ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第23話『黒森峰女学園の生徒会長です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第23話『黒森峰女学園の生徒会長です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

優花里達が、サンダース&カーネル機甲部隊への潜入偵察任務中に大立ち回りを演じていた頃………

 

白狼は1人、黒森峰の学園艦へと来ていた。

 

彼もまた偵察活動………

 

と言うワケではなく、以前大洗の学園艦に来ていた、黒森峰でバイクの整備長をしている『おやっさん』なる人物へと会いに来たのだ。

 

天竺ジョロキア機甲部隊との試合以来、人知れず特訓を続けて来ていた白狼だったが、若干の煮詰まりを感じ始め、おやっさんに相談しようと此処まで居たのだ。

 

無論、大洗の面々には内緒で、である。

 

「しっかし、広いなぁ………戦車道や歩兵道が強い学校は皆デカイのか?」

 

そんな事を呟きながら、黒森峰男子校の校庭を堂々と歩いている白狼。

 

校庭には黒森峰男子校の生徒達の姿も在るが、白狼が私服で、余りにも堂々としているものだから、まさか他校の生徒だとは思わず、奇跡的に全員がスルーしている。

 

「さて、おやっさんを探さないといけないんだが………」

 

と、白狼はそう呟きながら、黒森峰学園艦の艦橋部分に目をやる。

 

「………一度あそこに登ってみたいんだよなぁ~」

 

「駄目よ。あそこは生徒会のメンバーしか入る事を許されないんだから」

 

そこで、白狼の呟きにそんな言葉が返って来た。

 

「!? 誰だ?」

 

慌てて周りを見回す白狼だが、声が聞こえそうな距離に人は居ない………

 

大きな木が生えているだけである。

 

「クスッ………此処よ、コ・コ」

 

「!?」

 

上から声が降って来て、白狼が上を向くと、その木の上に、ピンク色のストレートの髪をした女の子が居た。

 

白狼と同い年くらいであろうか?

 

「ふふ………全く、有名なレーサーがこんな所で何をしているのかしら?」

 

木の上から白狼に向かってそう問い掛ける少女。

 

「………お前こそ何してるんだ?」

 

しかし白狼は、逆に少女へそう問い返した

 

「!! さ、流石は狼の名を持つ男………いきなり核心を突いてくるわね………」

 

すると少女は、動揺を露わにする。

 

「そっか………黒森峰は最近木登りが流行ってんのか」

 

「これが遊んでいる様に見えるのかしら?」

 

「落ちたら怪我じゃ済まないかもな………」

 

「そ、そんな事! アンタに言われなくても分かってるわよ!!」

少女はやけに強がりで言い訳みたいな言葉を口にする。

 

「ハア~………意地っ張りだなぁ」

 

白狼は呆れながらそう言う。

 

如何も彼女が高い所が苦手な様だ。

 

それなのに木の上に居ると言うのは謎だが………

 

「と、ところで貴方、神狩 白狼………ベオウルフの名を持つ男よね!? 物凄く速くてF1マシンですらも超えてしまうって噂の………」

 

「そういう喩えは如何かと………それにプロ資格は今試験中だ………」

 

「ならちょっと………お願いがあるんですけど………」

 

「? 何?」

 

「だから………その………えっと………う………受け止めてね………」

 

「はっ?」

 

「たあっ!!」

 

と、その瞬間!!

 

女の子はいきなり木から飛び降りて、そのまま白狼に向かって落ちて来た!!

 

「!?」

 

白狼はすかさず避けると同時に、彼女の服を掴み、まるで野良猫を吊るすかの様に持った。

 

「って何やってんのよ! 受け止めてねって言ったのに!!」

 

「いちいち細かい事、言ってんじゃねーよ………助かっただけありがたいと思えよな………」

 

「これの何処がありがたいのよ!?」

 

吊り下げられた状態で喚く少女。

 

とりあえず彼女を降ろす。

 

「ハア~、もう~………」

 

「で? 何であんなとこに居たんだ?」

 

「それは………」

 

曰く、如何やら彼女は木に登って高所恐怖症の克服の練習をしていた様である。

 

「ハア~、全く………と、申し遅れたわね。私は『天河 揚羽(あまのがわ あげは)』。黒森峰女学園の生徒会長よ」

 

溜息を吐きながら白狼に自己紹介をする、少女………『天河 揚羽(あまのがわ あげは)』

 

「黒森峰の………って事は、アンタも戦車道の選手なのか?」

 

「一応ね。隊長はまほちゃんだけど。でも、戦略を練るのは得意だよ」

 

囲碁や将棋、果てはチェスなどで戦略的計画を練習していると語る揚羽。

 

するとそこへ………

 

「揚羽会長!!」

 

「?」

 

白狼が振り向くと、そこに居たのは大勢の男子生徒や女子生徒。

 

しかも全員武道着などを着ており、武道関係の者だと言う事を明らかにしている。

 

柔道部、剣道部、薙刀部、空手部、果ては相撲部まである………

 

「今日こそ! 貴方に勝ち! 我が部に入部して頂きますっ!!」

 

「宜しくお願いします!!」

 

「あ~………ハイハイ………」

 

しかし、揚羽は適当に返事をすると、白狼に向き直る。

 

「神狩白狼。貴方、相手をしてみて」

 

「? 如何いう積りだ? アイツ等のお目当てはお前だぞ」

 

「良いからやってみなさいって。皆! 今日は特別に、この男を倒せたら、その部に入部してあげるわ!!」

 

「!? オイッ!!」

 

揚羽にそう言われ、如何にも白狼は気が乗らない様子だったが、揚羽は逃げ道を塞ぐ様にそう言い放つ。

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

忽ち武道関係の部員達は、白狼に掛かって行った。

 

「チイッ!!」

 

白狼は舌打ちをしつつも戦闘態勢を取る。

 

「何処の誰は知らんが、コレも我が部の為!」

 

「倒させてもらうぞ!!」

 

そう言って最初に襲い掛かって来たのは空手部のメンバー。

 

其々に構えを取ると、一斉に白狼に襲い掛かる!

 

「ふざけんじゃねえぞぉっ!!」

 

しかし、対する白狼も、得意の八極拳で対抗。

 

空手部の正拳や蹴りを往なしながら、カウンターで肘撃や靠撃を決めて行く白狼。

 

「うおおっ!?」

 

「この型!………八極拳か!?」

 

「怯むなぁっ!! 押せ押せぇっ!!」

 

部員達は次々と倒れて行くが、数に任せて果敢に攻め立てる。

 

「クソッタレがぁっ!………!? ぐあっ!?」

 

奮戦する白狼だが、四方八方を包囲された状態で全ての攻撃を往なす事は出来ず、徐々にダメージを受け始める。

 

「………そこまで!!」

 

すると揚羽が、突如そこまでと言い、戦いを制止する。

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

「ゼエッ! ゼエッ!………」

 

部員達は全員その場で停止し、白狼は乱れた息を整えようとしながら揚羽を見やる。

 

「神狩 白狼………貴方の戦い方は、自分の身を削ってまでも勝利を得る戦い方ね………」

 

「………何が言いたいんだ?」

 

「男の子としてはとても立派な戦い方かもしれないけど、本当の戦いだったら確実に死んでたわね」

 

「まるで歩兵道での喩えみたいだな」

 

「分かってるじゃない。接近戦、遠距離戦でも、生存率としては100とは言い切れない………そこが貴方の悪いところね………どんなに強い歩兵も、たった1発の銃弾で戦死判定になるなんて事はざらにある話よ」

 

「…………」

 

「それでも勝利を得たいのだったら、生きる術を学ぶ事ね………何より歩兵道は銃を良く使うけど、手練れの歩兵は接近戦を好む傾向にあるわ………丁度良いわね。私が見せてあげるわ」

 

揚羽はそう言いながら、部員達に向き直り、構えた。

 

「揚羽会長!」

 

「やはり貴方を倒さねば始まりませんっ!!」

 

「全力で行かせてもらいますっ!!」

 

まず先に出たのは数人者の空手部員。

 

「押忍っ!!」

 

そう言いながら構え、一斉に攻撃に入る!

 

「…………」

 

すると、揚羽は瞬時に最初の攻撃を避け、それから次々と空手部員の攻撃を避け続ける。

 

そして、1人の空手部員に隙が生じたのを発見すると、即座に投げ飛ばした!

 

「グハッ!?」

 

「チェストオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーッ!!」

 

空手部員が次々と倒れて行くと、今度は剣道部員達が竹刀を構え、攻撃を仕掛ける。

 

「よっ、と」

 

しかし、またも揚羽はそれを避けたと同時に手首を掴み、投げ飛ばす!

 

「ぐええっ!?」

 

「まだまだぁっ!!」

 

「ホイッ、と」

 

別の剣道部員が更に攻撃を仕掛けると、揚羽は素早い動きで接近し、腕と裾を掴み、大きく投げ飛ばした!

 

「ガハァッ!?」

 

「「「「「シエアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!」」」」」

 

すると今度は剣道部員達は、一斉に竹刀での突きを繰り出して来た!!

 

「!!」

 

だが次の瞬間には、揚羽の姿が一瞬で消え、剣道部員達の後ろに現れる!!

 

「「「「「!?」」」」」

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄、無駄ぁーっ!!」

 

そして、どこぞのスタンド使いの様な台詞と共に、次々と千切っては投げ千切っては投げを繰り返す!!

 

「今度は私達の番よぉっ!!」

 

続いて襲い掛かって来たのは薙刀部。

 

部員達が次々に薙刀の技を繰り出そうとするも………

 

「流石に薙刀相手に素手はキツイかな?」

 

揚羽はそう言い、剣道部員が落とした竹刀を拾い、剣道の構えをする。

 

「………フッ!!」

 

そして一瞬で、薙刀部員達を次々と面打ちで倒す!!

 

「柔道部の御為にぃーっ!!」

 

「ああもーっ! しつこいなぁーっ!!」

 

続いて柔道部員達が掛かってくるが、揚羽は竹刀を捨て、次々と柔道部員達を投げては地面に叩き付ける!!

 

「ドスコーイッ!!」

 

そして最後は相撲部員が掛かって来たが………

 

「ファイトォーッ! 4発ーっ!!」

 

揚羽は何と!!

 

体格、体重差共に数倍はあろうかと言うその相撲部員を投げ飛ばした!!

 

そして、揚羽の周りが死屍累々な状態となる………

 

「ふう~、疲れた~………」

 

「お疲れ様でした会長」

 

「揚羽ちゃん! 今日もモテモテだね~!」

 

「正に敵無し………と言ったところか………」

 

「お疲れ様、はいこれ」

 

何時の間にやら、4人の女生徒が現れ、揚羽を取り巻く。

 

一人のメガネをかけている女子生徒が、キレイなカップに入っているコーヒーを持ってきては揚羽に差し出す。

 

「ありがと」

 

揚羽はそれを受け取ると、優雅にコーヒーを飲みながら一息を吐く。

 

「! 隙有りぃーっ!!」

 

すると、倒れていた1人の空手部員が起き上がり、揚羽に向って後ろから攻撃を仕掛ける!!

 

「!!………」

 

それに気が付いた揚羽はコーヒーカップを上方に投げ上げ、振り返った瞬間、飛び回し蹴りを放ったが………

 

「!! うおおっ!?」

 

何と空手部員はそれを避けた!

 

「! マズイッ!!」

 

白狼は揚羽がやられると思っていたが、揚羽の脚の動きが妙だった。

 

「会長! 貰いましたよぉっ!!」

 

それを知らない空手部員は避けた事でチャンスとばかりに攻撃しようとするが………

 

「!? ぶべらぁっ!?」

 

突然、その彼に、飛び膝蹴りが襲い掛かった!!

 

揚羽の避けられた蹴りの方の足とは反対の足だった!!

 

「なっ、どうはっ!?」

 

空手部員は吹き飛ばされ、地面に叩きつけられて気絶してしまった………

 

「よっ、と」

 

上方から落ちてくるコーヒーカップは、見事に戦いが終わった揚羽の手元へと納まり、揚羽は何もなかったかのようにコーヒーを飲む。

 

「………マジかよ」

 

白狼は驚いていた………

 

彼女は無傷だ。

 

アレだけの武道関係の部員達を無傷で、制してしまうとは………

 

只者ではないという事は確かだった。

 

「分かったかしら? 戦い方って言うのはね、相手の攻撃を受け止めるばかりじゃないの。身体を移動させて攻撃をかわす。これが体捌きよ。まあ、まだ色々と応用はあるけどね」

 

「動きからして、柔関係か?」

 

「そうよ。大東流の柔術から学んだの」

 

「だいとうりゅう?………」

 

「そうよ。正式名称は『大東流合気柔術』って言うの」

 

首を傾げる白狼に、揚羽は春風の様に笑いながらそう言い放つのだった。

 

 

 

 

 

その後、揚羽は白狼を誘い、艦橋の中へと入った。

 

見張り台に当たるバルコニーの先は、とても雄大な景色で、黒森峰学園艦の全ての街並みが見える。

 

「ふ~ん、いい景色じゃないか………」

 

「ふ、如何? 素晴らしいでしょ? 此処からの眺めはまさに絶景………余りの美しさに瞬きすら忘れてしまいそうになるでしょ?」

 

「お前もこっちに来れないのかよ………」

 

やや離れた場所から自慢する様にそう言って来た揚羽に、白狼は突っ込みを入れる。

 

「わ、私は良いの。心の目で見てるから」

 

「………さっきまであんな事やってたとは信じられねえなぁ」

 

「揚羽は高所恐怖症だからね………」

 

そう言ったのは、黒森峰女学園生徒会メンバーの1人で書記を務めている『東雲 瀬芹(しののめ せせり)』

 

落ち着いた性格であり、全国模試ベスト10に入るほどの勉強好きな秀才でもある。

 

「だから揚羽ちゃん、簡単にはバルコニーに出られないんだよね」

 

続いてそう言ったのは、生徒会の下っ端役員で、ニコニコ笑って無邪気な口調の『暁 紫染(あかつき しじみ)』

 

「それを楽しんで見てる奴もいるからな」

 

更にそう言うのは、同じく生徒会の下っ端役員で、背が高く、中性的な顔立ちをした黒髪赤眼で男性的な口調の『夕霧 斑(ゆうぎり まだら)』

 

「まあ、それでもちゃんとここで生徒会の仕事をやっているから、そこそこ克服していると思うわね」

 

最後にそう言ったのは、紫染、斑と同じく生徒会の下っ端役員兼副会長で、揚羽に対し妙に熱っぽい視線を送っている『逢真 竪刃(おうま たては)』

 

紫染、斑、竪刃の3人を合わせて、『生徒会3人娘』と呼ばれているらしい。

 

「そこそこね………」

 

疑う白狼に、揚羽は特に気にした様子を見せずにコーヒーを飲む。

 

「アイツ………随分強いんだな………」

 

「生徒会長は大の武道、武術マニアだからね。子供の頃から女の子が好きなモノだけじゃなく、武道に関するもの全てを独学で制覇したのよ。古武術や海外の武術もね………」

 

ふとそう呟いた白狼に、瀬芹がそう言う。

 

「さっきのもよく使っているのか?」

 

「大東流の事? まあ、大東流合気柔術は今、多くの人の間に普及している合気道の源流とも言われてるわ」

 

白狼に問いにそう答える揚羽。

 

「やっぱ、武術なのか?」

 

「詳しい事は不明でね。元は会津藩の御留め武術だったそうよ………ハッキリしているのは明治時代からで、『武田 惣角』っていう名人が現れてからね」

 

「たけだ………そうかく?」

 

聞き慣れない名前に首を傾げる白狼。

 

「そうよ。『武田 惣角』は明治の生まれで昭和の時代まで活躍した人で、数多くの真剣勝負の実話が伝えられてるのよ」

 

「でも武田惣角の知名度は限られているから、知らない人も結構多いのよ………」

 

揚羽の言葉を、瀬芹がそう補足する。

 

「様は、影の薄いヤツなんだな」

 

「………そういう喩えはちょっとね………そもそも武田 惣角っていう人は道場を持たないで各地を放浪しながら大東流を伝えたのよ。訪れた町や村で宿を取ると、その土地の武術好きの有力者に声を掛け、旅館の一室を借りて、講習会を開いたの。だけどその姿は小柄な黒髪の初老………初めて見る人達にとっては、実力も半信半疑………」

 

白狼の歯に衣着せぬ言葉に、揚羽は少々不満そうな顔をしながら語り出す。

 

「村で草相撲の大関はっている男はインチキだと大笑いしていたけど、惣角は片腕を出して捻ってみろと挑発したわ。草相撲の大関は、惣角の腕を掴み捻ろうとするけど………捻る事が出来ず、逆にその片腕で大関を投げ飛ばしたそうよ………」

 

「…………」

 

「続いて、両手を縄で縛って手も出ない状態になると、今度は大勢が一斉に襲い掛かってみろって言って、その大勢が一瞬で吹き飛ばされた………天狗の生まれ変わりだと誰もが騒然としたそうよ………そういう人なのよ………」

 

「何もせずに人を吹き飛ばせるなんて………信じられないな………」

 

「工事やダムの建設などで揉め事を起こしていた何十人もの大勢の人達すらも、惣角は問題なく翻弄していったわ………」

 

「お前はそれに憧れて大東流を習っていたんだな」

 

「大東流は他に習っている人間は結構いるわよ。でも私はそれらを合わせた総合格闘術を研究してそれを実践実証しているの。所謂『剛』と『柔』を兼ね備えた最強の武術をね………それを完成するのが私の夢なの………」

 

「でも揚羽ちゃんは無理なんだよね」

 

と、そこで紫染がそう口を挟む。

 

「女性専用の格闘技大会とか無いから不便なのだ。精々柔道だけだけど………柔道は柔道のルールがあるから、他流は門外なのだ」

 

「それでも揚羽は女子柔道大会を数連覇するほどの腕前よ」

 

斑と竪刃がそう言う。

 

「かっこいいから女の子からもモテモテよね………」

 

「う、ウルサイッ!! それは余計よっ!!」

 

しかし、瀬芹が余計な事を言って、揚羽は思わず叫びを挙げる。

 

「要は不憫か………」

 

「余計な喩えはいらないのよっ!!」

 

そんなこんなな会話を繰り広げる白狼と黒森峰生徒会メンバー。

 

しかし、白狼が目をつけているのは剛と柔を兼ね備えた最強の武術。

 

「その力さえ手に入れば誰にも負けないのか?」

 

「勿論よ」

 

と、白狼がそう聞くと、当たり前と豪語する揚羽。

 

「ほう、そうか………俺も多少武術を齧ってるからな。興味有るぜ」

 

白狼はその武術に興味を示し、やってみたいと言う。

 

「ふ~ん、そう………じゃ、その拳法って言うのは?」

 

「コレさ」

 

白狼は、揚羽の前で、八極拳の打頂の代表的な『霍打頂肘』を披露する。

 

すると揚羽は………

 

「へぇ~、それは八極拳ね、中々様な様だけど………まだ震脚が弱いわね………」

 

「何ぃ?」

 

憮然とする白狼を無視し、揚羽はコーヒーカップを置くと、白狼と同じ様に霍打頂肘を披露した。

 

最期に床を踏み締めた瞬間、白狼よりも大きな音が響いた。

 

「!?」

 

白狼は驚いた。

 

まさかこの生徒会長までもが八極拳を知っているとは………

 

「さてと………そろそろ戦車の整備に行かないと………神狩 白狼くんだったわね? 貴方の事は教職員と生徒達全員に言っておくから、好きに黒森峰を見学して行って良いわよ」

 

揚羽達はそう言うと、その場を後にする。

 

「あ! 揚羽ちゃん!」

 

「会長! 待って下さいっ!!」

 

紫染達もその後に続く。

 

「…………」

 

1人残された白狼は、先程の揚羽が震脚にて踏み締めた床をみると………ひび割れていた。

 

「…………」

 

悔しそうな顔をしながらも、仕方なく、おやっさんの元へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒森峰男子校・車両格納庫………

 

「おやっさん!」

 

「おお、白狼か。生徒会長さんから聞いて待ってたんだぞ」

 

「ワリィワリィ。にしても、流石黒森峰男子校。良いマシンを揃えてやがるなぁ」

 

漸く出会ったおやっさんとそんな会話をしながら、目の前に並んでいる黒森峰歩兵部隊の車両を見てそう言い放つ。

 

「………ちょっと弄ってみるか?」

 

すると、その白狼に、おやっさんがそんな事を提案する。

 

「!? 良いのかよ。他校の生徒にマシンを弄らせて」

 

「お前がそう言う事をする奴じゃないのは俺が良く知っている。もし何かあったら………それは俺の目が曇っていただけの事だ」

 

驚く白狼におやっさんは平然とそう言い放つ。

 

「………サンキューッ! 実は1度こんな良いマシンを弄ってみたかったんだっ!!」

 

そう言うと白狼は、早速黒森峰歩兵部隊のバイクを整備し始めるのだった。

 

 

 

 

 

2人して黙々とバイクの整備を続けている白狼とおやっさん。

 

「…………」

 

しかし、白狼の頭には、揚羽の事が過っていた。

 

するとおやっさんが………

 

「バイクの整備はちゃんと捗っているな。流石はベオウルフと呼ばれるだけあって手付きも器用だな………だが、何か気になる事がある様だな………」

 

そんな白狼の心中を見抜いてそう言って来る。

 

「ああ………あの生徒会長の事がちょっとな………」

 

「察しはつく。大方大勢の武道関係の部員たちと手合わせているんだろ? 彼女は無傷だが、お前は怪我をし掛けた………」

 

「………」

 

「だがそれ位の怪我なら一晩冷やせばあとは自然に治る。病気や怪我は所詮自分の力で治すもんだ………とは言え自分が誰よりも強くなったからと言って、無闇にケンカを買っていると、その内取り返しのつかない酷い目に逢うぞ」

 

「……だったら………そんな酷い目みたいな事になったら如何すりゃ良いんだ?」

 

整備をしていた白狼の手が止まる。

 

「………逃げりゃいい」

 

「如何して逃げるんだ? だったら俺達は何の為に戦わなきゃいけないんだよ?」

 

「戦いというのは、相手や自分自身に打ち勝つだけじゃない。誰とでも仲良くすることが一番だ」

 

「そう簡単に出来るかよ………戦いの後に残るには恨みだけだ」

 

「それじゃあ、1つ良い話をしてやろう。俺が知ってる限りで、間違いなく世界………いや、史上で強かった侠だ」

 

「………?」

 

「その男は強い侠だった。中国は河北省・滄州は昔から武術が盛んな土地で、その侠を名を李 書文と言う………」

 

「り………しょぶん?」

 

「李書文は北方の武術家の間で『神槍・李書文』として、広く知られていたが、北京の武術家達は李書文の名を聞くにつけ反感を持ち、遂には代表者を滄州に差し向けて、その実力を試さんとした」

 

首を傾げる白狼にそう語り出すおやっさん。

 

「武術家達は相談を重ねた上、これなら大丈夫という屈強の武術家を2人選び出し、滄州に向けて出発させた………だが、結果は李 書文の強すぎる実力により、武術家達は帰らぬ人となった」

 

「…………」

 

「言っておくが、この話は『滄県志』という書物にも出ている本当の話だ」

 

「そんな奴が大昔に居たなんてな………」

 

「だが、そんな李書文のような侠でさえも、最期は哀れなものだった………」

 

「どこの誰かに負けたんだな………」

 

「そうだ」

 

「そいつは、そのり………何とかって奴よりも強かったんだな」

 

「いいや、そうじゃない。毒殺されてしまったんだ………試合で殺した相手の仇討ちによってな」

 

「!? おい! そりゃないだろっと!!」

 

思わず大声を挙げる白狼。

 

「仕方なかった………それだけしか言えない………たった1発の小さな1撃を出すだけでも相手が倒れてしまう。それが李書文の超人的な実力だ………李書文は二の打ち要らず………と、謳われたんだが、余りにも多くの人を試合で殺し過ぎた………」

 

おやっさんは相変わらず淡々と語る。

 

「殺された相手の家族や仲間の気持ちを考えてみろ………恨みを晴らそうにも李書文は余りにも強い。試合では絶対に勝てない。と、なれば………」

 

「………そんな」

 

「良いか。幾ら強くなっても力で物事を押し通しては駄目だ………力で無理を通そうとする奴は、何時か必ずその力が自分に返って来て、自らを滅ぼしてしまう事になる………」

 

「…………」

 

「お前がどんなに強くなろうと、大事なのは心だ………そして、人は仁義礼知信の五つの徳を養わけりゃいけない。これを『五常の徳』と言う。分かるか?」

 

「知らねえ………」

 

「『仁』とは施しの心、優しさだ。『義』とは人助けの心、義侠心だ。『礼』とは礼儀、礼節の心だ。『智』とは正悪を真に理解出来る知恵だ。『信』とは信頼される様な人になる事。言葉と行動が一致する事。人を欺かぬ事。嘘を吐かない事だ。しかしまだまだある。忠と孝と厳と勇と悌だ。『忠』とは主君に専心尽くそうとする真心だ。『孝』とは大切にする心、思い計る事。『厳』とは自らを厳しく戒める事。『勇』とは勇気だ。」

 

「…………」

 

「大切な事はお互いが自分を信じて全力でぶつかり合う。それで初めて真底から相手を認める様になる。そしてお互い尊重、尊敬し合う事が出来る………だが、力で自分が進む道を無理矢理壊して進んで行く。それでは真の侠にはなれない………相手はただ恐怖し逃げて行き、気付けば孤独となる………」

 

「…………」

 

おやっさんの言葉を只聞き入る白狼。

 

「大切な事を理解すれば、お前にも分かるさ」

 

「…………」

 

おやっさんはそう言いながら、倉庫から出て行き、残された白狼は立ち尽くす。

 

暫くして白狼は、碌に挨拶もせずに黒森峰学園艦を去ったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の午後………

 

放課後になって、大洗機甲部隊は男子校にある作戦会議室に集まり、優花里、蛍、大詔、小太郎が持ち帰ったサンダース&カーネル機甲部隊の情報を全員で視聴していた。

 

「………以上が、私達が持ち帰った情報です」

 

杏達と迫信達、女子学園と男子校の生徒会メンバーと共に壇上へ上がって居た優花里、蛍、大詔、小太郎のメンバーの中で、優花里が皆の方に向き直ってそう言う。

 

「いやはや、良くここまでの情報を持ち帰って来てくれたね………正直、驚いたよ」

 

椅子に座っている大洗機甲部隊のメンバーの中で、膝に乗せたノートPCを弄っていた煌人が、早速データを入力しながらそう言う。

 

「何と言う無茶を………」

 

「頑張りました!」

 

続いて麻子が呆れる様にそう呟くと、優花里がガッツポーズをしながらそう返す。

 

「良いの? こんな事して?」

 

「大丈夫だよ。試合前の偵察行為は、連盟に承認されてるから」

 

「破壊工作をしたワケではないからな。御咎めは無いと思って良いだろう」

 

沙織がこんな事をして大丈夫なのかと不安そうに言ったが、今度は蛍と大詔がそう返す。

 

「西住総隊長殿。如何でござったか? 少しは作戦の練り様が出たでござるか?」

 

すると最後に、小太郎が自分達の得た情報が役に立ったかと、総隊長であるみほに問う。

 

「うん、とっても………秋山さん、蛍さん、蛇野さん、葉隠さん。皆ありがとう。フラッグ車も分かったから、頑張って戦術立ててみるよ!」

 

「私も微力ながら協力しよう」

 

みほがそう答えると、迫信も不敵に笑ってそう言い放つ。

 

「それにしても………大した奴だぜ、お前達は」

 

「まさかサンダース&カーネル機甲部隊に潜入して来るなんて………」

 

俊と清十郎が、大詔と小太郎を見ながらそう言う。

 

「無事で良かった、ゆかりん、蛍先輩」

 

「怪我は無いのか?」

 

「ドキドキしました」

 

沙織、麻子、華の3人も、優花里と蛍にそう言う台詞を掛ける。

 

「大丈夫。私も優花里ちゃんもこの通り無事だから」

 

「心配して頂いて恐縮です」

 

そんな3人の言葉に、蛍と優花里は照れた様子を見せる。

 

「何にせよ、1回戦を突破せねば………」

 

「頑張りましょう」

 

「少しは光明が見えて来ましたし………」

 

「よっしゃあっ! こうなりゃトコトンやってやるぜっ!!」

 

勝利への希望が見えて来てテンションが上がったのか、麻子、華、楓、地市がそう口走る。

 

「1番頑張んなきゃいけないのは麻子でしょ?」

 

するとそこで、沙織が麻子へそんな言葉を投げ掛けた。

 

「何故?」

 

「明日から、朝練始まるよ」

 

「………えっ?」

 

沙織のその一言を聞いた麻子は、青褪めた表情となって固まる。

 

「何にせよ、我々が厳しいと言う状況に変わりは無いが、対策が打てる様になった意味は大きい。後は1人1人の練度を高め、万全の態勢で臨むだけだ!」

 

とそこで、弘樹が場を纏める様に立ち上がり、皆の方を向きながらそう言い放つ。

 

「当然の事だが、勝つ積りで行けっ! 負ける事を考えて勝負に臨む者など居ない! それぐらいの気概で行けっ! 大洗! バンザーイッ!!」

 

「「「「「「「「「「「バンザーイッ! バンザーイッ!! バンザーイッ!!」」」」」」」」」」

 

最後にはお馴染みとなった万歳三唱が始める。

 

「よしっ! では早速訓練に………」

 

と、桃が訓練を開始すると言おうとしたところ………

 

「たのもーっ!!」

 

そう言う台詞と共に、作戦会議室の扉が勢い良く開かれた!

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

先程まで万歳三唱していた大洗機甲部隊の面々は、何事かと一斉に作戦会議室の入り口を振り返る。

 

「あ、あうう………」

 

「聖子ちゃん!」

 

「ホラ、だから言ったじゃないですか。いきなり行っても驚かせるだけだって」

 

突然大人数に注目され、気後れを感じていた聖子と呼ばれた少女の両隣に、別の2人の少女が並び立つ。

 

3人供、大洗女子学園の制服を着ている。

 

「君達は?」

 

とそこで、一同を代表する様に、弘樹がその3人の少女に向かって尋ねた。

 

「! あ! わ、私! 大洗女子学園・普通科2年の『郷 聖子』です!」

 

「同じく2年の『西城 伊代』です」

 

「『東山 優』です」

 

そこで3人の少女………『郷 聖子』、『西城 伊代』、『東山 優』は其々に自己紹介をする。

 

「ふむ………それで、何か御用かね?」

 

迫信が口元を広げた扇子で隠したお決まりのポーズで聖子達に尋ねる。

 

「アッ、ハイ!! えっと、その………」

 

聖子は一瞬口籠った様子を見せたが、やがて意を決した様に言葉を出そうと、大きく息を吸い始める。

 

「私達にも! 戦車道をやらせて下さいっ!!」

 

その声は、作戦会議室中に響き渡ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如現れ、戦車道の受講を希望して来た3人の少女………

 

『郷 聖子』、『西城 伊代』、『東山 優』

 

彼女達は何者なのか?

 

何故、今になって戦車道受講を希望して来たのか?

 

そして、その目的は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

今回は白狼と黒森峰側の新たなオリジナルキャラ登場回です。
ちょっと複雑なキャラですが、後々活躍する………予定です。

そして今回の最後に出てきた3人………
彼女達こそ、以前言っていたオリジナルの戦車チームの面々です。
ですが、彼女達で終わりでなく、まだメンバーが登場します。
どんなメンバーでどんなチームのなるのかは、お楽しみで。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。
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