ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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エピローグ『エンカイ・ウォーです!(後編)』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

エピローグ『エンカイ・ウォーです!(後編)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お屋敷艦・特大宴会場………

 

「次は、復活掲げて幾星霜。どんな苦労もレシーブし、野次や嘲りブロックし、アタック道を切り開く! バレー部アヒルさんチーム!」

 

続いて幕が開き、ステージ上に現れたのはアヒルさんチームの面々だった。

 

「それではモノマネやりまーす! 分かった人は手を上げて答えて下さーいっ!!」

 

「面白そうですね」

 

「五十鈴殿、何でそんなにワクワクしてるんですか?」

 

典子がそう宣言すると、華が楽しそうな様子を見て、優花里が尋ねる。

 

「私、当てるの大好きなんです」

 

「砲手だけに………」

 

「ああ………」

 

華がそう答えると、麻子がツッコミを入れ、沙織が納得した様な顔になる。

 

「「ズズ………」」

 

とそこでアヒルさんチームのモノマネ披露が始まり、先ず妙子と忍がティーカップを手に紅茶を嗜み始める。

 

「分かりました!」

 

「いや、まだモノマネしてませんから!」

 

その時点で華は誰のモノマネか察したようだが、典子からそうツッコミを受ける。

 

「ねえ知ってる? 優秀な将とは根の様なもので、そこから勇敢な兵士が枝の様に現れるのよ」

 

「はいぃ?」

 

と、妙子がそう格言を決めると、忍が呆けた様な返事を返す。

 

「ダージリンさんとオレンジペコさん! 当たってますよね?」

 

「コレ、当てられない方が如何かしてるよ」

 

華が若干興奮した様子でそう問うと、沙織がツッコミを入れる。

 

「けど、そっくりだったぜ」

 

「レベル高いですね」

 

一方、地市と楓は、2人のモノマネが結構高いレベルな事に若干驚く。

 

「じゃあ、次行きます」

 

典子がそう言うと、あけびが右目に片メガネを掛ける。

 

「分かりました!」

 

「すみません、五十鈴さん! モノマネの後にして下さいっ!!」

 

またも華が早くも察し、典子に注意される。

 

「良いか! 下手な芸をした奴は絶対に許さん! 厳罰に処す!!」

 

「河嶋の真似かぁ。似てるよな、小山」

 

「うふふ………ですね」

 

そしてあけびが桃のモノマネをすると、杏と柚子が似ていると評価する。

 

「全然似てないっ!!」

 

しかし、当の桃は不満タラタラである。

 

「桃ちゃん。そんなに怒らないで」

 

「桃ちゃんと呼ぶな!!」

 

あけびが続けて柚子のモノマネをすると、再び桃が喚く。

 

「もう駄目だよ~、柚子ちゃ~ん」

 

「アハハッ!!」

 

「そっくりっ!!」

 

「完全に一致っ!!」

 

「「「「「「「「「「ハハハハハハッ!!」」」」」」」」」」

 

続けて泣き叫んでいる時の桃のモノマネが披露されると、磐渡、重音、鷺澪を中心に大洗機甲部隊員達から爆笑が挙がる。

 

「笑うな! 何故笑うっ!!」

 

「フッ………」

 

「! 貴様~! 貴様に至っては鼻で笑ったなぁっ!!」

 

桃が更に喚くと、熾龍が鼻で笑う。

 

「や、止めて下さいっ! 皆チームメイトなんですから! 戦うのは味方でなく、敵となんです!!」

 

「みほさん!」

 

「えっ!? 私っ!?」

 

するとそこで典子がみほのモノマネでそう言い、華が言い当てると、みほが驚く。

 

「確かにソックリだ………何かの欺瞞作戦に使えないか?」

 

そしてこんな時でも戦いの事を考えてしまう弘樹。

 

「んん~~………西住殿の言う通りです」

 

続いて、髪の毛をボサボサ状態にして優花里のモノマネをする典子。

 

「秋山さん!」

 

「ぐー………」

 

更に今度はステージ上に寝て寝息を立てる。

 

「麻子さん!」

 

「女子はねえ、下手にスペックが高いより、低い方がモテたりするの。ちょ~とポンコツな方が可愛いでしょ?」

 

そして典子は、今度はモテトークを言う。

 

「沙織さん! 全部合ってますよね?」

 

「華、皆も分かってるから」

 

1人で盛り上がっている華に、沙織がそうツッコミを入れる。

 

「弾は1発で十分です。絶対に命中させます」

 

「コレは何方でしょう?」

 

「「「「ええ………」」」」

 

典子は最後に華のモノマネをするが、当の本人が分からず、みほ達は困惑する。

 

「華さん、貴方ですよ」

 

するとそこで、飛彗がそう指摘した。

 

「えっ? 私あんな風でした?」

 

「ハイ。戦車道中の凛々しい華さん、そのものでしたよ」

 

「や、やだ、飛彗さんったら………」

 

飛彗がそう言葉を続けると、華は照れた様子を見せる。

 

「「「「以上で~す」」」」

 

とそこで、アヒルさんチームの芸の披露が終わる。

 

「あ、もう終わりですか………」

 

「いや、ガッカリしてるの華だけだよ」

 

華が残念そうにしていると、沙織がそうツッコミを入れる。

 

「続いては、ペンギンさん分隊です!」

 

柚子がそう言うと、幕が開き………

 

「…………」

 

忍び装束姿で佇む小太郎が現れた。

 

「お、小太郎か」

 

「何をやるんだろう?」

 

速人と弁慶がそう言うと………

 

「………ミュージック! スタートでござるっ!!」

 

小太郎がそう言い、備え付けられたスピーカーから音楽が流れ始める。

 

「あ、コレ………『手裏剣戦隊ニンニンジャー』のエンディング、『なんじゃモンじゃ!ニンジャ祭り!』じゃねえか」

 

特撮好きの地市が、そのBGMが何であるかを察する。

 

「~~~♪~~~♪」

 

そしてステージ上では、小太郎が歌いながら、その曲のダンスを完コピと言えるレベルで披露している。

 

「凄~いっ!!」

 

「驚いたわね………プロ並みよ」

 

そのダンスに真っ先に反応する聖子と、そう漏らす里歌。

 

「近藤さんが手放しで褒めるなんて………」

 

「凄いね~、葉隠くん」

 

里歌が絶賛するのに驚く優と、感心する伊代。

 

「まさか、完コピの術とか使ってるんじゃねえだろうな」

 

と、唯がおどけてそう言うと………

 

「………!!」

 

小太郎の動きがピタリと止まった。

 

「えっ!?」

 

「まさか………」

 

明菜と満里奈がもしやと言う顔をすると………

 

「コレにて御免っ!!」

 

小太郎は懐から煙玉を取り出して、床に叩き付ける!

 

途端に煙幕が特大宴会場を包み込む!

 

「うわっ!?」

 

「ゴホッ! ゴホッ!」

 

突然の煙に驚き、咳き込む大洗機甲部隊員達。

 

やがて煙幕が晴れると、小太郎の姿は何処にも無くなっていた………

 

「図星だったみたいだね」

 

「全く………得意なモノは駄目と仰ってましたのに」

 

郁恵と早苗がそう言い合う。

 

「で、では、気を取り直して………ゲホッ!………未来は見ない、過去を見る! 浪漫求めて成りきって! カバさんチーム!!」

 

柚子がまだ若干咳き込みながらも続いてそう言い、幕を開ける。

 

そこには演劇のステージが出来上がっており、衣装に身を包んだカバさんチームの姿が在った。

 

「そんな事したって、鼻は高くならないわよ、エイミー」

 

「そんな事ないわ、ジョー」

 

鼻に洗濯バサミを挟んでいる左衛門佐に、カエサルがそう言うと、左衛門佐が反論する。

 

「エイミーは今のままでも可愛いわ」

 

「ベスは優しいのね」

 

「メグお姉様の方がお優しいわ」

 

今度はピアノを弾いているエルヴィンと椅子に座っているおりょうがそう会話を交わす。

 

「若草物語だぁ!」

 

「何それ~?」

 

梓が若草物語の演劇である事に気づいてそう言うが、あやは知らない様で首を傾げる。

 

「ああっ!?」

 

するとそこで、ピアノを弾いていたエルヴィンが突然倒れる。

 

「べス!」

 

「如何したのべス! しっかりしてっ!!」

 

「早くベッドへ!」

 

左衛門佐、おりょう、カエサルがそう言うと、一旦幕が下りて場面が転換。

 

幕が上がると、エルヴィンの寝るベッドの周りに座り込んでいるカエサル達が露わになる。

 

「お願いべス。助かって」

 

「私良い子になるから!」

 

「ああ、お父様が居て下さったら………」

 

「ふむ、良い演技だ………」

 

カエサル達の演技を見て、ゾルダートがそう漏らす。

 

「お父様は1861年から始まった南北戦争で、立派に戦っていらっしゃるのよ」

 

「南軍がサムスター要塞を砲撃したのが切っ掛けだったのよね」

 

「歴史ネタ禁止と言ったろー!」

 

と、エルヴィンと左衛門佐から思わず歴史ネタが出ると、即座に桃から怒声が飛ぶ。

 

「分かってます分かってます」

 

「ああ! お父様が居て下さったら………」

 

カエサルが手を振ってそう返すと、カバさんチームは演技を続ける。

 

「お父様は立派に戦ってらっしゃるのよ」

 

「戦争が長引くからいけないんだわ!」

 

「第一次ブルランの戦いの戦いで、南軍が激しく抵抗するから!」

 

「ロバート・エドワード・リーは、アメリカ史上屈指の名将だから!」

 

「お前達~」

 

尚も歴史ネタが飛び出すカバさんチームに、桃は更に怒りを募らせる。

 

「分かってます分かってます」

 

再度カエサルが手を振ってそう返すと、カバさんチームの演技が再開する。

 

「苦しい………」

 

「しっかりしなさい、べス!」

 

「死なないでぇ! 私良い子になるから!!」

 

「リンカーンが大統領に就任したら戦争は終わる!」

 

「そうしたら、お父様が帰っていらっしゃるわ!」

 

「でもリンカーンは、ロバート・エドワード・リー将軍が降伏した6日後に暗殺されてしまう!」

 

「フォード劇場でね………」

 

「ボックス席に座っていたところをデリンジャーピストルで撃たれたの!」

 

「1865年の事よ」

 

「その年は日本でも色々有ったわ。雷門が焼けたり、長崎で蒸気機関車が走ったり………」

 

「お前等! 歴史禁止だと言っただろう!! 退場っ!!」

 

しかし、またも歴史ネタが入ってしまい、堪忍袋の緒が切れた桃により、カバさんチームの演劇は強制終了となった。

 

「え~と、では次はワニさん分隊………」

 

「あの~………すみません、小山さん」

 

続いてワニさん分隊の出番だと言おうとした柚子に、舞台袖から灰史が声を掛けて来た。

 

「? 水谷くん? 如何したの?」

 

「実はその………ワニさん分隊の芸はカバさんチームから続く形になっていたんですが、カバさんチームが強制終了になってしまったので………」

 

蛍が代わって返事をすると、灰史は申し訳無さそうにそう言う。

 

「あ、そうなの………じゃあ、仕方ないね」

 

「ハイ、それじゃあワニさん分隊は棄権となりましたので、続いてのチーム………廃校阻止に立ち上がった麗しの乙女達。強さと美しさを兼ね備える鋼鉄の偶像。スクールアイドル、サンショウウオさんチームです」

 

そこで蛍がそう言うと、柚子がワニさん分隊を飛ばし、サンショウウオさんチームに出番を告げる。

 

すると現れたのは、旧日本軍らしき軍服に身を包んだサンショウウオさんチームの面々だった。

 

「♪~~~♪~~~~」

 

その中で、信号ラッパを持っていた優が、起床ラッパを掛ける。

 

「!!」

 

それを聞いた弘樹が、すぐさま浴衣を脱いで、傍に在った荷物の中から戦闘服を取り出して着替える。

 

「ひ、弘樹くんっ!?」

 

「ん?………あ、すまない。反射的に………」

 

「訓練され過ぎだろ」

 

みほが驚くと、着替え終わった弘樹は我に返り、了平がツッコミを入れる。

 

一方で、ステージ上のサンショウウオさんチームも、服装を整えて整列する。

 

「総員、起床ーっ!! 休めっ!! 気を付け!!」

 

優がそう号令を掛けると、サンショウウオさんチームの面々はそれに従う。

 

「番号っ!!」

 

「1!」

 

「2!」

 

「3!」

 

「4!」

 

「5!」

 

「6!」

 

「7!」

 

「8!」

 

「9!」

 

「10!」

 

番号の号令で、自分に振り当てられた番号を言うサンショウウオさんチームの面々。

 

「? 番号復唱ーっ!!」

 

しかし、何かが引っ掛かった優が再度番号の号令を掛ける。

 

「1!」

 

「2!」

 

「3!」

 

「4!」

 

「5!」

 

「6!」

 

「7!」

 

「8!」

 

「9!」

 

「10!」

 

「11番は如何したーっ!!」

 

再び番号を繰り返すサンショウウオさんチームの面々だが、優は1人足りていないのを聞いてそう問い質す。

 

「「「「「「「「「「知りやせーんっ!!」」」」」」」」」」

 

全員が一斉にそう返したのを聞いて、優はステージの片隅でまだ寝ている1人………聖子の元へ行く。

 

「ZZZzzz~~~~………」

 

「♪~~~♪~~~~」

 

まだ寝ている聖子の姿を認めると、優は再び起床ラッパを吹き鳴らす。

 

「ZZZzzz~~~~………」

 

しかし、聖子はまだ寝たままだ。

 

「! ♪~~~♪~~~~」

 

再度ラッパを吹き鳴らす優。

 

「ZZZzzz~~~~………」

 

だが、やはり聖子は起きない。

 

「!! ♪~~~♪~~~~」

 

業を煮やした優は、寝ている聖子の耳元でラッパを吹き鳴らす。

 

「ZZZzzz~~~~………」

 

それでも尚、聖子は起きない!

 

「!!………♪♪♪~~~」

 

するとそこで、優が吹くラッパの音色が、ペレス・プラード楽団が演奏したバージョンの『タブー(Taboo)』………

 

所謂、『淫靡な曲』になる。

 

更に、聖子にピンク色のスポットライトが当たり始めた。

 

「………ちょっとだけよ」

 

すると聖子が飛び起き、軍服を肌蹴させ始める。

 

「おおおっ!?」

 

「アンタも好きねえ~」

 

了平が興奮した様子を見せると、聖子は更に生足を曝け出す。

 

「来た来た!」

 

「待ってました大統領!」

 

サンショウウオさんチームの他のメンバーも囃し立てる。

 

「やめなさいバカ!」

 

とそこで、優が何処からか取り出した黄色いメガホンで聖子の頭を引っ叩いた!

 

「「「「「「「「「「「優ちゃんに、あ、おこられたっ!! ハイ! 優ちゃんに、あ、おこられたっ!!」」」」」」」」」」」

 

すると、優を除くサンショウウオさんチームがそう唱和し始める。

 

そして最後は、全員の頭にタライが直撃!

 

間抜けなBGMが響いたかと思うと、幕が下りた。

 

「ド〇フのコントかよ」

 

「今時の若い奴は分からんぞ」

 

俊と十河がそう言い合う。

 

「え~、続きましてはタコさん分隊です。どうぞ」

 

とそこで、柚子がそう言うと幕が上がり………

 

「…………」

 

シャッコーと、その目の前にシャッコーの腰の高さ辺りまで積み上げられた瓦の塔が有る。

 

「………この瓦を頭を使って割ってみせる」

 

皆に向かってそう言うシャッコー。

 

「頭を使って?」

 

「一体如何やってだ?」

 

シャッコーの言葉に、俄かにざわめき立つ一同。

 

「行くぞ………」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

準備が整ったシャッコーにジッと注目する大洗機甲部隊員達。

 

そして………

 

「………むんっ!!」

 

シャッコーは積まれていた瓦の塔に、頭突きをかました!!

 

瓦が全て真っ二つに割れる!!

 

「………割ったぞ」

 

「頭を使うってそう言う意味ですかぁっ!?」

 

若干額から血を流しながらそう言い放つシャッコーに、逞巳のツッコミが飛ぶ。

 

「え、え~と………ありがとうございました~」

 

蛍が強引に締めて、舞台に幕が下りるのだった。

 

「それでは皆さんお待ちかね! まさかの戦い繰り広げ、戦車道史に新たな歴史を刻んだ優勝の立役者! あんこうチーム!」

 

そしていよいよあんこうチームの出番が訪れる。

 

幕が上がり、姿を見せたのは………

 

「野行き、森行く! オリーブドラブッ!!」

 

「海は任せろ………ネイビーブルー」

 

「黒い森行く………ジャーマングレーッ!」

 

「砂漠に咲く花! デザートピンクッ!!」

 

「錆から守る! オキサイドレッドッ!!」

 

ヒーロースーツに身を包み、ポーズと共に名乗りを挙げるあんこうチームの面々だった。

 

「5人の力で戦車が動くっ!」

 

「「「「「我等! パンツァーファイブッ!!」」」」」

 

そして、みほの号令で、全員が一斉にポーズを取って名乗りを決める。

 

「良しっ! 完璧だっ!! 指導した甲斐があったぜっ!!」

 

「地市の仕込みですか」

 

五星戦隊ダイレンジャーのBD片手にそう言う地市に、楓が呆れた様にそう言う。

 

「「ガーハッハッハッハッ!!」」

 

とそこで、ホタテの着ぐるみを来た柚子と、カジキマグロの着ぐるみを着た桃が、やや棒読みな笑い声と共にステージ上に登場する。

 

「あー! あそこに敵がーっ!!」

 

「悪の組織! セイトカイだぁっ!!」

 

若干棒読みな華と、ノリノリな様子の優花里。

 

「大洗は我々が支配した!」

 

「此処は悪の本拠地になるのよー」

 

またも棒読み気味に台詞を言い放つ桃と柚子。

 

「そうはさせない!」

 

「私達がお前達を倒す!」

 

「行くわよ! セイトカイッ!!」

 

「正義の拳を受けてみろっ!!」

 

「行くぞっ!」

 

そんな桃と柚子に、敢然と立ち向かう事を宣言するパンツァーファイブ。

 

「わーいっ!!」

 

「良いぞーっ!」

 

「頑張れーっ!!」

 

そしてアクションシーンが展開されると、ウサギさんチームとハムスターさん分隊から歓声が挙がる。

 

「うわ~ん」

 

「クソーッ!」

 

パンツァーーファイブがポーズを決めている前で動けなくなっている柚子と桃。

 

「パンツァーファイブ! このあんこう怪人が相手だーっ!!」

 

するとそこで、あんこうの着ぐるみを着た杏が、リフトに乗って現れた。

 

「今度はお前等が鍋になる番だぞ………」

 

「トオォーッ!!」

 

「アーレーッ!!」

 

まだ台詞の途中と思われたところで、みほがワイヤーアクションでの蹴りを杏に食らわせ、ステージ上に倒す。

 

「あんこう倒せっ!!」

 

「「「「「あんこう倒せっ!!」」」」」

 

「「「「「「「「「「あんこう倒せっ!!」」」」」」」」」」

 

そこで、大洗機甲部隊員達からあんこう倒せのコールが挙がる。

 

「む………むむむむ!………うがーっ! そうはいかない!! おりゃーっ!!」

 

「「「「キャーッ!?」」」」

 

すると、そのコールにムッと来た様子を見せた杏が、起き上がるがいなやパンツァーファイブを蹴り倒した!!

 

「会長!!」

 

「段取りが違いますっ!!」

 

「やられる筈だろう」

 

途端に、優花里、華、麻子から抗議の声が挙がる。

 

「煩ーいっ! 大洗は………あんこうが守るっ!!」

 

何時の間にか立場を入れ替えてしまっている杏。

 

と、その瞬間………

 

杏の足元に、日本刀………英霊が突き刺さったっ!!

 

「!??!」

 

「申し訳ありません………手が滑ってしまいました」

 

仰天する杏に向かって、弘樹がそう言い放つ。

 

………M2重機関銃を向けながら。

 

「えっ!? ちょっ!? ふ、舩坂ちゃ~ん、冗談キツイって~」

 

狼狽しながらも、如何にかいつもの調子で弘樹にそう言う杏だったが………

 

「…………」

 

弘樹は無言でコッキングレバーを引いて、薬室に弾丸を装填する。

 

「………ぐああ、やられてたぁ」

 

身の危険を感じた杏は、何も無いのにその場に倒れ、そう宣言した。

 

「え、え~と………パンツァーファイブの活躍で大洗の平和が守られた! しかし! 何時またどんな敵が襲ってくるか分からない! 戦え! 負けるな! 我等のパンツァーファイブッ!!」

 

進行に残っていた蛍がそう言って締め、幕が下りるのだった。

 

「それでは、続いてとらさん分隊の出番です」

 

何時の間にか浴衣に着替え直して舞台袖に戻っていた柚子がそう言う。

 

「アレ? そう言えば、ウチは誰が出るんだ?」

 

するとそこで、自分隊からは一体誰が出るのかと首を捻る地市。

 

「了平が居ないみたいですけど………」

 

楓が了平の姿が無い事に気づく。

 

「了平が?………猛烈に嫌な予感がするぞ」

 

「それでは、どうぞー」

 

地市がそう言った瞬間に、ステージの幕が上がる。

 

しかし、そこには誰の姿も無かった………

 

「アレ? 綿貫くん?」

 

柚子が首を傾げたその瞬間………

 

会場内にBGMが流れ始める。

 

「何だ?」

 

「コレは………布〇寅泰の『ス〇ル』?」

 

ざわめきが起こると………

 

「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!」

 

上半身裸に黒スパッツ姿の了平が、宴会場の襖をブチ破って現れる。

 

「!・? うわあっ!?」

 

「!?!?」

 

「うおおっ!?」

 

突然の事に仰天する大洗機甲部隊員達。

 

「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」

 

だが、了平はそんな事にはお構いなしに、両腕を振り回しながら会場を走り回って大洗歩兵隊員達を次々と突き飛ばして行く!

 

「ぎゃっ!?」

 

「ぐえっ!?」

 

「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!」

 

雄叫びを挙げたままステージへと向かったかと思うと、舞台袖に居た俊と逞巳も突き飛ばす!

 

「あだっ!?」

 

「ぐええっ!?」

 

「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」

 

そして舞台上に立ったかと思うと、意味もなく、ただ左右に倒れるように飛び跳ねる芸………左右狂い跳ねを繰り出す。

 

「いよおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」

 

更にそこから顔を地面に付け、両足を揃えて上に向けて三点倒立する・シャチホコを披露する。

 

「江〇2:50かよ………」

 

「何でよりによってそれをチョイスしやがった………」

 

秀人と地市がそう言い合う。

 

「ドーンッ!! ドーンッ!!」

 

しかし、周囲のドン引きの様子など全く気にせず、まるで本物の様にドーンを披露する了平。

 

「大洗機甲部隊ーっ! お前等に一言物申すーっ!!」

 

と不意に了平は、大洗機甲部隊員達を指差してそう言い放つ。

 

「? 何だ?」

 

「大洗機甲部隊は初めて出場した全国大会で見事に優勝した! コレは凄い快挙だぞっ!!」

 

戸惑う大洗機甲部隊員達に向かってそう言う了平。

 

「まあ、それはそうだな………」

 

「だがなぁっ! お前達は1つ大切な事を忘れているっ!!」

 

「? 大切な事?」

 

「何だろう?」

 

「聞き流した方が良いですよ。きっと碌な事じゃありませんから」

 

大切な事を忘れていると言われて、みほと沙織が首を傾げるが、楓からそうツッコミが入る。

 

「それはっ! 功労者である俺への感謝だぁっ!!」

 

「やっぱり………」

 

そして了平が予想通りの事を口にして、溜息を吐く。

 

「知ってるぞぉっ! お前等大会の最中からファンレターとか貰ってたそうじゃないか!!」

 

「それは………」

 

了平の言葉通りに………

 

大洗機甲部隊員の一部には、大会を見た者からのファンレターが届いていた者が一部居るのだ。

 

「なのに何でこの俺には1通も来ないんだぁっ!!」

 

「日頃の行いだろう………」

 

了平の魂の叫びをバッサリと切って捨てる地市。

 

「うおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ! 俺だってもっと美味しい思いして良い筈だあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

と、再び魂の叫びを挙げたかと思うと、了平はバッとみほの方へ視線を向けた。

 

「ふえっ!?」

 

突然了平に視線を向けられ、みほの身体に悪寒が走ると嫌な汗が流れる。

 

「みほちゃああああああんっ!! 俺を労ってえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーっ!!」

 

そして了平は、舞台上から勢いを付けて、みほに向かって跳んだっ!!

 

「!? きゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」

 

みほのガチの悲鳴が響き渡る。

 

と、その瞬間!!

 

「!? ブッ!?」

 

みほに向かって跳んだ了平の顔面を、鷲掴みにした者が居た。

 

「…………」

 

弘樹だ。

 

何時も以上の仏頂面が、却って怒りの度合いを感じさせる。

 

「あ、あの、弘樹さん………コレはほんの冗談で………」

 

「…………」

 

忽ち顔面蒼白になって言い訳をする了平だったが、弘樹は全く耳を貸さず、了平の顔面を鷲掴みにしたまま引き摺って、宴会場から出て行こうとする。

 

「ちょっ!? 弘樹さん!? 弘樹さーんっ!?」

 

「…………」

 

了平の声が悲鳴の様になって行くが、弘樹はそのまま宴会場から退出した。

 

そして………

 

「ぎゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーっ!!………」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

この世のものとは思えない了平の断末魔が聞こえて来て、大洗機甲部隊員達は一瞬固まる。

 

「…………」

 

そこで、弘樹だけが宴会会場内へ戻って来る。

 

「オ、オイ、弘樹。了平は?」

 

「………聞きたいか?」

 

地市がそう尋ねると、弘樹は無感情な瞳を向ける。

 

「あ、いえ、やっぱ良いです………」

 

それを見て聞くのが怖くなり、黙り込む地市だった。

 

「え~と………では、トリとなります、悪知恵猿知恵働かし、花も嵐も踏み越えて、どんな苦境も乗り切った、御存じ生徒会・カメさんチーム」

 

「ノリノリですね、華さん」

 

華が出演する生徒会チームに代わってアナウンスし、飛彗がツッコミを入れる中、幕が上がり………

 

バレエのクラシック・チュチュ姿でお辞儀をしている柚子の姿が現れる。

 

「生徒会は『白鳥の湖』ですね。此処でバレエに詳しいバレー部の佐々木さんに解説をお願いしたいと思います」

 

「ややっこしい言い方やな………」

 

「と言うより、バレエにも詳しかったのか………」

 

それを見て典子がそう言うと、大河と大詔がそうツッコミを入れる。

 

「コレは、オデットが小山さん。王子が会長と言う配役ですね」

 

あけびがそう言うと、王子衣装姿の杏が現れ、踊りながら柚子との距離を詰め………

 

杏が柚子を持ち上げた。

 

「見事なリフトが決まりました!」

 

「「「「「「「「「「おお~~~っ!!」」」」」」」」」」

 

華麗なリフトが決まり、大洗機甲部隊員達から歓声が挙がる。

 

そこで、黒鳥の衣装姿の桃が現れる。

 

「恋敵役の黒鳥が河嶋さん。次が見せ場です」

 

と、あけびがそう言った瞬間………

 

桃はその場で高速回転を始めた!

 

「「「「「「「「「「おお~~~っ!!」」」」」」」」」」

 

「コレは素晴らしい! 32回転フェッテッ! 軸足が全然ブレずに見事に決まりました!!」

 

再び大洗機甲部隊員達から歓声が挙がる中、あけびが解説すると幕が下りる。

 

しかし、すぐにまた上がり………

 

今度は何かのアニメキャラらしき衣装に身を包んだ蛍が現れた。

 

「行くわよ! 『禁断のレジスタンス』!!」

 

そしてそのまま、マイク片手にそのアニメの主題歌を熱唱し始めた!

 

「うおおっ! スッゲェッ!!」

 

「上手いなっ!!」

 

その圧倒的な歌唱力に、大洗機甲部隊員達は舌を巻く。

 

「驚いたわ………今度こそ本当にプロ並み………いえ、それ以上の歌唱力よ」

 

「マジかよ!?」

 

「近藤さんがそこまで言うなんて………」

 

「蛍さんにこんな才能が………」

 

「これこそまさに隠し芸ですわね」

 

「蛍ちゃん、凄~いっ!!」

 

歌って踊るが専門のサンショウウオさんチームからもそんな声が挙がる。

 

「カッコイイ………」

 

みほも、歌っている蛍の姿をキラキラとした目で見ている。

 

そうこうしている内に、曲が終わる。

 

「ありがとうーっ!!」

 

拍手喝采が響く中、蛍は手を振り、幕が下りる。

 

「さて、我々は審査員だからね。コレで演目は全て終了だ」

 

「では、結果発表に移る」

 

審査員の為、参加しない男子校生徒会メンバーの中で、迫信と十河がそう言い、ドラムロールが鳴り響き始める。

 

「先ず第3位。3位は………ウサギチーム!!」

 

「「「「「やったーっ!!」」」」」

 

歓声が挙がるウサギさんチーム。

 

「続いて第2位は………あんこうチーム!!」

 

「わーいっ!!」

 

沙織とみほが笑顔になり、優花里と華がハイタッチを交わす。

 

「では、1位! 栄えある優勝は………生徒会チーム!!」

 

「出来レースだな………」

 

そして優勝が生徒会に決まると、白狼が悪態の様にそう言い放つ。

 

「1位の賞品は、10万円相当の最高級干し芋です!」

 

「やっぱり………」

 

そして1位の賞品が干し芋である事が明かされ、大洗機甲部隊員達はやっぱりと言う顔になる。

 

「さて………では、私からの特別賞の授与に移らせてもらう」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

迫信がそう言うと、大洗機甲部隊員達の目の色が変わる。

 

何せ皆コレを貰う為に頑張っていたのである。

 

神大コーポレーションの権力とコネを使える………

 

コレ以上に無い魅力的な賞品だった。

 

「特別賞の受賞者は………」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

固唾を呑んで迫信の言葉を待つ大洗機甲部隊員達。

 

「………舩坂くんだ」

 

「「「「「「「「「「!? えええええぇぇぇぇぇぇ~~~~~~~っ!?」」」」」」」」」」

 

「はっ?」

 

まさかの弘樹が選ばれた事に、大洗機甲部隊員達はおろか当人も困惑する。

 

「会長閣下、自分は隠し芸大会に参加は………」

 

「何を言ってるんだい。見事な技を披露してくれたではないか」

 

弘樹が身に覚えが無いと言おうとしたが、迫信はそれを遮る様にそう言い、扇子を広げて『御見事』の文字を見せる。

 

「芸?………」

 

「サンショウウオさんチームが起床ラッパを吹いた時………君は一瞬にして戦闘服姿となった。見事な早着替えだったよ」

 

「ああっ!」

 

迫信がそう言うと、みほがサンショウウオさんチームの芸が披露されていた時、一瞬で戦闘服に着替えた弘樹の事を思い出す。

 

「因みにタイムを測定してみたんだが………僅か0.05秒だったよ」

 

「ギャバンかよっ!?」

 

俊がそう言うと、地市がまるで宇宙刑事ギャバンがコンバットスーツを蒸着する並みのタイムで着替えた事に突っ込みを入れる。

 

「さあ、舩坂くん。何でも望みを言ってくれたまえ」

 

「………では、折り入ってお願いが有ります」

 

迫信がそう言うと、神妙な面持ちとなる弘樹。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

大洗機甲部隊員達も、弘樹が何を頼むのかと気になり固唾を呑む。

 

「………家の洗濯機が古くなって最近調子が悪いみたいなので、新しいのを貰えませんか」

 

「「「「「「「「「「だああああ~~~~~~っ!?」」」」」」」」」」

 

しかし、いざ告げられた内容は極めて庶民的であった為、ズッコケてしまう大洗機甲部隊員達。

 

「良し、分かった。すぐにでも届けさせるよ」

 

「ありがとうございます。湯江の奴、喜ぶぞ」

 

「アハハハ………」

 

満足そうな顔をしている弘樹に、みほは苦笑いを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日………

 

舩坂家に、神大コーポレーション系列の家電メーカーが開発した最新の洗濯機が届けられ………

 

湯江がとても嬉しそうにしていたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ショートエピソードにつづく




新話、投稿させていただきました。

カオスの祭典………
エンカイ・ウォーもこれにて終了となります(笑)

ちゃっかりと優勝を掻っ攫って行った弘樹。
しかし願いは何とも庶民的だった。

さて次回はショートエピソード………
『勲章授与』になります。
本当は書く積りはなかったのですが、強いご要望を受けて執筆に至りました。
ショートエピソードの名の通り、非常に短い話で、箇条書きに近い感じになります。
しかし、リボンの武者編に続く予告もありますので、お見逃しなく。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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