ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第201話『号砲一発です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第201話『号砲一発です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超重戦車マウスを撃破する為………

 

随伴歩兵として付いて居た黒森峰武装親衛隊員達を………

 

大洗歩兵部隊は、小太郎、ゾルダート、熾龍の犠牲を払って退ける………

 

そして、今………

 

マウスに対してみほの作戦が炸裂する………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道・歩兵道全国大会の決勝戦の試合会場………

 

陸上自衛隊の東富士演習場・市街地………

 

大洗戦車隊を追うマウスは、団地エリアから離れ、住宅エリアと団地エリアを区切っている片側2車線、計4車線となっている道路へと差し掛かる。

 

すると、左手の方に大洗戦車隊が横隊を作って停まっているのを発見する。

 

マウスはすぐさま、大洗戦車隊に向かって行く。

 

対する大洗戦車隊も、マウスに向かって前進を開始する。

 

正面から挑んでも勝ち目が無い事は明らかである。

 

一体如何する積りなのか?

 

向かって来る大洗戦車隊に対し、マウスが発砲!

 

大洗戦車隊は散開してかわすと、砲弾は後方の道路に着弾して派手に爆発を起こす。

 

直後、カメさんチームのヘッツァーだけが、マウスへと突撃する。

 

迫り来るマウスに対し、速度を上げながら突っ込んで行くヘッツァー。

 

「まさかこんな作戦とは………」

 

「やるしかないよ、桃ちゃん!」

 

「燃えるね~」

 

「神様………」

 

その車内で、桃は不安を漏らし、柚子と杏は覚悟を決めた顔を見せ、蛍は神に祈っている。

 

段々とマウスとヘッツァーの距離が縮まって行く………

 

そして遂にっ!!

 

ヘッツァーは正面からマウスへと衝突した!!

 

「!?」

 

「わおっ!?」

 

その様子に、観客席の各校の総隊長達は驚愕を露わにする。

 

ヘッツァーは衝突した状態から更に前進。

 

すると、マウスがヘッツァーの低い車体の上に乗り上げ始めた!

 

「何だっ!?」

 

マウスの車長は何が起こったのか分からないが、操縦士は反射的にマウスを後退させようとする。

 

しかし、既にヘッツァーは深く車体下へと入り込んでおり、履帯が浮いて接地圧が下がり、抜けられなくなる。

 

とそこで、マウスの右側面に、M3リー、ポルシェティーガー、三式、クロムウェルが陣取る。

 

「撃てるもんなら!」

 

「撃って見やがれっ! おりゃあっ!!」

 

そして、あゆみとあやの掛け声で、機銃も合わせて一斉攻撃を浴びせる。

 

その全てがマウスの装甲を貫けずに弾かれるが、うっとおしく思ったマウスは砲塔を右側へと向ける。

 

「来た来たっ!」

 

「逃げろーっ!!」

 

だが、発砲の瞬間にM3リー達は退避し、マウスの砲弾は道路に大穴を開ける。

 

とそこで、今度は八九式がマウスに向かって突撃する!

 

「さあ、行くよ!」

 

「「「ハイッ!」」」

 

「「「「ソーレッ!!」」」」

 

そして何と!!

 

ヘッツァーを踏み台にして、マウスの車体の上へと駆け上がった!!

 

「「「「「!?」」」」」

 

驚くマウスの乗員達。

 

八九式はそのまま、僅かなマウスの車体上のスペースで向きを変え、砲塔と並列になる様に位置取る。

 

マウスは主砲を旋回させようとしたが、八九式に阻まれて止められる。

 

「良し! ブロック完了しました!!」

 

「了解! 頑張って何とか踏み止まって下さいっ!!」

 

典子からの報告を聞いたみほが、Ⅳ号をマウスの左側面へと向かわせる。

 

「オイ、軽戦車っ! そこを退けっ!!」

 

と、マウスの車長がハッチから乗り出し、八九式に向かってそう叫ぶ。

 

「嫌です。それに八九式は軽戦車じゃないし」

 

「中戦車だし」

 

それに対し、八九式の砲塔の覗き窓から顔を見せていた典子とあけびが言い返す。

 

「クソッ! 振り落してやるっ!!」

 

すると、マウス車長は車内へと戻り、八九式を無理矢理振り落そうと砲塔旋回のパワーを上げる。

 

「何のーっ!!」

 

だが、八九式も振り落されまいと耐える。

 

その間にも、ヘッツァーは更にマウスの下へと潜り込んで行く。

 

しかし、200トン近いマウスの重量は、安全用の特殊カーボンを持っても完全に防げるものではなかった………

 

「落盤だーっ!!」

 

車内に細かい破片が降り注ぎ始め、桃が悲鳴を挙げる。

 

「車内ってコーティングで守られてるんじゃあ………」

 

「マウスは例外なのかもね」

 

「他人事みたいに言わないでよ、杏!」

 

杏以外の柚子と蛍も冷静では居られなくなる。

 

と、そこでⅣ号が、マウスの左側面側に在った斜面を斜めに登り始める。

 

そして、マウスの後部部分まで来たかと思うと、車体ごと砲塔を垂直に向け、斜面に停車し、主砲を最大仰角まで上げる。

 

「後ろのスリットを狙って下さい!」

 

「ハイ」

 

みほが華にそう指示する。

 

それは砲塔が横を向いている状態だから露出している、マウスの数少ないウィークポイントだった。

 

「もう駄目だーっ!!」

 

「もう持ち堪えられない!」

 

だが、ヘッツァーにはいよいよ限界が迫っていた。

 

「根性で押せーっ!!」

 

「ハイィッ!!」

 

「気持ちは分かるけど、意味無いですから!」

 

一方、砲塔をブロックしている八九式の車内でも、典子とあけびが少しでも手助けになればと車内から砲塔の当たっている方向を押すが、妙子にそう突っ込まれる。

 

「撃てっ!!」

 

その瞬間に、みほの号令が響き渡り………

 

Ⅳ号から放たれた砲弾が、見事マウスのスリット部に命中!

 

爆発が起こると、一瞬の間が空いて………

 

マウスから白旗が上がった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

観客席………

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

「奥様! お嬢がやりましたーっ!!」

 

文字通りのジャイアントキリングに観客席、特に大洗側の応援席の面々は歓声を挙げ、百合と共に観戦していた新三郎も興奮を見せる。

 

その近くには秋山夫妻も居り、淳五郎がカメラでしきりに写真を撮っていた。

 

「凄い! マウスを仕留めましたっ!!」

 

「私達も今度やろうかしら。Mk.VIで」

 

「やめておけ」

 

グロリアーナ&ブリティッシュの席でも、オレンジペコが興奮した様子で言うと、ダージリンがそんな事を言い、アールグレイにツッコミを入れられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道・歩兵道全国大会の決勝戦の試合会場………

 

陸上自衛隊の東富士演習場・市街地………

 

撃破されたマウスの下にめり込んだままのヘッツァーを、ポルシェティーガーがワイヤーで牽引して引っ張り出す。

 

そして八九式も、特徴の後部・尾体を使って、マウスの上から降りる。

 

だが、直後………

 

引っ張り出されたヘッツァーが黒煙を吹き出し、白旗を上げた。

 

「ああ!………」

 

「良くやってくれたな、ココまで」

 

「うん」

 

「生きてるって本当に素晴らしいね」

 

「我々の役目は終わりだな」

 

みほが声を挙げると、動かなくなったヘッツァーの車内から桃、柚子、蛍が這い出してくる。

 

「西住総隊長」

 

「すみません」

 

「謝る必要無いよ」

 

「良い作戦だったよ」

 

「後は任せたよ」

 

「頼むぞ!」

 

「ファイトッ!!」

 

申し訳無さそうな顔をするみほに、杏達は次々に激励の言葉を飛ばす。

 

「ハイッ!!」

 

と、みほが返事を返したところで………

 

「西住総隊長!」

 

黒森峰武装親衛隊の相手をしていた大洗歩兵部隊が合流する。

 

「神大さん! 状況は!?」

 

「マウスに付いて居た随伴歩兵部隊は全て排除した。だが、葉隠、ファインシュメッカー、熾龍が全員戦死判定だ」

 

「! 分かりました! 間も無く黒森峰の本隊も到着します! 態勢を立て直して迎撃します!」

 

迫信からの報告に、みほは一瞬悲しそうな顔をしたが、すぐに気を取り直して指示を飛ばす。

 

「それにしても………」

 

とそこで、地市が撃破されたマウスの方を振り返る。

 

「黒森峰もトンでもねえ化け物を出して来やがったな」

 

「全くですね………あの戦車1両に全く歯が立ちませんでしたから」

 

地市と楓がそう言い合う。

 

「もう1両コイツが出て来たら、今度こそ俺達は全滅だな」

 

と、了平がそう言った瞬間………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何か巨大な物が動いている音が聞こえて来る………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ?………」

 

「何?………」

 

それを聞いたみほはおろか、迫信も驚愕する。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

大洗機甲部隊の面々も、戦慄して絶句する。

 

その音は、大洗機甲部隊の方へと近づいて来る………

 

やがて………

 

団地エリアへと続く道から………

 

新たなマウスが姿を現した!

 

「!? マウスッ!?」

 

「そんなっ!? 1両だけじゃなかったのっ!?」

 

梓と沙織が悲鳴の様な声を挙げる。

 

「了平! テメェッ!!」

 

「お、俺のせいじゃねえよっ!!」

 

思わずフラグ染みた事を言っていた了平を、地市が怒鳴る。

 

「落ち着くんだ! 冷静に………」

 

迫信が皆を落ち着かせようとするが………

 

「オ、オイ! ちょっと待てよ!? 更にもう1両来やがったぞっ!?」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

そこで海音がそう叫び、大洗機甲部隊の面々が驚愕と共に視線を向けると、そこには………

 

新たに現れたマウスの後に続く様に………

 

マウスと同じくらいの大きさの戦車が現れていた。

 

「!? 『E-100』!? あんな物までっ!?」

 

その超重戦車………『E-100』の姿を見た優花里がそう叫ぶ。

 

とそこで、E-100のハッチが開いたかと思うと、中から車長………『揚羽』が姿を現した。

 

「! 揚羽っ!?」

 

「あ~、あ~………チェックチェック! マイクのチェック中」

 

白狼が驚きの声を挙げる中、揚羽は拡声器を取り出し、チェックを行う。

 

「………大洗機甲部隊の諸君。直ちに降伏しなさい」

 

そして、大洗機甲部隊に向かって、降伏勧告を行って来た。

 

「もう貴方達に勝ち目は無いわ。コレ以上無駄な争いはしたくないわ。降伏しなさい」

 

大洗機甲部隊に向かってそう言い放つ揚羽だが、その顔は苦い。

 

如何やら、この降伏勧告は大洗機甲部隊を屈服させたいと言うよりは………

 

コレ以上、この様な化け物を使いたくないと言う思いからの様だ。

 

「ふざけるなぁっ!!」

 

「戦わずして降伏する武人などおらんわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

「貴様たちこそ! 明日の朝日は拝ませねえぇっ!!」

 

それに対し、明夫、月人、竜作と言った血気盛んな面々が反論する。

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

それに触発されたかの様に、大洗歩兵部隊の面々も武器を構え、大洗戦車隊の一同も表情を引き締める。

 

「………そう。分かった」

 

すると、揚羽が残念そうにそう呟いた瞬間………

 

地面が揺れた!!

 

「うわっ!?」

 

「じ、地震かいなっ!?」

 

突然の揺れに飛彗が思わず片膝を着き、豹詑もそんな声を漏らす。

 

と、その時………

 

突然団地エリアの団地が崩れ始めた!!

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

団地エリアの方に視線が向く大洗機甲部隊。

 

すると、何と!!

 

団地を押し退ける様に………

 

巨大な………

 

いや、巨大過ぎる2両の戦車が姿を現した。

 

「!? そ、そんなっ!? アレはッ!?」

 

優花里は驚愕を通り越し、愕然となる。

 

現れた戦車は、かつてナチス・ドイツが計画し………

 

そのまま計画だけに終わったとされていた狂気の産物………

 

「………『P-1000 ラーテ』………『P-1500 モンスター』………実在したなんて………」

 

『P-1000 ラーテ』………

 

そして『P-1500 モンスター』であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『P-1000 ラーテ』………

 

重量約1,000トン、全長35m、全幅14m、高さ11m………

 

最早戦車を通り越し、『陸上戦艦』とまで呼ばれた怪物である。

 

その主砲は、シャルンホルスト級戦艦の主砲塔である28cm 3連装砲から中砲を省いた2連装砲塔………

 

装甲は最大350ミリ。

 

正に陸上の戦艦とも呼ぶべき代物である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『P-1500 モンスター』………

 

そのラーテを上回る重量約1,500トン、全長42m、全幅18m、高さ7m………

 

装甲は最大250ミリとラーテよりは劣るが………

 

最大の特徴は、あの世界最大のカノン砲である80cm列車砲を主砲としている事である。

 

コレを超える戦車砲は絶対に存在しない………

 

正真正銘の化け物だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大会運営委員会席………

 

「『計画のみに終わった車両でも、その学園の技術と財力で製造可能ならば認める』………局長さん。貴方まさか、黒森峰がアレを持っていると知っていてこのルールを認可したんですか?」

 

戦車道連盟の理事長『児玉 七郎』が、左隣に居た廉太に渋い顔をしながらそう問い質す。

 

「まさか………偶然ですよ」

 

ニヤリとした意地の悪い笑みを浮かべながら、役人はそう返す。

 

そう、実は決勝戦が始まる僅か数日前に戦車道のルールが改定され………

 

『計画のみに終わった車両でも、その学園の技術と財力で製造可能ならば認める』

 

………という1文が付け足されたのである。

 

黒森峰機甲部隊が、計画のみで終わったラーテやモンスターを投入できたのはこのお蔭である。

 

「しかし、あの様なモノを………」

 

「考え方次第ですよ………」

 

七郎は食い下がるが、役人は全く取り合わない。

 

「局長はん………1つゆうてええですか?」

 

するとそこで、七郎の右隣に居た人物………

 

見るからに大阪のおばちゃんと言う感じの女性………

 

日本歩兵道連盟の理事長『登坂 妃美子(のぼりさか きみこ)』が、役人に声を掛ける。

 

「? 何ですか?」

 

「あんまり子供達を甘く見ない方がええでっせ」

 

「如何言う事ですか?」

 

「そのうち分かるわ………飴ちゃんいるか?」

 

役人の言葉にはハッキリと返さず、代わりに飴を差し出す妃美子だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陸上自衛隊の東富士演習場・市街地………

 

団地エリアを完全に崩壊させたラーテとモンスターは、マウスとE-100の背後に陣取る。

 

その余りの大きさで、マウスとE-100が小さく見えてしまう。

 

と、ラーテの28cm2連装砲と、モンスターの80cm砲の俯角が下がる。

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

大洗機甲部隊員達が戦慄に包まれた瞬間!!

 

まるで火山が噴火したかの様な音と共に、ラーテとモンスターの主砲が火を噴いた!!

 

「「「「「「「「「「!? うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

「!? くうっ!?」

 

発砲の際の爆風だけで、大洗歩兵達が木の葉の様に吹き飛ばされ、大洗戦車隊の戦車も全車が一瞬宙に浮かんだ!

 

そんな大洗機甲部隊の遥か頭上を、ラーテとモンスターの砲弾が通り過ぎて行く。

 

巨大過ぎて俯角が取れなかったのか、或いは威嚇だったのかは不明だが、ラーテとモンスターの砲弾は外れ、市街地の一角に落ちる。

 

途端に、着弾地点は数キロの範囲の建物が爆風で根こそぎ吹き飛ばされ、爆煙が晴れると巨大なクレーターが露わになる。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

何とか立ち直った大洗機甲部隊の面々が、その光景を見て絶望を露わにする。

 

と、そこで………

 

鈍い金属音を立てながら………

 

マウスとE-100………

 

そしてラーテとモンスターが前進を始めた!

 

「! 撤退! 撤退です! 皆さん! 逃げてーっ!!」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

そこで漸く我に返ったみほが慌てて叫ぶと、大洗機甲部隊の一同は一斉に市街地に向かって撤退を開始した!

 

「言った筈だよ………もう大洗に勝ち目は無いって………」

 

そんな大洗機甲部隊を見送り、揚羽はそう呟く………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

観客席………

 

「な、何だよ、アリャ………」

 

「あんなのアリかよ………」

 

試合会場内に姿を現した超重戦車軍団に、観客席が一瞬静まり返る………

 

「卑怯だぞっ! 黒森峰っ!!」

 

「あんなの反則じゃねえかっ!!」

 

「そこまでして勝ちたいかっ!!」

 

「恥知らずっ!!」

 

しかし、即座に黒森峰に向かったブーイングが飛び始める。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

黒森峰側の応援席の面々は、只々黙り込むしかなかった………

 

「勝つのよ………勝たなければ駄目よ………そうでなければ………私なんて………」

 

そしてしほは、相変わらず俯いた状態でブツブツと呟き続けている。

 

「…………」

 

一方、常夫は頬杖を付き、微笑を浮かべながら試合の様子を見守っている。

 

まるで全てを悟っているかの様に………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

市街地内へと撤退した大洗機甲部隊は、廃倉庫らしき場所を見つけ、全員でその中に退避していた。

 

「黒森峰の本隊がモンスター達に合流しました!」

 

高所で双眼鏡を構え、黒森峰機甲部隊の様子を窺っていた楓がそう報告を挙げる。

 

「合流されてしまったか………」

 

「クッ! 本来であれば、市街地に入って来た黒森峰機甲部隊をゲリラ戦で仕留める筈だったのに………」

 

「あんなのが居たらゲリラ戦どころじゃねえな………」

 

それを聞いた大詔、十河、俊がそう呟く。

 

と、その時!!

 

ラーテとモンスターが主砲を発砲した爆音が響く。

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

発見されたのかと、大洗機甲部隊員達の顔に絶望が走るが………

 

砲弾は何処か別の場所に着弾し、爆発音と地響きが大洗機甲部隊を揺さぶる。

 

「西地点に砲撃が着弾!」

 

楓がそう報告を挙げた瞬間、再び発砲音が響き渡り、続いて爆発音と地響きが鳴る。

 

「今度は北地点です!」

 

「チイッ! 市街地ごとワイ等を吹っ飛ばす気かいなっ!!」

 

再びの楓の報告に、大河がそう叫ぶ。

 

「西住総隊長! 如何したら良いんですかっ!?」

 

「何か作戦は無いんですかっ!?」

 

「西住総隊長!」

 

「西住さん!」

 

梓、典子、聖子、ねこにゃーはみほへそう尋ねる。

 

みほならばこの状況を打開出来る手を思い付ける………

 

そんな期待を込めて………

 

だが………

 

「………ゴメンなさい、皆さん」

 

「「「「「「「「「「………えっ?」」」」」」」」」」

 

みほからそんな言葉が返って来て、大洗機甲部隊の面々は思わず硬直する。

 

「ずっと色々と考えたんだけど………如何しても逆転の手立てが思いつかないの………ゴメンなさい」

 

心底、そして悔しそうにしながら、みほは吐露する様にそう呟き、俯いた。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

大洗機甲部隊の面々は絶句した………

 

あのみほが………

 

大洗の軍神が何も策を考えつかない………

 

それは大洗機甲部隊にとって、最も絶望的な事だった………

 

「そ、そんな………」

 

「万策尽き果てたか………」

 

「ココまでかよ………クソッ!」

 

勇武が狼狽し、十河は諦めの色を浮かべ、白狼が悪態を吐く。

 

「折角ココまで来れたのに………」

 

「いやあ、もう十分じゃないかな………」

 

「学校は救えなかったけど………ココまで来れただけでも、良い思い出です」

 

梓、ナカジマ、ねこにゃーは既に悟った様にそう言い合う。

 

「ゴメン………ゴメンね、皆」

 

「みほさんが気に病む事はありませんよ」

 

「西住殿に付いて来た事に、この秋山 優花里! 一片の悔いもありませんっ!!」

 

「まあ、良くやったな………」

 

みほが謝り続ける中、華、優花里、麻子も諦めムードに入る。

 

「私達………頑張ったよね?」

 

そして沙織が、自分………そして皆に言い聞かせるかの様にそう言う。

 

決定的な敗戦ムードが、大洗機甲部隊を支配していた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだだ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

そう言う声が響き、大洗機甲部隊の視線が1人の歩兵………

 

舩坂 弘樹に注がれる。

 

「弘樹くん………」

 

「敵本隊が合流したと言う事は、フラッグ車も居ると言う事だ。例えどれだけの戦力差が有ろうとも、フラッグ車さえ叩けばコチラの勝ちだ」

 

みほが呟くと、弘樹は皆に向かってそう言う。

 

その目には、一片の諦めの色も無い………

 

この状況に於いて………

 

弘樹はまだ勝てると信じていた。

 

「全戦力で一点突破を計り、敵フラッグ車を叩く………諦めるのはその後でも遅くは無い」

 

皆に向かってそう言う弘樹。

 

だが、弘樹の言う作戦は、未だに50両以上の戦車と多数の歩兵部隊を有し、剰え超重戦車部隊を従えている黒森峰機甲部隊に対し、正面切って挑むと言う事である。

 

ハッキリ言って無謀でしかない。

 

しかし………

 

「それしかねえか………」

 

「上手く行けば確かに逆転出来るな」

 

「どうせやられるなら、アイツ等を1人でも多く道連れにしてやるぜ!」

 

地市、俊、海音がそう言い、得物を構え直す。

 

「総隊長! やりましょう!」

 

「座して死を待つよりも打って出るか」

 

「総隊長!」

 

やがては全員が士気を盛り返し、みほに向かってそう呼び掛けた。

 

「皆さん………」

 

そんな一同の顔を見回した後、みほは弘樹に視線を向ける。

 

「…………」

 

弘樹は只、何時も通りの仏頂面で力強く頷いた。

 

「………コレより大洗機甲部隊は、黒森峰機甲部隊に対し、最後の攻撃を敢行します! 皆さん………私に付いて来て下さいっ!!」

 

「「「「「「「「「「大洗バンザーイッ!!」」」」」」」」」」

 

それを受けたみほがそう命じた瞬間、大洗機甲部隊の面々は万歳三唱を始めるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒森峰機甲部隊………

 

「! 大洗機甲部隊、来ます!」

 

「!………」

 

黒森峰偵察兵からそう報告を受けたまほが、双眼鏡で確認すると………

 

隊列を整え、コチラに向かって一直線に突っ込んで来る大洗機甲部隊の姿を目にする。

 

その中心には、Ⅳ号が居り、キューポラからみほが姿を晒している。

 

「みほ………」

 

「一点突破でフラッグ車を狙う積りの様だね………」

 

まほが呟くと、都草がそう推測する。

 

「へっ! それしか出来ねえからな………だが、コレでチェックメイトだ!!」

 

「各員! フラッグ車の防備を固めなさいっ!!」

 

蟷斬がそんな大洗機甲部隊の姿を鼻で笑い、エリカがそう号令を飛ばすと、黒森峰機甲部隊の一同はフラッグ車を防御する陣形に展開。

 

「僅かな希望に掛けて突っ込んで来るか………その志は好きだよ………でももう終わりにしましょう」

 

更に、揚羽のE-100を含めた超重戦車部隊も大洗機甲部隊に照準を合わせる。

 

「黒森峰機甲部隊が防備を固めました!」

 

「超重戦車部隊もコチラを狙っています!」

 

「構わんっ! 突っ込めっ!!」

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

だが、大洗機甲部隊は一瞬たりとも怯む事無く、黒森峰機甲部隊への突撃を敢行する。

 

あわや、大洗機甲部隊の命運もとうとう尽きたか………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………に、思われた瞬間!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『海軍としては陸軍の提案に反対である』

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

突如、大洗機甲部隊の通信回線に、そんな声が響き、大洗機甲部隊員達は驚く。

 

「! 新代先輩っ?」

 

そして弘樹は、その声が護のものである事に気づく。

 

『弘樹、待たせたな。コッチは準備万端だ。支援要請を出せ』

 

「!?………」

 

支援要請を出せ………

 

その言葉に弘樹は驚きを露わにする。

 

ここ東富士演習場は海から遠く離れている。

 

艦艇による砲撃支援が出来る場所では無い筈である。

 

しかし………

 

弘樹は、護が決して適当な事を言わない男である事は重々承知していた。

 

「………支援要請! 砲撃支援、願いますっ!!」

 

そして弘樹は、護を信じて支援要請を行う。

 

『了解したっ!』

 

と、護の返事が響き渡ったその瞬間………

 

風切音が響き渡って来る。

 

「? 何………」

 

だ、とまほが言い切る前に………

 

突如モンスターに複数の巨大な砲弾が降り注いだっ!!

 

降り注いだ砲弾は、分厚いモンスターの装甲に深々と突き刺さって爆発!

 

乗員保護用の特殊カーボンが無ければ、貫通して内部まで到達したものと思われる。

 

「!? なっ!?」

 

まほの驚愕の声が挙がった瞬間に、モンスターから白旗が上がる!

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

その衝撃的な光景に、大洗・黒森峰双方の動きが止まる。

 

「! 今のはっ!?」

 

みほが声を挙げた瞬間に、再び風切音が聞こえて来て、飛来した複数の巨大な砲弾が、今度はラーテに次々に命中!

 

装甲厚だけならばモンスターよりも有る筈のラーテにも、その砲弾は次々と突き刺さって爆発!

 

ラーテは呆気無く、白旗を上げる。

 

「い、一体何が起こってるのっ!?」

 

「………艦砲射撃だ」

 

沙織が声を挙げると、弘樹がその降り注いでいた砲撃が、艦砲射撃であると言う。

 

「艦砲射撃っ!?」

 

「何処からだよっ!? この辺に海はねえぞっ!?」

 

飛彗が仰天し、了平がそう指摘する。

 

「砲弾が飛来した方向からして………恐らく駿河湾、そして相模湾からだ」

 

「そんなっ!? どちらもこの東富士演習場から遠く離れた海ですよ! 幾ら戦艦でも、そんな距離から砲撃なんて………!?」

 

弘樹がそう推察すると、優花里がそんな距離から砲撃なんて不可能だと言おうとして、途中で黙り込む。

 

「ゆかりん!? 如何したのっ!?」

 

「………あります。その距離から砲撃出来る戦艦が………」

 

沙織が尋ねると、優花里が悟ったかの様な表情でそう返してくる。

 

『おっと~! コレは艦砲射撃だぁ!! しかし、一体何処からだぁっ!?』

 

『方角から推察するに、駿河湾に相模湾じゃないでしょうか?』

 

そこで、謎の艦砲射撃についてヒートマン佐々木が実況し、DJ田中が推察を述べる。

 

『何とっ!? そんな遠くから艦砲射撃を行えるとは!? その戦艦は一体!?』

 

ヒートマン佐々木が実況を続けると、観客達も謎の艦砲射撃の正体を知りたがる。

 

『! おっと! 如何やら砲撃が行われていると思われる駿河湾と相模湾に中継機が到着した様ですね。コレより、モニターに映像を流します』

 

するとそこで、中継用の航空機が駿河湾と相模湾に到着した様であり、その中継機からの映像が観客席の巨大モニターに映し出される。

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

その瞬間、観客席に居た全ての人間が驚愕に包まれた!

 

『!? ア、アレはああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!』

 

『えっ!? ちょっ!? ホントですかっ!?』

 

ヒートマン佐々木も叫び声を挙げ、DJ田中も動揺を露わにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこに映っていたのは、250メートル以上は有ろうかと言う巨大な戦艦であり………

 

3連装の巨大な砲塔を3基………

 

副砲と思われる巡洋艦の主砲並みは有る3連装砲塔を2基………

 

まるで城の天守閣を思われる高く美しい艦橋………

 

その艦橋を守る様に、ハリネズミの様に施された多数の高角砲と対空機銃………

 

そう………

 

日本人ならば誰もが知っている、世界最大最強の超弩級戦艦………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『や、『大和』と『武蔵』だああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!』

 

『大和型戦艦1番艦・大和』

 

そして、『同2番艦・武蔵』であった。

 

駿河湾上の大和と、相模湾上の武蔵が………

 

揃ってその46cm主砲を、東富士演習場目掛けて景気良くブッ放していた!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

原作同様の作戦で、マウスを撃退したみほ達。
だがそこで、もう1両のマウスと揚羽の駆る『E-100』が現れる。
そして更に、黒森峰の切り札………
『ラーテ』と『モンスター』までもが現れる。

圧倒的な敵を前に、みほは作戦を思い付けず、絶望に沈む大洗機甲部隊。
だが、弘樹の言葉で、玉砕覚悟の最後の攻撃に出る。
その命運も風前の灯火………

………かに思われた瞬間!!
号砲の1撃と共に………
『大和』と『武蔵』が参上したのだった!!

散々洋上支援不可とか言っておりましたが、その解決方法は至ってシンプルで………
『富士演習場まで届く主砲を持った戦艦で砲撃すれば良い』というものでした。
次回は時を遡って、大和の出航シーンから始めます。
大和はやっぱり発進シーンから始めませんと(笑)

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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