ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第206話『白狼VS蟷斬です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第206話『白狼VS蟷斬です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みほとエリカが、学校を跨いだ因縁にケリを着けていた頃………

 

市街地を迂回していたE-100は………

 

「揚羽ちゃ~ん、何かエンジンから煙出て来たよ~」

 

操縦手を担当している紫染がそう報告する。

 

その報告通りに、E-100のエンジンはまだ動いているものの、黒い煙を上げ始めていた。

 

「もう持たないんじゃないの?」

 

砲手を務めている瀬芹が、揚羽にそう言う。

 

「それは百も承知よ。それでも持たせて………どうせ果てるなら………戦って果てたいわ」

 

「揚羽………」

 

そう返す揚羽を、通信手の竪刃が心配そうな表情で見上げる。

 

「オイ、生徒会長! 馬鹿な事言ってんじゃねえぞっ! 俺達が、黒森峰があんな木っ端部隊に負けると思ってるのかっ!!」

 

と、そんな弱気とも言える揚羽の態度が気に入らなかったのか、随伴して居る残存黒森峰武装親衛隊の中に居た蟷斬が怒声を挙げる。

 

「ちょっと! お前は如何してそうデリカシーが無いんだ! もうちょっと良い台詞があるだろうっ!!」

 

そんな蟷斬の態度にカチンと来た斑が、15センチ砲弾を抱えたままハッチから顔を出し、蟷斬に向かって怒鳴る。

 

「何だとっ!!」

 

「何だっ!!」

 

忽ち雰囲気が険悪になるが………

 

「止めなさいっ!!」

 

「!!」

 

他ならぬ揚羽が2人を一喝する。

 

「私達が争っても利敵行為になるだけよ。もっと冷静になりなさい。そして認めるのよ………私達黒森峰は、今負けかけてるってね」

 

「揚羽………」

 

「チッ………」

 

斑は黙り込むが、蟷斬は面白く無さそうな顔をする。

 

と、そこでE-100と随伴の残存黒森峰武装親衛隊が、片側がコンクリートで舗装された崖の広い道路へと差し掛かったその時!

 

無数のオートバイのエンジン音が聞こえて来る。

 

「「「「「!!」」」」」

 

険悪な雰囲気だったとしても、そこは天下の黒森峰機甲部隊員達。

 

すぐさま臨戦態勢となる。

 

「行くぜええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

そこへ、白狼と先頭にした大洗オートバイ兵部隊が突っ込んで来る。

 

「! 白狼!」

 

「ARE YOU READY GUYS!?」

 

「「「「「「「「「「イエーイッ!!」」」」」」」」」」

 

「DO THE GOES ON!!」

 

「「「「「「「「「「イヤーッ!!」」」」」」」」」」

 

揚羽が驚きの声を挙げる中、白狼はどこぞの奥州筆頭の様な英語で喋りながら、何と腕組みをしてハンドルから手を離しているバイクで突撃して来る。

 

良く見れば、率いている大洗オートバイ兵達も、着剣した小銃を振り回したり、地面に擦らせて火花を散らしたりしている者達が居る。

 

「チイッ! チンピラ共めっ!! 撃て撃てっ!!」

 

蟷斬がそんな白狼の率いる大洗オートバイ兵部隊を見て悪態を吐きながら命令を飛ばす。

 

すぐさま残存黒森峰武装親衛隊は、MG42やMP40で弾幕を張る!

 

「うおっ!?」

 

「ぐああっ!?」

 

命中弾を受けた大洗オートバイ兵部隊員がバイクから落ち、地面を転がって戦死判定を受ける。

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

だが、戦死判定者を出しても怯まず、大洗オートバイ兵部隊は津波の様に残存黒森峰武装親衛隊へと襲い掛かる!!

 

「うおおっ!?」

 

「わああっ!?」

 

突入した大洗オートバイ兵部隊は、残存黒森峰武装親衛隊員達を跳ね飛ばして行く!

 

「クソッタレがぁっ!!」

 

悪態を吐く蟷斬。

 

その目の前に、1台のバイクが停車する。

 

「!!」

 

「…………」

 

白狼のツェンダップK800Wだ。

 

「…………」

 

蟷斬の事を見据えながら、ゆっくりとツェンダップK800Wから降りる白狼。

 

「テメェ………」

 

対する蟷斬も、刺す様な視線で白狼を見据える。

 

「「…………」」

 

周りで残存黒森峰武装親衛隊員達と大洗オートバイ兵部隊員達が入り乱れて戦っている中、2人の間には緊迫した空気が流れる。

 

「ヘッ、やっぱりテメェと戦う事になったな」

 

「そうみたいだな………」

 

殺気の様な闘気を向ける蟷斬に対し、白狼は何処か気だるげにそう返す。

 

「思えば出会った時からテメェの事は気に食わなかったんだ………良い機会だ。ココで叩き潰してやるぜ」

 

そう言うと蟷斬は、両手にナイフを握った。

 

「叩き潰されるのはどっちかな?」

 

対する白狼も、拳法の構えを取る。

 

「「…………」」

 

再び睨み合う2人。

 

「「………!!」」

 

たが、すぐさま互いに距離を詰め、激突するのだった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、E-100の方は………

 

「こんなに入り乱れてたんじゃ、援護は無理ね………」

 

残存黒森峰武装親衛隊員達と大洗オートバイ兵部隊員達が入り混じって戦っているのを見て、揚羽はそう呟く。

 

「後退して。接近戦に持ち込まれたらコッチが圧倒的に不利よ」

 

「了解」

 

そしてE-100を後退させる。

 

通常の戦車以上に、歩兵に取り付かれた場合の対処が効かないE-100では、歩兵に近寄られるだけでも脅威の為である。

 

と、その直後!!

 

砲撃音が響いたかと思うと、E-100に衝撃が立て続けに走る!

 

「!?」

 

揚羽は驚きながらも、衝撃を感じた後方を振り返る。

 

そこには、砲口から煙を上げているクロムウェルと三式改の姿が在った。

 

「クロムウェルに三式か………反転して」

 

揚羽は冷静に、E-100を反転させる。

 

「やっぱり後面でも駄目か………」

 

「聖子さん、如何する?」

 

後面を狙って撃った砲弾が弾かれるのを見た聖子がそう呟き、ねこにゃーが尋ねて来る。

 

最初に出現したマウスは、カメさんチームと言う犠牲を払い、大洗の残存戦車チーム達が全員協力する事で撃破出来た。

 

そのマウスと同等の堅牢さを誇るE-100を、三式改とクロムウェルだけで如何にかしようと言うのが無理の有る話であった。

 

「兎に角、やるしかないよ。倒せなくても、時間さえ稼げれば、西住総隊長が何とかしてくれるよ」

 

「分かりました。兎に角、時間を稼ぎましょう」

 

だが、別に無理をしてE-100を倒す必要は無い。

 

撃破出来ればそれに越した事はないが、今重要なのはフ号作戦の為、みほがまほと対決し、決着を着けるまで、他の黒森峰機甲部隊を足止めしておく事にある。

 

「向こうは時間を稼ぐ積りよ。コッチの状況的にも、そうはさせるワケには行かないわ。一気に踏み潰すわよ」

 

しかし、揚羽はその狙いを察し、また自車の状況が悪い事もあり、速攻でケリを着けようとするのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、再び………

 

白狼と蟷斬は………

 

「オワタァッ!!」

 

蟷斬に向かって跳び蹴りを繰り出す白狼。

 

「ケッ!!」

 

だが、蟷斬は繰り出されてきた飛び蹴りを、左腕で防ぐ。

 

「!?」

 

と、白狼は蹴った蟷斬の腕に違和感を感じる。

 

「オラァッ!!」

 

「!!」

 

だがそこで、蟷斬が右手のナイフを振って来たので、跳び蹴りの反動を利用して空中に跳び、バック宙を決めて着地する。

 

「フンッ………」

 

その白狼に向かって構えを取る蟷斬。

 

先程白狼が蹴った左腕は、ダメージを受けている様には見えない………

 

「………硬気功か」

 

「武術気功が得意なのが自分だけだと思ってたのか?」

 

白狼がそう呟くと、蟷斬は小馬鹿にする様に笑う。

 

先程、白狼が蟷斬の腕を蹴った際に感じた違和感………

 

それは、蟷斬の腕がまるで鉄骨の様に硬かった事である。

 

気を高めて身体を鋼鉄の様に堅牢にする武術気功・『硬気功』である。

 

「テメェの貧弱な拳法の技なんざ、俺には通用しねえぜ」

 

「言ってろ………」

 

尚も馬鹿にする様な態度の蟷斬に対し、白狼は興味無さ気に腰を深く落とした構えを取る。

 

「………!!」

 

と、その次の瞬間には、コンクリートの地面に罅が入って、欠片が宙に舞い上がる程の力強く速い踏み込みで、一瞬にして間合いを詰める。

 

「セリャアアッ!!」

 

そして、蟷斬の鳩尾に向かって、気を練った拳を叩き込む!

 

「無駄だっつてんだろっ!!」

 

しかし、蟷斬はまたもや全く応えず、白狼に向かって右手のナイフを逆手のままに振り降ろす。

 

「!!」

 

僅かに身を反らしてかわし、今度はハイキックを見舞おうとした白狼だったが………

 

「!? がっ!?」

 

そこで、何時の間に振り降ろしていた左手の逆手に持ったナイフが、白狼の左肩に上から突き刺さる。

 

「なろうっ!!」

 

反射的に諸手突きを繰り出し、蟷斬の事を吹き飛ばす白狼。

 

「グウッ!………」

 

そして、戦闘服の左肩に突き刺さったままだったナイフを引き抜く。

 

途端に、左腕が鉛の様に重くなる。

 

「ククク………」

 

一方、諸手突きを真面に喰らった蟷斬は、やはりダメージが無い様子で、新たなナイフを左手に今度は順手で握っている。

 

「クソッ!………サンドバックでも殴ってる気分だ」

 

その蟷斬の姿を見て、白狼は皮肉めいた悪態を吐く。

 

「安心しろ。コレからサンドバックになるのはテメェだ」

 

しかし、蟷斬はそう言い放ち、ゆっくりと距離を詰めて来る。

 

「…………」

 

ゆっくりと向かって来る蟷斬に対し、白狼は摺り足で徐々に後ずさるが、その距離はドンドン詰まって行く。

 

「チッ! セリャアアッ!!」

 

と、不意を衝く様に、白狼は空中回し蹴りを繰り出す。

 

「ヘッ!!」

 

しかし、その蹴りが当たるかと思われた瞬間に、蟷斬の姿が消える。

 

「!?」

 

「上だっ!!」

 

「!!」

 

そこで上から声が振って来たので白狼が見上げると、自分よりも高く跳躍していた蟷斬の姿を確認する。

 

「そらぁっ!!」

 

そして蟷斬は、回し蹴りを繰り出した白狼の右足を斬り付ける!!

 

「!!?!」

 

右足に鋭い痛みを感じ、白狼は態勢を崩し、地面に叩き付けられて転がる。

 

「ッツゥッ!」

 

斬られた部分を右手で押さえながら身を起こす白狼。

 

当然、右足の動きも鈍くなっている………

 

「良い様だな、ベオウルフ………」

 

着地を決めた蟷斬は、そんな白狼を見下ろしながらそう言い放つ。

 

「お前を倒せば俺の名も上がる。後はこの試合に勝ちさえすれば黒森峰の栄誉も復活する。そうすれば次の歩兵隊長はこの俺だ。俺が最強の黒森峰を復活させるんだ!!」

 

気を良くし始めたのか、何やら語り出す蟷斬。

 

「テメェなんざ所詮は通過点に過ぎねえっ! 俺は何れ黒森峰、いや歩兵道の歴史に名を残す男となる! それに必要なのは邪魔者を全て叩き潰す力だ! 圧倒的な力こそ強者の証だ!!」

 

「………ゴチャゴチャ煩いぞ」

 

「! 何ぃっ!?」

 

と、不意に白狼がそう言い、蟷斬は一転して怒声を漏らす。

 

「さっきから何を聞いてもねぇ事をベラベラとくっちゃべってるんだ………俺はテメェの事になんざ、全く興味がねえ」

 

そう言いながら、鈍い手足を半ば無理矢理に動かして立ち上がる白狼。

 

「貴様あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」

 

忽ち激昂する蟷斬。

 

(コイツにだけは………死んでも負けねえ)

 

一方、白狼の方はそう考えながらも、心は驚く程に落ち着いていた。

 

「………スーッ………ハーッ………スーッ………ハーッ………」

 

やがて、深呼吸を繰り返し始める白狼。

 

「貴様だけは許さん! くたばりやがれえええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」

 

そこで蟷斬が、激高したまま白狼へと襲い掛かる。

 

「………スーッ………ハーッ………スーッ………ハーッ………」

 

しかし白狼は、深呼吸を繰り返し、動こうとしない………

 

そして次の瞬間!!

 

「ジークハイルッ!!」

 

勝利万歳の掛け声と共に、蟷斬は右手のナイフを白狼の首筋、左手のナイフを脇腹へと突き刺した!!

 

「!?!?」

 

目を見開き、ピクピクと痙攣する白狼。

 

歩兵道でなければ凄惨な光景だ。

 

「ヘッ………大口を叩いておいてコレか………ざまぁねえな」

 

ナイフを白狼に突き刺したまま、またも蟷斬は馬鹿にする様にそう言い放つ。

 

………と、その時!!

 

蟷斬の腹に、何かが勢い良く当たった!!

 

「!?」

 

驚きながら蟷斬が自身の腹を見やると、何と白狼の右拳が叩き込まれていた!

 

「グ………ア………」

 

何と!!

 

白狼はまだ戦死判定となっていなかった。

 

致命傷ではあるが即死ではなかったのか、呻き声を漏らしながら僅かに身体を捩る。

 

「テメェ!? しぶとい野郎だぜ! けど最後の1撃も無駄だったみたいだなっ!!」

 

「………浸透勁って知ってるか?」

 

「ああん?」

 

「打撃の際に生ずる衝撃を全て相手の体内に炸裂させる秘技だ………多くの気を使う武術で奥義とされている」

 

「!? テメェッ! まさかっ!?」

 

「幾ら硬気功でも、内臓までは堅く出来ねえだろう………」

 

「やめっ………」

 

と、蟷斬がそう言い掛けた瞬間!

 

白狼の拳が当たっている部分から、まるで体内で爆弾が爆発したかの様な衝撃が襲い掛かった!!

 

「!? ゴバァッ!?」

 

溜まらず嘔吐し、その吐瀉物の中へと倒れ込み、気絶する蟷斬。

 

その瞬間に、戦死を告げるブザーが鳴った。

 

「………敵を通過点だなんて考えてる時点でお前は負けてたんだよ。そんな考えで、本気の俺に勝てると思ってたのかよ」

 

そんな蟷斬を見下ろしながら、白狼はそう言い放つ。

 

「やれやれ………こんなマジになるなんて………アイツ等から何か変な影響受けたか………」

 

しかし、白狼もそこで限界が来たのか、バタリと倒れ込んで気絶。

 

戦死判定のブザーが鳴る中、闇に落ちる白狼の意識に………

 

一瞬優花里の顔が過ったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

E-100と対峙している三式改とクロムウェルは………

 

「「撃てっ!!」」

 

ねこにゃーと聖子の掛け声で、三式改とクロムウェルが発砲。

 

放たれた砲弾は、全く同じ場所に続けて着弾したが、E-100はビクともしない。

 

「………撃てっ!!」

 

お返しとばかりに、E-100の150ミリ主砲が火を噴く!

 

「! 後退っ!!」

 

「下がってっ!!」

 

再びねこにゃーと聖子が叫ぶと、三式改とクロムウェルが後退。

 

直後に、先程まで2両が居た場所に、E-100の主砲弾が着弾!

 

「「「「「きゃあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」」」」」

 

直撃でないにも関わらず、衝撃波で三式改とクロムウェルの車体が一瞬浮かび上がる。

 

着弾した道路には、大穴が空いている。

 

「だ、駄目ぴよ! とても時間を稼ぐどころじゃないっちゃっ!!」

 

「このままじゃ押し潰されて終わりなりっ!!」

 

その光景を見て、ぴよたんとももがーが悲鳴の様にそう叫ぶ。

 

「クウッ!」

 

ねこにゃーも苦い顔を浮かべるが、打開策は見いだせない。

 

「如何すれば………」

 

一方聖子は、何か手は無いかとペリスコープ越しにE-100の様子を窺う。

 

(うん?………)

 

とそこで、自分達から見て、E-100の左手側が、コンクリートで舗装された崖である事を再度確認する。

 

そしてその次に、みほがマウスを撃破した時の事を思い出し………

 

最後に、子供の頃に見て夢中になり、今でも何度も見返しているアニメの事を思い出す。

 

「! コレだっ!!」

 

「わあっ!? 聖子ちゃん!?」

 

「いきなりなんですかっ!?」

 

そこで聖子は大声を挙げ、伊代と優が驚く。

 

「何か思いついたのか?」

 

「………何か嫌な予感がするんだけど」

 

唯は打開策を思い付いたのかと尋ね、里歌は何か嫌な予感を感じる。

 

「唯ちゃん、里歌さん、こう言うのって、出来るかな?」

 

そこで聖子は、操縦技能の高い2人に思いついた作戦を伝える………

 

「なっ!? 正気かよっ!?」

 

「聖子ちゃん、それは………」

 

「幾らなんでも無理ですよ」

 

それを聞いた唯は唖然となり、伊代と優も出来ないと言う。

 

「や、やっぱり無理かな?………」

 

聖子自身も弱気になるが………

 

「………いや、行けるかも知れないわ」

 

何と嫌な予感を感じていた里歌がそう言って来た。

 

「! 本当っ!?」

 

「オイオイ、マジかよっ!?」

 

「クロムウェルの速度なら可能性は有るわ。エンジンブローも覚悟で出力を挙げれば成功率は高まるわよ………どっちにしろ、一か八かの賭けになるのは変わらないけどね」

 

途端に目を輝かせる聖子と、驚く唯に、里歌はそう言う。

 

「要はやるかやらないかでしょ! じゃあやろうよっ!!」

 

「………ま、そう言うとは思ってたわ」

 

「しゃあねえな………腹くくるか」

 

「全く………貴方はどうしても何時もそうなんですか」

 

「でも、聖子ちゃんらしいよね」

 

聖子が即座にそう返すと、里歌、唯、優、伊代は全員が覚悟を決めた表情となる。

 

「良し! それじゃあ………行くよぉっ!!」

 

そして聖子がそう叫んだ瞬間!

 

クロムウェルが今までに見た事の無い速度で、E-100に向かって突っ込んで行った!!

 

「!? 聖子さんっ!?」

 

「!? 何っ!? あの速度はっ!?」

 

ねこにゃーが驚き、揚羽もクロムウェルの限界を超えたスピードに僅かに動揺する。

 

「(けど、後ろに回ったとしてもコチラの装甲は抜けない筈………)砲塔を旋回っ!!」

 

だがすぐに冷静に、E-100の砲塔をクロムウェルが後ろに回り込むと予測し、旋回し始める。

 

しかし………

 

クロムウェルはその速度のまま、何と舗装されている崖の方へと距離を詰めて行った。

 

「!? 何をする気っ!?」

 

揚羽がそう言った瞬間、クロムウェルの左側面が崖に接触。

 

激しく火花を散らし始める。

 

「エンジン、出力オーバーだっ!!」

 

「行っけええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」

 

唯の声が挙がる中、聖子は叫び、そして………

 

何と!!

 

崖に接触していたクロムウェルが、そのまま垂直の崖を走り始めた!!

 

「!? なっ!?」

 

「せ、戦車の壁走りだっ!!」

 

揚羽が驚愕し、ねこにゃーが叫ぶ。

 

クロムウェルは壁走りをしながら、E-100の頭上を取る。

 

「! マズイッ! 後退っ!!」

 

揚羽は慌てて後退の指示を飛ばすが………

 

「! させないっ!!」

 

ねこにゃーがそう言った瞬間に、三式改が発砲!

 

砲弾がE-100の履帯側面に命中。

 

すると、如何やら榴弾であったらしく、砲弾が派手に爆発!

 

細かな破片が、転輪や駆動輪の隙間に入り込む!

 

途端に、E-100の履帯が鈍い音を立てて止まる。

 

「!? しまっ………」

 

「名付けて! 『カリオストロの城作戦』っ!!」

 

揚羽が言い切る前に、聖子の声でクロムウェルが発砲!

 

砲弾は、砲塔を動かしてしまったので露出していた装甲の最も薄い車体上面部に命中!

 

派手な爆発がE-100から上がる!

 

直後に、クロムウェルも砲撃した事でバランスを崩したのか、崖から落下し、道路に叩き付けられる!

 

一瞬の間の後、E-100、クロムウェル双方から、白旗が上がった。

 

「………まさか戦車に壁を走らせるなんてね………流石はみほちゃんのチームメイトね」

 

燃え尽きた様に車長席に座り込んでいた揚羽は、ペリスコープ越しに地面に叩き付けられて白旗を上げているクロムウェルを見てそう呟いたのだった。

 

「聖子さんっ!!」

 

と、そのクロムウェルの傍に、三式改が付ける。

 

「アイタタタ………ヘルメットしてて良かった」

 

「もう、ホントコレっきりにして下さいよ」

 

「生きてるって素晴らしいね」

 

「相討ちか………悪かぁねえな」

 

「全く………無茶苦茶よ、ホント」

 

そこで、クロムウェルの脱出用ハッチが開いて、聖子達が這い出る様に抜け出して来る。

 

「はあ、良かった………無事だったんですね」

 

「うん、でもゴメン………私達はココまでだよ」

 

「分かりました! 聖子さん達の分まで僕達が………」

 

頑張りますとねこにゃーが言おうとした瞬間………

 

三式改に衝撃が走り、爆発が上がった!!

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

聖子達とねこにゃー達が驚いた瞬間………

 

三式改から白旗が上がる。

 

「えっ?………」

 

「や、やられたっちゃっ!?」

 

「そんなっ!? 一体何処からなりっ!?」

 

信じられないと言った様に呆然となるアリクイさんチーム。

 

周辺に撃破したE-100以外の戦車の姿は無く、残存黒森峰武装親衛隊員達も、大洗オートバイ兵部隊員達と交戦を続けている。

 

しかし、三式改のエンジン部には確かに砲弾が突き刺さっていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三式改が居る場所から数キロの地点に在る立体駐車場の屋上………

 

そこには、真っ赤に染まり、巨大なブレードアンテナを装備したⅣ突………

 

久美の愛車の姿が在った!

 

何と!!

 

Ⅳ突の主砲の射程ギリギリであるこの距離から、正確に三式改のエンジン部を撃ち抜いたのだ!

 

「…………」

 

まだ砲門から硝煙の上がって居るⅣ突のハッチからは久美が腕組みをした状態で姿を見せており、その顔には不敵な笑みが浮かんでいたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

因縁の対決、白狼と蟷斬も決着です。
拳法や気を駆使した格闘になりましたが、最後は人の為に頑張ると言う事を覚えかけた白狼が信念差で勝ちをもぎ取りました。

そしてアリクイさんチームとサンショウウオさんチームはE-100と対峙。
名作『カリオストロの城』からヒントを得た作戦で勝利します。

しかし、生き残っていたアリクイさんチームをまさかの久美が撃破!
いよいよ彼女も動き始めます。

そして次回、小梅がまた危機に!?
それを助けるのは、やはりあの男!!

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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