ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第24話『スクールアイドルです!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第24話『スクールアイドルです!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

優花里達が持ち帰ったサンダース&カーネル機甲部隊の情報を分析していた大洗機甲部隊の元に現れた………

 

3人の大洗女子学園の生徒、『郷 聖子』、『西城 伊代』、『東山 優』

 

彼女達も戦車道をやりたいと言って来た。

 

彼女達は何者なのか?

 

何故、今になって戦車道受講を希望して来たのか?

 

そして、その目的は何か?

 

全ては、まだ戦車道が復活する前の頃までに遡る………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道が復活する前の大洗女子学園のとある教室にて………

 

「おはよ~! 伊代ちゃん! 優ちゃん!」

 

教室に入って来ると同時に、幼馴染の友達であり、クラスメイトの伊代と優に元気良く挨拶をする聖子。

 

「おはよう、聖子ちゃん」

 

「朝から元気ですねぇ………」

 

同じ様に元気の良い挨拶を返す伊代と、朝からテンションが高い様子の聖子に呆れる優。

 

「そりゃそうだよ~! 私、元気だけが取り柄だもんっ!!」

 

そう答えながら、聖子は窓際の自分の席へと着く。

 

すると、眼下の敷地内の通路で、教職員達が慌しく走り回っている様子が目に入る。

 

「? 何だか先生達、忙しそうだね?」

 

普段なら別段に気にする様な光景ではなかったが、何故か今日に限って、聖子はその様子が妙に気になる。

 

「………やっぱり、あの噂………本当なのかな?」

 

と、その聖子の呟きを聞いた伊代が、表情に影を落としてそう言う。

 

「? あの噂? 何それ、伊代ちゃん?」

 

「………この学校が廃校になると言う噂です」

 

聖子がそう問うと、優が同じ様に表情に影を落としてそう言う。

 

「!? は、廃校っ!?」

 

廃校と言う言葉を聞いた聖子は、思わず大声を挙げてしまい、他の生徒達が何事かと注目する。

 

「!? ちょっ!? 聖子! 声が大きいですよっ!」

 

「ああ、ゴ、ゴメン………」

 

優がそう叱ると、聖子は身を縮ませる様に2人の元へと近づく。

 

「で、でも、廃校だなんて………何かの間違いだよね?」

 

「………分かりません。文部科学省が学園艦構想の見直しを行うって言うのはニュースでも流れていましたからね」

 

「ウチの学校、ここ数年目立った実績も無いし、入学生が減って廃部になった部も多いから、強ち噂とも言い切れないかも………」

 

否定して欲しいと思ってそう言った聖子だったが、優と伊代は客観的な視点から否定出来ないと返す。

 

「そ、そんなぁ~………わ、私の高校生活がぁ~………」

 

それでトドメを刺されたのか、聖子は力無く自分の机に戻って突っ伏す………

 

その後、授業にも身が入らず、戦車道復活で派手に行われた必修選択科目の事も耳に入らなかった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日………

 

大洗女子学園・聖子達の教室にて………

 

「このままじゃいけない!」

 

昨日とは打って変わって威勢が良い様子の聖子が、優と伊代に向かってそう言い放つ。

 

「………何がですか?」

 

苦笑いしている伊代に代わる様に、優が聖子にそう尋ねる。

 

「この学校が廃校になるだなんて………そんなの駄目だよっ!!」

 

そう言い放つ聖子。

 

「聖子………廃校の話は飽く迄噂ですよ。仮にそれが事実だったとして、如何する積りなんですか?」

 

「廃校になるのは、新入生が減ってるから何だよね? だったら! 新入生を増やせば良いんだよっ!!」

 

呆れた様子の優に、聖子は自信満々にそう言い放つ。

 

「新入生を増やすって………如何するの?」

 

「そりゃ勿論! この学校の良い所をアピールして、生徒を集めれば良いんだよっ!!」

 

「で、具体的には?」

 

伊代にそう答える聖子に、優のツッコミが入る。

 

「えっ!? え~と………あっ! 歴史がある!!」

 

「他には?」

 

「う~んと………伝統がある!!」

 

「それは同じです」

 

「え~と、え~と………伊代ちゃ~ん!」

 

アピールすべき良い所が見つからず、伊代に泣きつく聖子。

 

「う~ん、生徒数が減少してるからか、部活動も廃部になった部が多くて、実績らしい実績も無いしね~」

 

しかし、伊代はそんな言葉を返す。

 

「駄目だ~っ!!」

 

聖子はそう言う台詞と共に机に突っ伏す。

 

「そもそも、そう言うのは教職員や生徒会の仕事です。我々がどうこう出来る問題とは思えません」

 

優も冷たいながらも現実的な意見を突き付ける。

 

「………私………この学校、好きなんだけどなぁ」

 

落ち込んだ様子の聖子の口から、そんな言葉が漏れる。

 

「………私も好きだよ」

 

「私も………」

 

それを聞いた伊代と優もそう同意する。

 

「…………」

 

聖子は落ち込んだ様子を見せながらも、授業中も必死で廃校回避の手段を考える。

 

しかし、答えは全くでなかったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから暫く経ったとある日………

 

丁度その日は大洗機甲部隊とグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊との練習試合が行われた日………

 

学園艦が大洗に寄港していた日だった。

 

聖子は1人、大洗の町に在るクレープ屋で、自棄食いの様にクレープを頬張っていた。

 

「もう~………如何すれば良いんだろう~~」

 

しかし、自棄食いしても気が晴れる様なものではなく、1人考えが頭を堂々巡りしている。

 

すると、その時………

 

「いや~、凄かったなぁ~、大洗とグロリアーナ&ブリティッシュの試合!」

 

「ホント! 戦車道と歩兵道の試合を生で見たのは久しぶりよね~!」

 

地元のカップルと思わしき男女が、そんな会話をしていたのが耳に入る。

 

如何やら、大洗機甲部隊とグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊との練習試合の観戦を終えた後らしい。

 

「戦車道………」

 

その言葉が耳に入った聖子は、おぼろげな記憶の中で、生徒会が戦車道復活を大々的にしていた事を思い出す。

 

良く聞けば、他の客達も、殆どが戦車道や歩兵道の話をしている。

 

「そう言えば、もうすぐ全国大会だけど………今年は何処が優勝するかな?」

 

「やっぱり黒森峰だろう。去年は負けちまったけど、9連覇してるんだしよ」

 

「いやいや、プラウダやサンダースも今年強いらしいから分からねえぞ」

 

と、話題の中に、全国大会の話が出始める。

 

「けど、話題と言えば、やはり『ジュラシック』だな」

 

(? ジュラシック?)

 

何故か単語が気になり、聖子はその客の話に耳を澄ませる。

 

「そうだなぁ。何かって言うとあそこの話が出るよなぁ」

 

「聞いた話じゃ、去年の入学生の数は、大洗の10倍あったらしいぞ」

 

「!?」

 

入学生が大洗の10倍と言う話を聞いて、聖子の興味は頂点に達する。

 

すぐさま自分のスマホで、ジュラシックと言う名の学校について調べ出す。

 

「! あった! コレだ!!」

 

すぐにジュラシック学園のホームページが見つかり、公開されている情報に目を通し始める。

 

「凄い………ウチの学校より何倍も大きいし、設備も最新式のばかり………」

 

コレが格差社会なのかと思いながらも、更に情報へ目を通す聖子。

 

すると………

 

「あ! この学校、『スクールアイドル』が居るんだ………」

 

とあるページに、『スクールアイドル』に関する事が載っていて、そう呟く。

 

 

 

 

 

『スクールアイドル』とは………

 

10年程前より誕生した、学校が有するアイドルグループの総称である。

 

また、その殆どが、戦車道をやっている選手である事も特徴の1つである。

 

意外にもこの件は、戦車道連盟が自ら主導して行っているのである。

 

大和撫子の嗜みとされる戦車道だが、それ故か如何しても『お堅い』と言うイメージが付いて回り、修得者が伸び悩んでいる現状があった。

 

そこで、戦車道連盟が生み出した奇策が、『スクールアイドル』との共同路線である。

 

若者に人気のアイドルが戦車道をやっているとなれば、それを応援するファンは当然戦車道に興味を抱く。

 

そういった考えで戦車道連盟はスクールアイドルを支援。

 

結果、殆どの学校のスクールアイドルは、戦車道の選手となっている。

 

更に、公式戦にて勝利すると、ライブを行う事が出来ると言うルールまで制定された。

 

結果、戦車道の修得者は大幅に増大。

 

世間一般にも、戦車道の選手=スクールアイドルと言う図式はかなり浸透する事となる。

 

無論、好意的な意見ばかりではなく、西住流や黒森峰女学院と言った伝統を重んじる戦車道関係者の中には、このプロジェクトに対し、否定的な意見を持っている者達も居る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『スクールアイドル』………『戦車道』………」

 

聖子は何やら考え込む様な表情となり、ジッとそのスクールアイドルのページを見つめていたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日………

 

聖子は学校を休み、1人ジュラシック学園の学園艦へと向かった。

 

「うわぁ~~、凄~い!」

 

甲板上の街へと入った聖子が見たモノは、まるで大都会の様な作りの艦上都市だった。

 

大洗学園艦では、背の高い建物は精々マンションぐらいだが、この艦上都市では西新宿の様な高層ビルが幾つも連なり、摩天楼を形成している。

 

それに合わせて、学園艦の大きさも、大洗は愚か、黒森峰をも凌ぐ程の大きさを誇っている。

 

「はわぁ~~………」

 

何ともスケールのデカイ学園艦に圧倒される聖子。

 

すると、そんな聖子の視界の端に、学生服らしき服を着た女子生徒が目に入る。

 

「! あっ!?」

 

恐らくジュラシック学園の生徒だと思い、その後を付ける。

 

すると、聖子の前方に1つのビル………

 

ジュラシック学園の校舎が現れる。

 

「おお~~~っ!」

 

今までの学校とは違うビル式の学校や、入校する時に携帯で照合タッチするなど、未来的な光景に、聖子は興味津々な様子である。

 

「「「「「「「「「「キャーッ!!」」」」」」」」」」

 

するとそこで、すぐ近くから何10人もの歓声が聞こえて来る。

 

「!?」

 

何事かと聖子が見やると、その歓声を挙げていた人々は、ジュラシック学園の校舎の壁に備え付けられた巨大なテレビの大画面に映っている、聖子と同い年くらいの女子高生達がダンスをしながら歌っている映像に見入っていた。

 

「! この人達………」

 

聖子は、映像の人物達こそ、学園の案内にも出ていたスクールアイドル………グループ名『ダイノMIX』である事に気付く。

 

良く見れば、彼女達が歌って踊っているバックには、学園の戦車部隊の物と思われる戦車がズラリと並んでいる。

 

そして、ライブが終わると同時に、一斉に空砲が発射された!!

 

「キャアッ!?」

 

映像ではあるが、その凄まじい迫力と爆音に、思わず尻餅を着きそうになる聖子。

 

「コレが………スクールアイドルの戦車道………凄い」

 

しかし、その視線は、ジッとダイノMIXの事を捉えていたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更にその翌日………

 

学校へと登校した聖子は………

 

「スクールアイドルだよっ!!」

 

何の脈絡も無しに、伊代と優に向かってそう言う。

 

「ふえ?」

 

「………は?」

 

突然の事に、伊代も優もただ呆けるしかない。

 

「だから! アイドルだよ、アイドル!! スクールアイドルが居る学校って、今すっごく増えてて、人気の子が居る学校は入学希望者も増えてるんだって!!」

 

そんな2人の様子も御構い無しに、聖子は捲し立てる様に言葉を続ける。

 

「あ~、そう言えば確かにそんな話良く聞くね~」

 

それを聞いた伊代が、思い出した様にそう呟く。

 

「でしょでしょっ! それでね! 私考えたんだっ!!」

 

「私達でスクールアイドルをやろう………ですか?」

 

優が聖子の考えを読んでそう言い放つ。

 

「!? 如何して分かったの!?」

 

「誰もでも想像つきますよ………」

 

「なら話は早いね! 一緒に………」

 

「お断りします」

 

考えを読まれた事に驚いた様子を見せる聖子だったが、すぐに優にそう言おうとして、言い切る前に遮られた。

 

「何でっ!?」

 

「そんな事で本当に生徒が集まると思ってるんですか!?」

 

「! そ、それは………」

 

「それに、今のスクールアイドルと言えば戦車道の選手………全国規模でアピールするには、公式戦に出て、勝ち抜かなきゃならないんですよ!」

 

「確かに、今年戦車道を復活させたばかりのウチが全国大会で勝ち続けられるかは、ちょっと怪しいね~」

 

優の言葉に、伊代もそんな意見を言う。

 

「そんな~、伊代ちゃんまで~!」

 

「ハッキリ言います………アイドルと戦車道は無しです!」

 

「そんな~っ!!」

 

会心のアイデアが否定され、聖子はガックリと落ち込んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから更に少しの月日が流れ、現在………

 

聖子達が、大洗機甲部隊が集結している作戦会議室へと現れる小1時間前………

 

大洗女子学園・弓道部の練習場………

 

「…………」

 

弓道着姿の優が、弓矢を構えて、的に狙いを定めている。

 

意識を集中し、的を射ぬく事だけを考える優。

 

(皆のハート、打ち抜くぞぉっ! バァーンッ!!)

 

と、その瞬間に、自分がアイドルの恰好をして、ステージ上でそんな台詞を言い放つ姿が過る。

 

「!?」

 

雑念が生まれた為、放った矢は大きく外れてしまう。

 

(な、何を考えているのです!? 私は!?)

 

「外したの? 珍しい」

 

その様子を見た部活仲間の子が、そう言って来る。

 

「あ、いや………た、偶々です!」

 

優はそう言うと、新たな矢を構え、再び狙いを定める。

 

(パンツァー、フォーッ!!)

 

しかし、今度は戦車道の選手として活躍している妄想が過り、矢は外れる。

 

その後も矢を射ようとする度に妄想が過ってしまい、矢は悉く外れてしまう。

 

「ああ! いけません! 余計な事を考えては!!」

 

優は倒れ込み、そんな台詞を言い放つ。

 

「優ちゃ~ん! ちょっと来て~っ!」

 

するとそこで、伊代が弓道場へ姿を見せ、優にそう言って来る。

 

「? 優?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、伊代に連れ出された優は………

 

「聖子のせいです。全然練習に身が入りません」

 

愚痴る様にそんな事を言う優。

 

「って事は、ちょっとアイドルや戦車道に興味が有るって事?」

 

「!? いえ、それは………」

 

しかし、伊代にそう指摘されて、思わず言葉に詰まる。

 

「………やっぱり、上手く行くとは思えません」

 

「でも、何時もこういう事は、聖子ちゃんが言い出してたよね?」

 

伊代と優は、幼少の頃からの聖子との思い出を思い出す。

 

「私達が尻込みしちゃう所を、いつも引っ張ってくれて」

 

「そのせいで散々な目にも遭ったじゃないですか」

 

「そうだったっけ?」

 

「聖子はいつも強引過ぎます」

 

「でも優ちゃん。後悔した事ある?」

 

「…………」

 

伊代のその言葉で無言になる優。

 

何だかんだ言っても、やはり彼女も親友である。

 

「ハッ! ホッ!」

 

「!?」

 

するとそこで、聖子のものと思われる掛け声の様なものが聞こえて来る。

 

「見て」

 

伊代がそう言いながら、校舎の影へと優を案内する。

 

「!」

 

そこで優が見たものは………

 

「ホッ! ハアッ!」

 

1人ダンスの練習に勤しむ聖子の姿だった。

 

「ハッ!………!? わ、とととっ!?」

 

と、ターンをやろうとして、踏ん張りが利かずに尻餅を着いてしまう聖子。

 

「アイタタタタタッ! イターイッ! ふう~、ホントに難しいや。皆良く出来るなぁ。よ~し、もう1回! せーの!」

 

しかし、めげずにまた踊り出す。

 

良く見れば、その傍に置かれている彼女のカバンには、『戦車道入門』と書かれた本も置かれている。

 

「聖子………」

 

「ねえ、優ちゃん。私、やってみようかな?」

 

伊代は優に向かってそう言い放つ。

 

「えっ?」

 

「優ちゃんは如何する?」

 

「………私は」

 

「うわぁっ!?」

 

とそこで、またも転んだ聖子が、尻を抑えて痛そうにしている。

 

すると、その眼前に手が差し出された。

 

「あ………優ちゃん!」

 

それは優の手だった。

 

「1人で練習しても意味がありませんよ。やるなら………3人でやらないと」

 

「! 優ちゃん!!」

 

「………貴女には負けましたよ、ホント」

 

優はそう言い、聖子の手を取って立ち上がらせる。

 

「ふふふ………」

 

伊代も、その光景を見て、笑みを零す。

 

「よおし! それじゃあ早速、大洗機甲部隊の皆さんの所へ行こうっ!!」

 

だが、次の瞬間には、聖子はそう宣言する。

 

「!? ええっ!?」

 

「ちょっ!? いきなりですか!?」

 

「思い立ったが吉日! 善は急げだよっ!!」

 

戸惑う伊代と優にそう言い放つと、聖子は先陣を切って走り出した!

 

「あ! 聖子ちゃん!」

 

「待って下さいっ!!」

 

慌ててその後を追う2人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦会議室………

 

そして、現在に至ると言うワケである。

 

「………と言うワケなんです! 私達も戦車道の選手として………そしてスクールアイドルとして活躍させて下さい!!」

 

「成程………」

 

「いや~、面白いね~」

 

聖子からの話を聞いた迫信と杏がそう言う。

 

「スクールアイドルかぁ………今の内に仲良くなっておけば、将来ウハウハだな」

 

「下衆いですよ、了平」

 

またも良からぬ妄想をする了平に、楓の容赦無いツッコミが入る。

 

「西住くん。如何する?」

 

「えっ!? わ、私!?」

 

突然弘樹から話を振られ、戸惑うみほ。

 

「この部隊の総隊長は西住くんだ。全ての決定権は君にある」

 

「え、えっと………」

 

「西住さん! お願いしますっ!!」

 

みほが言い淀んでいると、聖子が両手を合わせて頼み込んで来る。

 

「あ、そ、そんな畏まらないで! 戦車道をやりたいって言うなら、歓迎するから」

 

「ホントですか! ヤッターッ!!」

 

その言葉を聞いた途端に、飛び上がらんばかりに喜びを露わにする。

 

「でも………今、空いてる戦車が無いんだけど………」

 

「!? ええ~っ!? そんな~っ!?」

 

しかし、続くみほの言葉を聞いて、途端に落胆を露わにする。

 

「戦車が無いって………」

 

「如何言う事ですか? 戦車道は復活させたのでは?」

 

伊代と優も、首を傾げながらそう尋ねる。

 

「それが………」

 

みほは、大洗女子学園は20年前に戦車道を廃止しており、その際に使用していた戦車とその関係資料を紛失していると説明する。

 

「だから、今貴方達が乗れる戦車は無いの。折角来てくれたのに、ゴメンナサイ」

 

聖子達に向かって申し訳無さそうに頭を下げるみほ。

 

「あ、いえ、そんな!?」

 

「突然お邪魔した私達が悪いんです」

 

「だから、そんなに謝らないで下さい」

 

そんなみほの姿を見て、逆に聖子達の方が申し訳なく思ってしまう。

 

「まだ学園艦の全てを調べたワケじゃない。今後の事も考えると、今一度徹底的に捜索を行ってみる必要がありそうだな」

 

「しかし、先ずは目の前に迫った1回戦だ」

 

俊がそう言うと、迫信がパチンと扇子を閉じてそう纏める。

 

「まあ、兎に角、入って来るってんなら歓迎するよ~」

 

「これから、よろしくお願いします。郷さん、西城さん、東山さん」

 

そして、杏とみほが、聖子達を迎え入れる。

 

「あ! 聖子で良いです! よろしくお願いします! 西住総隊長!」

 

「私も伊代で良いです」

 

「優と呼んで下さい」

 

すると聖子達は、名前で呼んでくれて構わないと返す。

 

「お~い、スクールアイドルの卵さん達」

 

「アイドルやるんなら、当然バックバンドとか要るだろう?」

 

「俺達が手を貸させて貰うぜ。目的は一致してるからな」

 

そこで、バンド仲間である磐渡、鷺澪、重音が、聖子達に向かってそう提案する。

 

「! ありがとうございますっ!!」

 

嬉しさを露わにし、磐渡達に礼を言う聖子。

 

「よし! 心強い味方も出来たところで、今度こそ訓練を始めるぞっ!!」

 

「「「「「「「「「「おおおおおお~~~~~~~っ!!」」」」」」」」」」

 

と、そこで桃が改めてそう言うと、大洗歩兵部隊を中心に、雄々しい掛け声が挙がる。

 

「お、おお………」

 

自分で発破を掛けておいて、その様子に戸惑う桃。

 

「よし! 訓練場に向かうぞ! 空教官殿もお待ちかねの筈だ!」

 

弘樹がそう言うと、大洗機甲部隊の面々は、訓練場に向かって移動を始める。

 

「聖子さん達も、一緒に如何ですか?」

 

「暫くは予備要員と言う扱いにさせてもらうからね。しかし、戦車を操縦する事になった際の事を考えると、訓練風景を見学しておく事をお勧めするよ」

 

みほと迫信が、聖子達にそう言う。

 

「ハイ! 是非っ!!」

 

「面白そう~」

 

「そうですね………少しは見ておいた方が良いでしょう」

 

聖子、伊代、優は三者三様の返事を返し、大洗機甲部隊と共に訓練場へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、サンダース&カーネル機甲部隊への対策を考えた大洗機甲部隊は、公式戦1回戦に向けて、日々の訓練に励んだ。

 

整備の敏郎達も、戦車や武器の整備を万全にする一方、新たな武器の調達にも奔放。

 

結果、雀の涙程度ではあるが、幾つかの新装備が歩兵部隊に配備される事となった。

 

また、新たなメンバーに加わった聖子達も、戦車道の訓練を見学する傍ら、本格的にスクールアイドルとして活動を開始。

 

グループ名は、戦車道でのチーム名を兼任と言う事で、本人達の希望により、モチーフはウーパールーパー………

 

『サンショウウオさんチーム』が、彼女達のグループ名となった。

 

衣装は、裁縫が得意な伊代が仕立て、歌の方は、歌詞を中学時代にポエムを嗜んでいた(お察し下さい)優が、曲を磐渡達が作曲。

 

皆が力を合わせ、1回戦突破………

 

そして、サンショウウオさんチームのスクールアイドルデビューに向けて団結していたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えた戦車道・歩兵道全国大会1回戦の日………

 

会場は南方の孤島………

 

森林地帯が広がり、緩やかな丘が幾つも存在する野戦戦場だった。

 

観覧用の場所では、屋台が幾つも営業を行っており、賑わいを見せている。

 

「レッツゴー、サンダース! ファイト、カーネル!」

 

一方観客席では、サンダース&カーネル機甲部隊側は、両校の全校生徒を含めた席を埋め尽くさんばかりの人で溢れ、チアリーダー達が応援を行っている。

 

対する大洗機甲部隊側の席は若干空席が目立ち、生徒も全員が来ていると言うワケでは無い。

 

集客数から早くも差をつけられた感じである。

 

だが、大洗機甲部隊はそれを気にする事無く、戦車部隊は戦車の最終整備。

 

歩兵部隊は武器の最終手入れ。

 

そして隊長陣は作戦の最終確認を行っていた。

 

「整備終わったかぁーっ!!」

 

と、自分達の戦車の整備(殆ど柚子と蛍がやっていた)が終わった桃が、戦車隊のメンバーに向かってそう問い掛ける。

 

「「「「「ハーイ!」」」」」」

 

「準備完了!」

 

「私達もです!」

 

「Ⅳ号も完了です」

 

それに対し、ウサギさんチームの面々、カエサル、典子、みほがそう返事を返す。

 

「歩兵部隊の諸君も宜しいかね?」

 

迫信も、歩兵部隊の面々に向かってそう問い掛ける。

 

「とらさん分隊、欠員無し。装備の点検、完了しています」

 

「ペンギンさん分隊、OKや! 何時でも行けるでぇ!」

 

「ワニさん分隊、問題無し」

 

「ハムスターさん分隊も大丈夫です」

 

其々の隊の分隊長である弘樹、大河、磐渡、勇武がそう返答する。

 

「よし! では、試合開始まで待機!」

 

「あ! 砲弾忘れてたっ!!」

 

と、桃がそう指示を出した瞬間、ウサギさんチームの優季がそう声を挙げた。

 

「それ、1番大切じゃん」

 

「ゴメ~ン」

 

「「「「ハハハハハハッ!!」」」」

 

「ちょっ! 笑い事じゃないよ~!」

 

ウサギさんチームから笑い声が挙がるが、竜真がそうツッコミを入れる。

 

と、そこで………

 

「呑気なものね」

 

「それで良くノコノコ全国大会に出て来れたわね」

 

「全く、大洗だけに大笑いってか?」

 

「ハハハハハハッ! ナイスジョークだぜ、ジェイ」

 

そう言う小馬鹿にする様な声が聞こえて来て、大洗機甲部隊の一同が注目したところ………

 

そこには、サンダース戦車部隊の副隊長コンビであるナオミとアリサに、カーネル歩兵部隊の隊長と副隊長であるジェイとボブの姿が在った。

 

「はわっ!?」

 

そこで優花里が、慌てて麻子の後ろに隠れる。

 

すると………

 

「コレはコレは………サンダース戦車部隊の副隊長であるナオミさんとアリサさん。それにカーネル歩兵部隊の隊長のジェイさんに副隊長でのボブさんですね。態々挨拶に来て頂けるとは、大変恐縮です」

 

迫信が笑みを見せながらナオミ達とジェイ達の前へと出た。

 

「えっ?」

 

「あ、いやその………」

 

「ご、ご丁寧に如何も………」

 

「ど、如何も………」

 

迫信の思いも寄らない態度に、ナオミ達とジェイ達は出鼻を挫かれる。

 

「申し遅れました。私、大洗国際男子校の生徒会長を務めており、大洗歩兵部隊の隊長の神大 迫信です。本日はよろしくお願いします」

 

そこで迫信は更に、自己紹介をしながらそう挨拶をする。

 

「えっ!? じ、神大!?」

 

「ま、まさか!? あの神大コーポレーションの!?」

 

と、神大と言う名を聞いたアリサとボブが表情を変える。

 

「な、何故、神大コーポレーションのお方が大洗の学校に!?」

 

「無論、学校が好きだからさ。だから、もし私達の母校を馬鹿にする様な者が居るとしたら………許しては置けないね」

 

笑みを浮かべてそう言う迫信だが、目は笑っていない。

 

((((ヒイイィィィィ~~~~~~ッ!?))))

 

その迫信の得体の知れない迫力の前に、4人は声も出せず悲鳴を挙げる。

 

「あっちゃ~、アイツ等も可愛そうに………」

 

「よりによって会長に目を付けられてしまうなんて………」

 

その光景を見ていた俊と清十郎が同情する様にそう言う。

 

「それで………何か用?」

 

とそこで、杏が改めてナオミ達とジェイ達にそう問い質した。

 

「あ、えっと………」

 

「し、試合前の交流も兼ねて、食事でも如何かと、ウチの総隊長が………」

 

するとアリサとナオミが、若干しどろもどろしながらもそう言う。

 

「ああ、良いね~。ごちそうになろうか?」

 

杏は不敵に笑ってそう言い、大洗機甲部隊の面々は、サンダース&カーネル機甲部隊の野営陣へと招待されたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

前回のラストに登場した3人のオリキャラによるオリジナル戦車チーム。
彼女達はスクールアイドルの戦車乗りと言う設定です。
モチーフは、あのアニメのキャラ達です。
このキャラクターは友人の方より提供されたのですが、如何やら例のアニメに嵌っていた様でして。
残念ながらまだ戦車の数が足りないので、今回は原作におけるサンダース戦では観戦・応援ですが、戦車と更なる追加メンバーが加入しだい、彼女達にも奮戦してもらう予定です。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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