ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第161話『反撃開始です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第161話『反撃開始です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駆け付けた白狼の活躍によって………

 

ハロウィン歩兵部隊のスコールとカロが撃破された………

 

しかし、大洗機甲部隊の戦力は壊滅状態………

 

とてもナイトウィッチ&ハロウィン機甲部隊の戦力に対抗出来るとは思えなかった………

 

だが、彼等と彼女達は最後まで諦めず………

 

地市と桂利奈の見た映画を元に、皆の知恵と力を合わせ………

 

最後の作戦に打って出るのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

準決勝試合会場・廃墟の工業地帯………

 

『こちらガードフィッシュ。現在、呉校の艦隊を足止め中。敵はコチラへの対応で手一杯です』

 

「了解。全軍、前進再開するわ!」

 

支援艦隊のガードフィッシュ艦長から報告を受けたシュガーはそう指示を飛ばす。

 

分散して廃墟内等に隠れていたナイトウィッチ&ハロウィン機甲部隊の面々が再び姿を現し、残存大洗機甲部隊が居る場所へと進軍を再開する。

 

と、その進行方向に、砲弾が着弾した!

 

「!!」

 

すぐにシュガーがハッチから出て砲弾が飛んで来た方向を確認すると………

 

そこには、廃墟やその瓦礫の影に車体を隠しながら、自分達に向かって砲撃を行っている残存大洗戦車チームの姿が在った。

 

更に、周りには残存大洗歩兵部隊が展開し、砲兵を中心に射撃準備を整えている。

 

「撃ち方始めぇっ!!」

 

迫信の号令が飛び、歩兵部隊も射撃を開始する。

 

しかし、100人足らずの歩兵と戦車4輌での攻撃は、火力が圧倒的に不足していた………

 

「何だ何だ? こんな火力で正面から挑んで来るなんて? 気でも狂ったの?」

 

「或いは勝ち目が無いと思ってせめて一矢報いようとしてきたのか………」

 

「総隊長、如何します?」

 

ソルトとペッパーがそう言い、マヨネがシュガーに尋ねる。

 

「………ヴァリアントを前へ。3人は火力支援よ。慎重に行きなさい。大洗は追い詰められたからって自棄になる様な部隊じゃないわ」

 

シュガーは飽く迄冷静にそう言い放つ。

 

圧倒的戦力差となりながらも、彼女は決して大洗を侮る様な事はせず、油断もしなかった。

 

「了解。前進します」

 

ヴァリアントが前面に出て、残存大洗機甲部隊からの攻撃を弾き返しながら、ゆっくりと進んで行く。

 

そのヴァリアント達に隠れる様にして、他のナイトウィッチ&ハロウィン機甲部隊の面々も前進。

 

そして、シュトルムティーガー、ブルムベア、トータスが後位置から火力支援を開始する。

 

残存大洗機甲部隊が展開している場所で、次々に爆発が起こって火柱が立ち上る!

 

「!? うわあっ!?」

 

と、アハト・アハトを水平射撃していた誠也達砲兵が直撃弾を貰う!

 

「! 誠也くん!」

 

「すみません………やられました」

 

完全に壊れたアハト・アハトの傍で、戦死判定を受けた誠也がそう告げて来る。

 

「全員、遅滞行動に入って下さい」

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

そこでみほの指示が飛び、残存大洗機甲部隊は遅滞行動を取り始める。

 

「………敵は遅滞行動を取っている」

 

残存大洗機甲部隊が徐々に後退を始めるのを見て、軍服の上に胸当ての鎧を着け、更にジャック・オー・ランタンの顔をしたマスクを付け、鷲のようなフードがついた特殊な装束のハロウィン歩兵………ジャックがそう指摘する。

 

「ええ、分かってるわ。各員、周囲に注意しつつゆっくりと追撃しなさい」

 

「一気に潰さないんですか?」

 

「そうしようとして返り討ちにあった部隊が幾つ有ると思ってるの? このまま着実に相手の戦力を削りながら行くわよ」

 

戦力差は圧倒的であるが、シュガーは決して油断せず、真綿で首を絞める様にジワジワと追い詰めて行くのだった。

 

「徹甲弾の使用は控えて! 成るべく派手に目を惹ける様に榴弾を使って! 但し、撃破出来ると思ったら躊躇無く撃ってっ!!」

 

「りょ、了解!」

 

「ハイッ!」

 

聖子の指示に、装填手のさゆりと砲手の静香が返事を返す。

 

「! バレンタインがコッチを狙ってるにゃっ!!」

 

とそこで、満里奈がナイトウィッチ戦車チームのバレンタイン歩兵戦車の1輌が、コチラにオードナンスQF 75mm砲を向けているのに気付く。

 

直後に、そのバレンタインは、クロムウェルに向かって発砲した!

 

「! 回避………」

 

「遅滞行動中に大きく動く積り?」

 

慌てて回避の指示を飛ばした聖子だったが、里歌はそう返したかと思うと、クロムウェルに僅かに右を向かせた。

 

すると、バレンタインの撃った砲弾は、角度が浅かった為、傾斜装甲の原理で明後日の方向へ跳ね飛ばされる。

 

「うわっ、とっ! 危なかっ………!? 2時方向にBT-5とBT-7!!」

 

車体に走った衝撃に聖子が思わず声を漏らした直後、ペリスコープ越しにBT-5とBT-7がコチラに主砲を向けている事に気づく。

 

直後に、BT-5とBT-7は発砲する!

 

「! また来た! しかも2発っ!?」

 

「慌てないで………」

 

満里奈が悲鳴の様な声を挙げたが、里歌は落ち着いた様子でクロムウェルを今度は左を向かせたかと、またも角度を衝けた装甲で、相手の砲弾を弾き飛ばす。

 

「! また弾いた!?」

 

「す、凄いです………」

 

「大した事ないわ。クロムウェルのスペックは全部頭に入ってるわ。あのトータス達の攻撃にさえ気を付けていれば、後は皆角度を付けて弾き飛ばせるわ」

 

驚く静香とさゆりに、里歌はさも当然の様にそう言い放つ。

 

「里歌さん………」

 

「感動してる暇が有ったらちゃんと指示しなさい。車長なんでしょ?」

 

「! 了解っ!」

 

感動している様子の聖子に、里歌は素っ気なくそう返すが、聖子は笑顔で敬礼を返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

試合会場の上空でも動きが有った………

 

「コレでっ!!」

 

「うおおっ!?」

 

六郎の零戦二一型の翼内20mm機銃がハリケーンを蜂の巣にし、やられたハリケーンからパイロットが脱出すると、機体は炎上して爆散する!

 

「クッ! 弾も残り僅かか………」

 

だが、長く空戦を続けていた六郎の零戦二一型の残弾は尽きかけていた。

 

「…………」

 

同じくハリケーンを新たに1機撃墜したメビウス1の紫電改も、自分も同じだと言う様に翼を振る。

 

「敵の残弾は残り僅かだ!」

 

「この機を逃すな! 一気に畳み掛けろっ!!」

 

敵もそれに気づいているらしく、命令系統混乱と士気低下を狙い、執拗に六郎の零戦二一型とメビウス1の紫電改に攻撃を加えて来る。

 

「クウッ!!」

 

「!!………」

 

六郎とメビウス1が苦い顔を浮かべる。

 

………と、その時!!

 

機銃音が鳴り響くと、六郎とメビウス1に襲い掛かっていたハリケーンが、数機纏めて火を噴いた!!

 

「!? なっ!?」

 

「OK! 間に合ったなっ!!」

 

1機のハリケーンのパイロットが驚きの声を挙げた瞬間、陽気そうな声と共に、空域に新たな5機編成の漆黒の戦闘機隊が現れる!

 

「! 一航専の新手かっ!?」

 

「オイ! あの機体って………」

 

「!? 『疾風』だっ!?」

 

ハリケーンのパイロット達は、その漆黒の戦闘機が全て、大日本帝国陸軍の傑作機………『四式戦闘機・疾風』である事を確認して驚きの声を挙げる。

 

「すみません、坂井総隊長!」

 

「機体の調整に手間取っちまってな」

 

気弱そうな声と、真面目そうな声での通信が、六郎の元へ送られてくる。

 

「いや、良く来てくれた! すまないが此処を頼む! 私とメビウス1は一旦帰投する!」

 

「…………」

 

六郎がそう返し、メビウス1が風防越しに敬礼すると、零戦二一型と紫電改は空域から離脱して行く。

 

「ブレイズ。後ろは任せて」

 

「今日も頼むぜ、分隊長さんよぉ!」

 

「………はい」

 

隊長機の援護位置に付いて居る機体から女性の声がし、再び陽気そうな声が響くと、隊長機から短く返事が返って来る。

 

「野郎! 舐めるなよっ!!」

 

「幾ら疾風でも、コレだけの数を相手に出来ると思うなっ!!」

 

そこでハリケーンの編隊が、一斉に5機の漆黒の疾風へと向かう。

 

「………ラーズグリーズ隊、交戦」

 

漆黒の疾風編隊の隊長がそう言い、尾翼にヴァルキリーの一柱であり『計画を壊す者』と訳される女神・ラーズグリーズのエンブレムを描いた疾風達が戦闘を開始するのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃………

 

試合会場に面する海上でも………

 

「爆雷投射っ!!」

 

護の号令で、雪風の爆雷投射機から爆雷が発射される。

 

近くに居た初風、天津風、時津風も次々に爆雷を投射。

 

投射された爆雷が水没したかと思うと、一瞬間があって、次々に水柱が立ち上る!

 

「ソナー! 如何だっ!?」

 

「待って下さい! まだ爆発の残響が………」

 

すぐに潜水艦を撃沈出来たのかと水測員に尋ねる護だが、爆発の残響の為、聞き取れないと返す。

 

「雷跡視認! 魚雷2本が、漣に向かって居ます!!」

 

「!?」

 

と、マスト頭頂部の見張り台の見張員からの報告に、護は双眼鏡を手にして漣の方を確認すると、そこには漣へと向かう2本の雷跡が在った!

 

「! 漣! 8時方向から魚雷だ! 回避しろっ!!」

 

護がすぐに漣へと通信を送ると、漣は大きく回避行動を取り始める。

 

「機関最大戦速っ!!」

 

「舵切れ、舵っ!!」

 

「また潜水艦にやられるなんて勘弁だぜっ!!」

 

漣の艦橋や艦内では、乗員が怒声と共に慌しく走り回っている。

 

太平洋戦争にて、漣は米軍の潜水艦からの魚雷攻撃によって沈められているだけに、切羽詰るものがあった。

 

「駄目です! 魚雷、命中コースですっ!!」

 

だが、乗組員達の奮戦も虚しく、魚雷は直撃コースを取る。

 

「駄目だ………避けられない………衝撃に備えっ!!」

 

最早回避出来ぬと踏んだ漣の艦長は、すぐにそう命令を飛ばし、乗組員達は手近なモノにしがみ付く!

 

しかし、そこで!!

 

轟音が鳴り響いたかと思うと、雷跡が浮かんでいた場所に砲弾が着弾!

 

巨大な水柱が上がり、水中に走った衝撃波が、魚雷を爆発させた!!

 

「! 伊勢か! 助かったっ!!」

 

その砲撃が、伊勢からのモノである事を確認した漣の艦長が、安堵の息を吐きながらそう言う。

 

と、その傍に居た日向の後部から、次々に水上機が発艦している。

 

「! 瑞雲が発艦したか!」

 

漣の艦長が、その発艦した水上機………『瑞雲』を見てそう言う。

 

伊勢と日向は単なる戦艦では無い………

 

艦体後部に、水上機射出機と格納庫を備えた、『航空戦艦』なのである。

 

太平洋戦争に於いては、そのコンセプトで運用される事はなかったが、今時を越え、航空戦艦としての活躍を見せている。

 

潜水艦が居ると思われる場所に、瑞雲は搭載していた爆雷を次々に投下して行く。

 

「後方で爆雷の炸裂音、多数」

 

「やるじゃないか。対潜装備のお粗末な日本艦でかなり正確に攻撃して来ている」

 

ソナー員からの報告に、ガードフィッシュの艦長はそう言い放つ。

 

「ですが、今一歩ですね。そろそろ終わりにしてあげましょう」

 

「その通りだ………全艦! 魚雷発射用意っ!!」

 

副長がそう言うと、ガードフィッシュの艦長は、潜水艦隊全艦での雷撃を試みる。

 

一斉射で逃げ場を無くし、完全にトドメを刺す積りだ。

 

呉校艦隊、万事休すか………

 

と、思われたその時!!

 

「………うん?」

 

ブラックフィッシュのソナー員が、何かを聞き取った。

 

「如何した?」

 

「何か聞こえます」

 

「僚艦のエンジン音じゃないのか?」

 

「いえ、明らかに違います」

 

ソナー員からの報告に、ブラックフィッシュの艦長はそう返すが、ソナー員はソナーを調整して詳細に聞き取ろうとする。

 

すると………

 

「!? コ、コレは!?」

 

「何だ? 何が聞こえるんだ?」

 

「………交響曲(シンフォニー)です」

 

「………はっ?」

 

ソナー員の報告が理解出来ず、間抜けた声を挙げるブラックフィッシュの艦長。

 

「モーツァルト………」

 

「41番………」

 

「ハ長調………」

 

一方、他の潜水艦のソナー員達も、その音を捉えていた。

 

そして………

 

「!? 左舷30! 後方100! そこから交響曲(シンフォニー)が!………我々の艦隊では無い潜水艦が居ますっ!!」

 

ブラックフィッシュのソナー員が、交響曲(シンフォニー)は自艦の左舷側後方から………

 

所属不明の潜水艦から発せられている事を報告した!!

 

「!? 面舵一杯っ!!」

 

その報告を受けたブラックフィッシュの艦長は、即座に不明艦から離れようと面舵を指示する。

 

「取舵だ! 急げっ!!」

 

一方、そのブラックフィッシュの傍に居たコッドは、不明艦を攻撃しようと取舵を切る。

 

この時、突然の不明艦の出現に慌てた両者は、互いの位置を確認する事を忘れていた。

 

結果………

 

「「「「「「「「「「!? うわああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」」」」」」」」

 

ブラックフィッシュとコッドは、互いの艦首をぶつけ合う形で衝突!

 

膨大な浸水が発生する致命的な損傷を負った!

 

直後に、安全装置として装備されていた強制浮上システムが作動し、バルーンに包まれたブラックフィッシュとコッドは、水上へと浮かび上がる!

 

「!? 如何した!?」

 

「ブラックフィッシュとコッドが衝突! 撃沈判定です!!」

 

「何だとっ!?」

 

ガードフィッシュの艦長は、挙げられた報告に驚愕を露わにする!

 

「!? 艦長! 正面から交響曲(シンフォニー)! 距離150! 深度、本艦と同じ! 衝突コースです!!」

 

「!?」

 

一方、潜水艦としては絶対タブーである筈の『自ら音を出す』と言う行為をしている不明艦は、今度はフライングフィッシュに正面から向かって行く。

 

「艦長! 魚雷を!!………」

 

「この距離で撃ったら巻き添えを食う! 速力一杯! 進路そのまま! 体当たりしろっ!!」

 

体当たりされる前に、コチラから体当たりしてやろうと、フライングフィッシュの艦長はそう指示する。

 

「チキンレースだ! コッチが逃げると思ってるのか!?」

 

迫る不明艦に対し、フライングフィッシュの艦長はそう言い放つ。

 

「! 不明艦、タンク注水音! ダウントリムを掛けます!!」

 

すると不明艦は潜行を開始する。

 

「野郎! コッチもダウントリム一杯だ! 逃がすなっ!!」

 

挑んでおきながら逃げる不明艦の態度にイラつきながら指示を飛ばすフライングフィッシュの艦長。

 

だが………

 

「!? か、艦長! 不明艦の後方に、ハダックが!?」

 

「!? 何ぃっ!?」

 

ソナー員からの報告に、フライングフィッシュの艦長は驚愕する!

 

実は不明艦の後方からは、ハダックが追跡する形で付けて来ていたのだが、不明艦が邪魔となり、フライングフィッシュのソナー員は探知出来なかったのだ。

 

ハダックのソナー員も同様である。

 

ハダックはそのまま、ダウントリムを掛けていたフライングフィッシュの艦橋に、艦首から衝突!!

 

フライングフィッシュの艦橋と、ハダックの艦首が潰れる!

 

「「「「「「「「「「!? うわああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」」」」」」」」

 

乗員達の悲鳴が響く中、両艦は強制浮上システムで、バルーンに包まれて海上に浮かび上がる。

 

「フライングフィッシュとハダックもやられました!」

 

「潜行だ! 潜れっ!!」

 

一方、残ったキングフィッシュとガードフィッシュは、海底に付いて不明艦を撒こうと考える。

 

「!? うおっ!?」

 

「沈没船に接触! 海底です!」

 

と、キングフィッシュが海底に在った沈没船の残骸に接触する。

 

「後部トリムタンク注水! 艦水平!!」

 

「後部タンク注水! アイッ!!」

 

すぐにキングフィッシュは、艦を水平にしようとする。

 

だが………

 

「!? トリム、戻りません!!」

 

「!? 前部タンクブローだ! 思い切り吹かしてみろ!!」

 

艦が水平の戻らないとの報告に、キングフィッシュの艦長はそう命じるが………

 

「駄目です! 前甲板に反応! 不明艦が乗って居ます!!」

 

「!? 何だとっ!?」

 

何と!

 

何時の間にか、キングフィッシュの前甲板部を抑え込む様に、不明艦が乗っかっていたのだ!

 

不明艦はそのまま潜行を掛け、キングフィッシュを沈めて行く。

 

「「「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」」」」」

 

乗員の悲鳴が挙がる中、キングフィッシュは完全に沈没船の残骸の中へと押し込められ、脱出不能となった。

 

「艦長! キングフィッシュのスクリュー音が消えました! 恐らく、やられたものかと!!」

 

「この短時間で、5隻の潜水艦を戦闘不能にしただと………」

 

「バケモノめ………」

 

残るガードフィッシュのソナー員がそう告げると、副長と艦長に戦慄が走る。

 

「! 不明艦! コチラに接近して来ます!!」

 

「落ち着け! 今この場所は沈没船同士に挟まれた隙間だ! コチラが音を立てない限り、見つかりはしない! 奴が捜索を諦めて離脱に掛かった時を狙うぞ!!」

 

再びの報告に、艦長は指示はそう指示を飛ばす。

 

と………

 

「!? 不明艦、魚雷を発射しました!!」

 

「!? 魚雷だと!? 馬鹿な! 敵も第二次世界大戦中の艦だ! ホーミング魚雷など積んでいない筈だ!!」

 

ソナー員からの報告に、副長が驚きの声を挙げる。

 

第二次世界大戦中の魚雷は一部を除いて殆どが無誘導であり、基本的に相手の動きを予測して撃つのが普通である。

 

その為、水中を3次元機動で動き回る潜水艦を潜水艦が魚雷で攻撃するなど、有り得ないのである。

 

「何故そんな無駄な事………!? バランストタンクブロー! 急速浮上っ!!」

 

「!? 浮上っ!?」

 

「如何したんですか、艦長!?」

 

そこで、何かに気付いた艦長が叫んだが、乗員達は困惑する。

 

その直後………

 

ガードフィッシュが隠れている沈没船に、不明艦の魚雷が命中した!

 

沈没船が破壊され、大量の瓦礫が、傍に隠れていたガードフィッシュに降り注ぐ!!

 

「「「「「うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」」」」」

 

「機関、最大出力!」

 

「駄目です! ピクリともしません!!」

 

すぐに脱出を試みたが、瓦礫の量は半端ではなく、完全に埋もれたガードフィッシュは、まるで動けない状態となっていた。

 

「…………」

 

それを聞いた艦長は、ガクリと膝を着いた。

 

「たった1隻の潜水艦が、我が潜水艦隊を壊滅させたと言うのか………奴は………『モビーディック』か………」

 

不明艦の恐るべき能力に対し、艦長は神話に登場する白鯨………『モビーディック』を思い浮かべるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、海上の呉校艦隊の雪風でも………

 

「艦長! 水中に残っていた敵潜水艦のスクリュー音が消えました! 聞こえるのは不明艦の音と交響曲(シンフォニー)だけです!」

 

「とうとう1隻で全滅させたか………」

 

水測員の報告に、護はバルーンによって浮かび上がっていたブラックフィッシュとコッド、フライングフィッシュとハダックを見ながらそう言う。

 

「不明艦の音紋を照合した結果………伊201型の潜水艦ではないかと思われます」

 

「伊201型なら、ウチにも有ったな」

 

「けど、潜水艦の人達って、普段は何処で何してるのか全く分かりませんからね」

 

不明艦が、大日本帝国海軍の『伊201型潜水艦』ではないかと推測され、一体誰が乗って居るのかと雪風の乗員が話し込む。

 

「………こんな事が出来るのは只1人しかいない」

 

そこで、護はそんな事を言う。

 

「艦長? ご存じなのですか?」

 

副長が尋ねると、護は………

 

「………かつて、原子力潜水艦1隻で世界を変えようと挑んだ男の息子さ」

 

護は水平線を眺めながら、そう呟いたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

ナイトウィッチ&ハロウィン機甲部隊に攻撃を仕掛ける残存大洗機甲部隊。
果たして、何を考えているのか?

一方、上空では………
『疾風』を翔けるエースチーム『ラーズグリーズ隊』が、新たに救援に翔け付ける。

そして、潜水艦隊に襲われていた呉艦隊も、謎の潜水艦によって事無きを得る。
原子力潜水艦1隻で世界に挑んだ男の息子………
一体、何江田 四郎の息子なんだ?(笑)

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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