ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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本日は大洗海楽フェスタです。

お越しになる皆さんは混雑に気を付けて下さいね。

勿論、私も行ってきます。


チャプター15『戦車道の危機です!』

『劇場版 ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース ~炎のさだめ~』

 

チャプター15『戦車道の危機です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

熊本の西住家にて………

 

西住流と島田流の因縁を聞いた弘樹とみほ………

 

しほや常夫との束の間の邂逅を果たした後………

 

急ぎ、大洗学園艦へと帰還した………

 

だが、そこには意外な人物が待ち受けていたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗学園艦………

 

飛行場へ降り立った弘樹とみほは、迫信が寄越していた迎えの車で、すぐさま大洗女子学園へと向かった。

 

2人に是非会いたい、と言う人物が来ていたからである。

 

 

 

 

 

大洗女子学園・生徒会室………

 

「会長、西住です」

 

「舩坂 弘樹、参りました」

 

生徒会室の前まで来たみほと弘樹が、そう言って扉をノックする。

 

「あ~、待ってたよ~、入って~」

 

「「失礼します」」

 

扉の向こうから、杏の声が返って来ると、2人は生徒会室へ入室する。

 

生徒会長席に腰掛けた杏の傍には、柚子と桃、蛍と言う何時ものメンバーに加え、男子校の生徒会メンバー、そして煌人の姿も在った。

 

「会長、私達に会いたいと言う人が居ると聞いて来たんですけど………」

 

「ああ、そこに居るよ」

 

みほが尋ねると、杏は視線で応接用のソファーを指した。

 

その視線を追って、みほと弘樹が応接用のソファーの方を見やると、そこには軍服を着た金髪の男が、2人に背を向けて座っていた。

 

「…………」

 

2人の気づいたのか、軍服の男は立ち上がり、振り返る。

 

「………?」

 

「…………」

 

誰だと思い、首を傾げるみほと、その男が如何にも好きになれない弘樹。

 

「君達が西住 みほ、そして舩坂 弘樹か………会えて嬉しいよ」

 

そんな2人の心情を知ってか知らずか、男は不敵に笑いながらそう言う。

 

「あの………何方ですか?」

 

「おっと、コレは失礼………私はジャン・ポール・ロッチナ。アメリカ軍の大佐だ」

 

みほがそう尋ねると、男………ロッチナはそう名乗った。

 

「アメリカ軍?………アメリカ軍が一体我々に何の用が有ると言うのです?」

 

ロッチナがアメリカ軍の人間であると聞くと、弘樹は益々警戒感を強めながら尋ねる。

 

「ふふ、そう警戒しなくても良い。今日は君達にメッセージを届けに来ただけだ」

 

しかしロッチナはそう言い、弘樹達の方へと歩いて来たかと思うと、杏の生徒会長用の机の上に、懐から取り出した1枚の封筒を置いた。

 

「コレは………?」

 

「試合の申込状さ。島田流が率いる大学選抜チームから、のね」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

その言葉を聞き、迫信と杏、煌人を除く面々が顔色を変える。

 

「弱小チームを率いて全国大会で優勝した西住 みほ総隊長の手腕は学べるものが多い。軍事道の発展の為、是非交流試合がしたい………と言うのは『表向き』の理由だと言うのは既に承知の上だな」

 

ロッチナは業と、試合を申し込んで来た『表向き』の理由を告げる。

 

まるで『本当の理由』は分かっている筈だと言う様に。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

熊本に帰省するのに、事情の説明を受けていた杏達も、『本当の理由』………

 

『西住流と島田流の因縁』こそがこの試合申込みの根底にあると理解する。

 

「ま、待てっ!今の西住流の家元・師範は西住 まほだぞっ!!」

 

とそこで桃が、ロッチナに対しそう言うが………

 

「その西住 まほを決勝戦にて撃ち破ったのが大洗機甲部隊ではなかったのかね?」

 

「ぐうっ………!?」

 

ロッチナにそう言い返され、桃は言葉を失う。

 

「………訊きたい事があります」

 

すると、みほがロッチナに向かってそう言った。

 

「何かね?」

 

「………如何してアメリカ軍のロッチナさんが島田流の挑戦状を?」

 

「島田流はアメリカでも人気の流派だ。企業を始め、我がアメリカ軍もそのスポンサーなのだよ」

 

みほにそう説明するロッチナ。

 

「アメリカ軍がスポンサー………」

 

それを聞いたみほは、大学選抜チームが使っていた車輌がパーシングやチャーフィーを主体にしていた事を思い出す。

 

「…………」

 

だが弘樹の方は、訝し気な表情を見せる。

 

「………それも表向きの理由でしょう?」

 

「アメリカ軍が島田流を援助している理由………『春博士』が関わっているんだろう?」

 

するとそこで、迫信と煌人がそう口を挟んだ。

 

「? 『春博士』?」

 

「フフフ………流石は神大コーポレーションの次期総裁とMITを飛び級で卒業した天才だ。良く御存じな様で」

 

みほが首を傾げると、ロッチナはまた不敵に笑う。

 

「会長閣下、春博士とは?」

 

「『春 敏(はる とおる)』………日本の電子工学の権威だ。殊に人工知能の研究に於いては、世界でも指折りの研究者だった。ある日突然に学会から姿を消してしまったがな」

 

弘樹が尋ねると、代わる様に煌人がそう説明した。

 

「人工知能?」

 

「そう、博士は人工知能の開発に心血を注いでいた。そしてそんな博士の人生を大きく変える出来事が在った………後の島田流家元となる島田 千代との出会いだよ」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

その言葉に一部を除いた面々は驚きを示す。

 

「2人は大恋愛の末に結婚したそうでね。それはもう大層な仲だったそうだよ。だが、当時の家元殿は、没落しかけていた島田流を持ち直させる為に必死だったそうでね」

 

「…………」

 

その没落しかけていた原因が母であるしほに有る事を聞いていたみほは、表情を曇らせる。

 

「そんな島田 千代の姿に心を痛めていた博士は、ある事を思い付いた」

 

「ある事?」

 

「………軍事道用の戦略・戦術AIの開発だよ」

 

「軍事道用の戦略・戦術AI?」

 

「そうだ。人間より素早く、遥かに高度な演算、情報処理能力を持つAIにより、桁外れかつ正確無比な戦略・戦術予測を可能とする………正に夢の機械だ」

 

「………!」

 

ロッチナのその言葉に、みほは大学選抜チームと社会人チームとの戦いを思い出す。

 

「まさか、あの試合での戦いは………?」

 

「お察しの通り、島田流と博士の戦略・戦術AIが組み合わさった力だ」

 

「あ、あの………AIを軍事道に使うって、良いんですか?」

 

そこで、柚子がそう指摘する。

 

「AIは飽く迄『私物』だよ。私物の持ち込みは禁止されているワケではない」

 

「拡大解釈だろ?」

 

「見解の相違だな………」

 

ロッチナがそう返すと、俊もそう言うが気に留めない。

 

「高度な戦略・戦術AI………成程。無人兵器の開発に熱心なアメリカ軍としては肩入れしたくなるワケだ」

 

十河が皮肉気味にそう言い放つ。

 

ロッチナが島田流が持つ戦略・戦術AIの軍事利用を狙っていると考えた様だ。

 

「それだけでは無さそうだね………」

 

しかしそこで、迫信が口元を扇子で隠したまま、鋭い目つきでロッチナを見据えながらそう言った。

 

「? 会長………?」

 

「貴方は………『無人戦車道』推奨派ですね?」

 

逞巳が首を傾げると、迫信はロッチナに向かって更にそう言う。

 

「ほう? そこまで調べがついているとは、神大コーポレーションの情報網も優秀な様だな」

 

だがロッチナはそれが如何したと言わんばかりに不敵に笑う。

 

「『無人戦車道』?」

 

「簡単に言ってしまえば、人間と言う要素を排除した戦車道さ………」

 

蛍が聞き慣れない言葉を反復すると、煌人がパソコンを弄りながらそう言う。

 

「! 人間を排除した戦車道っ!?」

 

みほが信じられないと言う様な声を挙げる。

 

だが、そんなモノが在るのも事実である………

 

 

 

 

 

紳士・淑女を育成する目的で始められ、世界中に広がった戦車道………

 

だが、全ての人々がそう思っているのかと言われれば、必ずしもそうとは言えない………

 

『人間が3人いれば2つの派閥が生まれる可能性が有る』という言葉通り、戦車道にも様々な派閥が存在する。

 

その中で、最近活発な動きを見せているのが………

 

『無人戦車道推奨派』である。

 

元々はアメリカの1地方で発祥した極少数な派閥だった。

 

アメリカには様々戦車道が存在し、無人戦車道は戦車は有っても人数が居なかった者達が、ラジコンに改造した戦車で試合を行っていたのが始まりである。

 

やがて同じ様な事情を抱えた人々が、ネット等を通じて交流を始めた。

 

普通、そうなれば集まって実際に戦車に乗る流れになる筈だが、筋金入りのインドア派や引きこもりばかりであったその人々は………

 

人数が増えても、集まって実際に戦車に乗ろう等と考える者は居なかった。

 

彼女達にとって戦車道は、『婦女子を育成する武道』ではなく………

 

『エキサイティングなゲーム』と捉えられていたのである。

 

そしてこの時代………

 

ネット上での繋がりはドンドン拡大して行き………

 

遂には無人戦車道こそ真の戦車道である等と言う事を主張し始めたのだ。

 

戯言を、と一蹴されるかに思われたこの考えだが、一部の人々に受け入れられかけてしまっている。

 

それは、戦車道に於いて最も金が掛かる存在が『人』だからである。

 

戦車道は『金』が掛かる武道である。

 

実際、世界大会を見据えて戦車道を推奨した日本も、様々な補助金で援助を行っている。

 

一見すると、戦車や砲弾等に金が掛かっていると思われがちだが………

 

実際、最も金を食う存在は『人』である。

 

学生が授業でやる程度ならば兎も角………

 

プロ選手ともなれば、数億の年棒は当たり前………

 

そしてそのプロの選手を育てるには、更に膨大な金が掛かる。

 

だが、どんなに金を費やしても、全ての人間がプロの選手に成れるワケではない………

 

当然、成れなかった選手に掛けた金は無駄になる………

 

そんな大人の事情から、無人戦車道に期待を抱く者達が居るのである………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦車道には、我がアメリカも莫大な資金を投入している………それこそ、軍事費を削ってな」

 

「だから無人戦車道を推奨していると言うのか?」

 

「いかにも………それこそが真の戦車道となる。何れは他の軍事道からも人間は排除されるだろう」

 

「島田流の人達は………」

 

「知って居るさ。だが、我々の勢力を過小評価している様でね。我々を利用する積りでいる。自分達が利用されているとも知らずにな」

 

「そんなの………」

 

そこでみほが、顔を俯かせ、プルプルと小刻みに震え始める。

 

「? 西住ちゃん?」

 

「そんなの只の『ゲーム』です! 『戦車道』じゃないっ!!」

 

その様子に気づいた瞬間、みほは再び顔を挙げ、ロッチナに向かってそう吠えた!

 

顔は明らかに怒りの形相だった。

 

「み、みほちゃん………」

 

「………(ブクブクブク)」

 

「桃ちゃんが泡噴いてるっ!?」

 

その余りの迫力に、蛍は怯み、桃は泡を噴いて気絶する。

 

「ならば証明してみたまえ………人間が必要だと言う事を」

 

だが、そんなみほの迫力を受けても、ロッチナは尚不敵笑ってそう言い放つ。

 

「!!」

 

次の瞬間には、みほは杏の机の上に置かれていた試合の申込状を引っ手繰る様に手に取った。

 

「………この試合………お受けしますっ!!」

 

「結構………では、私はコレで………」

 

ロッチナは満足そうな顔をすると、生徒会室から退室しようとする。

 

「…………」

 

去り際に振り返ると、弘樹の方を見ながら、また不敵に笑いながら。

 

「…………」

 

そのロッチナを無言で見送る弘樹だった。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

ロッチナが居なくなり、生徒会室を沈黙が支配する。

 

「………角谷会長、神大会長さん」

 

「うん?」

 

「何だね?」

 

不意に、杏と迫信に呼び掛けるみほ。

 

「機甲部隊の皆さんを集めて頂けますか………今回の件について、私から話します」

 

「あいよ」

 

「では、すぐに手配しよう………」

 

みほの言葉を受け、杏と迫信は大洗機甲部隊メンバーに非常呼集を掛けるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後………

 

大洗国際男子校・作戦会議室………

 

集合した大洗機甲部隊隊員達は、みほから説明を受けていた………

 

「大学選抜チームと試合っ!?」

 

「それってこの前のあのチームですよねっ!?」

 

「マジかよ………?」

 

大学選抜チームの試合を直に見ていた楓、飛彗、地市は仰天の声を挙げる。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

他の一同も、新聞やニュースで大学選抜チームが社会人チームを一方的に破った事を知っていた為、動揺を見せる。

 

「………皆さん!」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

とそこで、みほが不意に皆に呼び掛け、大洗機甲部隊員達の視線がみほに集まる。

 

「………ゴメンナサイ」

 

だがみほは、そんな大洗機甲部隊の一同に向かって深々と頭を下げた。

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

みほの思わぬ行動に、大洗機甲部隊の面々は呆気に取られた様子を見せる。

 

「皆さんに相談せず、勝手に試合を受けてしまって、本当に申し訳ないと思ってます」

 

「みぽりん………」

 

「みほさん………」

 

「西住殿………」

 

「…………」

 

そう謝罪の言葉を続けるみほに、沙織、華、優花里、麻子が視線を向ける。

 

「でも………私は如何しても愛里寿ちゃんと戦わないといけないんです。コレは私の………西住に生まれた者の責任なんです」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

再びみほに視線を集める大洗機甲部隊員達。

 

「だから! お願いしますっ!! 私と一緒に………戦って下さいっ!!」

 

みほはそう言って、再び大洗機甲部隊員達に向かって深々と頭を下げた。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

暫しの間、沈黙がその場を支配する………

 

「もう! 何言ってるの、みぽりんっ!!」

 

最初にその沈黙を破ったのは沙織だった。

 

「! 沙織さん!」

 

「そんな改まって言う必要なんてないじゃん」

 

座っていた椅子から立ち上がり、みほに向かってそう言う沙織。

 

「沙織さんの言う通りですよ」

 

するとそこで、続く様に華も立ち上がる。

 

「私達はコレまでずっと、みほさんに助けられてきました」

 

「その西住さんが力を貸して欲しいと言うなら………少なくとも、私達に断る理由は無いな」

 

更に麻子もそう言いながら立ち上がる。

 

「この秋山 優花里! 既に西住殿に命を預けているでありますっ!!」

 

優花里も一際勢い良く立ち上がると、敬礼しながらそう言い放った。

 

「沙織さん………華さん………優花里さん………麻子さん………」

 

そんなあんこうチームの姿に、みほが感動を覚えていると………

 

「西住ちゃんには学校を守ってもらったって言う、返しても返し切れない恩が有るからねぇ」

 

「我々バレー部は、西住総隊長に従いますっ!!」

 

「右に同じく」

 

「私達も、西住総隊長のお力になりたいですっ!!」

 

「風紀委員として、西住さんに協力しますっ!!」

 

「もう私達は1つの大きなチームだからね」

 

「ジーク! 西住総隊長っ!!」

 

「西住総隊長の為なら、例え火の中、水の中ですよっ!!」

 

杏、典子、カエサル、梓、みどり子、ナカジマ、ねこにゃー、聖子からもそう声が挙がった。

 

「歩兵部隊の諸君、異議が有るかね?」

 

「「「「「「「「「「有りませんっ!!」」」」」」」」」」

 

歩兵部隊の面々も、迫信がそう問うと、一斉にそう返した。

 

「皆さん………」

 

「西住総隊長………御命令を」

 

最早みほの目尻には涙が浮かび始めていたが、そこで弘樹が立ち上がり、みほに向かってそう言う。

 

「!………これより、大洗機甲部隊は………大学選抜チームとの試合に臨みますっ!!」

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

そして、みほがそう命令を下すと、大洗機甲部隊員達は一斉にヤマト式敬礼をしてそう答えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

尋ねて来たのはロッチナでした。
そしてそのロッチナの口から語られた島田流の真実と、ロッチナ自身の野望。

無人戦車道………
所謂、ガンダムWでのモビルドールみたいな思想ですね。
経費面から考えれば理想的なものかもしれませんが………
『エレガント』ではありません。

自ら島田流との因縁に決着を着ける為………
ロッチナの野望を阻止する為………
みほは大洗機甲部隊の力を借り、大学選抜チームに挑みます。
次回では更に援軍も………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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