ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第200話『激戦です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第200話『激戦です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最強と謳われた黒森峰機甲部隊を相手に………

 

大洗機甲部隊は奮戦………

 

序盤から大打撃を与えた………

 

だが………

 

得意のゲリラ戦に持ち込もうと市街地に突入した大洗機甲部隊の前に………

 

超重戦車マウスと黒森峰エース歩兵達が立ちはだかったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道・歩兵道全国大会の決勝戦の試合会場………

 

陸上自衛隊の東富士演習場・市街地………

 

その巨体を見せつけるかの様に、ジリジリと大洗機甲部隊との距離を詰めて来るマウス。

 

武装親衛隊の戦闘服に身を包んだ随伴歩兵達と、蜂一、剱、顋にⅢ号戦車も続く。

 

「我等の………」

 

「歴史に………」

 

「今………」

 

「幕が下りた………」

 

その後方に見える撃破された三突の車内では、エルヴィン、カエサル、左衛門佐、おりょうが悔しそうに呟いている。

 

「何よ! あんな大きな図体して何がマウスよ!」

 

「残念ですぅ」

 

「無念です~」

 

同じく、引っ繰り返っているルノーB1bisの中でも、みどり子、希美、モヨ子が無念さを露わにしている。

 

「冷泉さん! 後は頼んだわよ! 約束は守るから!」

 

「! おお~っ!」

 

と、みどり子から通信を受けた麻子が、珍しく歓声を挙げる。

 

「如何すりゃ良いんだ、あんな化け物………」

 

「…………」

 

そして、迫り来るマウスを見ながら呟いた地市の声を聞きながら、弘樹はポーカーフェイスで打開策を思案するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

観客席………

 

「流石マウス………大洗機甲部隊は土壇場ですね」

 

マウスの前に手も足も出ない大洗機甲部隊の姿を見て、オレンジペコがそう呟く。

 

「土壇場を乗り切るのは勇猛さじゃないわ………冷静な計算の上に立った、捨て身の精神よ」

 

それに対し、ダージリンが大洗機甲部隊の姿を見据えてそう言い放つ。

 

「! ハイ!」

 

(さあ、如何する?………舩坂 弘樹)

 

それを聞いたオレンジペコが返事を返すのを聞きながら、アールグレイは弘樹の活躍に期待していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、試合会場内では………

 

T字路へと差し掛かったマウスに、大洗戦車チームと大洗砲兵隊による一斉砲撃が加えられる。

 

次々と砲弾が命中し、マウスの姿が爆煙に隠れる。

 

しかし………

 

爆煙が治まると、全く無傷のマウスの姿が露わになる。

 

マウスは主砲を旋回させ、物置らしき物の傍に居たヘッツァー、M3リー、八九式を狙う。

 

「ふわっ!?」

 

「コッチ来る!」

 

「身を隠せーっ!!」

 

桃が叫ぶと、ヘッツァー、M3リー、八九式は物置の陰に隠れる。

 

だが、マウスの主砲が発射されると、物置は1発で跡形も無く吹き飛ばされてしまう。

 

「戦術的退却ーっ!!」

 

再び桃が叫ぶと、ヘッツァー、M3リー、八九式は撤退。

 

マウスがそれを追って狭い道へ入ると、その先で再び待ち構えていた大洗戦車チームと大洗砲兵部隊の一斉砲撃を再度喰らうが、やはり貫通している弾は1発も無い。

 

「何してるんだ、叩き潰せっ! 図体だけがデカいウスノロだぞっ!!」

 

「砲身を狙って下さいっ!!」

 

桃が焦る様にそう叫ぶと、みほは冷静に砲身を狙えと指示する。

 

しかし、幾ら相手がデカいとは言え、細い砲身に命中させるのは至難の技だった。

 

「お前達の火力で装甲が抜けるものかぁ! アッハッハッ!!」

 

マウスの背後に隠れているⅢ号は、その光景に気を良くし、煽るかの様に蛇行運転をする。

 

「馬鹿者! 油断するなっ!!」

 

そんなⅢ号に、蜂一の叱咤が飛んだ瞬間………

 

Ⅲ号の砲塔正面に砲弾が命中。

 

Ⅲ号は白旗を上げて静止した。

 

「お前の装甲は余裕で抜けるつうの!」

 

Ⅲ号を撃破した8.8 cm PaK 43に付いて居た鷺澪がそう言い放つ。

 

「! 鶏越! 狙われているぞ! 逃げろっ!!」

 

とそこで、紫朗がそう叫ぶ。

 

見れば、マウスの主砲が鷺澪が付いて居る8.8 cm PaK 43に向けられていた!

 

「!? ヤバいっ!!」

 

そう叫ぶ鷺澪だったが時既に遅し!

 

マウスの主砲が火を噴き、12.8cm砲弾が直撃っ!!

 

「「「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」」」」」

 

鷺澪は同じ砲に付いて居た砲兵諸共に吹き飛ばされ、戦死判定となる。

 

「鶏越さんがっ!!」

 

「後退だっ!!」

 

清十郎の声が挙がると、迫信がそう叫び、大洗機甲部隊は再度撤退する。

 

「市街戦で決着を着けるには、やっぱりマウスと戦うしかない………グズグズしてると主力が追い付いちゃう」

 

その中でみほは、市街戦で黒森峰機甲部隊の本隊と戦うには、先にマウスを潰さなけれなならないと思案する。

 

「マウス凄いですね! 前も後ろも何処も抜けません!」

 

「航空支援さえ使えれば、あんなの只の鉄の塊に過ぎませんのに」

 

優花里が敵ながらマウスの性能に感嘆し、華は航空支援が使えない歯痒さからか口調が荒くなる。

 

「幾ら何でも大き過ぎ………こんなんじゃ戦車が乗っかりそうな戦車だよ!」

 

そこで、戦車のカタログスペックが乗ったデータ本を見ていた沙織が、マウスのスペックを見てそんな事を口走る。

 

「!?」

 

するとその瞬間!

 

みほの脳裏にある考えが浮かんだ!!

 

「ありがとう、沙織さん!」

 

「へっ?」

 

「神大歩兵隊長! 敵歩兵部隊を暫くマウスから引き離して下さい!」

 

何故お礼を言われたのか分からない沙織を余所に、みほはハッチから車外へ姿を晒すと、近くに居た迫信にそう言う。

 

「了解………西住総隊長が何か作戦を思い付いた様だ! 敵歩兵部隊をマウスから引き離すんだ!!」

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

即座にみほが何か作戦を思い付いた事を察した迫信は、即座に大洗歩兵部隊に指示を飛ばす。

 

やがて、後退していた大洗機甲部隊が十字路に差し掛かると………

 

大洗戦車チームが十字路を前進したのに対し、大洗歩兵部隊は左側の方へと曲がった。

 

「! 歩兵部隊が分かれたぞ!」

 

「マウスの後方へ回る積りか?」

 

「無駄な事を………だが、念の為にマウスの後方を固めろ」

 

それを見た黒森峰武装親衛隊員達は、マウスの後方へと下がり、防備を固める。

 

「剱、如何見る?」

 

「マウスは貴重だが有名な戦車ではある。そのスペックを把握していないとは考え難い………」

 

しかし、蜂一と剱は、その動きに違和感を感じ取る。

 

と、その時………

 

黒森峰武装親衛隊員達の耳に、風切り音が響いて来た。

 

「!!………」

 

顋がそれに反応して空を見上げた瞬間!

 

迫撃砲の物と思わしき砲弾が、黒森峰武装親衛隊員達が居た場所の両脇の団地へと着弾!

 

「!? 迫撃砲だっ!」

 

黒森峰武装親衛隊員の1人がそう叫ぶと、更に風切り音が響き、新たな迫撃砲弾が飛んで来る。

 

しかし、またしても迫撃砲弾は黒森峰武装親衛隊員達が居る場所の両脇に在った団地へと命中する。

 

「何だ、また外れたぞ?」

 

「フッ、決勝まで勝ち残って来たとは言え、所詮は素人の集団だな。着弾観測も出来ていないらしい」

 

迫撃砲の攻撃が、一向に直撃どころか至近弾すら出さないのを見て、そんな言葉が漏れる黒森峰武装親衛隊員達。

 

「! イカンッ! 急いでマウスに合流しろっ!!」

 

だがそこで、蜂一は何かに気付いた様にそう叫ぶ。

 

その瞬間に、またも迫撃砲弾は団地へと命中。

 

すると………

 

団地が崩落し、瓦礫が道へと降り注ぎ、マウスと黒森峰武装親衛隊員達を分断した!

 

「!? 瓦礫がっ!?」

 

「しまったっ!!」

 

思わず声を挙げる黒森峰武装親衛隊員達。

 

「!? 歩兵部隊がっ!?」

 

一方、マウスの方でもその様子に気づき、車長が声を挙げる。

 

その瞬間に、マウス内に次々と金属音が鳴り響く!

 

「!? アイツ等ッ!!」

 

車長が確認すると、距離を開けて再度コチラに向かって砲撃して来ている大洗戦車隊の姿が目に入る。

 

「行けっ!」

 

「し、しかし、随伴歩兵部隊と分断されていますが………」

 

「構わん! どうせ相手にも随伴歩兵は居ない! 戦車同士の対決ならコチラが負ける要素は無い!!」

 

操縦手がそう意見するが、大洗の戦車ではマウスを撃破する事は不可能だと考える車長は構わず追撃を指示する。

 

「りょ、了解………」

 

基本、立場が上の者からの命令を順守する様に訓練されている黒森峰戦車隊員は、余り強く意見する事も出来ず、車長の命じた通り、マウス単独で大洗戦車隊へと向かうのだった。

 

「! マウスが遠ざかって行くっ!!」

 

「イカン! 急いでマウスと合流しろっ!! 敵は何かやる積りだぞ! 私は先に行くっ!!」

 

と、マウスの音が遠ざかって行くのを聞いた森峰武装親衛隊員がそう声を挙げると、蜂一はそう指示を飛ばし、ニンジャ跳躍力を駆使して、崩れていなかった団地の屋上へと跳躍!

 

そのまま団地の上からマウスの元へと向かおうとしたが………

 

「………!!」

 

殺気を感じた蜂一が横へ転がる様に飛び退くと、先程まで蜂一が居た場所にスリケンが突き刺さる。

 

「来たか………」

 

「Wasshoi!」

 

蜂一がそう呟いた瞬間、団地の屋上の一角に在った貯水タンクが破裂し、お約束の掛け声と共に、小太郎が飛び出して来て、蜂一の前に着地した。

 

「ドーモ。葉隠 小太郎=サン。千霞 蜂一です」

 

しかし、先んじてアイサツを繰り出したのは蜂一の方だった。

 

「! ドーモ。千霞 蜂一=サン。葉隠 小太郎です」

 

それに一瞬驚きながらも、小太郎も両手を合わせてオジギするお馴染みのアイサツを決める。

 

「イヤーッ!!」

 

オジギ終了から0.02秒。

 

小太郎は無数のスリケンを蜂一目掛けて投擲した!

 

後悔はやられてからすれば良い。

 

今は目の前の敵を倒さねばならない!

 

蜂一へと迫る無数のスリケン。

 

「イヤーッ!!」

 

だが、おお、見よ!

 

蜂一が両腕を背中に回したかと思うと、次の瞬間にはトンファーが装着された状態で現れる。

 

しかも、只のトンファーでは無い………

 

長い部位がギラリと鈍く光る刃となっているトンファー………『ブレードトンファー』だ!!

 

「そらそらそらそらそらぁーっ!!」

 

そして気合の声と共に、蜂一が腕を鞭の様に撓らせて振るうと、小太郎が放ったスリケンが全て叩き落されてしまう。

 

「ぬうっ!!」

 

「只のスリケンの投擲なぞ! 何になるーっ!!」

 

思わず声を挙げた小太郎に向かって、蜂一が両腕を合わせて掌を向けたかと思うと、そこから鋼鉄製の網………『アイアンネット』が発射される!

 

「! イヤーッ!」

 

後ろ腰に携帯していた忍者刀を一閃し、アイアンネットを切り払う小太郎。

 

だが、その瞬間には、蜂一が懐に飛び込んで来ていた!!

 

「!! イヤーッ!!」

 

小太郎は反射的にポン・パンチを繰り出す。

 

「フッ………」

 

だが、蜂一は涼しげな顔でブリッジ回避。

 

「イヤーッ!」

 

「! グワーッ!!」

 

そのまま蜂一は、ブリッジの勢いを利用してバック宙を決めながら、小太郎の顎を蹴り上げる。

 

アレは伝説のカラテ技! サマーソルトキックだっ!!

 

真面に喰らった小太郎の身体が宙に浮かび上がる!

 

「そらそらそらそらそらぁーっ!!」

 

その小太郎に向かって、蜂一は容赦無くクイナ型の爆弾『メッサーグランツ』を投擲する!

 

「! イヤーッ!!」

 

すると小太郎は、独楽の様に高速で回転!

 

蜂一が投擲したメッサーグランツは、回転の風圧で阻止され、本体に到達した物も、高速の回転によって弾かれる。

 

そのまま小太郎は、蜂一目掛けて突撃する。

 

「ほう? この私に回転で挑む積りか………笑止千万っ!!」

 

だが、蜂一はそう言い放つと、両腕を交差させて、トンファーブレードを左右に突き出す様に構えたかと思うと、バレエの様に片足立ちとなり、高速で回転を始めた!

 

「シュツルム・ウント・ドランクウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーッ!!」

 

ドイツ語で『疾風怒濤』と叫びながら、同じ様に高速回転している小太郎と衝突する蜂一。

 

まるでベーゴマの様に鈍い音を立てながら激突を続ける両者。

 

衝突している部分からは火花さえ飛び始めている!

 

暫くその状態が続いていたかと思うと………

 

「!? グワアアアアアアアアァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーッ!!」

 

小太郎が悲鳴の様な叫びと共にブッ飛ばされた!!

 

「ぐあっ! がはっ!!」

 

団地の屋上の床を数回バウンドした後、更に暫く転がって漸く止まる小太郎。

 

奇跡的にも戦死判定は下されていないが、戦闘服は粗全身が斬り裂かれており、誰が如何見て瀕死状態だった。

 

「う、うう………」

 

ダメージを受けた戦闘服が鉛の様に重くなり、動く事もままならない。

 

「最早真面に動けまい。だが、後顧の憂いは確実に断っておく必要が有る」

 

そんな小太郎に、蜂一は容赦無くトドメを刺そうと、右手のトンファーブレードを展開しながら歩み寄って行く。

 

(無念………ココまででござるか………)

 

小太郎の心にも諦めが過り、その瞬間に意識が遠のいて行き、騒がしい筈の試合会場内の音が聞こえなくなって行く………

 

だが、そんな中で………

 

小太郎の耳に何かが聞こえて来る………

 

(? コレは?………)

 

その聞こえて来た音に反応し、小太郎はギリギリのところで意識を繋ぎ止める。

 

(………ケイ………殿?………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

観客席………

 

「小太郎ーッ! ファイトーッ!!」

 

試合会場の方に向かって、声の限りに叫んでいるケイ。

 

「た、隊長………」

 

「ケイ………」

 

「…………」

 

そんなケイの姿にアリサは唖然とし、ナオミとジョーイは只見守る。

 

「小太郎ーっ! 頑張れーっ! 頑張………!? ゲホッ! ゴホッ!!」

 

更に大声で声援を飛ばすケイだったが、叫び過ぎたのかむせてしまう。

 

「隊長! 駄目です! それ以上は危ないですよっ!! それにこんな所から幾ら叫んだところで聞こえませんよっ!!」

 

既に声が枯れ始めているのを聞いて、アリサがケイを止めようとする。

 

「小太郎ーっ!!」

 

だが、ケイは喉に激痛が走るのにも構わず、小太郎に声援を送り続ける。

 

「小太………!!」

 

そしてとうとう声が出なくなる。

 

「隊長っ!!」

 

「!!………!!………」

 

アリサが慌てるが、それでもケイは声にならない声を挙げて、小太郎への声援を続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合会場内………

 

市街地・とある団地の屋上………

 

(聞こえる………聞こえるでござるよ………ケイ殿………)

 

その声援は、確かに小太郎に届いていた。

 

物理的な距離など関係無い………

 

確かに小太郎は………

 

ニンジャソウルで、ケイの声援を聞き取っていたのである!!

 

遠ざかっていた意識が急激に覚醒する小太郎!

 

「………スーッ………ハーッ………スーッ………ハーッ………」

 

そして、『チャドー』の呼吸法により、無理矢理体力を回復させようとする。

 

「! させんっ!!」

 

だが、その様子に気づいた蜂一が、一気に駆け寄り、トンファーブレードを小太郎の首目掛けて振り下ろす!

 

しかし、トンファーブレードは小太郎の首ではなく、コンクリートの床に突き刺さる!

 

「!?」

 

蜂一が驚きを露わにしていると………

 

「Wasshoi!」

 

「!!」

 

ボロボロの状態で上空へと跳躍していた小太郎の姿を目撃する。

 

「イヤーッ!!」

 

小太郎は再び身体を高速で回転させ、蜂一に向かって落下する!

 

「馬鹿め! その技は通じんと言った筈だ! シュツルム・ウント・ドランクウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーッ!!」

 

蜂一は再びシュツルム・ウント・ドランクを繰り出し、小太郎を迎え撃とうとする。

 

だが、小太郎が蜂一へと接触するかに思われた瞬間!!

 

「イヤーッ!!」

 

何と!!

 

小太郎は身体を横にし、シュツルム・ウント・ドランクを繰り出している蜂一の上を転がった!

 

ゴウランガ!!

 

これぞチャドーの奥義『グレーター・ウケミ』を昇華させた小太郎独自の防御術………

 

『アンブレラ・スピン』だ!!

 

「!? 何とっ!?」

 

蜂一は初めて驚愕して見せる。

 

「イヤーッ!!」

 

小太郎はそのまま更に回転の速度を上げる!

 

すると、おお、見よ!

 

その回転によってシュツルム・ウント・ドランクの回転が更に高速化し、余りの早さに支点となっている蜂一の足が団地の屋上の床を抉り始めたではないか!!

 

「イ、イカンッ!!」

 

慌てる蜂一だったが、小太郎によって回転させれているシュツルム・ウント・ドランクを止める事は出来ない!

 

そのまま蜂一の身体はドリルめいて団地の屋上の床へと沈んで行く!

 

「ぬおおおおっ!?」

 

そして遂に!!

 

蜂一の身体は、頭だけを残して屋上の床に完全に沈んだ!!

 

「イヤーッ!!」

 

その瞬間に小太郎は再び跳躍。

 

そして、頭だけとなっている蜂一に向かって、自身も頭から垂直落下する。

 

捨て身技、ドラゴン・ヘッドバットだ!!

 

そのまま蜂一の脳天に、己の脳天を叩き付ける小太郎。

 

「!? グワーッ!!」

 

蜂一の悲鳴が響き渡ると、技を繰り出した小太郎も、バタリと床に倒れる。

 

「サヨナラッ!!」

 

断末魔を挙げると、爆発四散したかの様なアトモスフィアで戦死判定を受ける蜂一。

 

「…………」

 

だが、倒れた小太郎もそのまま戦死判定を受けたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

黒森峰武装親衛隊員達は………

 

「クソッ! コッチも瓦礫が!!」

 

「そこを曲がれっ!」

 

マウスへの合流を目指しているが、所々の通路を瓦礫が塞いでおり、何度も迂回をさせられ、中々合流出来ずに居た。

 

「おっ! この通路は行けるぞっ!!」

 

とそこで、漸く瓦礫で塞がって居ない通路を発見する黒森峰武装親衛隊員。

 

しかも、その通路はマウスが向かった先へと続いており、正に絶好の道だった。

 

「コレでマウスと合流出来るぞ!」

 

「そしたら一気に片を付けてやる! 見ていろ、大洗めっ!!」

 

散々迂回させられた黒森峰武装親衛隊員達は苛立っており、やっと通れる通路を見つけた事で勝負を急ごうと一気に全員で通路を進む。

 

「………!!」

 

「! 待てっ!!」

 

だが、最後尾で後方を警戒していた顋と剱が、何かに気付いた様に声を挙げて立ち止まる。

 

………その瞬間!!

 

黒森峰武装親衛隊員達の先頭を行っていた者達が、何かを踏みつける。

 

「うん?………」

 

何だと、踏みつけた物を確認しようとした瞬間に、踏みつけた物………地雷が爆発!

 

「「「「「うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」」」」」

 

先頭を行っていた者達が纏めて吹き飛ぶ!

 

「! 地雷っ!!」

 

「せこい真似をっ!!」

 

残っていた黒森峰武装親衛隊員達は立ち止まり、工兵達が地雷撤去を始めようとしたが、そこで………

 

何と、地雷の爆発があった場所から、地面に亀裂が入り始める!

 

「えっ!?」

 

「なっ!?」

 

何だと黒森峰武装親衛隊員達が声を挙げる前に、亀裂はその足元まで到達し………

 

そのまま一気に、黒森峰武装親衛隊員達の足元の地面が崩落したっ!!

 

「「「「「「「「「「うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

崩落した地面の中に、一気に飲まれる黒森峰武装親衛隊員達。

 

更に駄目押しと言わんばかりに、通路の両脇に在った建物が爆破され、瓦礫が崩落で出来た穴の中へと降り注いで来た!!

 

「「「「「「「「「「うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

穴の中へと瓦礫が降り注ぎ、黒森峰武装親衛隊員達は全滅する。

 

「ぬう………!!」

 

「!!」

 

その様子に、剱が一瞬苦い顔を見せたかと思うと、顋と共に抜刀して後ろを振り返る。

 

「「…………」」

 

そこには、無言で佇むゾルダートと熾龍の姿が在った。

 

「ガーバインか………」

 

「友よ………今こそ雌雄を決する時」

 

「お前と一戦交える事になろうとはな………」

 

そう言いながら剣は、刀を蜻蛉に構える。

 

「フッ、それはお互い様だ………」

 

ゾルダートはそう返しながら、両手にモーゼルC96を9x19mmパラベラム弾を使用出来る様に改造したモデル『モーゼル・ミリタリー 9mm』を握る。

 

「1つ聞かせろ、ガーバイン………大洗にお前の求めた歩兵道は有ったのか?」

 

「ああ、確かに有った」

 

「そうか………」

 

それを聞いた剣はそっと目を閉じ………

 

「ならば問答無用っ! 我は黒森峰の剣として、貴様を斬るっ!!」

 

カッと見開いたかと思うと、闘気と共にそう言い放つ。

 

「承知した! 行くぞっ! 甲鎧 剱っ!!」

 

「来いっ!! ガーバイン・ランゼンッ!!」

 

かつての親友同士が激突する。

 

 

 

 

 

「「…………」」

 

一方、熾龍と顋はお互いに無言で睨み合っている。

 

サーベルを抜き放って構えている顋に対し、熾龍は煉獄を鞘に納めたまま、居合いの構えを取っている。

 

「「…………」」

 

両者に言葉は無い………

 

有るのは只………

 

目の前の敵を排除すると言うシンプルな思考である………

 

「…………」

 

と、熾龍が居合いの構えを取ったまま、摺り足で1歩踏み出す。

 

「…………」

 

それを見た顋は、同じ様に摺り足で1歩前進する。

 

「…………」

 

再び熾龍は、摺り足で1歩前に進む。

 

「…………」

 

同じ様に顋も、摺り足で1歩進む。

 

両者は摺り足で、1歩1歩ジリジリと距離を詰めて行く。

 

そして、お互いが一足一刀の間合いへと入り込む。

 

「………!!」

 

その瞬間!

 

先に仕掛けたのは熾龍だった!!

 

自慢の神速居合いを、顋に向かって繰り出す!!

 

光の如き速さの斬撃が、顋の身体に襲い掛かる………

 

………かに思われた瞬間!!

 

ガキィンッ!と言う甲高い音がして、煉獄が止まった!

 

「………!」

 

煉獄を止めた物を見て、熾龍は一瞬眉を動かす。

 

それは、まるで鋏の様に組み合わされた、顋の2本のサーベルだった。

 

「………面白い剣だな」

 

「…………」

 

熾龍の皮肉にも然程反応を示さず、顋は受け止めていた煉獄を力任せに弾き飛ばす!

 

「………!!」

 

そして、鋏状になったサーベルで、熾龍の胴体を挟み込もうとする!

 

「!!」

 

だが、熾龍は一瞬にしてスライド移動の様に後退。

 

鋏状のサーベルは、何も無い空間を切って乾いた音を立てる。

 

「…………」

 

そして再び、居合いの態勢を取る。

 

「…………」

 

対する顋も、鋏状のサーベルをチョキチョキさせながら、熾龍を威嚇するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、ゾルダートVS剱の対決は………

 

「頂く!」

 

そう言い放ち、両手のモーゼルの二挺拳銃で、剱に向かって次々と弾丸を放つゾルダート。

 

「チエアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!」

 

だが何と!!

 

剱は飛んで来る弾丸を刀で斬り落としながら、ゾルダート目掛けて一直線に突撃する。

 

「ぬうっ!」

 

剱が目の前まで迫ると、ゾルダートは横っ飛びに回避する。

 

「甘いぞ! ガーバインッ!!」

 

だが、剱は振り降ろすと思われた剣筋を、強引に横薙ぎへと変更。

 

「! むうっ!!」

 

ゾルダートは上半身を仰け反らせ、スウェーの様に回避。

 

「!!」

 

そしてその状態で、剱の頭に向かって右手のモーゼルを発砲した。

 

「!?」

 

しかし、剱は眼前まで迫ったかに見えた弾丸を、身体を回転させる様にして回避!

 

「チェストオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーッ!!」

 

そして、2撃目の横薙ぎを見舞って来た!

 

「クッ!!」

 

対してゾルダートは、今度は左手のモーゼルを、横薙ぎに振られた剱の刀の横腹に発砲!

 

弾丸が横腹に当たった事で、刀の軌道が僅かに浮き上がり、鼻先を掠めながらも再度の回避に成功する。

 

「グッ!………」

 

そしてそのまま、背中から地面に倒れ込んで一瞬呻き声を挙げながらも、再度両手のモーゼルを剱に向かって発砲!

 

「ぬううっ!!」

 

剱は刀で銃弾を弾きながらも飛び退いて後退。

 

両者は距離を取った。

 

「………腕は衰えていない。いや、寧ろ上がった様だな」

 

「お前こそ………前よりも恐ろしい斬撃だ」

 

そこで剱とゾルダートは一瞬笑い合った。

 

「………長引かせるのはお互いに得策では無かろう。次で最後だ」

 

「流石だな、友よ。私もそう思っていたところだ」

 

しかし、すぐに表情を引き締めると、勝負に出るべく、剱は再び蜻蛉の構えを取り、ゾルダートもモーゼルを構える。

 

(………残り1発ずつ………さて如何する?)

 

だが、既にゾルダートのモーゼルは、両方とも残り1発となっていた。

 

剱に対し、馬鹿正直に撃ったとしても先ず当たらない………

 

虚を衝く攻撃でなければ、勝てない………

 

相手が親友だからこそ、ゾルダートにはそれが分かっていた。

 

(………賭けに出るか)

 

そしてゾルダートは、博打を打つ覚悟を決める。

 

「チエエエエエエェェェェェェェストオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!」

 

だがその瞬間に、剱は今日1番の踏み込みで、ゾルダートに斬り掛かって行った!!

 

それを見たゾルダートは、何と!!

 

左手のモーゼルを、剱に向かって投げつけた!!

 

「!!」

 

だが、剱は動揺せず、投げつけられたモーゼルを弾き上げ、突進を続行!

 

「友よ! 覚悟っ!!」

 

と、剱は斬り掛かろうとした瞬間!!

 

ゾルダートは右手のモーゼルの最後の1発を発砲した!

 

超至近距離で発砲!!

 

普通ならば先ずかわせない距離だ………

 

そう、普通なら………

 

「!!」

 

何と剱は、目の前の迫った弾丸を、驚異的な反応速度で首を反らしてかわした!!

 

「シエアアアアアアアアァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!」

 

そして独特の気合の雄叫びと共に、ゾルダートに向かって刀を袈裟懸けに振り降ろした!

 

その1撃は、ゾルダートの身体を左肩から右脇へと走った!!

 

歩兵道の試合でなければ、先ず身体が真っ二つとなっている斬撃だ。

 

当然ながら、ゾルダートは戦死と判定された………

 

………しかし!!

 

「………見事だ。ガーバイン」

 

剱がそう言ったかと思うと、彼の戦闘服が戦死した事を告げるブザーを鳴らす。

 

良く見れば………

 

剱の戦闘服の背中側………

 

丁度心臓の位置に、銃弾が命中していた!!

 

そこで、銃口から硝煙を上げ、引き金部分に罅が入っているモーゼルが、地面に落ちた………

 

何と!!

 

ゾルダートは最初に投げつけて弾かれたモーゼルの引き金に、右手に持ったままだったモーゼルの銃弾を当て、剱の背中に命中させたのである!!

 

信じられない神業だ!!

 

「博打だったがな………フフ」

 

ゾルダートはそう言って不敵に笑い、その場に座り込んだ。

 

「…………」

 

剱も刀を納刀すると、その場に座り込む。

 

「「…………」」

 

その後2人は、言葉も無くその場で座り込んで、収容役の運営委員が来るまで、向かい合っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、熾龍VS顋の戦いは………

 

「「…………」」

 

お互いに得物を構えて睨み合いを続けている熾龍と顋。

 

この2人の剣技は、どちらかと言えば共に剛剣。

 

力量は粗互角。

 

故に決着は一瞬で着く。

 

長引く事は無い。

 

今はお互いが必殺のタイミングを見計らっているのである。

 

「「…………」」

 

只々睨み合った状態で静止し続けている熾龍と顋。

 

凄まじい緊迫感が、両者の間を支配する。

 

………と、その時!!

 

急に突風が吹いて、砂埃が舞い、両者の姿が一瞬見えなくなった。

 

「「!!」」

 

その瞬間!!

 

熾龍と顋は全く同時に踏み込み、一瞬光が走ったかと思うと………

 

互いに背を向ける形で、お互いの位置が入れ替わっていた。

 

良く見れば、顋の手にあの独特な鋏状のサーベルが無くなっている。

 

「………ガフッ!」

 

すると、熾龍が吐血した様な声を漏らして跪く。

 

良く見ると、何と!!

 

熾龍の戦闘服の腹に、顋の鋏状のサーベルが挟み込む様に突き刺さっていた!

 

「ぐうっ!………」

 

煉獄を支えに、何とか立ち上がろうとした熾龍だったが………

 

その瞬間に、無慈悲にも戦死判定が下った!

 

「………オノレ」

 

熾龍の口からそんな言葉が漏れた瞬間………

 

「…………」

 

顋の身体がグラリと揺れ、そのままバタリと地面に倒れ、戦死判定となった。

 

良く見ると………

 

顋の戦闘服の腹には、横一文字に深く斬り裂かれた跡が出来ている。

 

そう………

 

熾龍と顋の戦いもまた………

 

相討ちであったのである。

 

「決勝でこの体たらくとは………」

 

相討ちであったのが納得が行かない様で、熾龍は不機嫌な顔となるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその頃………

 

マウスを惹き付けていたみほ達は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

マウスを相手に苦戦するみほ達だったが、沙織の一言で思いついた作戦を実行する為、黒森峰武装親衛隊を引き離して欲しいと歩兵部隊に依頼。

それを遂行した大洗歩兵部隊。
そして、小太郎、ゾルダート、熾龍が黒森峰エース歩兵と対峙。
結果は全員が相討ち………
敵の排除に成功しながらも、手痛い打撃を受ける。

次回、いよいよ『アレ』が登場です。
その圧倒的な力の前に、大洗は絶体絶命。
だが、その時………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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