ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第137話『ウサギさんチーム、頑張ります!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第137話『ウサギさんチーム、頑張ります!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗機甲部隊と西部機甲部隊の激戦が続く中………

 

弦一朗の行動をヒントに、奇策を思いついたカバさんチームが………

 

カモさんチームの尊い犠牲で、ブチのジャンボを相討ちで撃破。

 

一方………

 

西部劇の街並みのセットの外でノーラが乗るシャーマン・カリオペの部隊と戦っていたウサギさんチームとハムスターさん分隊、レオポンさんチームとおおかみさん分隊は………

 

M4A3を2輌撃破する事に成功したが………

 

突如現れたオリバーと、カリオペを捨てて機動戦を挑んで来たノーラによって、混戦に持ち込まれるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第7回戦の試合会場………

 

和製西部劇の撮影所・西部の街並みのセットの近く………

 

「FIRE!!」

 

ブレン軽機関銃Mark 2をオリバーに向かって発砲するジェームズ。

 

「甘いっ!!」

 

しかし、高速で走るオリバーには当たらない。

 

「お返しだ、ジェームズ!」

 

そして、反撃とばかりに銃床の方を切り詰めたウィンチェスターM1887を発砲する。

 

「!!」

 

だが、オリバーが発砲すると思われた瞬間にはジェームズは駆け出しており、散弾は地面を耕す。

 

「オオオオッ!!」

 

「ウオオオッ!!」

 

そのまま、お互いに平行に並んでダッシュしたながら、互いの得物を撃ち合う2人。

 

やがて、2人の前方に大きな岩が見えて来たかと思うと、両者はそのまま、その岩を挟み込む様に位置取って、身を隠した!

 

「クッ!…………」

 

弾倉と熱を持った銃身を交換するジェームズ。

 

(やっぱりオリバーはハヤイ………もうかなり撃ってるのに、1発も掠りすらシナイなんて………)

 

空になっている数個の弾倉を地面に置きながら、ジェームズはそんな事を考える。

 

(やるな、ジェームズ。コレだけ撃って1発も当たらないなんてな)

 

一方、丁度反対側に隠れているオリバーも、ウィンチェスターM1887に新たな散弾を入れながら同じ事を考えていた。

 

(付け入る隙が有るとすれば………オリバーの得物がウィンチェスターM1887だと言う事デスカ)

 

そこで、ジェームズの方が、オリバーの武器がウィンチェスターM1887である事を思い出してそう考える。

 

(ウィンチェスターM1887の装弾数は5発………成るべく相手の発砲を誘って、弾切れになったところ狙う………コレしかアリマセン)

 

(多分、コッチの弾切れを狙って来るだろうな………だが、そいつは無駄だぜ、ジェームズ)

 

オリバーの弾切れを狙おうとするジェームズだったが、オリバーはそんなジェームズの考えを読んでおり、背負っていた背嚢から、『ある物』を取り出す。

 

「………!!」

 

やがて、装填を終えたジェームズが、バッと岩陰から飛び出す。

 

それと同時に、オリバーも岩陰から飛び出した。

 

(弾切れを狙って………!?)

 

威嚇射撃をしようとオリバーの方を見たジェームズの顔が驚愕に染まる。

 

オリバーは、右手だけでなく、左手にも銃床を切り詰めたウィンチェスターM1887を握っていたからだ。

 

「ソレッ!!」

 

右手の銃床を切り詰めたウィンチェスターM1887を発砲したかと思うと、空かさず左手の方も発砲するオリバー。

 

2発の散弾による弾幕が、ジェームズに迫る!

 

「!!」

 

ジェームズはすぐさま走り出し、如何にかかわしたが、掠めた散弾が戦闘服の表面に引き裂いた様な跡を残す。

 

「マサカ! ショットガンの2丁撃ちだなんて!!………」

 

思わぬオリバーの手に、ジェームズは一旦撤退しようと、オリバーから距離を取り始める。

 

「逃がすかっ!!」

 

だが、オリバーはすぐさま駆け出し、ジェームズを追って来る。

 

(引き離………せない!!)

 

(差が、詰まらない!!)

 

逃げるジェームズをオリバーが追う形となっているが、その両者の間は一定のままだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

カリオペを捨てたノーラのM4A3と対峙していたウサギさんチームとレオポンさんチームは………

 

「撃てっ!」

 

梓の掛け声で、M3リーの主砲と副砲が火を噴く。

 

しかし、主砲は外れ、副砲はM4A3の防楯部分に命中して弾かれてしまう。

 

「発射」

 

そして、M4A3の反撃が放たれる。

 

「後退っ!!」

 

「うえーいっ!!」

 

梓の指示で、すぐさまM3リーを後退させる桂利奈。

 

M4A3の砲弾が、直前までM3リーが居た場所に着弾。

 

舞い上がった土片がM3リーの上に降り注ぐ。

 

「次弾装填、急いで!………! 左からチャーフィーッ!!」

 

次弾装填の指示を出しながら、ペリスコープ越しに左側からチャーフィーが迫って来ている事に気付く梓。

 

「側面! 貰ったぁっ!!」

 

側面を取ったと、チャーフィーの車長はそう声を挙げる。

 

「! 停止っ!!」

 

だが、すぐに嫌なモノを感じ取り、停止指示を出した!

 

直後に、停止したチャーフィーの眼前に砲弾が着弾し、大きい土片を巻き上げた!

 

「あ、外した!」

 

「相手の車長さん、良い勘してるみたいだね~」

 

ホシノが声を挙げると、ナカジマがチャーフィーをハッチを僅かに開けて覗き見ながらそう言う。

 

「このぉっ!!」

 

とそこで、チャーフィーがお返しだとばかりに発砲する。

 

しかし、砲弾はポルシェティーガーの正面装甲で弾かれ、明後日の方向に飛んで行く。

 

「クウッ! 後ろに回れっ!!」

 

チャーフィーの車長はそう言うと、ポルシェティーガーの後ろに回り込もうとする。

 

「来るよ! ツチヤ! なるべくエンジンに負担が掛からない様に移動!!」

 

「無茶言ってくれるね~」

 

ナカジマの指示に、ツチヤはそう言いながらも、笑顔で操縦桿を動かす。

 

回り込もうとして来るチャーフィーに対し、ポルシェティーガーは正面を向け続ける様に機動戦を展開する。

 

「レオポンさんチーム!………! 停止っ!!」

 

「! えーいっ!!」

 

レオポンさんチームを気に掛ける梓だったが、すぐに何かに気付いて桂利奈に停止指示を飛ばし、桂利奈はM3リーを急停車させる。

 

直後に、M3リーの前面スレスレを、砲弾が通り過ぎて行った!

 

「他人の心配をしている余裕が有るのかしら?」

 

ペリスコープ越しにM3リーを見据えながら、ノーラはそう言い放つ。

 

「くうっ!! 応戦してっ!!」

 

「了解っ!!」

 

「任せてっ!!」

 

苦い顔をしながらも梓は指示を飛ばし、あやとあゆみがノーラのM4A3を狙うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、ジェームズVSオリバーの様子は………

 

「如何したジェームズ! 逃げるだけか!? そんな事の為にお前に走りを教えたんじゃないぜっ!!」

 

両手の銃床を切り詰めたウィンチェスターM1887をスピンコックで連続発砲しながら、オリバーがジェームズにそう挑発の言葉を飛ばす。

 

「クウッ!………」

 

その弾幕密度に苦い声を漏らしながら、ジェームズはブレン軽機関銃Mark 2を構える。

 

「おっと!」

 

だが、狙った瞬間には、オリバーはその場所から消えてしまう。

 

「そらそらそらっ!」

 

そして新たな場所へと移動したかと思うと、再び両手の銃床を切り詰めたウィンチェスターM1887をスピンコックで連続発砲して来る!

 

「! オウッ!!」

 

咄嗟に、近くに在った岩の影に転がり込むジェームズ。

 

そのままブレン軽機関銃Mark 2から空になった弾倉を外す。

 

(………コレが最後のマガジンデス)

 

しかし、新たに取り付けた弾倉で手持ちは無くなってしまう。

 

(………やはり、僕ではオリバーに勝てないんじゃ)

 

思わずそんな考えが頭を過る!

 

が、すぐに頭を振ってその考えを振り払う。

 

(何を弱気になってるんデスか! 必ず勝つと誓ったじゃないデスか! しっかりしろ!!)

 

自分を奮い立たせる様に、両手で頬を叩くジェームズ。

 

(何か………何か有る筈デス! あの散弾の弾幕の攻略法ガ!!………!? 散弾!?)

 

とそこで、ジェームズがオリバーが使っている弾薬が散弾である事を思い出す。

 

そして、頭の中に『とある作戦』が浮かぶ。

 

(コレならオリバーの意表を衝けマス。でも………失敗したら、コッチがやられてしまう………)

 

だが、その作戦は一か八かであり、失敗すればやられるのは自分である。

 

(…………)

 

逡巡するジェームズ。

 

ふと、その脳裏に………

 

紗希の顔が浮かんだ。

 

(そうだ! 何を恐れているんデスか! 紗希サンは僕に頑張ってって言った! だっだら頑張らなければ………アメリカ人の名が廃ると言うものデス!!)

 

ジェームズの瞳に、決意の色が浮かぶ。

 

(やるしかない!!)

 

そう思い、ジェームズは立ち上がると、バッと岩陰から姿を現す。

 

「!!」

 

そんなジェームズの姿を見たオリバーが、一瞬動きを止める。

 

「オリバーッ! 最後の勝負デス!!」

 

そのオリバーに向かって、ジェームズは宣言する様に高らかにそう言い放つ。

 

「(! 何か考えたな………良いだろう)望むところだ! 来い、ジムッ!! 返り討ちにしてやるぜっ!!」

 

オリバーはそう言うと、両手の銃床を切り詰めたウィンチェスターM1887を構える。

 

「…………」

 

ジェームズもブレン軽機関銃Mark 2を構える。

 

「「…………」」

 

両者は沈黙し、風音だけが響いて砂塵が舞う中、緊迫した空気が流れる………

 

「! バンザーイッ!!」

 

と、ジェームズが不意にそう叫んだかと思うと、オリバーに向かって突撃した!

 

(! 突撃っ!? いや、コッチが撃つ寸前で左右どちらかにかわして攻撃する気だな!!)

 

ジェームズの行動をそう予測するオリバーだったが………

 

「ワアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!」

 

予想に反して、ジェームズは真っ直ぐに突っ込んで来る!

 

「!? 自棄になったのか!? ジム! ガッカリだぞっ!!」

 

そんなジェームズの姿に、オリバーは一瞬失望の色を見せたかと思うと、両手の銃床を切り詰めたウィンチェスターM1887を発砲した!!

 

 

 

 

 

その瞬間っ!!

 

 

 

 

 

「! 今デスッ!!」

 

ジェームズがそう叫んだかと思うと、そのスピードが更に増した!

 

「!? 何っ!?」

 

オリバーが驚きの声を挙げた瞬間、何と!!

 

ジェームズは、発射された散弾が拡散する前に、その間を擦り抜けた!!

 

後に、オリバーは、この時のジェームズを………

 

『光になっていた』と評したと言う………

 

「ワアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

そしてそのままオリバーに肉薄!!

 

ブレン軽機関銃Mark 2の銃口を、突き刺す様にその胸に突き付けた!!

 

「「…………」」

 

その状態で固まり、両者は沈黙。

 

再び場に、緊迫した空気が漂い出す。

 

「………ジム、お前の勝ちだ」

 

と、オリバーがそう言って笑う。

 

「何時の間にか抜かれてたみたいだな………強く………いや、『速くなった』な」

 

「…………」

 

そうオリバーが言葉を続けた瞬間………

 

ジェームズはブレン軽機関銃Mark 2の引き金を引いた!

 

爆音と共に弾丸が次々に吐き出されてオリバーの命中して行く!

 

やがて、弾倉の弾が無くなると、オリバーはその場にバタリと倒れる。

 

程無くして、戦死の判定が下った。

 

「…………」

 

銃口から硝煙が立ち上ったままのブレン軽機関銃Mark 2を力無く持ったまま、脱力した様子を見せるジェームズ。

 

「………勝った?」

 

やがて、そう呟いたかと思うと、その身体が小刻みに震え始める。

 

「勝った! 勝ったーっ! オリバーに………勝ったんだ! アイム ヴィクトリーッ!!」

 

そう叫んで両腕を空に向かって突き上げるジェームズ。

 

今、1つの師弟の戦いに、決着が付いた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃………

 

ウサギさんチームとレオポンさんチームはと言うと………

 

「桂利奈ちゃん! 急いで! 射線が通っちゃうっ!!」

 

ノーラのM4A3の射線が通りそうなのを見て、梓が焦った様子でそう叫ぶ。

 

「コレで精一杯だよぉーっ!!」

 

だが、M3リーを移動させている桂利奈は、既に精一杯だと返す。

 

「貰いましたわ!」

 

と、ノーラがそう言い放った瞬間!!

 

「やらせるかぁっ!!」

 

あやが副砲をM4A3に向け、発砲した!!

 

だが、防盾に命中した為、弾かれてしまう。

 

「! クッ!! 撃てっ!!」

 

車内に走る衝撃に、一瞬顔を顰めながらも指示を飛ばすノーラ。

 

それを受けてM4A3は発砲!!

 

放たれた砲弾がM3リーの主砲の付け根に横から命中。

 

M3リーの主砲身が砕け散った!

 

「! 主砲がやられちゃったっ!!」

 

「でも、直撃されなかったよ~」

 

あゆみが悲鳴の様な声を挙げるが、優希がそう言う。

 

彼女の言う通り、M4A3の砲弾は、本来ならば車体に直撃しただろうが、直前にM3リーの副砲弾が当たった衝撃で、狙いが逸れたのである。

 

「でも! 如何するの!? 私の方じゃM4A3の正面装甲は抜けないよ!!」

 

「クウッ!」

 

あやの声に、梓は苦い顔を浮かべる。

 

と、その時!!

 

何かが爆発した様な音が、2回続けて聞こえて来た!

 

「!?」

 

梓がペリスコープ越しにその音がした方向を確認すると、そこには………

 

ポルシェティーガーの砲弾が命中し、命中部から黒煙を上げているチャーフィーと………

 

エンジンが炎上しているポルシェティーガーの姿が在った。

 

「! ポルシェティーガーが!?」

 

「ゴメ~ン、チャーフィーはやっつけたんだけど、エンジンが限界だったみたい」

 

梓が思わず声を挙げると、ナカジマからそう通信が入って来る。

 

「如何しよう………」

 

「コレじゃあアイツを倒せないよ………」

 

あやとあゆみから絶望の声が挙がる。

 

主砲を破壊され、ポルシェティーガーも脱落した今、M3リーのM4A3を倒せる可能性は粗無かった。

 

ハムスターさん分隊とおおかみさん分隊の面々も、相手の歩兵部隊を食い止めるので精一杯であり、救援に来れそうにない。

 

(駄目だ………もう何も出来ない………)

 

無力感から俯き、目を閉じて両手を握り締める梓。

 

だが、そこで………

 

梓の脳裏に、みほの顔が浮かんだ。

 

(! 西住総隊長っ!!)

 

そこで梓はハッと目を見開く。

 

(………そうだ………総隊長だったら絶対に諦めない………必ず何とかしようとする筈………だったら、私だって………諦めない!!)

 

そう思い、表情を引き締める梓。

 

「…………」

 

そんな梓の顔をジッと見ている紗希。

 

彼女には一瞬、その姿に………

 

みほの姿が重なった様に見えた。

 

(落ち着け………落ち着け、澤 梓………落ち着いてもう1度状況を整理するんだ………)

 

梓は先ず自分を落ち着かせ、今の状況を頭の中で整理し始める。

 

(今のM3リーは主砲が無くなっている………使えるのは副砲の37ミリ………正面装甲を撃ち抜くのは到底無理………ポルシェティーガーもやられて、歩兵部隊の援護も望めない………)

 

パズルを組み立てる様に、1つ1つの事態を冷静に分析して行く。

 

(側面か背面を狙って接近戦を挑もうにも機動性も相手が上………他に副砲で貫通出来そうな場所と言えば底面か上面ぐらいだけど、高低差がそんなにある地形じゃないから、そんなところを狙うなんて………!? そう言えばっ!?)

 

そこで梓の脳裏に、座学で習った『ある戦法』が過る。

 

「(………コレしかない!)桂利奈ちゃん! 出来るだけM4A3を見上げる様な形になる場所に移動して!!」

 

「えっ!? 見上げるっ!?」

 

「M4A3より下に位置取るって事~?」

 

「それって危ないんじゃないの!?」

 

即座にそう指示を飛ばすと、桂利奈、優希、あゆみから戸惑いの声が挙がる。

 

「大丈夫! お願いっ!!」

 

しかし、梓は大丈夫だと言い、桂利奈に向かってそう言う。

 

「! 分かったっ!!」

 

そんな梓の姿を見た桂利奈は、梓を信じて指示通りに移動する。

 

「あや! 副砲照準! 狙いは………だよ!」

 

「! 了解っ!!」

 

梓は続いてあやに指示を出し、あやはそれを聞いて梓が何をしようとしているのか察する。

 

「? 見下ろせる位置へ移動?」

 

「如何言う積りか知らないけど、チャンスですよ、ノーラさん!」

 

M3リーが、ノーラのM4A3から見下ろされる形となる場所へと移動した事に首を傾げるノーラだったが、砲手の子がそう進言して来る。

 

戦いに於いて、相手より高い位置を取れば有利になるのは自明の理である。

 

「………そうですわね。どの道、残されたM3リーの副砲では、この距離でコチラの装甲を抜く事は不可能です。正面を向けながら砲塔指向」

 

「「了解!」」

 

ノーラはそう判断して命を下すと、砲手と操縦手がM4A3を言われた通りに動かす。

 

「砲塔がコッチを向いた! 桂利奈ちゃん、停止っ!!」

 

「えーいっ!!」

 

と、M4A3の砲が自分達の方を向いたのを見た梓が指示すると、桂利奈がM3リーを停止させる。

 

「? 停まった?」

 

「観念したのか?」

 

「なら、遠慮無くトドメを刺してあげなさい」

 

突如停止したM3リーに、M4A3の操縦手と砲手は怪訝な顔をするが、ノーラは冷酷にそう言い放つ。

 

「あや、良く狙って! 全部あやに掛かってるんだから!!」

 

「分かってるよ!」

 

狙われながらも、M3リーは副砲の照準をM4A3へと合わせる。

 

「狙いはバッチリ………行けーっ!!」

 

そして、あやの叫びと共に、副砲から砲弾が放たれる!

 

放たれた砲弾は、俯角を取っていたM4A3の防盾部分に命中!

 

すると、砲弾が下向きに弾かれ………

 

M4A3の車体上部を直撃した!

 

爆発が起き、M4A3の砲塔上部から白旗が上がる!!

 

「「「「なっ!?」」」」

 

「!? しまったっ!? 『ショットトラップ』ッ!!」

 

M4A3の乗員が驚きの声を挙げ、ノーラがそう叫ぶ。

 

 

 

 

 

『ショットトラップ』とは………

 

跳弾が発生した後、跳ねた弾が装甲の薄い天板等に命中する事、あるいはその可能性のある装甲板の配置の事である。

 

独ソ戦においても、ソ連の重装甲を誇る戦車を、熟練したドイツ戦車兵がこのショットトラップを使って撃破したと言われている。

 

 

 

 

 

「やった?………」

 

「やった! やったよぉっ!!」

 

「勝った~!」

 

「バンザーイッ!!」

 

ノーラのM4A3が黒煙と白旗を上げているのを見て、あや、あゆみ、優季、桂利奈が歓声を挙げる。

 

「浮かれないでっ!!」

 

「「「「!!」」」」

 

だがそこで、梓の怒声が飛んで、思わず硬直する。

 

「まだ試合は続いてるんだよ! 急いで次の行動に移らないと!!」

 

『こちら柳沢! 敵が撤退し始めました!』

 

「!!」

 

とそこで、勇武からそう通信が入って来て、梓はハッチを開けて車外へ姿を晒すと、周囲の状況を確認する。

 

勇武の報告通り、残っていた西部歩兵部隊の隊員達が、次々に撤退を開始して行っている。

 

「追撃しますか!?」

 

「ううん、コッチも大分やられたから、先ずは態勢を立て直そう。残存歩兵を集めて!」

 

「了解!」

 

M3リーの傍に現れた勇武が梓に尋ねると、梓はそう返し、勇武はその指示に従って、残存人員を集めて行く。

 

「………ふう~~」

 

そこで梓は脱力した様に座り込んで、再び車内へと戻る。

 

「…………」

 

すると、そんな梓の肩に、紗希が手を置く。

 

「紗希………」

 

梓が先の姿を見やると、紗希は笑みを浮かべる。

 

まるで、お疲れ様と言う様に………

 

「………ありがとう、紗希」

 

そんな紗希の笑顔を見て、自分も笑みを浮かべる梓だった。

 

「澤さん! 残存歩兵、集合しました!!」

 

するとそこで、勇武のそう言う報告が聞こえて来る。

 

「被害状況は如何ですか?」

 

「おおかみさん分隊、海音と豹詑を含めた半数が戦死判定です」

 

「ハムスターさん分隊も同じくです」

 

梓が報告を求めると、飛彗と勇武が、両隊共に半数が戦死判定を受けたと報告して来る。

 

「ねえ、モンローくんは?」

 

「まだ戻って来てません………」

 

そこであやがそう尋ねると、竜真がそう返す。

 

「まさか、ジェームズ………」

 

「そんなっ!?」

 

「やられちゃったの~?」

 

正義がそう呟くと、桂利奈と優季がそう声を挙げる。

 

「…………」

 

それを聞いた紗希が、しょんぼりした様子を見せる。

 

「紗希………」

 

今度は梓が、そんな紗希を慰める様に肩に手を置く。

 

と、その時!!

 

「オーイッ!!」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

声が聞こえて来て、その場に居た全員がその方向を見やると、そこには………

 

「皆サーン! ご心配をお掛けしまシターッ!!」

 

手を大きく振りながら、コチラに向かって走って来るジェームズの姿が在った。

 

「モンローくんだ!」

 

「!!………」

 

あゆみがそう声を挙げると、紗希の顔が忽ち笑顔になる。

 

「勝ったんだ………」

 

梓も、そんなジェームズの姿を見て、感慨深そうな顔をする。

 

「………良し! これより我が隊は再度街中へ突入! ゲリラ戦を再開します!!」

 

だが、すぐに表情を引き締めると、その場の全員にそう指示を飛ばす。

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

おおかみさん分隊とハムスターさん分隊の残存歩兵の面々が、勇ましく返事を返すと、ウサギさんチームと共に、再度西部劇の街並みのセットへと突入して行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

ジェームズVSオリバー。
そして、ウサギさんチームの奮戦の様子をお送りしました。

長い戦いの末にオリバーを破ったジェームズ。
ウサギさんチームも、絶体絶命に追い込まれながらも、梓の冷静な判断により、ノーラのM4A3を撃破。
しかし、またも味方の損害は大きかった………

ウサギさんチームとハムスターさん分隊+おおかみさん分隊の残存歩兵には、この後も大活躍の場があります。
楽しみにしていて下さい。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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