ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第19話『学園艦訪問です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第19話『学園艦訪問です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天竺ジョロキア機甲部隊との戦いは引き分けに終わった………

 

またも勝ち星を挙げる事は叶わなかったが、強豪校を相手に引き分けに持ち込めた意味は大きく………

 

大洗機甲部隊にとって、良い経験となったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

舩坂の故郷・練習試合の会場………

 

「一同! 礼っ!!」

 

「「「「「「「「「「ありがとうございましたっ!!」」」」」」」」」」

 

開始の挨拶をした場所へ集合した大洗と天竺ジョロキアの機甲部隊の面々が、レミの声で互いにお礼を言いながら頭を下げる。

 

「両者、良い試合でした。今後も練習に励み、より戦車道、並びに歩兵道を究めんとする事を期待します………以上! 解散!!」

 

そう言って場を締めると、レミたち審判は、帰路へと就いて行った。

 

「ハアァ~~、ドッと疲れたぜぇ~」

 

本当に疲れた様子でそう言い、大きく息を吐き出す地市。

 

「西住総隊長、申し訳ありません………肝心な場に参戦出来ず、引き分けに終わってしまうとは………」

 

「ううん、そんな事無いよ。舩坂くん達がジョロキア歩兵部隊を食い止めていてくれたから、私達は戦車戦に集中する事が出来たんだよ」

 

引き分けに終わってしまった事に責任を感じ、みほに謝る弘樹だが、みほは弘樹のお蔭で引き分けに持ち込めたのだと言う。

 

「でも、引き分けは勝ちじゃねえぜ。今度こそ白星を上げられると思ったのによぉ」

 

そこで白狼が愚痴る様にそう言って来る。

 

「………白狼。何でずぶ濡れなんですか?」

 

とそこで、飛彗が白狼がずぶ濡れ状態な事を指摘する。

 

「………聞くな」

 

しかし、白狼はそう返すだけだった。

 

あの後………

 

象によって川に叩き落された白狼は、暫く流された後、下流の浅瀬から上陸し、再び戦場に戻ったのは全てが終わった後だった。

 

(チキショウ………折角自転車を使ったってのに………このざまかよ………)

 

内心で、またも碌に活躍出来なかった自分に腹を立てている白狼。

 

とそこで………

 

「こんにちはぁ~」

 

「ちょっと良いかしら?」

 

ローリエとルウを先頭に、ターメリック、キーマ、ガラム、マサラが大洗機甲部隊の元へとやって来る。

 

「あ、ローリエさん………」

 

「良い試合だったわよ~、西住ちゃん。まさかあんな作戦で来るとは思わなかったわぁ~」

 

「ホント、してやられたって感じね」

 

みほが反応すると、ローリエとルウはそんな台詞を言う。

 

「いえ、そんな………偶々運が良かっただけで………」

 

「謙遜しなくて良いわ~。貴方の作戦勝ちよ~」

 

恐縮する様なみほに向かって、ローリエは相変わらずのノンビリとした口調でそう言う。

 

「フフフ、次に戦う時は負けないわよ。再戦を楽しみにしてるからね」

 

「な、何だか、性格変わってない?」

 

屈託無く笑うルウを見て、混線時にルウの荒々しい台詞を聞いていた沙織がそう指摘する。

 

「ああ、私戦車に乗ると興奮しちゃう体質でね。ちょっと荒々しくなっちゃう癖があるの」

 

「ああ~、納得」

 

「ちょっ!? 武部殿! 何でそこで私を見るんですか!?」

 

ルウのその回答を聞いた沙織は、優花里を見ながら何処か納得が行った様な表情となる。

 

一方、歩兵部隊同士の方では………

 

「チキショー、まんまとしてやられたぜ」

 

一方、悔しそうながらも笑みを浮かべてそう言うキーマ。

 

「流石だな、舩坂 弘樹。私はお前と戦う事に固執した余り、戦車部隊の守りを疎かにしてしまった。だが、お前は飽く迄歩兵としての任務を全うした………」

 

「言った筈だ………可能な事を出来うる限り実行すると………今回の戦いは運が良かった………我々の足止めを気にせず、強行突破して戦車部隊と合流されてしまえば負けていただろう」

 

ターメリックも、弘樹に向かってそう言い放つが、弘樹へ冷静に淡々とそう返す。

 

「いや、歩兵の使命を忘れてしまった我々のミスだ………素晴らしい戦いぶりだったぞ」

 

そう言って、ターメリックは弘樹に向かって手を差し出す。

 

「…………」

 

弘樹は無言でその手を取り、握手を交わす。

 

「フッ………」

 

「フフ………」

 

そして両者とも、微かな笑みを浮かべるのだった。

 

「ところでぇ~。大洗の学園艦は今停泊中なんですかぁ~?」

 

と、そこで………

 

ローリエが不意に、そんな事を尋ねる。

 

「えっ? あ、ハイ。今は大洗に停泊中ですけど………」

 

「アラ~、そうなの~………じゃあ、良かったら交流会をやらない?」

 

みほが反射的にそう答えると、ローリエはそう提案する。

 

「交流会?」

 

「私達貴方達の事、すっかり気に入っちゃったのよ~」

 

「だから、貴方達を私達の学園艦に招待しようと思ってね」

 

首を傾げるみほに、ローリエとルウがそう説明する。

 

「おお~、良いね~。じゃあ、是非ともお呼ばれしようか」

 

即座に、杏がノリノリの様子で賛同を示す。

 

「ふむ、皆は如何思うかね?」

 

そして迫信の方は。大洗機甲部隊の方を向いてそう尋ねる。

 

突然の事に、大洗機甲部隊の面々は戸惑いを浮かべる。

 

「今なら美容に良く聞くヨガの無料体験が出来るわよ~」

 

そんな大洗機甲部隊の様子を見ると、ローリエがまるで何かのセールスの様な台詞を言う。

 

「!? 行きますっ!! 是非やりましょう!! 交流会っ!!」

 

「「「「「「さんせーいっ!!」」」」」」

 

と、その一言を聞いた途端、沙織とウサギさんチームが目の色を変え、賛成の意を挙げた。

 

「他には、そうだな………本場インド仕込みのスパイスから調合したカレーもあるぞ」

 

「!! 本場のカレーっ!?」

 

「マジかよ!!」

 

「うわぁー! 食ってみてぇっ!!」

 

そしてキーマの方も、大洗歩兵部隊のメンバーに向かってそんな事を言い、食い意地が張っている大洗歩兵部隊のメンバーも、ノリノリで賛同し始める。

 

「うふふふ………」

 

と、そんな大洗歩兵部隊の面々に混じって、良い笑顔で居る華。

 

如何やら、彼女は美容のヨガより、本場のカレーの方が楽しみなようである。

 

「決まりね! じゃあ、明日私達の学園艦を大洗に入港させるから、待っててね!」

 

「ハイ! 楽しみにしてます!!」

 

最後にルウとみほがそう言い合って、両機甲部隊は一旦解散したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、大洗機甲部隊のメンバーは………

 

戦車を神大コーポレーション傘下のPMCが用意したドラゴンワゴンで先に大洗へ返すと、乗って来た観光バスで、湯江達を迎えに村役場へと向かった。

 

「お帰り、弘樹くん!」

 

「皆も頑張ったなぁ! いや~、凄い戦いだったべさ!」

 

「んだんだ! あんなすげぇ試合、久しぶりに見ただ!!」

 

村役場に着いた途端、大洗機甲部隊のメンバーは弘樹を中心に、村人達から称賛の声を浴びせられる。

 

「あ、あの、えっと、その………」

 

「いえ、折角応援していただいたのに………勝つ事が出来なくて、申し訳ありません」

 

戸惑うみほと対照的に、弘樹は冷静な態度のまま、村人に向かって頭を下げて謝罪する。

 

「な~に言ってるべぇ! 弘樹くん達は十分過ぎるほど戦ったべ!!」

 

「んだ! 何も恥じる事さねえ! 引き分けだって十分な結果だべ!!」

 

「………ありがとうございます」

 

故郷の村人達の温かい言葉に、弘樹の顔にも笑み(と言っても微笑だが)が浮かぶのだった。

 

「湯江ちゃん、また何時でも帰って来て良いからね」

 

「そうよ。此処は湯江ちゃんと弘樹くんの故郷なんだから。何も遠慮する事なんてないわ」

 

「ハイ。ありがとうございます、皆さん」

 

一方、湯江の方も、名残惜しそうにしている村人1人1人と笑顔で挨拶を交わしている。

 

「遥ちゃん、レナちゃん。湯江ちゃんの事、よろしくね」

 

「ハイ、小母さん!」

 

「色々とお世話になりました」

 

遥とレナも、村人達とにこやかに挨拶を交わす。

 

「この度は本当にありがとうございました」

 

「いえいえ。村の皆も大いに盛り上がらせてもらいましたよ。全国大会も頑張って下さい」

 

「期待しててね~」

 

迫信と杏も、村長にお礼と挨拶を行う。

 

「また何時でもいらっしゃい」

 

「ハイ。皆さんもお元気で」

 

みほ達も、村人達に別れの挨拶を告げる。

 

「それじゃあ~、帰ろうか」

 

と、やがて挨拶が一通り終わると、杏が場を纏める様にそう言ったが………

 

「あ、角谷先輩。申し訳ないのですが、帰る前に1つ寄って頂きたい場所があるのですが………」

 

弘樹がそんな事を言って来た。

 

「えっ? 寄り道?」

 

まさか弘樹がそんな事を言うとは思っていなかった杏は、少し驚いた様な様子を見せる。

 

「ふむ、成程………」

 

対照的に、迫信は弘樹の心中を察し、納得が行った様な表情となっている。

 

「角谷さん。私からもお願いします」

 

とそこで、湯江も杏に向かってそう頼み込んで来た。

 

「あ~、うん、まあ良いよ。それじゃあ、何処に寄れば良いのかな?」

 

「それは………」

 

弘樹は、杏に行先を告げる………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

舩坂の故郷・墓地………

 

弘樹と湯江が寄って欲しいと頼んだ場所………

 

それは墓地だった。

 

「すみません。少し待っていて下さいね」

 

「ご迷惑をお掛けします」

 

「良いって、良いって、気にしないで~」

 

「君には何時も世話になっているからね。これぐらいの事はしてやっても罰は当たらないさ」

 

墓地の横に着けて止まったバスから降りた湯江と弘樹がそう言うと、バスに乗ったままの杏と迫信がそう返す。

 

「行くぞ、湯江」

 

「ハイ、お兄様」

 

弘樹と湯江は、そのまま墓地の中へと入って行く。

 

「………そっかぁ。舩坂くんの家族って………」

 

「…………」

 

その後ろ姿を、バスの窓越しに見ながら、沙織が以前に弘樹達の家を尋ねた時に2人の肉親が亡くなっている事を知ったのを思い出し、麻子も思うところが有る様な眼で見ている。

 

「私も舩坂軍曹のお墓参りはしたかったですが………今回ばかりは自重です」

 

「そうですね………此処は2人だけで行かせてあげた方がよろしいでしょう」

 

「…………」

 

優花里と華がそう言い合い、みほは悲しげな表情を浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

墓地の中を少し歩いた弘樹と湯江は………

 

やがて『舩坂』と書かれた墓石の前へと辿り着く。

 

「「…………」」

 

2人して墓石の前に座り込むと、目を瞑って手を合わせる。

 

「お父様、お母様、お爺様………御無沙汰しております」

 

「御先祖様………墓参りが遅れ、申し訳ありません………」

 

目を瞑ったまま、湯江と弘樹は墓石に向かって語り掛ける。

 

「私達は元気にしています………学校の友達やご近所の皆さんも皆良い人ばかりです」

 

「どうか心配しないで下さい………」

 

そこで目を開け、近況を報告し始める。

 

「御先祖様………小官は今、大洗機甲部隊の一員として歩兵道を歩み続けています」

 

「その機甲部隊の総隊長さんが、あの西住流のお方なんです」

 

「かつてご先祖様が守った戦車部隊の指揮官を務めていたのが西住流の開祖の方………何とも奇妙な縁もあるものです」

 

話題はやはり、歩兵道、そして戦車道の事となる。

 

「コレまでに2回ほど練習試合を熟しました。結果は1敗1引き分けと芳しくありませんでしたが………ですが、次は必ず勝利して見せます。御先祖様の名に掛けて、コレ以上醜態を晒す積りはありません」

 

墓石に向かってそう決意を表明する弘樹。

 

「………お兄様、そろそろ………」

 

「おっと、そうか………早々な挨拶で申し訳ありませんが、何分忙しい身ですので………お許し下さい。コレで失礼致します」

 

そこで立ち上がった湯江に呼び掛けられ、弘樹は立ち上がると、そのまま2人揃って墓を後にする。

 

と、その時………

 

立ち去って行く弘樹と湯江の背後に………

 

大日本帝国陸軍の戦闘服を着た半透明な人物が現れた。

 

しかし、弘樹と湯江は気づかない。

 

「…………」

 

半透明の人物は、無言で弘樹と湯江を見送り、やがて敬礼をしたかと思うと、そのままスーッと消える………

 

「………?」

 

そこで弘樹が何かに気付いた様に振り返ったが、背後には誰もいない状態となっていた。

 

「?………」

 

首を傾げつつも気のせいだと思い、改めて墓地を後にする弘樹だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日………

 

大洗学園艦が停泊している大洗港に、天竺女学院とジョロキア男子高校の学園艦が入港した。

 

聖グロリアーナとブリティッシュの学園艦と同じくらいの大きさであったが、甲板に広がっている街並みは、インドやタイを思わせる街となっている。

 

天竺女学院とジョロキア男子高校は、丁度艦の中心部分に並んで建てられており、事実上同一敷地内に存在していた。

 

「うわあ~、凄~い」

 

「まるで本当に外国に来たみたいですね」

 

早速天竺女学院とジョロキア男子高校を訪れた大洗のメンバーの中で、沙織と華が感嘆を漏らす。

 

「ヒューッ! イカスねぇ」

 

「学園艦は世界に羽ばたく人材を養成する目的で建造されたので、他国をモチーフにする事が多いと聞いたが、此処までとはな………」

 

俊が軽口を叩き、本格的に外国を再現している風景に、十河がそんな薀蓄を呟く。

 

「私、他の学校の学園艦に来たのって初めて」

 

「自分もッス!」

 

あやがそう言うと、正義が若干テンションが上がっている様子でそう返事を返す。

 

「………少し天気が悪いな」

 

「うん………雨が降りそうだね」

 

しかし、弘樹とみほは、曇り空の空模様を見上げ、心配そうにそう呟く。

 

「………遅いですね、白狼」

 

「アイツ偶にフラリとどっかに居なくなるよなぁ」

 

「大丈夫かいなぁ? この前の試合の時、何や塞ぎ込んでたみたいやけど………」

 

そんな中、中々姿を見せない白狼を、飛彗、海音、豹詑が心配する。

 

「お待たせ~」

 

「よく来たな………」

 

とそこで、大洗機甲部隊の面々の前に、学生服姿のローリエとターメリックが現れた。

 

「やあやあ、ローリエちゃん」

 

「お招き、感謝するよ」

 

杏と迫信が代表する様に一同から抜け出て、杏がローリエと、迫信がターメリックと握手をする。

 

「いいえ~、こちらこそ~、よく来て下さいました~」

 

「今日は天竺、そしてジョロキア流のやり方で存分にもてなさせてもらう」

 

そう言って笑みを浮かべるローリエとターメリック。

 

と、その時………

 

「!? キャッ!?」

 

みほが首の後ろに何か冷たい物が当たった感覚がし、思わず声を挙げてしまう。

 

「? みぽりん?………あ!」

 

「雨………ですね」

 

沙織が声を掛けると、雨がパラつき出し、華も空を見上げてそう呟く。

 

「アラ、大変………皆! 早く校舎に入って~」

 

ローリエがそう促すと、大洗機甲部隊の面々は、急いで天竺女学園の校舎に向かって駆け出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後………

 

天竺女学園の1室にて………

 

「は~い、コレが美容に効くヨガのポーズよ~」

 

そう言って、本当に人間に可能なのかと思える高度なポーズを取って見せるローリエ。

 

「く、苦しい~っ!」

 

「キツイよぉ~っ!」

 

余りに高難易度なポーズに、参加しているウサギさんチームの面々から悲鳴が挙がる。

 

「ホラホラ! そんな事じゃ美人なんてなれないわよ!!」

 

涼しい顔で同じポーズを取っていたルウが、そんなウサギさんチームの面々に向かってそう言い放つ。

 

「ま、負けるもんかぁ~………私のモテ道は、こんなもので途切れたりしないんだからぁ~」

 

そんな中、恋に恋する乙女、沙織は根性を見せ、顔を真っ赤にしながら同じポーズを取って見せる。

 

「あら~? 武部さん、お上手ですよ~」

 

「そ、そう?」

 

「ええ~、そこまで出来るなんて驚きですわ~」

 

「じゃあ、もっと高難易度なポーズにチャレンジしてみようか?」

 

「!?………」

 

もっと高難易度と言われ、戦慄する沙織。

 

今、彼女の脳内では、モテ道と防衛本能が激しい鬩ぎ合いを展開している。

 

「如何します~、武部さん~?」

 

「………お、お願いしますっ!!」

 

やがてやや葛藤したらしき間が有って、沙織は自ら危険へと飛び込んで行く。

 

「は~い。それじゃあ………超上級者向けのポーズで行ってみましょうかぁ~」

 

その後………

 

沙織とウサギさんチームの悲鳴が、天竺女学園中に響き渡ったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

天竺女学園とジョロキア男子校の共通食堂の方では………

 

「さあ! 特製のカレーだ! 遠慮無く召し上がれっ!!」

 

「「「「「「「「「「頂きまーすっ!!」」」」」」」」」」

 

キーマのそう言う台詞が響いたかと思うと、大洗歩兵部隊の面々を中心に、食堂に集まった面子が、出されたカレーに手を付け始める。

 

「! ウメェッ!!」

 

「コレは!!………美味しいです!!」

 

1口食べた瞬間に、その味に舌鼓を撃つ地市と楓。

 

「うーまーいーぞぉーっ!!」

 

「凄い!! 親分が口から光線を吐いて、巨大化していく!!………様な雰囲気!!」

 

「だが、それも当然と言うべきインパクト!」

 

大河も、余りの美味さに何処ぞのトンでもグルメアニメに出て来るキャラの様なリアクションを取る。

 

「お代わりは沢山あります!」

 

「遠慮しないで食べて下さい!」

 

そんな大洗の一同に向かって、カレーの入った小学校の給食室に有りそうな大鍋の傍に着いていたガラムとマサラがそう言い放つ。

 

「コレは………美味いな」

 

弘樹も、他のメンツの様に派手なリアクションは取っていないが、天竺・ジョロキアのカレーに満足げな様子を見せていた。

 

「気に入ってもらえた様で光栄だ」

 

と、そんな弘樹の傍に、ターメリックが姿を見せる。

 

「ターメリック歩兵隊長………」

 

立ち上がって敬礼をしようとした弘樹だったが、ターメリックがそれを制す。

 

「今回の練習試合………我々にとっても得る物が非常に多かった。こんなに熱くなった試合をしたのは久しぶりだよ」

 

「………光栄だ」

 

「全国大会には出場する積りか?」

 

「無論だ………」

 

ターメリックの事を真っ直ぐに見据えてそう返す弘樹。

 

「そうか………もし再び戦う事になったら………今度は我々が勝たせてもらう」

 

「残念だが………そうは行かないさ」

 

「フッ………」

 

「フフフ………」

 

2人は互いに、不敵に笑い合うのだった。

 

 

 

 

 

「う~ん、美味しい~っ!」

 

食堂の方へと来ていたみほも、天竺・ジョロキアのカレーに思わずほんわか笑顔になっている。

 

「本当! 美味しいですね、西住殿!」

 

「美味いな………」

 

「ホント、美味しいです」

 

傍に居た優花里、麻子、華も同意する。

 

尚、華のカレーの量が明らかに大盛り以上だが、何時もの事なので気にしてはいけない。

 

「あら~、良い笑顔ね~」

 

とそこで、ローリエが現れてそう言って来た。

 

「あ! ローリエさん。沙織さん達は?」

 

「う~ん、ちょっと無理しちゃったのかしらね~。今医務室で休んでるわぁ~」

 

「あ、アハハハハ………」

 

「美容に良いヨガをやって身体を壊していては本末転倒だな………」

 

ローリエの言葉にみほは乾いた笑いを漏らし、麻子は毒舌を吐きながら再びカレーを頬張る。

 

「ところで~、みほちゃん~」

 

「? 何ですか?」

 

「貴方………迷ってるわね」

 

「!?」

 

突然のローリエの言葉に、みほは驚いて目を見開く。

 

「去年の事は私も知ってるわ。別にそれで貴方の事を責める積りは無いけど………迷いを抱えたままで戦えるの?」

 

「それは………」

 

真剣な表情でそう言うローリエに、みほは言葉が出て来ない。

 

「あ、貴方! 西住殿に何を!!………」

 

とそこで、優花里がローリエに噛み付こうとする。

 

「あら~、ゴメンなさい。私ったら~、またやっちゃったみたいで~」

 

するとそこで、ローリエは何時ものノンビリとした口調と雰囲気に戻る。

 

「まあ、心配は無いと思うわよ~。だって貴方には素敵なお友達が沢山居てくれるからね~。1人で抱え込んじゃ駄目よ~」

 

「! ハイ! ありがとうございます!」

 

そう言われて、みほはローリエに向かって感謝する。

 

「うふふ、それに………素敵なボーイフレンドくんも居てくれるみたいだしね~。まあ、ターメリックの方が良い男だけど~」

 

とそこで、ローリエはやや離れた場所にて話し合っている弘樹とターメリックの姿を見ながらそんな事を言った。

 

「ふええっ!?」

 

ボーイフレンドと言う言葉を聞いて、忽ち頬を赤く染めるみほ。

 

「………今の台詞から察するに」

 

すると麻子が、何かに気付いた様にそう言う。

 

「ええ~、そうよ~。私とターメリックは付き合ってるの~」

 

アッサリと麻子の予想を肯定するローリエ。

 

「因みに~、妹のルウもキーマと付き合ってるのよ~」

 

沙織が居れば食いつきそうな話ではあるが、生憎本人は現在保健室である。

 

「…………」

 

とそんな中で、みほ達の近くに居た飛彗が、何やら考え込んでいる様子を見せている。

 

出されているカレーにも手を付けていない。

 

「? 宮藤さん? お身体の具合でも悪いのですか?」

 

そんな飛彗の姿に気付いた華(既にお代わり3杯目に突入)が声を掛ける。

 

「いえ………白狼の事が気になって………」

 

「神狩さん? そう言えば………お姿を見ませんね」

 

飛彗にそう返されて、華は初めて白狼の姿が無い事に気付く。

 

「………すみません。僕ちょっと探してきます」

 

と、居ても立っても居られなくなったのか、飛彗は席を立つ。

 

「あ、宮藤さん!………」

 

華が呼び掛けるが、飛彗は振り返らず、食堂を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、飛彗は大洗の学園艦に帰還。

 

大洗国際男子校・学生寮の、白狼の部屋を訪ねた。

 

「………留守ですか」

 

しかし、何度呼び鈴を押しても反応が無く、留守であると判断する。

 

「他に行きそうな場所と言うと………」

 

白狼が行きそうな場所について考えていると………

 

飛彗の肩に1羽の小鳥が止まった。

 

「ん? 如何したんですか?」

 

その小鳥に話し掛ける飛彗。

 

小鳥はピヨピヨと飛彗に向かって鳴く。

 

「えっ!? 本当ですか!? ありがとうございます、行ってみますね」

 

と、まるで小鳥と会話していたかの様な台詞を言うと、飛彗は最初の校内練習試合で使った学園艦の山岳地帯へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園艦・山岳地帯………

 

雨脚が強くなる中、飛彗は傘も差さずに白狼の姿を追い求める。

 

「確か、この辺の筈ですけど………」

 

土砂降りの中、辺りをキョロキョロと見回す飛彗。

 

すると………

 

「うおわぁっ!?」

 

男性の物と思われる声と、何かが滑った様な音が聞こえて来た。

 

「! 白狼!」

 

その声の主が白狼であると識別した飛彗は、声が聞こえた方へ走り出す。

 

やがて、その視界に白狼らしき人物の姿が飛び込んで来る。

 

「白………!!」

 

声を掛けようとした飛彗だったが、白狼の姿を良く見てそれを止め、木の陰へと隠れる。

 

「ハア………ハア………チキショウめ!」

 

白狼は泥と擦り傷に塗れた身体で、フレームが歪み始めている自転車を押していた。

 

周りには、自転車に乗ったまま転倒して出来たと思われる跡が、幾つも出来ている。

 

「………! フウッ!!」

 

と、自転車に跨ると同時に地面を蹴って発進する白狼。

 

そのまま土砂降りの雨の中、ジャンプを決めようとしたが………

 

「!? おうわっ!?」

 

着地に失敗し、派手に転倒する。

 

「くうっ!!」

 

しかし、すぐに起き上がるとまた自転車を扱ぎ出す。

 

その表情には鬼気迫るものがあった。

 

「白狼………」

 

そんな白狼の姿に、飛彗は声を掛けられなかった。

 

(やっぱり2度も碌な活躍が出来なかった事が相当堪えてるんだ………白狼、人一倍負けず嫌いだから………)

 

「おうわっ!?」

 

飛彗がそう思っていると、白狼が再び転倒する。

 

「負けるかぁっ!」

 

だが、またすぐ起き上がると、再び自転車を扱ぎ出す。

 

「…………」

 

その光景を暫し見ていた飛彗だったが、やがて踵を返して、その場から去って行った………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数10分後………

 

大洗国際男子高校・屋内射撃訓練場にて………

 

戦闘服を着込んだ飛彗が、モシン・ナガンを手に、射撃ブースに就いている。

 

(白狼が頑張っているのに………僕が頑張らないワケには行かない!)

 

そう思うとモシン・ナガンを構え、射撃の練習を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弘樹に、みほに、白狼に、飛彗に………

 

様々な思いを残し、2回目の戦い………

 

天竺ジョロキア機甲部隊との練習試合は幕を閉じた。

 

昨日の敵は今日の友………

 

天竺女学園とジョロキア男子校との交流に大いに心を躍らせた大洗機甲部隊のメンバー。

 

そして遂に………

 

戦車道・歩兵道の………

 

『全国大会』が開催されるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

天竺ジョロキア機甲部隊との対戦を終え、弘樹の故郷を後にする大洗機甲部隊。
そして、天竺ジョロキア機甲部隊との交流の中、1人特訓をする白狼。
そんな白狼に触発されて、自分も特訓する飛彗。
そしていよいよ………
戦車道&歩兵道の全国大会が始まります。
ですが、少々サンダース戦までは時間が掛かるかと思います。
何せ試合開始までにオッドボール三等軍曹の活躍も含め、黒森峰の歩兵隊隊長の登場やオリジナル戦車チームの登場、更に白狼を主役にしたエピソードと書く予定の物が大分あります。
それらを全て書いてからの試合開始となる予定ですので、気長に待っていただけるとありがたいです。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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