ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

167 / 287
第167話『準決勝、始まります!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第167話『準決勝、始まります!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道・歩兵道全国大会、決勝リーグ・準決勝………

 

大洗機甲部隊VSグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の試合会場………

 

大洗町に似た港町を模した演習場………

 

フラッグ車であるⅣ号を囲む陣形で、街中へと続く海岸線の大通りを進軍中の大洗機甲部隊は………

 

「今回の試合会場………何だか、大洗の町にそっくりですね」

 

「うん………」

 

優花里の言葉に、キューポラから姿を晒しているみほはそう返す。

 

「そうなると、勝手が似てるって事で、俺達には有利って事か?」

 

「地市、忘れたのか? 我々は大洗の町でグロリアーナ&ブリティッシュと戦い、敗れているんだぞ」

 

地市がそんな事を口にするが、即座に弘樹が戒める。

 

「っと、そうだった………」

 

「ですが、今回の戦いはその雪辱戦としてうってつけですね」

 

すぐに気を取り直す地市と、そう口にする楓。

 

「ああ、そうだな………」

 

その言葉に、弘樹も思う所が有る様な様子で頷く。

 

「西住総隊長。先ず、如何しますか?」

 

とそこで、M3リーのハッチから姿を晒していた梓が、みほへそう尋ねる。

 

「やっぱり、市街地でゲリラ戦ですか?」

 

その随伴分隊長である勇武もそう言って来る。

 

「そうしたいところですが………相手は、あのダージリンさんです。初めて戦った時も、手を読まれましたし、私達の試合を欠かさず観戦していたそうです」

 

「ナイトウィッチ&ハロウィンの時と同じで、コチラの行動を読まれる可能性が大と言う事だね」

 

みほがそう言うと、迫信が補足する様にそう言う。

 

「ハイ。なので、今回は………」

 

と、みほが何かを言うとした瞬間!

 

全員の耳に、風切り音が聞こえて来た!

 

「! 散開っ!!」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

即座にみほはそう指示を出し、大洗機甲部隊の一同は方々に散らばる。

 

直後に、先程まで大洗機甲部隊が纏まっていた場所に、砲弾が着弾!

 

派手に火柱と爆煙を立ち上らせた!!

 

「超長距離砲撃っ!? カノン砲かっ!? それとも自走砲かっ!?」

 

「かなり大型の砲弾だったぞっ!!」

 

地面に伏せて爆風を回避しながらも、降って来た砲弾を観察していた大洗歩兵部隊員からそう声が挙がる。

 

「西住総隊長! 今の砲撃は、海側から飛んできましたっ!!」

 

とそこで、砲撃が海側から飛んで来ていたのを目撃していた秀人が、みほへそう報告を挙げる。

 

「海側っ!? まさかっ!?………」

 

みほは驚きながらも、双眼鏡を手にして、すぐに水平線を確認する。

 

するとそこには………

 

艦隊を形成して浮かんでいる………

 

イギリス海軍艦艇………グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の支援艦隊の姿が在った!!

 

「! 敵の支援艦隊ですっ!! 全部隊、急いで町へ移動して下さいっ!!」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

みほの声に驚きながらも、大洗機甲部隊の面々はすぐに市街地へ向かっての移動を開始する。

 

その直後に、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の支援艦隊の艦影に、発砲炎が煌めき、大洗機甲部隊の周辺で次々に火柱が上がった!!

 

「おうわっ!? 凄まじいなぁっ!!」

 

「当たり前だ。戦艦が4隻も居るぞ」

 

ジープを操る大河が思わずそう漏らすと、双眼鏡でグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の支援艦隊の様子を見ていた大詔がそう言う。

 

その言葉通り、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の支援艦隊には4隻もの戦艦………

 

ネルソン級戦艦1番艦の『ネルソン』、同2番艦『ロドニー』………

 

そして、クイーン・エリザベス級戦艦の1番艦『クイーン・エリザベス』、同2番艦の『ウォースパイト』の姿が在った。

 

周辺には、護衛艦隊と思われるヨーク級重巡洋艦の1番艦『ヨーク』と、同2番艦の『エクセター』

 

サウサンプトン級軽巡洋艦の1番艦『サウサンプトン』、同4番艦の『ニューカッスル』、同5番艦の『シェフィールド』

 

2代目E級駆逐艦の1番艦『エクスマス』、同4番艦の『エレクトラ』、同5番艦の『エンカウンター』

 

J級駆逐艦の1番艦『ジャッカル』、同7番艦の『ジュノー』、同8番艦の『ジュピター』の姿が在る。

 

「西住総隊長! コチラも洋上支援を要請する事を進言します! このフィールドであの規模の艦隊の艦砲射撃に晒され続けるのは危険です!」

 

「分かってる! コチラは大洗機甲部隊総隊長、西住 みほ。洋上支援を要請します!!」

 

Ⅳ号の傍を走るくろがね四起の運転席から、弘樹がそう叫ぶと、みほは即座に呉造船工業学校艦隊へ支援要請を入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合会場に面した洋上………

 

要請を受けた呉造船工業学校艦隊の艦隊………

 

伊勢、日向に加え、大日本帝国海軍の象徴であった長門型戦艦の1番艦『長門』と、同2番艦の『陸奥』を中心に………

 

最上型重巡洋艦の1番艦で航空巡洋艦仕様となっている『最上』、同2番艦の『三隈』

 

川内型軽巡洋艦の2番艦『神通』、球磨型軽巡洋艦の3番艦で雷撃に特化した重雷装巡洋艦仕様となっている『北上』、同4番艦で同じく重雷装巡洋艦仕様となっている『大井』

 

お馴染みの護の雪風を含めた初風、天津風、時津風の第十六駆逐隊。

 

特Ⅲ型型駆逐艦、通称暁型の1番艦である『暁』、同2番艦の『響』、同3番艦の『雷』、同4番艦の『電』からなる『第六駆逐隊』で構成されている水上打撃部隊だ。

 

「敵艦隊、視認っ!!」

 

「全艦! 砲雷撃戦、用意っ!!」

 

「砲雷撃戦、用意っ!!」

 

長門の艦橋見張り要員がそう報告を挙げると、座乗していた艦隊司令はそう号令を掛け、雪風の艦橋では護が復唱する。

 

とそこで、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の支援艦隊が一斉回頭。

 

全艦隊が、呉造船工業学校艦隊の方へと向かって来る。

 

「敵艦、一斉に回頭して来ました!」

 

「向こうもやる気か………良いだろう! 帝国海軍の水雷戦能力、篤と見せてやるっ!!」

 

「水雷戦隊、各艦! 我に続けっ!!」

 

護がそう声を挙げた瞬間、神通の艦長が水雷戦隊全艦に指示を飛ばし、一斉に速度を上げ、先陣を切る様に敵艦隊へと向かって行く。

 

そこで、敵艦隊の内、ネルソン、ロドニー、クイーン・エリザベス、ウォースパイト、ヨーク、エクセターが、斉射を行う為に、一斉に取舵を取り、呉造船工業学校艦隊に側面を向ける様に陣形を取る。

 

「敵主力艦、一斉に取舵回頭」

 

「おも~か~じ、いっぱ~いっ!!」

 

「おも~か~じっ!!」

 

それに対し、長門、陸奥、伊勢、日向、最上、三隈は合わせる様に面舵を取り、両主力艦は同航戦へと縺れ込む。

 

その先頭を行くのは、呉校側が長門、陸奥。

 

グロリアーナ&ブリティッシュ側がネルソン、ロドニー。

 

共に、世界のビッグ7と呼ばれた戦艦同士だった。

 

「スゲェッ! ビッグ7同士が撃ち合いを始めるぞっ!!」

 

「こんな光景、中々お目に掛かれねえぜっ!!」

 

史実では叶う事の無かった、ビッグ7同士の殴り合いに、観客達のテンションも上がる。

 

『コレは夢の対決っ! 長門型戦艦VSネルソン級戦艦のカードだぁっ!!』

 

『いや~、僕も初めてですねぇ。ビッグ7同士の殴り合いを見るのは』

 

実況席のヒートマン佐々木とDJ田中のテンションも高い。

 

とそこで、そんな観客達の期待に応えるべく………

 

長門と陸奥、そしてネルソンとロドニーの主砲が一斉に火を噴き、爆音をフィールド一帯へ響かせたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊・本隊………

 

「我が方の支援艦隊が、大洗の支援艦隊との戦闘に入りました」

 

「そう………コレで大洗の支援艦隊は封じられたわね」

 

アッサムからの報告に、ダージリンは優雅に紅茶を飲みながらそう返す。

 

「でも、いきなり洋上支援を使ってしまって、良かったのですか?」

 

しかし、オレンジペコは、いきなり洋上支援を投入してしまった事へ懸念を示す。

 

「このフィールドの市街地は、それほど背が高かったり、頑丈だったりする建造物は殆ど無いわ。海からの砲撃を防ぐ手立ては殆ど無い………つまり、強力な大洗の支援艦隊を封じるのは当然の手よ」

 

だが、ダージリンは優雅な態度を崩さずにそう言う。

 

「大洗が航空支援でコチラの艦隊を迎撃すると言う可能性もあったのでは………」

 

「私がみほさんだったらそれはしないわ」

 

「如何してですか?」

 

「元々陸上戦力に乏しい大洗に取って、対地攻撃に於いて最も絶大な効果を発揮出来る航空支援は言わば虎の子………序盤から投入するのは躊躇う筈よ」

 

「流石はダージリン総隊長。見事な読みですね」

 

ダージリンの戦略眼に、セージが感心した様にそう言う。

 

「フフ………さて、次の手ね………『ローズヒップ』」

 

とそこで、ダージリンがそう言ったかと思うと………

 

1台のクルセイダーMk.Ⅲが、ダージリンの乗るフラッグ車でもあるチャーチルの横に、ドリフトの様に滑りながら横付けして来る。

 

「お呼びでございますかぁっ! ダージリン様ぁっ!!」

 

砲塔上部のハッチが開いたかと思うと、濃いピンクの髪を真ん中で分けたヘアスタイルの少女………『ローズヒップ』が、勢い良く姿を見せる。

 

尚、彼女が右手に持っているティーカップは、中身がバチャバチャと飛び散っている………様に見えて、1滴も零れていない。

 

まるで、某豆腐屋のハチロクの様な運転である。

 

「ローズヒップ、貴方また………」

 

「アッサム。今はお小言は無しよ………大洗はきっとB5の地点へ向かっているわ。先回りして仕掛けなさい」

 

「了解致しましたですわっ!!」

 

アッサムが注意しようとしたのを制し、ダージリンがそう命じると、ローズヒップは再び車内へ戻ったかと思うと、クルセイダーMk.Ⅲが発進。

 

そのローズヒップ車に続く様に、残りのクルセイダーMk.Ⅲと、スチュアートⅢ、スチュアートⅥが発進する。

 

するとそこで、クロムウェルがチャーチルの横へ付けて来たかと思うと、ハッチが開いて、丸眼鏡をかけた茶髪で、後ろ髪をラウンドシニヨンにしてまとめている少女が姿を見せる。

 

「『ニルギリ』、手筈通りにね」

 

「ハ、ハイ! 頑張りますっ!!」

 

ダージリンに『ニルギリ』と呼ばれた少女は、やや緊張している様子で返事を返す。

 

「そんなに緊張しないで。訓練通りにやれば問題無いわ」

 

「し、しかし………わ、私は、このクロムウェルに乗っての実戦はコレが初めてで………」

 

そんなニルギリの緊張を解そうとするダージリンだが、ニルギリは弱気そうな台詞を返す。

 

すると………

 

「そう………じゃあ、代わりましょうか」

 

「!? ええっ!?」

 

「ダージリン様っ!?」

 

ダージリンは突如そんな事を言い、ニルギリとオレンジペコが驚きの声を挙げる中、チャーチルから完全に抜け出し、そのままチャーチルの上を歩いてクロムウェルの方へと歩いて来る。

 

「! お、お待ち下さいっ!!」

 

それを見たニルギリが、慌ててダージリンを制した。

 

「こ、この様な事でダージリン様のお手を煩わせる様な事はさせられません! 申し訳ありません! このニルギリ! 甘ったれておりました!!」

 

先程までの弱気な態度が嘘の様に、ニルギリはダージリンに向かってそう言い放つ。

 

「『ニルギリ』の名に掛けて! 必ずや任務を遂行してご覧に入れます!!」

 

そう言うと、ニルギリはクロムウェルの車内へと消え、ハッチが閉じたかと思うと、クロムウェルが発進する。

 

「…………」

 

ダージリンはそんなクロムウェルを見送り、紅茶に口を付ける。

 

「………貴方も人が悪いわね、ダージリン。ニルギリを奮い立たせるのに、あんな真似をするなんて」

 

とそこで、アッサムがハッチから姿を見せ、チャーチルの車体の上に立ったままだったダージリンの背に向かってそう言い放つ。

 

「………半分は本気だったわ」

 

「えっ?………」

 

しかし、ダージリンからの思わぬ返しを受けて、驚きの表情のまま固まるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

ダージリンの読み通り、フィールドのB5地点………

 

海から市街地を挟んで反対側の、大通りに入っていた………

 

「艦砲射撃が止んだぞ………」

 

「コッチの支援艦隊が来てくれたんだ。今頃、洋上じゃ一大艦隊戦が繰り広げられているんだろうな………」

 

重音の声に、磐渡がそう返す。

 

「被害を報告して下さい」

 

「戦車部隊は全員大丈夫だって」

 

みほが被害報告を求めると、各戦車から通信を受けた沙織がそう報告して来る。

 

「野戦砲と対戦車砲が数門、砲兵10数名と一緒にやられた」

 

「対空戦車も一部やられました」

 

一方、歩兵部隊からは野戦砲と対戦車砲、対空戦車に被害が出て、砲兵10数名がやられたとの報告が挙がる。

 

「…………」

 

被害が出た事に苦い顔になるみほだが、艦砲射撃を喰らい、損害がこの程度ならば寧ろ幸運な方と言える。

 

「………全部隊、コレより………」

 

「西住総隊長! 前方ですっ!!」

 

「!!」

 

すぐに気を取り直して指示を出そうとしたところ、弘樹がそう声を挙げ、すぐに前方を見やる。

 

そこには、派手に砂煙を巻き上げて突っ込んで来る、ローズヒップ車を先頭にしたクルセイダーMk.Ⅲ、スチュアートⅢ、スチュアートⅥからなる高速戦車部隊の姿が在った。

 

「発見しましたわぁっ! やっつけますわよぉっ!!」

 

大洗機甲部隊の姿を確認したローズヒップがそう号令を掛ける。

 

………相変わらず手にしている紅茶はバチャバチャと零れている様に見えて零れていない。

 

「! クルセイダー! それにスチュアートⅢとスチュアートⅥ!」

 

「高速の戦車部隊か………足の速さを活かして、予想した退避地点へ向かわせたと言う事か………」

 

みほがそう言うと、迫信が推測を述べる。

 

「対戦車砲、用意っ! 向こうは装甲の薄い戦車ばかりだ! コチラを射程に捉える前に、攻撃しろっ!!」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

そこで、十河がそう声を挙げ、砲兵達が迫って来る高速戦車部隊を迎え撃つ様に対戦車砲を配置する。

 

対戦車兵達も、手持ちの対戦車火器を構える。

 

「全車、砲撃用意っ!!」

 

そしてみほも、戦車チームに砲撃用意をさせる。

 

「撃ち方、始めぇっ!!」

 

再び十河の声が響いて、迫り来る高速戦車部隊に向かって、対戦車砲が火を噴く!

 

対戦車兵達も、対戦車火器の引き金を引き、戦車チームも砲撃を開始する!

 

すると………

 

「ぶっちぎりますわよーっ!!」

 

何と、高速戦車部隊の先頭を走っていたローズヒップのクルセイダーMk.Ⅲが、更に速度を上げて突っ込んで来る!!

 

「!? 速度を上げたっ!?」

 

「馬鹿なっ! 自殺行為だぞっ!?」

 

更に速度を上げたローズヒップ車に、大洗歩兵部隊はどよめく。

 

その直後っ!!

 

「必殺! サンダードリフト走法っ!!」

 

ローズヒップがそう叫んだかと思うと、彼女の乗るクルセイダーMk.Ⅲが、まるで稲光の様なジグザグの走行を見せる。

 

「なっ!?」

 

「何ぃっ!?」

 

大洗機甲部隊メンバーから驚きの声が挙がる中、その走行でローズヒップ車は全ての攻撃を回避する。

 

「『ハマの雷神』の名は伊達じゃありませんことよぉっ!!」

 

相変わらずカップの中で紅茶をバシャバシャと跳ねさせながら、ロースヒップがそう言い放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

観客席の大洗サイド………

 

「総長っ! あの走りっ!!」

 

「ああ、間違いねえっ! 『ハマの雷神』だっ!!」

 

大洗側の観客席で、大洗機甲部隊を応援していた大洗会直系西住組のメンバーの中で、晴風がローズヒップの走りを見てそう言い放つ。

 

「『ハマの雷神』って………横浜を縄張りにしていた、戦車走り屋集団のリーダーっすよね?」

 

「ああ、速さに命を賭けてたって専らの噂だったぜ。嘘か真か知らねえが、戦車にジェットエンジンを積んで、音速を超えようとした事もあるって話だ」

 

舎弟の質問に、晴風は腕組みをした状態で、モニターに映るローズヒップのクルセイダーMk.Ⅲを見据えてそう言う。

 

「けど、何でそんな奴がお嬢様校で有名なグロリアーナに?」

 

「アタシが知るか、馬鹿」

 

だが、その筋金入りの不良戦車乗りが、お嬢様校で知られるグロリアーナに居る理由は分からないのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、試合フィールド・B5地点の大通り………

 

「うおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ! ぶっちぎりですわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

ローズヒップ車を初めとした、クルセイダーMk.Ⅲ、スチュアートⅢ、スチュアートⅥの高速戦車部隊が、大洗機甲部隊の陣形の隙間を縫う様にちょこまかと動き回る。

 

「クソッ! ちょこまかと!!………」

 

「迂闊に撃つな! 同士討ちになるっ!!」

 

同士討ちが起こる可能性が高い大洗機甲部隊は、反撃もままならない。

 

「そこだっ!!」

 

「うわあああぁぁぁぁーーーーーっ!!」

 

逆にグロリアーナ高速戦車部隊は、攻撃し放題であり、機銃を使って歩兵を次々に狩っている。

 

歩兵の守りを排除してから距離を空け、再びの機動戦で戦車を葬る腹の様だ。

 

「みぽりん! 如何するのっ!?」

 

「………全車! 煙幕展開っ!!」

 

と、沙織の声が挙がった瞬間、みほはそう指示を下した!

 

「「「「「「「「!!」」」」」」」」

 

その指示に各戦車チームの車長は即座に反応。

 

備え付けられていたスモーク・ディスチャージャーや、レギュレーション内の改造で取り付けた煙幕発生装置から一斉に煙幕が放出される。

 

「!? アラーッ!? 何も見えませんわぁ!?」

 

視界を奪われたローズヒップ車が蛇行を始める。

 

と、その直後に!

 

その行く手にスチュアートⅢが出現した!

 

「!? 右ですわぁっ!?」

 

「キャアッ!?」

 

思わず、車長席から操縦席まで身体を伸ばし、操縦桿を右へと切るローズヒップ。

 

間一髪のところでローズヒップ車はスチュアートⅢを回避する。

 

しかし、その後すぐに、回避したスチュアートⅢが、前に現れたスチュアートⅥと激突!

 

両車の車体が激しく変形したかと思うと、砲塔上部から白旗を上げる。

 

更に別の場所でも、クルセイダーMk.Ⅲ同士が激突し、白旗を上げた。

 

「全車、一旦停止ですわっ!!」

 

ローズヒップがそう叫ぶと、彼方此方からブレーキ音が聞こえて来る。

 

程無くして煙幕が晴れると、そこには大洗機甲部隊の姿は無く、道路に履帯跡を刻んで衝突寸前で停まっている高速戦車部隊の姿が在った。

 

「くううううううっ!!」

 

ローズヒップが、悔しさを滲ませた顔で、クルセイダーMk.Ⅲのハッチから姿を晒す。

 

「この私を、止めさせましたわねぇっ!!」

 

………主に走りを止められた方が気に入らない様である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

離脱に成功した大洗機甲部隊は………

 

如何にか市街地内に入る事に成功。

 

公営駐車場らしき場所に集結していた。

 

「全員居ますか?」

 

「サンショウウオさんチームが遅れています」

 

みほが問い質すと、弘樹がサンショウウオさんチームのクロムウェルが遅れている事を報告する。

 

「ウチで1番速い戦車が遅れてるのかよ」

 

「途中で道間違えたみたいやな。コッチも煙幕で良く見えへんかったし」

 

大洗で最速であるクロムウェルが遅れている事に怪訝な様子見せた海音に、豹詑がそう説明する。

 

「あ、来ましたよ」

 

とそこで飛彗がそう声を挙げ、大洗機甲部隊の面々は、コチラに向かって来るクロムウェルの姿を目視する。

 

「無事だったみたいですね」

 

「うん………?」

 

華が安堵の声を漏らし、みほも安心したが、そこでふと………

 

向かって来るクロムウェルの姿に違和感を覚える。

 

「? 如何しました、西住殿?」

 

「…………」

 

優花里の声に返事を返す事も無く、みほはクロムウェルの姿をジッと凝視する。

 

「! 地市! パンツァーファウストを撃てっ!!」

 

するとそこで、弘樹も何かに気付いた様子を見せ、地市に攻撃しろと叫ぶ。

 

「えっ?」

 

「オイ、弘樹! 何言ってんだ!? 仲間を撃てって………」

 

「! 待って下さいっ! アレはサンショウウオさんチームのクロムウェルじゃありませんっ!!」

 

突然の事に地市は戸惑い、了平は味方を撃てと言う命令に弘樹がとち狂ったのかと思ったが、楓はそのクロムウェルがサンショウウオさんチームのモノではなく………

 

グロリアーナ戦車部隊のクロムウェルである事に気づく。

 

「! 気づかれた! 砲撃用意っ!!」

 

気づかれた事を察したニルギリは、即座に砲撃態勢に入る。

 

クロムウェルの主砲が、Ⅳ号へと向けられる。

 

「! 全速後退っ!!」

 

「フラッグ車を守れっ!!」

 

すぐにみほは後退を指示し、他の戦車チームと大洗歩兵部隊は、フラッグ車であるⅣ号を守ろうと前に出る。

 

「撃………」

 

と、ニルギリのクロムウェルの砲撃準備が整い、発砲しようとした瞬間!

 

「させるかああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

そう言う叫びと共に、ハッチから聖子が姿を見せている、サンショウウオさんチームのクロムウェルが、ニルギリのクロムウェルの側面に飛び出して来た!

 

「!? キャアッ!?」

 

そのままクロムウェル(ニルギリ)に体当たりを敢行!

 

その衝撃で、クロムウェル(ニルギリ)の砲弾は明後日の方向へ飛んで行く。

 

一方、体当たりしたクロムウェル(サンショウウオさんチーム)の方も、反動で駒の様に回転しながら弾き飛ばされたが………

 

「唯ちゃん! ストーップッ!!」

 

「コナクソォッ!!」

 

聖子がそう言い放つと、操縦手の唯が急制動を掛け、如何にか静止する。

 

「撃てぇっ!!」

 

「伝説の黒の核晶《コア》を喰らい給え………貴様を殺すためのな!」(訳:この砲弾を喰らいなさい!)

 

続けて聖子がそう命じると、砲手の今日子が中二病台詞と共にトリガーを引き、発砲する。

 

「! 左旋回っ!!」

 

だが、ニルギリの指示が飛ぶと、クロムウェル(ニルギリ)は左へと車体と砲塔を傾け、傾斜を利用してクロムウェル(サンショウウオさんチーム)の砲弾を弾く。

 

「! 弾かれたっ!?」

 

「向こうも相当な腕の様ね………」

 

驚きの声を挙げる聖子に、通信手の里歌が冷静にそう言い放つ。

 

とそこで、クロムウェル(ニルギリ)は一気に後退。

 

そのままクロムウェル(サンショウウオさんチーム)の前から離脱を計る。

 

「あ! 待てぇっ!!」

 

咄嗟に追撃を掛けるクロムウェル(サンショウウオさんチーム)。

 

「! 聖子さん! 待ってっ!!」

 

慌てて制止するみほだったが、その速度故に、2輌のクロムウェルは既に遠くまで離れて行っていた。

 

「クッ! タコさん分隊とアリクイさんチーム・キツネさん分隊はサンショウウオさんチームを追って下さいっ!!」

 

「「「了解っ!!」」」

 

すぐにみほは次の指示を飛ばし、タコさん分隊とアリクイさんチーム・キツネさん分隊が、サンショウウオさんチームの後を追うのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

遂に始まった準決勝。
グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊とのリベンジ戦。

いきなりの洋上支援の投入と、ローズヒップが率いる高速戦車隊の奇襲。
更にニルギリのクロムウェルを使った欺瞞作戦と、出鼻を挫かれる事になった大洗機甲部隊。
だがみほは、次の1手に、『あの部隊』を再編させます。
果たして、その狙いは?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。