ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第125話『優花里と白狼です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第125話『優花里と白狼です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西部機甲部隊の使用戦車を探る為………

 

西部学園への潜入を試みた優花里、蛍、大詔、小太郎。

 

絶滅動物を再生させて保護しているエリアや………

 

西部劇の世界に飛び込んだ様な西部開拓時代の街並みに驚きながらも、西部学園へ侵入。

 

西部機甲部隊のメンバーと会合しつつ、戦車格納庫へ向かおうとしたが………

 

西部機甲部隊の総隊長『クロエ』によって、優花里達は捕らわれの身となってしまった………

 

だが、クロエは………

 

優花里達を、意外な場所へと案内したのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西部学園………

 

優花里達がクロエによって連れて来られた場所、ソレは………

 

「さ、此処がウチの戦車格納庫よ」

 

「「「「…………」」」」

 

堂々とそう言うクロエに、優花里達は唖然とする。

 

そう………

 

優花里達が連れて来られたのは、彼女達が最も行きたかった場所………

 

『戦車格納庫』だった。

 

「で、あそこに並んでるのが、今度の試合で使う戦車達だよ」

 

更にクロエはそう言い、格納庫の一角に並んでいる40輌の戦車達を指差す。

 

「M4シャーマン………」

 

「M4A3型です………」

 

蛍は並んでいる戦車の内20輌が、サンダースが使っていたM4シャーマンである事に気づき、優花里は型がM4A3である事に気づく。

 

「コッチは………『M22軽戦車・ローカスト』か」

 

「空挺戦車とは、珍しいでござるな」

 

大詔と小太郎は、並んでいる4輌の『M22軽戦車・ローカスト』を見てそう言う。

 

「それに………M24軽戦車・チャーフィー」

 

更にM24軽戦車も10輌並んでいた。

 

「で、あの『M5軽戦車・スチュアート』がミケと、とりお・ざ・きゃっつのヤツね」

 

そこでクロエは、砲塔横に肉球らしきマークが描かれた軽戦車………『M5軽戦車・スチュアート』を指してそう言う。

 

「アッチに在るのが、右から順に、副隊長の『シロミ』のに、ノーラ、それとブチの戦車だよ」

 

更に今度は、整列されているM4A3型のシャーマンとは別に並べられている、3輌のシャーマンを指差す。

 

「!? アレは!?」

 

「『M4A3E8・イージーエイト』………」

 

「『シャーマン・カリオペ』だと………」

 

「『M4A3E2・ジャンボ』でござるか………」

 

そのシャーマン達を見て驚きを示す優花里達。

 

そこに在ったのは、後期型のM4中戦車で、完成形とも言われ、初期の自衛隊でM24と共に主力戦車となった『M4A3E8』、通称『イージーエイト』

 

多砲身ロケット発射器を搭載した、『シャーマン・カリオペ』

 

そして、最大装甲厚152mmを誇る装甲強化型の『M4A3E2』、通称『ジャンボ』だった。

 

「それから………アレが今回の目玉、ウチの参謀の『シャム』の戦車よ」

 

そう言ってクロエが指差した先に在ったのは、平べったい巨体に4つの履帯を持ち、100ミリ以上は有る固定式の主砲を備えた、駆逐戦車の様な車両である。

 

「!? 『T28超重戦車』!?」

 

「何処から、持って来たんだ、こんな物………」

 

優花里が仰天の声を挙げ、大詔が呆然となる。

 

 

 

 

 

『T28超重戦車』

 

マウスの様なドイツ軍重戦車への対抗として設計され、また重防御されたドイツ軍のジークフリート線に対する攻撃をも企図して準備されていた戦車である。

 

元々試作の戦車であり、85トン以上の重量にも関わらず、シャーマンと同じエンジンを使っていたので、僅か13キロの速度しか出ないと、欠陥の多い代物だ。

 

だが、最大装甲厚は300ミリとあのマウスを超えており、65口径105ミリ砲の威力は絶大である。

 

そして何と言っても、最大射程19キロと言う脅威がある。

 

 

 

 

 

 

「いや~、アレを見つけるのは苦労したわぁ~………あ、因みに私が使うのは、アレ………『M18』、『ヘルキャット』よ」

 

とそこで、思い出したかの様に自分が使う戦車………T28の隣に並べられていた駆逐戦車『M18』、通称『ヘルキャット』を指差す。

 

駆逐戦車なのでオープントップなのだが、規定を守る為にハッチが取り付けられ、砲塔は密閉されている。

 

「ヘルキャットでござるか………」

 

「駆逐戦車としては完成度が高い車輌だよ。装甲が極端に薄いけど、威力の高い52口径76.2ミリ戦車砲M1を備え、最高時速80キロの快速を誇ってる………」

 

M18ヘルキャットを見た小太郎と蛍がそう言い合う。

 

「あ、あの! 如何してそんな情報を私達に教えるんですか!?」

 

とそこで優花里が、重要な情報をペラペラと話すクロエに疑念を抱き、そう尋ねる。

 

「そうね………楽しみたいから、かしら?」

 

「楽しむ?………」

 

クロエからの思わぬ返答に、一瞬キョトンとする優花里。

 

「実はコレまでの貴方達の戦い、記録映像でだけど見させて貰ったのよ。毎回の様に絶体絶命の危機に陥っても悉く逆転勝利を決める。運の良さもあるかもだけど………貴方達の秘められた実力のお蔭ね」

 

そんな優花里に向かって、クロエは言葉を続ける。

 

「そんな貴方達とは私も全てを賭けて戦ってみたい………だから、手の内を明かしたのよ。貴方達が全力で戦える様にね」

 

そう言って不敵な笑みを浮かべるクロエ。

 

如何やら、少々戦闘狂の気がある様だ。

 

「うう………」

 

そんなクロエの笑みを見て、優花里は若干気後れする。

 

と、その時………

 

「総隊長殿、困りますな………貴方の個人的な趣味に付き合わされる部下の身にもなって欲しいものです」

 

そう言う台詞と共に、ガンプレイをしながら、オセロットが部下の『山猫部隊』を率いて現れた。

 

「! オセロット………」

 

「フッ………良い様だな、蛇野」

 

大詔が呟くと、オセロットは捕まっている大詔を小馬鹿にする様にそう言う。

 

山猫部隊の部下達も、態とらしく笑い声を挙げる。

 

「総隊長、コイツ等がココまで勝ち残れたの様々な偶然が重なった結果に過ぎません。過大評価ですよ」

 

「そうかしら?」

 

そうクロエに言うオセロットだったが、クロエは若干聞き流している。

 

「そもそも、黒森峰の10連覇を台無しにした西住 みほが指揮を取っていると言う時点でその実力も知れたものですよ」

 

「!! 西住殿は立派な総隊長です! 私達がココまで勝ち上がって来れたのは間違いなく西住殿のお蔭です! 偶然や運だけではありません!!」

 

更にオセロットはみほの事をも馬鹿にする様な事を言い、優花里が即座に噛み付く。

 

「ほう………偶然や運だけではないと?………では、試してやろう」

 

するとオセロットはそう言い、山猫部隊の隊員2人が、優花里の両腕を掴んでオセロットの前へと引っ張って行く。

 

「うわっ!?」

 

「優花里ちゃん!?」

 

「秋山殿!」

 

「秋山!」

 

「邪魔をするな!」

 

蛍、小太郎、大詔が止めようとしたが、他の山猫部隊の隊員に阻止される。

 

オセロットの目の前まで連れて行くと、山猫部隊員は優花里を離す。

 

「フフフ………」

 

優花里を目の前に立たせたオセロットは愉快そうに笑いながら、右腰のホルスターからピースメーカーを抜く。

 

そして、装填口を開けて1発だけ弾を込めて元に戻す。

 

更に、左腰と後腰のホルスターのピースメーカーも抜く。

 

「この3つの銃のどれかに、1発だけ弾が入っている。続けて6回トリガーを引く」

 

「!?」

 

つまりは変則のロシアンルーレットである。

 

驚愕と恐怖に顔が歪む優花里。

 

「良いか………行くぞ」

 

オセロットはそう言ったかと思うと、3つのピースメーカーの内、1つを上に放り投げる。

 

落ちて来たところで、残り2つのピースメーカーを投げて、ジャグリングを始める。

 

そして、その状態で優花里に向けて引き金を引き始める!

 

「ヒイッ!?」

 

優花里は身構える。

 

1回、2回、3回とトリガーが引かれるが、弾は発射されない………

 

「止めてっ! 止めてよぉっ!!」

 

「止めろ! オセロットッ!!」

 

「何の意味があるのでござる!」

 

山猫部隊の隊員に抑えられながら蛍、大詔、小太郎が叫ぶ。

 

「…………」

 

しかし、オセロットは意にも介さず、4回目のトリガーを引く。

 

「あ、あああ………」

 

そして5回目が引かれたところで、優花里は恐怖の余り尻餅を着いてしまう。

 

「オセロット! 止めなさいっ!!」

 

見かねたクロエが止めに掛かるが、遂に6回目のトリガーが引かれようとする………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時!!

 

轟音と共に、戦車格納庫の壁が砕け散った!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

「!? 何っ!?」

 

驚きながら砕け散った壁の方を見たオセロットの目に飛び込んできたのは………

 

粉煙の中から飛び出して来た、1台のバイクだった!!

 

そのバイクの前輪がオセロットの顔面に叩き込まれる!!

 

「!? ガハッ!?」

 

顔に思いっきりタイヤの跡を刻まれ、もんどりうって倒れるオセロット。

 

「隊長っ!?」

 

「!?」

 

山猫部隊が慌てる中、飛び込んで来たバイクは着地を決めると同時にターンして優花里の方に向き直る。

 

「何やってんだよ、お前」

 

「!? 神狩殿っ!!」

 

驚きの声を挙げる優花里。

 

そう、バイクに乗って飛び込んで来たのは、何と白狼だったのだ!

 

「グウウッ………ベオウルフ………貴様ぁっ!!」

 

とそこで、起き上がったオセロットが、ナイフを抜いて白狼に襲い掛かろうとする。

 

「…………」

 

が、白狼は少しも慌てずに、右手を上げたかと思うと………

 

その右手の中に、先程までオセロットがジャグリングしていたピースメーカーの1つが落ちて来る。

 

キャッチしたピースメーカーをオセロットに向け、引き金を引く白狼。

 

すると、装填されていた1発の弾が発射され、オセロットの眉間に命中した!

 

「!? ギャアアッ!?」

 

「運が無いのはお前だったみたいだな…………」

 

再びもんどりうって倒れたオセロットを尻目に、撃ち終えたピースメーカーを捨てる白狼。

 

「貴様ぁっ!!」

 

とそこで、山猫部隊の隊員1人が白狼に銃を向けたが………

 

「!!」

 

その瞬間に白狼はアクセルを全開にして急発進。

 

「「!?」」

 

「乗れっ!?」

 

「えっ!?………?! わあっ!?」

 

山猫部隊の隊員が慌てて避けると、白狼は優花里を掻っ攫う様にして無理矢理バイクの後部に乗せた!

 

「!? 今だっ!!」

 

「むんっ!!」

 

「イヤーッ!!」

 

「「「グワーッ!?」」」

 

即座に、蛍が鳩尾を強打し、大詔がCQCで、小太郎がカラテチョップを決めて、自分達を押さえていた山猫部隊の隊員を気絶させる!

 

「! アレだっ!!」

 

そして戦車格納庫の中にジープを見つけると、それに飛び乗る。

 

「付いて来いっ!!」

 

それを確認した白狼がそう叫び、先程の穴から脱出!

 

大詔達が乗ったジープもそれに続いた!

 

「!? しまったっ!?」

 

「アラアラ、派手な事するわねぇ~」

 

山猫部隊の隊員の1人が、逃がしてしまった事に慌てるが、クロエは呑気そうにそう呟く。

 

「ぐうう………オノレッ! 逃がすな! 追えぇっ!!」

 

「「「「「!!」」」」」

 

とそこへ、やっとの事で起き上がったオセロットがそう命じ、山猫部隊は優花里達の追撃に向かう。

 

「!!」

 

「ちょっと、オセロット………」

 

そしてオセロットも、フライングプラットフォームに乗り込み、白狼達を追撃して行った。

 

「全く、あの子は………ま、多分逃げ切るだろうから、心配要らないか」

 

やれやれと言った具合にクロエはそう言うと、試合で使う戦車の方に向き直る。

 

「楽しみだな………本当に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

西部学園から脱出した優花里達は………

 

「神狩殿! 如何して此処に!?」

 

バイクの後ろに座り、白狼の背中にしがみ付いている優花里がそう尋ねる。

 

「合宿から帰ろうとしたらお前が居ないって他の連中が騒いでてな! 前に何度か相手の学校にスパイしに行ったって言ってたのを思い出したんだ!」

 

「それで助けに!?」

 

爆音と風の音で聞き取り難いので、大声で話し合う2人。

 

「お前には借りが有るからな!」

 

「借り!?」

 

「何時かのファミレスでの事だ!」

 

「! ああ!………」

 

白狼に言われてハッとする優花里。

 

プラウダ&ツァーリ機甲部隊との試合の前に、みほが勘当を言い渡されるかもしれないと言う話を立ち聞きした際に、優花里を泣かせてしまった白狼。

 

如何やら彼なりに気にしていた様である。

 

「追っ手が来たぞ!」

 

とそこへ、大詔達が乗るジープが追い付き、運転席の大詔が、サイドカーに乗った山猫部隊が追撃して来るのを確認してそう叫ぶ。

 

「如何するの!?」

 

「この先の湖まで走れっ!!」

 

蛍がそう尋ねると、白狼がそう返す。

 

そこで、追撃して来ていた山猫部隊が、次々と機関銃で攻撃して来る。

 

「イヤーッ!!」

 

「グワーッ!?」

 

そこで小太郎が、腕を鞭の様に撓らせ、スリケンを投擲し、追撃して来ていた山猫部隊のサイドカー1輌を仕留める。

 

だが、代わる様に新たなサイドカーに乗った山猫部隊の隊員が現れる。

 

「攻撃は牽制に止めろ! 兎に角、今は逃げるんだ!!」

 

大詔がそう言いながら、ピンを抜いたグレネードを後方に向かって放る。

 

「「「「グアーッ!?」」」」

 

爆発で数輌のサイドカーが纏めて吹き飛ぶ。

 

「見えたぞ!」

 

とそこで、白狼がそう声を挙げ、湖が見えてきた事を告げる。

 

「! アレは!?」

 

「『二式大艇』です!」

 

湖を確認した蛍が、そこに大型の飛行艇が停泊している事に気づき、優花里がそれが旧日本海軍の大型飛行艇………『二式飛行艇』、通称『二式大艇』だと判別する。

 

良く見ると、機体には一航専の校章が描かれている。

 

「アレに乗れ!」

 

「良し! 飛ばすぞぉっ!!」

 

白狼がその二式大艇を見ながらそう叫び、大詔が一気にアクセルを踏み込む!

 

そのまま一気に、二式大艇の元へと突っ走った!!

 

「逃がすなぁっ!!」

 

「撃て撃てぇっ!!」

 

その間にも、山猫部隊からの執拗な攻撃が襲い掛かる。

 

しかし、白狼達は如何にか二式大艇の元へ辿り着く。

 

「急げっ!!」

 

「失礼します!」

 

「お邪魔します!」

 

「蛇野殿! 先に!!」

 

「スマン!」

 

白狼と優花里はバイクに乗ったまま、大詔達は岸にジープを乗り捨て、二式大艇へと乗り込む。

 

「逃がさんっ!!」

 

尚も山猫部隊の追撃が迫るが………

 

そこで援護の為に、二式大艇の防御用火器、20ミリ旋回銃と7.7ミリ旋回銃が火を噴き、山猫部隊に弾幕を浴びせた!!

 

「「「「「うわあああああーーーーーーーっ!?」」」」」

 

機銃座からの攻撃に為す術も無く、次々に倒される山猫部隊。

 

「全員乗りましたかっ!?」

 

そこへ、二式大艇の操縦士が、乗り込んだ白狼達に向かってそう尋ねる。

 

「大丈夫です!」

 

「早く飛ばせっ!!」

 

優花里がそう返事を返し、白狼が発進を急かす。

 

「行きますっ!!」

 

二式大艇の操縦士がそう言うと、4発のエンジンが作動し、プロペラが回り始める。

 

そしてそのまま、水上を滑走し始める。

 

徐々に速度が上がって行き、離水体勢に入る。

 

「離水します!」

 

「コレで一安心ですね………」

 

二式大艇の操縦士の言葉を聞き、優花里がそう呟いた瞬間………

 

突如機体に衝撃が走った!

 

「!?」

 

「何だっ!?」

 

そこで、大詔が窓から外を確認する。

 

「蛇野おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!! まだだぁっ! まだ終わってなあいっ!!」

 

そこには、フライングプラットフォームに乗って二式大艇と並走しているオセロットの姿が在った!

 

「オセロットッ!?」

 

大詔が驚きの声を挙げる中、オセロットはフライングプラットフォームを二式大艇のハッチに体当たりさせる!

 

「キャアッ!?」

 

「ぬうっ!?」

 

蛍と小太郎が思わず声を漏らす中、衝撃でハッチが外れる。

 

「トアアッ!!」

 

その外れたハッチに接近すると、フライングプラットフォームから跳び、二式大艇の中へと跳びこんで来るオセロット。

 

………しかし、勢い余って反対側のハッチにぶつかったかと思うと、ハッチが開いて、再び外へと放り出される。

 

「!? うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!?」

 

オセロットは悲しげな悲鳴と共に、湖に水没する。

 

「ええ~………」

 

「ドリフのコントみたい………」

 

「憐れな………」

 

「何しに来たんだ、アイツ?………」

 

優花里と蛍が呆れ、小太郎が同情し、白狼が冷めた目をする。

 

「………いいセンスだ」

 

只1人、大詔はオセロットが落ちたハッチを見ながらそう呟いたのだった。

 

「離水します!」

 

とそこで、二式大艇の操縦士がそう言い、二式大艇は離水。

 

そのまま、西部学園艦から離れて行ったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小1時間後………

 

優花里達を乗せた二式大艇は、西部学園の航空部隊の追撃を受ける事も無く、無事に大洗学園艦へと辿り着いた。

 

二式大艇は、そのまま甲板都市にあった貯水用の池に着水する。

 

「ハア~、ヒヤッとしました………」

 

「ホント、危なかったね~」

 

最初に外に出た優花里と蛍がそう言い合う。

 

「いやはや、トンだ目に遭ったでござる」

 

「しかし、お蔭で西部が今度の試合で使う戦車の種類が分かった。大収穫だな」

 

続いて降りた小太郎と大詔がそう言う。

 

「…………」

 

そして最後に、白狼が無言でバイクを押して降りて来る。

 

「では、自分達はコレで………」

 

全員が降りたのを確認すると、二式大艇の操縦士はそう言って、一航専の学園艦へと帰投する。

 

「よおし! 早速この情報を西住殿に………」

 

「待って、優花里ちゃん」

 

「お前は一旦家に帰れ」

 

優花里が、入手した情報をすぐにみほへと伝えに行こうとしたが、蛍と大詔にそう止められる。

 

「ええっ!? 何故ですか!?」

 

「我々は寮暮らしでござるが、秋山殿は実家通学でござろう」

 

戸惑いの声を挙げる優花里に、小太郎がそう言う。

 

「あ!………」

 

「本当なら今日の午前中には帰っていた筈だろう。ご両親が心配している。すぐに帰るんだ」

 

優花里が何かに気付いた様な声を挙げると、大詔が更にそう言って来る。

 

そう………

 

東富士演習場で訓練を行っていた大洗機甲部隊は、本来であれば今日の午前中には全員学園艦に帰投している筈であった。

 

だが、優花里は大洗機甲部隊が撤収する前に西部学園の学園艦に潜入したので、両親に帰りが遅れる事を報告していなかったのである。

 

「そうでした………すみません」

 

「謝るなら、ご両親に謝るんだな」

 

「情報の方は私達から西住総隊長や神大会長に伝えておくから、心配しないで」

 

「では、神狩殿。秋山殿を家まで頼むでござる」

 

ショボンとする優花里に大詔と蛍がそう言っていると、小太郎が白狼にそう言い放つ。

 

「ああ? 何で俺が?………」

 

「この中で個人的な移動手段を持ってるのがお主だけだからでござる」

 

「それに、借りが有るんじゃなかったのか?」

 

白狼が不満そうに返すと、小太郎がそう言い、大詔が優花里への借りを指摘する。

 

「聞こえてたのかよ………チッ、分かったよ」

 

不承不承と言った様子ながら、白狼はバイクに跨ると、優花里の前まで移動する。

 

「ホラ、さっさと乗れ」

 

「あ、ハイ………」

 

そう言われて優花里は、やや遠慮気味に白狼のバイクの後部に乗る。

 

「じゃあ、掴まってろよ」

 

「掴まって………」

 

そこで優花里は、西部での逃走劇の際、白狼の背中にしっかりとしがみ付いていた事を思い出す。

 

「!?!?」

 

思い出した途端に顔が真っ赤になり熱を帯びる優花里。

 

そんな顔を隠すかの様に、白狼の背中にしがみ付いて、顔を埋めた。

 

「じゃあ、行くぞ」

 

しかし、白狼はその様子に気づかず、バイクを発進させる。

 

「「「青春だな(でござるな)~」」」

 

そんな2人を見送った大詔達は、そんな呟きを漏らすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗学園艦・甲板都市………

 

優花里の実家・『秋山理髪店』の前にて………

 

「う~~ん………う~~ん………」

 

何やら唸りながら、店の前を行ったり来たりしているパンチパーマでメガネの男性………優花里の父・『秋山 淳五郎』

 

「お父さん、いい加減に中で待ってたら?」

 

とそこへ、店の扉が開いて、優花里と似たくせ毛の女性………優花里の母・『秋山 好子』が顔を出す。

 

「だって、お前! 午前中までに帰るって話だったのに、もう午後も大分過ぎてるんだぞ! 心配じゃないか!!」

 

「全く、何時まで経っても過保護なんだから………」

 

過保護とも取れる心配をする淳五郎に、好子は呆れた様子を見せる。

 

と、そこで………

 

エンジン音が聞こえて来たかと思うと、1台のバイク………

 

白狼と優花里の乗ったツェンダップK800Wが停まる。

 

「此処で良いのか?」

 

「ハ、ハイ………ありがとうございます、神狩殿」

 

白狼がそう言うと、後ろに乗って居たまだ若干顔の赤い優花里が、バイクから降りる。

 

「! 優花里!」

 

「あら、優花里。お帰りなさい」

 

その姿を確認した淳五郎が駆け寄り、好子も声を掛ける。

 

「た、只今………」

 

「心配したぞ~! 午前中に帰って来るって言ってたのに、全然帰って来ないから!」

 

優花里が申し訳無さそうに挨拶をすると、淳五郎が心底心配していた様子でそう言う。

 

「ご、ゴメンなさい、お父さん。ちょっと野暮用が入っちゃって………」

 

「まあ、何事も無かった様で良かったわ。ところで、そっちの子は?」

 

謝罪する優花里に、今度は好子がそう尋ねる。

 

「あ、えっと、大洗国際男子校の歩兵道の隊員で、神狩 白狼殿です」

 

「ああ、優花里のとこの部隊の人ね。どうも、優花里がいつもお世話になってます」

 

「…………」

 

優花里が白狼の事を紹介すると、好子は挨拶をするが、そう言った事が苦手な白狼は頭を掻きながら無言である。

 

「…………」

 

するとそこで、淳五郎も白狼の事をジッと見始めた。

 

「お、お父さん?………」

 

その様子に優花里が若干慌てる。

 

淳五郎が過保護なところがある事は良く知っている為、白狼の事を悪い虫だとでも思っているのでないかと心配する。

 

「…………」

 

ジッと白狼の事を見据える淳五郎。

 

「んだよ、オッサン。何か用か?」

 

その視線に気づいた白狼がそう返す。

 

(ど、如何しよう!?………? アレ?)

 

動揺する優花里だったが、そこで………

 

淳五郎の視線が実は白狼では無く、彼のバイクの方に注がれている事に気づく。

 

「………良いバイクだね」

 

と、不意に笑みを浮かべてそう言う淳五郎。

 

「どうも………」

 

「しかし、最近立ち上がりが悪いんじゃないかい?」

 

「!? 何でそれを!?」

 

淳五郎が自身のバイクの不調を見抜いた事に、驚く白狼。

 

「ちょっと裏に来なさい」

 

すると淳五郎はそう言い、白狼を店の裏手………庭の方へと招く。

 

「…………」

 

黙ってバイクを押して付いて行く白狼。

 

「え………ええっ!?」

 

淳五郎の思わぬ態度に、優花里は戸惑うばかりである。

 

「アラアラ、お父さんったら、久しぶりに血が騒いじゃったのかしら?」

 

しかし、1人ワケを知っている様子の好子が笑いながらそう言う。

 

「お母さん? 如何言う事?」

 

「付いて来れば分かるわよ」

 

優花里はそんな好子に尋ねるが、好子はそう言って同じく店の裏手に向かう。

 

「あ! ま、待って!」

 

慌ててその後を追う優花里だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

秋山理髪店の裏手・秋山家の庭………

 

庭には、大きな物置の様な建物が1件在った。

 

扉には南京錠が掛けられていたが、淳五郎はポケットから鍵を取り出し、それを開ける。

 

(あそこは………昔から入っちゃいけないって言われてた………)

 

それは優花里が、幼少期の頃より入ってはいけないと言われていた場所だった。

 

と、中に入った淳五郎が、電気のスイッチを入れたかと思うと、物置の中が照らされる。

 

「! コレはっ!?」

 

ハッキリとした物置の中を見て驚く優花里。

 

そこは様々な工具や機材が並べられている場所………

 

『ガレージ』だった。

 

「さ、入ってくれ」

 

「コイツは………凄いな」

 

プロのオートレーサーでもある白狼から見ても凄いと言わしめる程、そのガレージは本格的だった。

 

「ちょっと失礼するよ………」

 

とそこで、淳五郎はテーブルの上に有った工具箱を掴むと、白狼のバイクの傍に屈み込んで弄り始める。

 

「オ、オイ!………」

 

「ああ、やっぱりコレだ!」

 

白狼が抗議の声を挙げようとした瞬間に、淳五郎は取り外した部品を見てそう言う。

 

「コレが消耗していたんだよ。だから立ち上がりに影響が出ていたんだ」

 

「! そんなとこが………」

 

「コレはプロでも見逃し易い所だからね。他にもちょっと気になるとこがあったんだけど………言っておこうかい?」

 

「ああ、是非聞かせてくれ」

 

淳五郎がプロでも気づかない部品の消耗に気付いた事で、白狼はすっかり尊敬の念を抱いた様で、素直にその言葉に耳を傾ける。

 

「…………」

 

一方の優花里は、今まで見た事の無い父の姿に呆然としている。

 

「うふふ、驚いた、優花里? 実はお父さん、昔はツッパリだったのよ。その頃はブイブイ言わせてたんだから」

 

そんな優花里に向かって、好子が驚くべき真実を話して来た。

 

「!? ええっ!? お父さん、不良だったの!?」

 

「ええ………ホラ、コレがその時の写真」

 

優花里が驚愕の声を挙げると、好子は壁に掛けられていた1枚の写真を指差す。

 

そこには、若き日の淳五郎が、『爆走道』と背中に掛かれた特攻服姿で、バイクを背にヤンキー座りで、撮影したと思われるカメラにメンチを切っている姿が写っていた。

 

「うわぁっ………」

 

「懐かしいわねぇ~。当時の私はお父さんの同級生で風紀委員をやってたから、何時も注意をしてて………思えば、それが馴れ初めだったわね~」

 

写真を見て唖然とする優花里に向かって、好子は懐かしみながら顔を赤らめる。

 

「でも、結婚して優花里が生まれてからは、教育に良くないって事で封印してたの。でも、あの子のバイクを見て、血が騒いじゃったのかしらね」

 

ツェンダップK800Wを弄りながら、白狼にアドバイスをしている淳五郎を見て、そう言う好子。

 

「…………」

 

一方の優花里は、ジッと若き日の父の写真を見つめている。

 

「………お父さんに幻滅した?」

 

好子がそう尋ねるが………

 

「………ううん。例えどんな昔が有っても………私にとっては最高のお父さんだから!」

 

優花里は屈託の無い笑顔でそう返した。

 

「そう、良かった………やっぱり貴方は私とお父さんの娘ね」

 

それを聞いて好子も笑みを浮かべる。

 

まるで最初からこうなる事が分かっていたかの様に………

 

「よ~し! こんなものだろう………」

 

「ありがとよ、オッサン! 凄い調子が良いぜ!!」

 

と、整備が終わったのか、白狼はバイクに跨ってエンジンを吹かしている。

 

「どれ………じゃあ、ちょっとひとっ走り行くかい?」

 

そこで淳五郎は、ガレージ内に在ったシートの掛かった物に手を掛けたかと思うと、シートを外す。

 

そこから現れたのは1台のバイク………

 

『スズキGSX1100S』

 

通称『スズキ・カタナ』と呼ばれるバイクだった。

 

「へえ~、良いマシンじゃねえか」

 

「勿論。相棒だからね」

 

白狼の言葉に、淳五郎は笑いながらそう返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後・秋山理髪店前………

 

「じゃあ母さん。ちょっと行って来るよ」

 

ジーパンに革製のライダーズジャケットを羽織り、ヘルメットを被ってゴーグルを付けた淳五郎が、好子にそう言う。

 

「行ってらっしゃい。夕飯までには戻って来て下さいね」

 

「分かってるって………じゃあ、行くぞ、神狩くん!」

 

「へっ! こちとら現役のプロだぜ。ロートルのオッサンには負けねえよ」

 

「言ったね………勝負!」

 

と、淳五郎がそう言った瞬間、両者のマシンは同時に発進!

 

一気にトップスピードまで達したかと思うと、一瞬でその姿が見えなくなった。

 

「アラアラ、燥いじゃって………よっぽど久しぶりに誰かと走れるのが嬉しかったのねえ」

 

「だ、大丈夫かなぁ?………」

 

ニコニコとした笑顔を浮かべてそれを見送った好子だったが、優花里の方は若干心配そうにしている。

 

「大丈夫よ、優花里。ああ見えて、お父さん結構有名な走り屋だったのよ。『パンチパーマの稲妻』とか呼ばれてたとか………」

 

「『パンチパーマの稲妻』………」

 

しかし、何とも微妙な父の渾名を聞いて、優花里の表情も微妙なものになるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

捕らわれの身となった優花里達ですが、クロエは何と!
優花里達が知りたがっていた使用戦車の事を教えてきた!
大洗と全力で戦う為だと………

その中には、原作劇場版で猛威を振るったT28超重戦車も。
元々以前から何処かの学園に使わせようと思っていたのですが、原作劇場版で先に使われちゃいました(笑)
しかし、西部のT28は劇場版と違った形で脅威となりますので、楽しみにしていて下さい。

そして優花里に拷問紛いなロシアンルーレットを仕掛けるオセロット。
しかしそこでヒーロー登場!
白狼が優花里達を救出しまし。
二式大艇に乗って脱出しますが、そこでもオセロットが………
でも、まさかのシークレットシアタールート(爆笑)
ぶっちゃけ、アレが1番面白いと思うんですよね。

更に、この作品では初登場となる優花里の両親、淳五郎さんと好子さん。
淳五郎さんが元ツッパリの走り屋と言う独自設定は、『淳五郎さん人なり良いけど、パンチパーマのせいで見た目は怖い人に見えなくもないから、実は昔ツッパリとかだったんじゃ?』と妄想しまして。
好子さんが風紀委員と言うのもその妄想からの発展です。
白狼、ご両親に気に入られて外堀埋められる?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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