ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース 作:宇宙刑事ブルーノア
『劇場版 ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース ~炎のさだめ~』
チャプター11『ボコミュージアムです!』
大洗町・磯浜町の『味の店たかはし』………
「まあ、美味しい」
名物の『みつだんご』を頬張ったダージリンが、舌鼓を打つ。
「この美味しさはデータ以上です」
同じ様にみつだんごを頬張っていたアッサムも、パソコンを弄りながらそう言う。
「みつだんごは大正時代からこの大洗で食べられてきたおやつだよ。たんと食べとくれ」
たかはしの女将が、そう言いながら更に追加のみつだんごを出す。
「ありがとうございます。う~ん、美味しいです」
すぐさまそれに手を付ける華。
………その傍らには、既に食べ終えたみつだんごの串が、100本以上は置かれている。
「あ、あの、五十鈴さん………そんなに食べて大丈夫なんですか?」
その光景に戸惑った様に、オレンジペコが華にそう言うが………
「えっ? まだ今日はそんなに食べてませんけど?」
華は首を傾げて、不思議そうな様子でそう返して来た。
(如何なってるの、この人っ!? この細い身体の何処にそんなに入るのっ!?)
その言葉に、オレンジペコは人生で1番の戦慄を覚えたのだった。
「君の彼女は随分と食欲が旺盛みたいだね」
そんな華の姿を見て、ジャスパーが飛彗にそう言う。
「最初の頃は少し戸惑いましたよ。でも、今はいっぱい食べる華さんが好きです」
「君も言うねぇ」
飛彗がそう返すと、ジャスパーは半ば呆れる様な様子を見せる。
「アールグレイ、君も少しは寛いだら如何だい?」
「…………」
そして、ダージリンの傍に直立不動で控え続けるアールグレイにそう呼び掛けるセージと、それに対しリアクションを見せないアールグレイだった。
大洗マリンタワー・展望台………
「うわああーっ! たっかーいっ!!」
眼下に広がる光景を、満足そうに眺めているノンナに肩車されたカチューシャ。
「やっぱり偉大なカチューシャ様にはこれくらい雄大な景観が似合うわね」
「ハイ、カチューシャ」
ご満悦なカチューシャに同意するノンナ。
「…………」
そんな2人を優しい目で見ているデミトリ。
「………何とかと煙は高いところが好きだな」
「止めとけ、粛清されるぞ」
そんなカチューシャの様子を寝ながら見てそう呟く麻子と、そんな麻子に膝枕をしながらパソコンを弄っている煌人がツッコミを入れる。
「…………」
とそこで、陣がミサンガを手にして姿を見せた。
「? 陣、何よソレ?」
「願掛け用のミサンガだな。夜になるとそこの壁一面がルミライトアートになるんだ。で、そこに在るロープにミサンガを結ぶと願いが叶うと言われている」
カチューシャが首を傾げると、煌人が展望台中央部分の壁を指しながらそう説明する。
「ロマンチックですね」
「願掛けねぇ………まあ、良いわ。記念に結んであげる。別に願いなんてないけどね」
ノンナがそう言うと、カチューシャは肩車から降りて、陣からミサンガを取り、壁の前に在ったロープに巻き付ける。
(背がおっきくなりますようにっ!!)
割と真剣にそう願いながら。
「うふふ………」
「ふふ………」
「…………」
そんなカチューシャを見ながら微笑ましそうに笑い、同じ様にミサンガをロープに結び付けるノンナとデミトリ、陣だった。
その頃………
鉾田市に近い、海水浴場から離れた大洗町の海岸にて………
「と、突撃ーっ!!」
「「「「「「「「「「と、突撃ーっ!!」」」」」」」」」」
玉田のやや吃った掛け声が掛かると、これまた吃った叫びを挙げて、知波単の突撃組がチハ(旧砲塔)やチハ(新砲塔)で突撃を繰り出す。
その直後!!
辺り一面が大爆発し、チハ達は空中高くへと舞い上がったかと思うと、次々に砂浜に叩き付けられて、白旗を上げる。
「ブハッ!」
「ガハッ!」
撃破されたチハ達の中から、玉田を始めとした乗員達が、這う這うの態で抜け出して来る。
「ハーイ! もう1回よぉーっ!!」
「次の車輌の用意は出来ている」
「新しいチハ、持って来たよー」
とそこで、やや後方の方でメガホンを手にしていた絹代が、満身創痍気味な玉田達にそう言ったかと思うと、ナカジマと敏郎を始めとした自動車部と整備部メンバーが、新しいチハ達を持ってくると同時に、撃破されたチハ達を回収。
そして、撃破されたチハ達を、その場で修理し始める。
「に、西総隊長! もう無理ですっ!!」
すると、玉田が限界だと声を挙げる。
「何言っているの? 貴方達が突撃したいって言うから、好きなだけ突撃させてあげてるんじゃない」
「ですが! 相手は海の上に居るのですよっ!!」
絹代がそう返すと、玉田は海上を指差す。
そこには、絹代達が居る海岸に右舷を向け、全砲門を照準している大和の姿が在った!!
先程の大爆発は、大和の艦砲射撃だった様だ。
「そんな事、精神力で如何にかしなさい」
「無茶なっ!?」
「アラ? 精神力が有れば撃破されなかったって言ってたのは何処の誰だったかしら?」
「うっ!? そ、それは………」
自分の発言を持ち出され、反論出来なくなる玉田。
「分かったら、さっさと新しい車輌に乗って突撃しなさいっ!!」
「!? ハ、ハイィッ! 突撃ーっ!!」
「「「「「「「「「「突撃ーっ!!」」」」」」」」」」
駄目押しとばかりに、大魔神の憤怒の形相の様な怒りの表情を見せた絹代の迫力に押され、玉田達は新しいチハ達に乗り込むや否や、一斉に大和に向かって突撃する。
その直後に、大和の全砲門が火を噴き、玉田達のチハ達はまたもや一斉に吹き飛ばされて白旗を上げた。
「ハイ、もう1かーいっ!!」
だが絹代は無慈悲にもそう言い、再び自動車部と整備部メンバーが新しいチハ達を運び、撃破されたチハ達を回収して修理し始める。
「き、絹代さん………流石に可哀想なんじゃ?」
「駄目よ。甘い顔するとすぐ調子に乗るんだから」
流石に見ていられなくなったカレンが絹代を止めようとしたが、絹代はバッサリと斬って捨てる。
「あの子達には骨の髄まで旧知波単体制の突撃精神が染みついてるわ。だったら、遺伝子レベルで突撃へのトラウマを植え付けてやるしかないわ。突撃精神のせいでウチ等が全滅するのは構わないけど、他校の人達に迷惑を掛けたのは看過出来ないわ」
「まあ確かに、あの考え無しの突撃のせいで舩坂さんを始めとした大洗の皆さんには迷惑をお掛けしましたからね………」
絹代がそう言葉を続けると、ライがエキシビションマッチでの事を思い出してそう言う。
「この際、徹底的に矯正して再教育してあげるわ。護! 手は抜かないでよ!!」
『ああ、分かった』
絹代が通信機を取り出し、大和の艦橋に居る護に通信を送ると、三度大和が発砲!
またも玉田達のチハ達が吹き飛ばされる。
「ハイ、もう1かーいっ! 次からは一航専の航空支援による爆撃や機銃掃射も加わるから、一層気を引き締めなさーいっ!!」
「「「「「「「「「「もう許して下さーいっ!!」」」」」」」」」」
次々に繰り出される絹代からの無慈悲な宣告に、とうとう玉田達は泣きながら許しを乞い始めた。
だが結局、絹代の矯正・再教育と言うの扱きは、その日の夜まで続けられ………
玉田達は、述べ5000回にも及ぶ無意味な突撃を強要させられ、終わった時にはすっかり精も根も尽き果てていたのだった………
その他にも、ウサギさんチームとハムスターさん分隊の面々がアクアワールド大洗でイルカショーを楽しんで居たり………
カバさんチームが江口又新堂でお目当ての本を探したり………
久美がタグチ玩具店でレアガンプラを発見したり………
釣りに興味を持ったクラーラが金丸釣具店で釣り具を物色したり………
杏が桃達や男子校生徒会メンバーと連れ立って大洗まいわい市場で干し芋を買い漁ったり………
曲がり松商店街を歩いていたニーナとアリーナ、ピョートルにマーティンが住人達から矢鱈と歓迎を受けたり………
最近体力作りに目覚めたアリクイさんチームが、大洗キャンプ場で筋トレをしていたり………
羽目を外し過ぎている者達が居ないかと目を光らせているカモさんチームと、そんなカモさんチームを心配して付き添っている紫朗の姿があったり………
ちゃっかりと屋台を出しに来ていたアンツィオの面々を発見し、鉄板ナポリタンを御馳走してくれると言う条件で、ミニライブを開く事になったサンショウウオさんチームと磐渡達など………
地元の大洗学園艦の面々は勿論の事、他校の生徒達も大洗の町を堪能し、夏休み最後の思い出作りを楽しんでいた。
そして、弘樹とみほはと言うと………
大洗町・フェリーターミナル………
そこに在ったバス停から出た路線バスの最後尾の席にて………
「えへへへ………まさかお姉ちゃんとダブルデート出来るなんて、思わなかったなぁ」
「ああ、私もだよ………」
笑顔でそう言うみほに、まほも微笑を浮かべてそう返す。
バスの最後部の席の中心に、みほとまほが並んで座り、その西住姉妹を挟み込む様に、みほが居る側に弘樹、まほが居る側に都草が座っていた。
「いやはや、私も君とこういう形で共に過ごす事になるとは予想していなかったよ」
「…………」
都草の方も弘樹に向かってそう言い、弘樹も無言ながら何やら思うところがある様な様子を見せる。
(正直、ちょっと恥ずかしい気もするが………みほと都草と一緒に過ごせる機会なんてないからな。思い切って乗ってみて良かった)
余りこういう事に積極的に参加しそうにないまほだったが、かつての様にみほと都草と過ごせるならそれも悪くないと思い、思い切って参加した様である。
「ところでみほ。今日は一体何処へ行くんだ?」
「そう言えば、私も聞いていないね」
とそこで、まほと都草が、まだ行き先を聞いていなかったのを思い出し、みほにそう尋ねる。
「凄く良いとこだよ! この前、偶然見つけたんだぁっ!!」
するとみほは、いきなりテンションが上がった様子でそう返す。
(このテンション………まさか………)
(みほちゃんにとって良い所と言うと………もしや『アレ』では………)
それを聞いたまほと都草は、ある予感が頭を過ぎり、苦笑いを浮かべるのだった。
数10分後………
みほ達が到着したのは、まるでお化け屋敷の様に荒れ果てている建物だった。
入り口の看板にはこう書かれていた………
『ボコミュージアム』と。
「まさか大洗にこんな素敵な場所が在ったなんて! 如何して今まで気づかなかったんだろうっ!!」
そんな荒れ果てたミュージアムを前に、見た事がないくらいテンションが上がっているみほ。
そう………
このボコミュージアムは、みほが愛して止まないキャラクター………
『ボコられグマ』、通称『ボコ』のミュージアムなのである。
「やっぱり………」
「未だにみほちゃんのあの趣味だけは理解出来ないよ………」
そんなハイテンションなみほの様子に、苦笑いを浮かべて若干引いているまほと都草。
「大人4枚………」
そして淡々と入場チケットを購入している弘樹だった。
ボコミュージアム・エントランス………
「おう! よく来やがったな、お前達! おいらが相手してやろう! ボコボコしてやるぜ!」
入場した一同を出迎えたのは、このミュージアムの看板キャラ、ボコの可動式の人形だった。
「生ボコだぁ! 可愛い!!」
「おわっ!? 何をするっ!? 止めろっ!!」
みほが歓声を挙げると、ボコは突然殴られている様な動きをし始める。
「いや、何もしていないよ………」
「やられた………覚えてろよぉっ!!」
「だから何もしていないって」
何もしていないのに勝手にやられたボコに向かって、都草が呆れた様な声を漏らす。
「粋がる割りに弱いんだな………」
「それがボコだから!」
まほもそう漏らすが、それに対しすかさずみほがそう返す。
「如何やら、私達以外に客は居ない様だね………」
と、都草がそう言うと、一同はミュージアム内へと歩を進め始める。
「おう! よく来やがったな!」
「…………」
一方、また同じ事を繰り返し始めたボコの人形を、興味深そうな目で見ている弘樹だった。
その後一同は、『イッツ・ア・ボコワールド』、『ボコーテッドマンション』、『スペースボコンテン』………
と言った、色々と危ないミュージアム内のアトラクションを回り………
最後に、このミュージアム最大の目玉である『ボコショー』のステージへとやって来ていた。
ボコショー・ステージ………
「オイ! 今ぶつかったぞ! 気を付けろっ!!」
ステージ上で、擦れ違い様にぶつかったと鼠、白猫、黒猫にいちゃもんをつけるボコ。
「ああ? 生意気だ」
「やっちまえっ!!」
「おもしれぇ! 返り討ちにしてやらぁっ!! うおおおおっ!? ガフッ!?」
「口程にも無い奴め!」
勇ましく喧嘩を売ったは良いが、全く歯が立たずに、その名の通り3匹にボコボコにされるボコ。
「「…………」」
その光景を見て、最早苦笑いで顔が固まってしまっているまほと都草。
「…………」
そして相変わらず興味深そうにボコを観察している弘樹。
「皆! おいらに力をくれっ!!」
すると、袋叩きにされているボコが、観客達に応援を求める。
………と言っても、客はみほ達4人しかいないが。
「ボコ、頑張れ………」
「もっと力をぉっ!!」
「頑張れっ!!」
「もっとだ!!」
「が………」
「頑張れー、ボコーっ! 頑張れーっ!!」
煽られるかの様にそう求められ、みほが大声で応援しようとしたところ、それを遮る様に叫ぶサイドテールの少女の姿が在った。
「ん? 私達以外にも居たのか………」
(………何処かで見た様な気がするが………)
都草がそう言うと、まほはその少女に見覚えを感じる。
「ボコ頑張れー!」
とそこで、みほからもボコへの声援が飛ぶ。
「キタキタキターッ!! 皆の応援がオイラのパワーになったぜっ!! ありがとよっ!!」
そこでボコがそう言いながら、勢い良く立ち上がる。
「おう! お前等纏めてやってやらぁっ!………あらっ!?」
しかし、再び殴り掛かって行ってアッサリと転ばされ、またもや袋叩きにされ始めた。
「何だコレは?………」
「結局はボコボコにされるんだね………」
「それがボコだから!」
呆れるまほと都草だが、みほは満足そうな顔でそう言う。
「また負けた………次は頑張るぞっ!!」
やがてボロボロになったボコがスポットライトに照らされながら、観客席に向かってそう言った瞬間にステージの幕が閉じる。
「…………」
ショーが終わると、弘樹は拍手を送っていた。
その後………
みほ達はミュージアム内に行った売店を訪れていた。
「凄く頑張ってたね、ボコ」
「そ、そうなのか?」
「うん!」
「みほちゃんが楽しそうで何よりだよ」
相変わらずテンションが高い様子のみほに、まほと都草は戸惑うばかりである。
「…………」
そして弘樹は、売店の賞品の中に在ったボコのぬいぐるみを手に取り、やはり興味深そうに見ていた。
「あ、残り1つだって!」
とそこでみほが、最後の1つとなっている激レアボコのぬいぐるみに気づく。
「いやいや、みほちゃん。コレはそう言う商法だって」
「でも可愛いし」
都草がそう言うが、みほは激レアボコに手を伸ばす。
するとその手が、横から伸びて来た別の手と重なる。
「「あ………」」
「君はさっきの………」
みほとその手の少女が顔を見合わせると、まほがそう言う。
「あ、良いの良いの」
するとみほは、その激レアボコを少女に手渡す。
「良いのか? みほ」
「うん、私はまた来るから」
まほがそう尋ねるが、みほは笑って返す。
「…………」
と、少女は何かを言おうとした様子を見せたが、やがて逃げる様にレジへと向かって行った。
「やれやれ、お礼ぐらい言っても良いだろうに………」
「きっと恥ずかしいだけだよ」
都草がそう言うが、みほは気にしていない様子でそう返す。
「あ、そうだ! もう1回ボコショー見ようよっ!!」
「「えっ!?………」」
するとそこで、みほからそんな提案が挙がり、都草とまほは思わず固まる。
「弘樹くんも良いよね」
「ああ、構わない………」
みほが弘樹にも尋ねると、何時の間にか購入していた大きめのボコのヌイグルミを手にしていた弘樹がそう返事をする。
((に、似合わない………))
その姿が余りにも似合っていなかったので、都草とまほはギャグ汗を浮かべる。
「じゃあ、行こうっ!!」
そこでみほは、都草とまほの返事を待たずに、再びボコショーのステージへと向かった。
それに続く弘樹。
「………都草………覚悟を決めるしかないな」
「その様だね………」
そして、何やら悲壮な決意を固め、2人の後を追い始めたまほと都草だった。
つづく
新話、投稿させていただきました。
残るメンバーの大洗観光記。
そして遂に登場!
ボコミュージアムです!!(笑)
原作ではあんこうチームのメンバーと訪れてましたが、この作品では何とまほ・都草とダブルデートで訪れます。
2人の心境や如何に(爆)
そして現れたサイドテールの少女。
一体何田流なんだ?
原作ではこれだけの会合でしたが、この作品ではこの後も更に会合が続きます。
さて、次回は予告でも書いたサブエピソード………
みほがボコを好きになった理由………
『みほの初恋の思い出』です。
お楽しみに。
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。