書置きの内容を見た弘樹がそう呟くと………

 

「西住さ~ん!」

 

柚子がみほを呼びながら、小走り気味に近づいて来る。

 

「あ、小山さん」

 

「大変なの、西住さん。蛍ちゃんの姿も見えないの」

 

「えっ!? 蛍さんも?」

 

柚子が蛍の姿も見えないと報告して来た事に、みほは軽く驚きを示す。

 

「弘樹ーっ!」

 

とそこで、今度は地市が弘樹の元へやって来る。

 

「ウチの方でも、蛇野と葉隠の奴の姿が見えないそうだ」

 

「蛇野と葉隠が?」

 

「………あ! ねえ、その面子って………」

 

地市が弘樹にそう報告していると、柚子が何かを思い出した様にそう言う。

 

「! まさか………優花里さん達………」

 

「…………」

 

そこでみほと弘樹も同じ考えに至る。

 

「…………」

 

そして、そんな一同の会話に聞き耳を立てている白狼の姿が在った………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西部学園の学園艦………

 

西部学園艦の街並みを、朝早くから凄いスピードで駆け抜ける1人の青年が居た。

 

西部学園の留学生、黒人の『パンサー』だ。

 

彼は首に下げているバッグの中の朝刊を、次々にポストの中へと配っている。

 

別の方角でも、オリバーが牛乳瓶が詰まっている何段も重なっている篭を運んで、走り配っている。

 

遠くの方の農場エリアでは、農薬散布の飛行機が飛んでおり、それを操縦しているのはやはり西部学園の生徒『イーグル』とその後輩『カイト』だった。

 

西部学園の多くの生徒達は、早起きが多く、皆早朝のアルバイトや家業の手伝いをしている。

 

そして、早朝の仕事をやり終えた後、学校へと向かう。

 

西部学園では農業や酪農等が盛んであり、農家志望の少年少女達は大抵ここに入学して来て、農業を学ぶ。

 

それ以外にも、人気なのが広大な大自然である。

 

西部劇にあるような砂塵地帯だけでなく、水や森などの自然あふれるエリアに、誰もが憧れる。

 

また、長い年月を掛けた現在の科学にて、マンモスやクアッガ、そしてドードーやジャイアントモアなどの絶滅動物を甦らせ、そこで保護すると言う名目の元、自然状態で管理・飼育されている。

 

基本的に洋上にある学園艦は、密猟者の侵入を阻むにはうってつけであり、蘇った絶滅動物達は伸び伸びと暮らしている。

 

そんな無駄に壮大かつ広大な学園艦の砂塵地帯に佇む、4つの影が在った………

 

「え~………私達は今、西部学園の学園艦に到着したばかりで………見てください、この光景! まるで本物の西部開拓の時代にタイムスリップしたみたいです!」

 

「コレは、凄いな………」

 

「でござる………」

 

「サンダース&カーネルにも負けないくらいお金持ちなんだね、西部学園って………」

 

優花里、大詔、小太郎、蛍だ。

 

「それでは、コレより西部学園に侵入し、使用戦車の情報を入手したいと思います!」

 

如何やら優花里達は、久々にまたもや………

 

相手学園艦への潜入任務を決行したらしい………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

西部学園との試合に向けての訓練に励む大洗機甲部隊。
対空兵器も配備され、アハト・アハトも導入されるが、西部はかなりの強敵………

機甲部隊の編制が変わらず、作戦計画に頭を悩ませるみほを見て………
優花里は大詔達を引き連れ………
またも、相手学園への潜入を試みるのだった。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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