ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第144話『冥桜学園です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第144話『冥桜学園です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西部学園との試合に勝利した大洗だったが………

 

その試合で白狼は………

 

自軍フラッグ車をフレンドリーファイヤすると言う、大失態を犯してしまった………

 

責任を感じた白狼は、美嵩との約束もあり、大洗を去った………

 

その事に、表面上は元気に振る舞いながらも、内心で落ち込んでいた優花里………

 

みほ達はそんな優花里の心情を察しながらも、掛ける言葉が見つからなかった………

 

しかし、西部学園のクロエ達の気遣いで体験した農業実習で、僅かながらも元気を取り戻したのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西部学園艦・西部学園の敷地内………

 

大洗の面々が農業体験実習に訪れた翌日………

 

「皆ーっ! 今日は集まってくれてありがとーっ!!」

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

特設ステージ上に、アイドル衣装姿で居たサンショウウオさんチームの中で………

 

聖子が集まっていた観客………西部学園の生徒達と大洗の面々を前にそう言うと、割れんばかりの歓声が返って来る。

 

西部学園との試合に勝ったので、サンショウウオさんチームはライブを行う権利を得ていたが、白狼の事があったのでそれどころではなく、結局またもライブは中止になった。

 

しかし、そこでまたもクロエが気を遣い、態々特設ステージを組んで、西部学園でライブをしてくれと言って来たのである。

 

流石に2回続けてのライブ中止はサンショウウオさんチームとしても残念だった為、クロエの話には1も2もなく飛び付いた。

 

「それじゃあ今日は何と! 新曲を披露だよっ!!」

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

「じゃあ行くよ! 聞いてね! 『Miracle Game』!!」

 

聖子がそう言うと、バックバンドの磐渡達が演奏を始め、新曲『Miracle Game』のライブが開催される。

 

サンショウウオさんチームが歌っている間、観客となっていた西部学園と大洗の面々からは色取り取りのサイリウムが振られ、一部の者はオタ芸を披露する。

 

「「「「「「「「「「サンショウウオさんチーム、サイコーッ!!」」」」」」」」」」

 

やがて歌が終わると、またもや大歓声が巻き起こったのだった。

 

「ありがとうーっ!! じゃあ、この後はお楽しみの触れ合いコーナーで………!!」

 

とその時、ステージ上に居た聖子が、ある人物の姿を捉える。

 

「…………」

 

西部学園の女子生徒達の中に紛れる様にしていた、里歌の姿を………

 

(近藤さん………やっぱり)

 

まだアイドルへの未練が有るのだと聖子が思った瞬間………

 

「…………」

 

里歌はサッと踵を返し、西部学園の女子生徒達の中から抜け出して、西部学園からも出て行く。

 

「!!」

 

それを見た途端、聖子は後先考えず、ステージの上から飛び降りた!

 

「!? 聖子っ!?」

 

「聖子ちゃん!?」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

聖子の突然の行動に、優と伊代、サンショウウオさんチームと観客の一同は驚く。

 

「ゴメンナサイ! ゴメンナサイ! ちょっと通してっ!!」

 

しかし聖子は構わずに、驚きで固まっていた観客達を掻き分け、里歌を追うのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西部学園から少し離れた地点にて………

 

「待って、近藤さん!」

 

「! 郷 聖子………」

 

追い付いた聖子の姿を見て、里歌は驚きを露わにする。

 

「………何の用かしら? アイドルがファンをほっぽり出して来るなんて………やはり貴方はアイドルとしての自覚が足りない様ね」

 

しかし、すぐに顔を強張らせると、聖子に向かってそう厳しい言葉を投げ掛ける。

 

「………ほっぽり出してなんかいないよ」

 

だが、聖子はそんな里歌の事を正面から見据えてそう言った。

 

「? 如何言う事かしら?」

 

「だって、近藤さんだって私達のファンだから」

 

「!? ハアッ!?」

 

聖子の思わぬ言葉に、里歌は呆気に取られたような表情となる。

 

「だって近藤さん………こうしてライブに来てくれてるじゃない。プラウダ&ツァーリとの試合の時も………なら、立派なファンだよ」

 

「! それは………」

 

反論しようとする里歌だったが、実際訪れていた事は事実な為、言葉に詰まる。

 

「近藤さん、先に謝っておくね。ゴメンナサイ」

 

「な、何に謝るのよ?」

 

「この前………近藤さんが346プロのプロデューサーさんと揉めてるところ見ちゃって………それでプロデューサーさんに近藤さんの昔の事、聞いちゃったんだ」

 

「!!」

 

それを聞いた里歌は目を見開く。

 

「………プライバシーの侵害だわ」

 

「ホントにゴメンナサイ!………でも、近藤さん。本当はまた………アイドルやりたいんだよね?」

 

「………そんな積りは無いわ」

 

「嘘! もしそうなら、私達のライブを見に来てくれなんかしないでしょ!」

 

「無いって言ってるでしょう! コレ以上言う気なら、貴方の事を名誉棄損で訴えるわよ!」

 

法的措置も辞さないと大層な剣幕で言う里歌。

 

しかし………

 

「そんな言葉で誤魔化さないでっ!!」

 

「!?」

 

それ以上の迫力を発した聖子を見て、思わず黙り込む。

 

「………私ね。最初は大洗女子学園が廃校になるって話を聞いて、それで如何にかしたいと思ってスクールアイドルを始めたの」

 

「その話なら私も聞いてるわ。でも、それは文科省が決めた事でしょ。私達がどうこう出来る問題じゃ………」

 

「でも、今はそれだけじゃないの」

 

「えっ?………」

 

「私達を応援してくれてる沢山の人が居る。最初のライブは大洗機甲部隊の皆や対戦した学校の人達以外、殆どお客さんがいなかったけど、今は大勢の人達が私達のライブを見に来てくれてる」

 

「…………」

 

「その時思ったんだ。この人達を笑顔にする事が私達の役目なんだって!」

 

「笑顔………」

 

「勿論、廃校を阻止するって言うのは今でも1番の目的だよ。けど、それも応援してくれる皆の力が有れば出来る事だと思うんだ」

 

「…………」

 

黙って聖子の話に聞き入る里歌。

 

「応援してくれる皆の為にも、私はアイドルをやるんだ………きっと近藤さんにも居るよ! 応戦してくれる人が!」

 

「………居ないわよ、そんな人」

 

「居るよ。少なくとも目の前の1人」

 

「え?………」

 

「私は近藤さんの事を応援するよ」

 

「そんなの………」

 

「近藤さん………夢はある意味、呪いと同じなんだよ」

 

「夢が………呪いと同じ?」

 

「呪いを解くには、夢を叶えるしかない。途中で挫折した人は、一生呪われたままなんだ………今の近藤さんに掛けられている呪いを解けるのは………近藤さん自身なんだよ」

 

「…………」

 

「コレ………」

 

とそこで、聖子は1冊の本を取り出し、里歌に差し出した。

 

「コレは………」

 

それは、クロムウェル巡航戦車のマニュアル本だった。

 

「もし私達と一緒にアイドルをやりたくなったら、それを読んで戦車道をやろう。近藤さんなら、アイドルが何たるかなんて言うのは、釈迦に説法だと思うから」

 

「…………」

 

反射的にその本を受け取る里歌。

 

「…………」

 

しかし、すぐに踵を返すと、聖子の前から逃げる様に走り出す。

 

「近藤さ~~んっ! 待ってるからね~~~~っ!!」

 

「!!………」

 

その背中に聖子はそう投げ掛け、里歌は一瞬反応したかの様な様子を見せたが、振り返らずに走り去って行った。

 

「………よし! 私も戻らないと!」

 

それを見届けると、聖子はライブ会場へと戻って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、暫く時が過ぎた………

 

決勝関係試合の試合会場が準備されるまで1ヶ月………

 

大洗機甲部隊は、更なる練度向上を目指し、今まで以上に厳しい訓練に明け暮れていた。

 

戦車チームが空からの教導を受ける傍ら、歩兵部隊も空の友人であると言う、自らを『消耗品』と名乗る傭兵集団とその仲間、戦艦ミズーリでコックをやっていたと言う人物から特訓を受ける。

 

傭兵集団とコックの腕は凄まじく、大洗歩兵部隊のメンバーが全員で掛かって行っても返り討ちに遭った程である。

 

誰もがその正体を気に掛けたが、詮索はしないという約束の為、深くは追究しなかったのだった。

 

そんなある日の事………

 

大洗の学園艦は、三重県のとある港へと寄港する事となった。

 

そして三重は、白狼の実家の有る場所だった………

 

あれから白狼との音信は一切不通である。

 

まだ自分を許せていないのだろうか………

 

気になった大洗機甲部隊の一同は、白狼の実家へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三重県・某所………

 

白狼の実家………

 

「………留守の様だな」

 

白狼の実家へと辿り着いた一同の中で、代表して呼び鈴を押した弘樹だったが、何時まで経っても誰も出て来ず、再度呼び鈴を鳴らしたが反応が無かった為、そう判断する。

 

「そうですか………」

 

それを聞いて、優花里が露骨に落ち込んだ様子を見せる。

 

「優花里さん………」

 

そんな優花里を気遣う様に肩に手を置くみほ。

 

「何か、アイツが行きそうな場所の心当たりとかねえのか?」

 

「そう言われてもなぁ………」

 

「ワイ等も白狼の奴の実家の方に来たのは初めてやしなぁ………」

 

地市が海音と豹詑に尋ねるが、良い答えは返って来ない。

 

「………あ!」

 

とそこで、飛彗が何かを思い出したかの様な様子を見せる。

 

「宮藤くん。何か心当たりが?」

 

「ハイ。確か、実家の近くにレーシングクラブが在って、そこでいつもバイクを乗り回していたって言う話を白狼から聞いた事があります」

 

弘樹が尋ねると、飛彗はそう答える。

 

「レーシングクラブか………」

 

「他に手掛かりも無い。探してみるか」

 

飛彗の言葉を頼りに、一同はレーシングクラブの捜索に乗り出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数10分後………

 

方々に散らばって捜索していた大洗機甲部隊の一同の中で、小太郎からそれらしきレーシングクラブが見つかったとの連絡が入り、一同はその場所へと再集結。

 

しかし………

 

「閉鎖されているな………」

 

弘樹が、すっかり寂れてしまっているレーシングクラブ………『タチバナレーシングクラブ』の建物を見上げてそう言う。

 

「何てこった、折角の手掛かりが………」

 

「…………」

 

俊が愚痴る様に呟いていると、優花里も俯く。

 

「………念の為、裏手のサーキットの方も見てみましょうか?」

 

とそこで、みほがそう提案し、一同はレーシングクラブ裏手のサーキットへと向かった。

 

 

 

 

 

レーシングクラブ裏手のサーキット・タチバナサーキット………

 

サーキットもやはり閉鎖しており、人影は無い………

 

かに思われたが、1人の女性が、サーキットの傍に佇んでいるのを発見する。

 

「あの………」

 

「あら? 珍しいわね。閉鎖されたサーキットに人なんて………」

 

みほが声を掛けると、女性が振り向く。

 

その女性は、何処となく白狼と似た雰囲気を思わせた。

 

「この辺りの方ですか?」

 

「ええ、そうよ」

 

「小官は大洗国際男子校の舩坂 弘樹と言う者です。神狩 白狼と言う人物を探しているのですが、御心当たりはございませんか?」

 

「まあ! 貴方達、白狼の友達なの?」

 

弘樹がそう尋ねると、女性は軽く驚いた様な様子を見せた。

 

「ハイ。神狩 白狼の事をご存じなのですか?」

 

「御存じも何も………」

 

「ちょっと待ったーっ!!」

 

弘樹の問いに、女性が何かを答えようとしたところ、了平のちょっと待ったコールが入る。

 

(あ、また良からぬ事を言う気ですね………)

 

またも了平が碌でも無い事を言う気だと察し、呆れる様子を見せる楓。

 

「フフフ、俺にはお見通しですよ。貴方のその雰囲気から察するに………ズバリ! 貴方! 神狩 白狼のお姉さんでしょう!!」

 

ビシッと女性を指差しながらそう言い放つ了平。

 

「………アハハハハハハ!」

 

女性は一瞬呆気に取られた様な様子を見せたが、すぐに大笑いし始める。

 

「ア、アレ? 外した?………」

 

外したのかと困惑する了平。

 

「嫌だわ、お姉さんだなんて。口が上手いんだから」

 

「「「「「「「「「「??」」」」」」」」」」

 

しかし、続いて女性がそう言うと、大洗の一同も首を傾げた。

 

「初めまして………白狼の母の『神狩 夜魅(かがり やみ)』です」

 

そして女性………白狼の母親である『神狩 夜魅(かがり やみ)』が、笑顔でペコリと頭を下げた。

 

「「「「「「「「「「!? えええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~~~~~~~~~~っ!?」」」」」」」」」」

 

途端に、一部を除いた大洗機甲部隊の面々から仰天の声が挙がる。

 

「お、お母さんっ!?」

 

「マジかよっ!?」

 

「若っ!!」

 

「下手したら20代って言っても信じるぞ………」

 

そんな声が次々に挙がる。

 

そう………

 

夜魅の見た目はとても若く、如何見ても高校生の息子の居る母親には見えなかった。

 

「母上でしたか。御子息にはお世話になっています。彼は今は何処に?」

 

「冷静だね、弘樹くん………」

 

そんな中、冷静な様子のままで、夜魅に白狼の事を尋ねる弘樹と、そんな弘樹の姿に呆れる様な様子を見せるみほ。

 

「………あの子は此処には居ないわ」

 

と、夜魅は何処か寂しそうな表情でそう答える。

 

「居ない?………」

 

「海外のプロバイクレースチームからスカウトが来て、日本を出て行ったわ」

 

「!? ええっ!?」

 

「「「「「「「「「「海外っ!?」」」」」」」」」」

 

まさか日本に居ないとは思っていなかった優花里と大洗機甲部隊の面々は驚きの声を挙げる。

 

「死んだお父さんに代わってプロレーサーになる………それがあの子の夢だったからねぇ」

 

「えっ!? 白狼の親父さん、レーサーやったんか?」

 

夜魅がそう言葉を続けると、豹詑が驚きの声を挙げる。

 

「「…………」」

 

飛彗と海音も顔を見合わせている。

 

如何やら、友人にも話していない事だったらしい。

 

「ええ、アマチュアであんまりパッとしないレーサーだったけどね………それでも走る事が大好きで、白狼の事を良くサーキットに連れて行っていたわ………けど、レース中に事故でね」

 

そう言って何処か遠い目をする夜魅。

 

「白狼に何時も、『必ずプロのレーサーになってカッコ良いお父さんを見せてやる』って、口癖の様に言っててね」

 

「それでアイツもバイクに乗り始めたのか………」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

白狼の思わぬ過去を聞き、大洗機甲部隊の面々は黙り込む。

 

「外国と言うのは………何処の国ですか?」

 

そんな中で、尋ね辛そうな一同に代わる様に、弘樹が夜魅にそう尋ねる。

 

「ゴメンナサイ。急に決まったらしくて、あの子急いでそのチームの所へ向かったから、行き先はちょっと………」

 

「知らないんですか?」

 

「あの子には自由に生きて欲しかったからね。あまり彼是言わないから、あの子も彼是言って来なくて………あ! そうだ!」

 

思い出したかの様に手を叩く夜魅。

 

「『冥桜学園』の子達なら、何か知ってるかも知れないわ」

 

「! 『冥桜学園』………」

 

「ええっ!?」

 

「『冥桜学園』ですって!?」

 

夜魅の口から出た、『冥桜学園』なる学校の名前に、弘樹、みほ、優花里が驚きを示す。

 

「『冥桜学園』?」

 

「って、何?」

 

「何処の学校なんだ?」

 

「「「「「「「「「「??」」」」」」」」」」

 

しかし、事情を知らぬ大洗機甲部隊の一同は首を傾げる。

 

「武道の名門校さ。今はやっていないが戦車道や歩兵道で、創設から太平洋戦争が始まる前までの間には嘗て華々しい成績を納めていてな………恐らく、黄金期の実力は今の黒森峰以上だろう」

 

「! 黒森峰以上っ!?」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

途轍もない実力の冥桜学園の存在に、大洗機甲部隊の一同は驚愕する。

 

「そんな凄い学校だったのに、如何して戦車道や歩兵道を辞めたんだ?」

 

「太平洋戦争が始まり、戦況が悪化して行くと、冥桜学園の生徒達はその腕を買われ、学徒出陣させられた………そしてその殆どが即座に最前線か特攻に送られ、戦死した」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

弘樹が話したショッキングな内容に、大洗機甲部隊の一同は今度は言葉を失った。

 

「多くの未来ある学生を死なせてしまった冥桜学園はそれ以来、自戒の意味を込めて、戦車道や歩兵道と言った兵器を使用する武道からは遠ざかっている」

 

「如何してその学校の人達が、神狩殿の事を?」

 

と、弘樹が言葉を続ける中、優花里は白狼と冥桜学園の関係を夜魅に問い質す。

 

「だって、冥桜学園は美嵩ちゃんが通ってる学校だから」

 

「ええっ!? あの女、そんな学校の出身だったのかよ!?」

 

夜魅がそう答えると、以前美嵩に手痛い目に遭わされた了平が思わず声を挙げる。

 

「あの子も白狼に付いて行っちゃったから、同じ学校の友達なら何か知ってるかも知れないわよ」

 

(本多殿が神狩殿と一緒に海外に………)

 

そう思った優花里の胸がズキリと痛む。

 

「で、その冥桜学園は今何処に?」

 

「さあ~、そこまでちょっと………」

 

「肝心な所は分からず仕舞いか………」

 

俊が愚痴る様に呟く。

 

「仕方が無いね。一旦引き上げようか」

 

そこで迫信がそう言い、大洗機甲部隊の一同は撤収に入る。

 

「あ、待って!」

 

「「「「「「「「「「??」」」」」」」」」」

 

とそこで、夜魅がそんな大洗機甲部隊の一同を呼び止める。

 

「もしあの子に会ったら、変わらず接してあげて下さいね。あの子、ちょっと捻くれてる所が有るけど、本当はとっても良い子なの」

 

「ええ、良く分かっていますよ………失礼します」

 

夜魅がそう言うのを聞き、弘樹は思う所が有る様な顔をしながらペコリと頭を下げる。

 

大洗機甲部隊の一同も、同様に夜魅に向かって頭を下げると、その場から去り始める。

 

「………ちょっと心配だったけど、良いお友達が居るみたいね」

 

そんな大洗機甲部隊の一同の背を見送りながら、夜魅は慈愛の籠った笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小1時間後………

 

三重県・某港………

 

「結局無駄足だったか………」

 

「でも、冥桜学園の人に聞けば分かるかもって………」

 

「けど、大洗と冥桜学園とは交流が無い。連絡を取ろうにも如何すれば良いか………」

 

「地道に調べるしかないのか?」

 

諦めきれない様子を見せながら、港へと戻って来た大洗機甲部隊の一同。

 

「! ね、ねえっ! アレッ!!」

 

するとそこで、沙織が何かに気付いた様に港の方を指差した。

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

その沙織が指差した方向を見た大洗機甲部隊の一同は驚愕する。

 

何故なら、自分達の学園艦が入港しているすぐ隣の港に………

 

一航専の学園艦と同等かそれ以上の大きさが有ろうかと言う、巨大な学園艦が入港していたからだ。

 

「デケェッ!」

 

「オイオイ、何処の学園艦だ、アレッ!?」

 

その学園艦の余りの巨大さに、大洗機甲部隊の面々からは次々に驚きの声が挙がる。

 

「ん?………! オイ、見ろっ!!」

 

するとそこで、磐渡が何かに気付いた様に、その巨大な学園艦の艦首部分を指差す。

 

そこには、かつて日本海軍の軍艦の艦首に、菊の紋章が付けられていた様に、校章と思われる紋章と、『冥桜学園』と書かれたプレートが填められていた。

 

「! 冥桜学園っ!!」

 

「まあ! アレが!?」

 

「何てタイミングだ………」

 

みほと華が驚きの声を挙げ、麻子が何とも良いタイミングで現れた冥桜学園の学園艦に、呆れる様に呟く。

 

「でも、助かりましたよ。行ってみましょう!」

 

「そうですよ! またとないチャンスですよ!」

 

しかし、漸く掴んだ白狼の手掛かりを逃してはならないと、飛彗と優花里が声高にそう言う。

 

「そうだな………兎に角、冥桜学園に言って、本多 美嵩の知り合いを探してみるか」

 

その場を纏める様に弘樹がそう言い、大洗機甲部隊の一同は、冥桜学園の学園艦の方へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冥桜学園の学園艦が入港している港………

 

大洗機甲部隊の一同が、荷物の搬入口付近に近づいたところ、学園艦内へと運ばれている荷物を管理していると思われる、制服姿の男子生徒と女子生徒を発見する。

 

「コレで必要な物は全部揃いましたね」

 

「ああ、大体良いんじゃないかな?」

 

女子生徒と男子生徒がそう会話を交わす。

 

「あの………すみません」

 

とそこで、その2人に、一同を代表してみほが、恐る恐ると言った様子で声を掛ける。

 

「ハイ?」

 

「君達………誰?」

 

女子生徒と男子生徒は、突如現れた大洗機甲部隊の面々に首を傾げる。

 

「お忙しいところ申し訳無い。我々は………」

 

と、迫信が代表して自己紹介しようとしたところ………

 

「『吹雪』さん? 如何かしたんですか?」

 

「『清光』、何事だ?」

 

それよりも先に、日傘を差した女性と、何処となく古風な感じのする男性が現れる。

 

「あ、『大和』さん」

 

「『宗近』さん。いえ、この人達が………」

 

『吹雪』と呼ばれた女子生徒と、『清光』と呼ばれた男子生徒が大洗機甲部隊の面々を示す。

 

「どうも、突然すみません。我々は大洗国際男子校と大洗女子学園の者です」

 

改めて自分達の身分を明かす迫信。

 

「大洗?………」

 

「ああ! あの戦車道・歩兵道の全国大会で快進撃を続けているって言う、ダークホースの!」

 

「そうでしたか。あの学園艦は大洗の学園艦だったんですね」

 

吹雪は首を傾げ、清光は手をポンと鳴らし、日傘を持った女性は大洗の学園艦を見ながらそう言う。

 

「ああ、申し遅れました。私は『徳川 大和』と申します。お見知りおきを」

 

「あ、私は『真田 吹雪』です」

 

「俺は『沖田・加州清光・総司』さ」

 

「俺の名は『足利・三日月宗近・義輝』だ」

 

そこで、日傘を持った女性・『徳川 大和』

 

吹雪と呼ばれた女子生徒・『真田 吹雪』

 

男子生徒・『沖田・加州清光・総司』

 

そして、古風な男性・『足利・三日月宗近・義輝』が、其々に自己紹介をした。

 

「どうも、初めまして。大洗国際男子校の生徒会長を務めております神大 迫信です」

 

「同じく、大洗女子学園の生徒会長、角谷 杏だよー」

 

丁寧に自己紹介を返す迫信と、何時もの調子を見せる杏。

 

「それで、何か御用なんですか?」

 

「ええ、実は………」

 

「まぁまぁ、皆まで言うな」

 

と、迫信が事情を説明しようとしたところ、宗近がそれを制した。

 

「この冥桜学園へ来たからには観光も華じゃぞ。どれ、俺達が案内してやろう」

 

「いえ、我々は観光に来たワケでは………」

 

「ほれ、行くぞ」

 

観光に来たワケではないと言う迫信だったが、宗近はそれをスルーして冥桜学園の学園艦へと向かう。

 

「すみません、宗近さん、マイペースなもんだから………」

 

「………まあ、どの道、学園艦に上がらせて貰いたいと思っていたところだよ」

 

清光が謝罪するが、迫信は特に気にしていない様子でそう返す。

 

「では、ご案内致しますね」

 

「ようこそ、冥桜学園へ」

 

そしてそのまま、大洗機甲部隊の一同は、宗近、清光、大和、吹雪に連れられ………

 

『冥桜学園』へと足を踏み入れるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

西部学園で久々のライブを行うサンショウウオさんチーム。
その観客の中に、里歌の姿を発見した聖子は、彼女に自ら思いをぶつけ、アイドルへの再起を促し、クロムウェルのマニュアルを渡した。
果たして、彼女の決断は?

後日、白狼の事が気になり、実家へと様子を見に行った大洗の一同。
そこで、白狼の母・夜魅と出会い、白狼が日本に居ないと言う驚愕の事実と、彼と父の思い出を聞かされる。
行方の手掛かりは、美嵩の学校である『冥王学園』にあると言われた大洗は、偶然にも同じ港に入港していた冥桜学園の学園艦に出くわし、その生徒に案内されて、足を踏み入れるのだった。

今回登場した冥桜学園の生徒………
御存じ、大人気ブラウザゲーム『艦これ』と『刀剣乱舞』のキャラクターです。
あまりクロスさせるなと言う注意を受けましたが、これは世話になっている友人たっての要望でして………
名前の武将や偉人の名前が入っている理由につきましては、後々に明らかになります。
また、どちらかと言えば艦これ側のキャラが中心で、刀剣側は脇役気味になります。
そして、コレからアニメ版・艦これのエピソードを元にしたストーリーが展開されます。
色々と物議のあるアニメ版でしたが、出来る限り納得が出来るモノになれるように作り上げますので、何卒ご理解・ご了承下さい。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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