ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース 作:宇宙刑事ブルーノア
『劇場版 ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース ~炎のさだめ~』
チャプター24『殺人レシーブ作戦です!』
大洗連合部隊を襲った謎の絨毯砲撃………
その正体は7輌のカール自走臼砲と2輌の80㎝列車砲………
そして何と!
湖上に浮かぶ、戦艦『ミズーリ』の艦砲射撃だった。
水陸両用車輌を多数保有するパシフィック機甲部隊が、ミズーリへの攻撃を仕掛ける為………
継続校のBT-42、大洗のヘッツァーと八九式、そしてアンツィオのCV33が………
陽動の攻撃をカール1輌に対して仕掛けるのだった。
森林地帯の一部………
カール自走臼砲設置地点………
「排莢完了!」
「次弾装填っ!!」
「次弾装填急げっ!!」
撃ち終えた砲弾の薬莢を排莢し、新たな砲弾を込める為、延べ20名以上の大学選抜砲兵達が、慌しくカールの周りで動き回っている。
「いや~、凄い威力ね」
「何たってこんな化け物を投入したワケ?」
その様子を見ながら、護衛のパーシング3輌の車長2人がそう言い合う。
「何でも、黒森峰が全国大会の決勝戦でラーテやモンスターを投入したのを見て、対抗したって話よ?」
するとそこで、残る1輌のパーシングの車長がそう言って来た。
「はあ~、要するに西住流が凄いもん投入したから、自分も投入したってワケね?」
「そんな子供みたいな事を………」
「そんな子供みたいな人の子供が私達の指揮官やってるんでしょ? やってらんないよね?」
愚痴り始める護衛パーシングの車長達。
如何やら、愛里寿への忠節心が薄い面子らしい。
メグミ、アズミ、ルミと言った部隊長が居ないのを良い事に、好き放題に言っている。
「………うん?」
だがそこで、護衛パーシングの車長が、何かに気づいた様に窪地の向こう側に在る森の中を見やる。
「? 如何したの?」
「今、エンジン音が………」
と、別の護衛パーシングの車長がそう訊いて来たのに答えようとした瞬間!!
爆音と共に、森の中からBT-42が飛び出して来た!!
「「「!?」」」
護衛パーシングの車長達が驚きを露わにしていると、BT-42はそのまま窪地を飛び越えてカールが居る場所に着地!
そのまま独楽の様に回転したかと思うと………
至近距離からエンジン部を1撃し、護衛パーシング1輌を撃破!!
そして逃げる様に窪地内へ降りて行った!!
「クッ! 追うぞっ!!」
「何だっ!? 敵襲かっ!?」
「貴方達は砲撃を続けてっ!!」
カール担当砲兵達にそう言い放ち、残る護衛パーシング2輌は、逃げたBT-42を追い、窪地に降りて行った。
「コレは人生にとって必要な戦いなの?」
「恐らくね………」
次弾を装填しながら問うアキに、ミカはそう返す。
護衛パーシング2輌を引き付けるBT-42。
その間に、車体後部の上にCV33を乗せた八九式が、ヘッツァーを連れてカールが居る高所に通じている石橋に向かった。
「今だっ!!」
そして、アンチョビの合図で、石橋を渡り始める!
「!? しまったーっ!!」
護衛パーシングの片方の車長がそれに気づき、声を挙げる。
「大丈夫だ!」
「あんな狡い戦車達なんざ、木っ端微塵にしてやるぜっ!!」
しかし、カール担当砲兵達は、カールを旋回させ、水平射撃でアンチョビ達を狙おうとする。
「う”わ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”~~~~~~~~っ!? こっち見てるぞおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」
60センチの砲門に狙われ、アンチョビが思わず濁声気味な悲鳴を挙げる。
その直後にカールが発砲!
60センチ砲弾がアンチョビ達に向かう!!
だが、咄嗟の事で狙いが甘かったのか………
砲弾は外れて、アンチョビ達が通り過ぎた後の石橋に命中した。
「うわああっ!?」
それでも後方から凄まじい爆風が襲って来て、アンチョビが思わず声を挙げる。
するとそこで………
カールの砲弾が命中した石橋の下へと、BT-42が向かった。
石橋の破片が瓦礫となって降り注いで来る中を、構わず疾走するBT-42。
そして、瓦礫と瓦礫の間に僅かに空いていた隙間を通り抜ける。
護衛パーシング1輌がその後を追おうとしたが、車幅の違いから引っ掛かってしまう。
すぐに後退しようとした護衛パーシングだったが、直後に砲身目掛けて瓦礫が落下。
砲身が潰れて圧し折れ、護衛パーシングは白旗を上げる。
「残り1輌!」
とうとう護衛パーシングが残り1輌となり、アキが砲塔を旋回させながら声を挙げる。
「ミッコ! 左!」
だがそこで、ミカが叫んだ通り、残る1輌の護衛パーシングが、何時の間にかBT-42の左側から迫って来ていた!
「!? いいっ!?」
ミッコが思わず声を挙げた瞬間に、BT-42は護衛パーシングに激突!
重量差からBT-42の方が弾き飛ばされ、転がって履帯が千切れ飛ぶ。
そのまま、窪んでいた場所に落ち込むBT-42。
「………やった?」
BT-42の撃破を確かめようと、停止する護衛パーシング。
だが、その直後!
「ふんっ! ふうんっ!!」
BT-42の操縦席に居たミッコが、車のステアリング………所謂ハンドルの様な部品を取り出したかと思うと、それを操縦席にセットした!
すると………
BT-42の起動輪と転輪が回転を始め、再び息を吹き返して走り出した。
「!? 何っ!? 履帯無しなのにーっ!?」
その様子に仰天の声を挙げる護衛パーシングの車長。
「天下のクリスティー式! 舐めんなよぉっ!!」
そう言いながらハンドルを切るミッコ。
彼女達の乗るBT-42は、元はフィンランド軍がソ連軍から鹵獲したBT-7を改造したモノである。
そしてこのBTシリーズと呼ばれる戦車は、アメリカの発明家………
『ジョン・W・クリスティー』が考案した『クリスティー式サスペンション』と呼ばれる懸架装置が使用されている。
この懸架装置の最大の特徴は、最後部の接地転輪と起動輪がチェーンで接続されており、履帯を外しても走行が可能と言う事なのである。
そして、カールの砲撃を如何にか凌ぎ、突撃を続けていた八九式が………
「行っけええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」
忍の叫びと共に、前方が浮き上がるまでに加速する八九式!
「必殺っ!!」
「「「「殺人! レシーブッ!!」」」」
そして急ブレーキを踏んだかと思うと、慣性の法則で、後部に乗っけていたCV33が、ボールの様にカールへと飛んだ!
「やったーっ!」
「賢いねー、私達っ!!」
作戦が上手く言った事で、歓声を挙げる妙子とあけび。
「今だっ! マズルを狙えーっ!!」
そして、空中に文字通り投げ出されたCV33が、カールの砲口を狙って8ミリ機銃を連射する。
機銃の弾丸が当たり、火花を散らすカール。
「「「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」」」」」
何人かのカール担当砲兵にも弾丸が命中し、戦死判定になる。
しかし、幾らカールが装甲の薄い自走砲と言えど、8ミリ機銃程度で撃破出来る筈もなく、CV33は石橋の崩れている手前の部分に落ちて逆さまになった。
「アレ?」
それを見て、典子が首を傾げるのだった。
一方、BT-42と残る1輌の護衛パーシングは………
石橋の橋桁を中心に、その周りを回る様に追い掛けっこを展開していた。
「用意」
と、砲塔を後方へと向けていたBT-42のハッチから顔を覗かせていたミカがそう言い放つと、護衛パーシングに向かって砲撃が飛ぶ。
しかし、護衛パーシングの砲塔正面の装甲を貫けず、火花を散らして弾かれる。
直後に反撃にと護衛パーシングが発砲するが、BT-42は素早く橋桁の陰に隠れる。
そしてすぐさまバックで、橋桁と護衛パーシングの間の僅かな隙間を擦り抜けて行った。
再び、橋の上では………
「奴等にトドメをさせーっ!!」
引っ繰り返ったCV33にトドメを刺そうと、カールが近づいて来る。
「折角踏み台になったのにー」
「作戦失敗だ、撤退しろーっ!!」
「桃ちゃん! 落ち着いてっ!!」
妙子が残念そうにそう言うと、桃が喚き散らし、蛍が宥める。
「クソーッ!」
「チョビ子! 履帯を回転させろっ!!」
引っ繰り返ったままのCV33の中でアンチョビが悔しそうにしていると、杏からそう通信が入る。
「命令するな! 私を誰だと思って………」
「干し芋パスタを作ってやるからさー」
「パスタッ!!」
「マジっすかっ!?」
反抗しようとしたアンチョビだったが、パスタと言う言葉を聞いて一瞬で気を変え、言う通りに引っ繰り返ったままのCV33の履帯を回転させる。
「良しっ!!」
すると、そのCV33に向かってヘッツァーが突撃する!
「飛べーっ!!」
そして八九式の脇を擦り抜けると、CV33を踏み台にして、勢い良くジャンプした!
「会長! お願いしますっ!!」
「任せろ………」
桃がそう言う中、不敵な笑みで照準器を覗き込んで居る杏。
「! イ、イカン! 装填を中止しろっ!!」
「駄目ですっ! もう装填してしまいましたっ!!」
慌てて装填中止の指示を飛ばすカール担当砲兵隊長だったが、既にカールの砲門には、新たな砲弾が装填されていた。
「………グットラック」
その砲弾が装填されているカールの砲口目掛けてヘッツァーが発砲!
砲弾は砲口に飛び込み、装填されていた砲弾に命中!!
60センチ砲弾が忽ち大爆発!
「「「「「「「「「「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」
カールはバラバラとなり、カール担当砲兵全員が戦死判定となる。
BT-42と護衛パーシングの戦いにも決着が着こうとしていた………
逃げる護衛パーシングを、BT-42が追う形となっている。
いよいよBT-42が、護衛パーシングのエンジン部に狙いを定める。
だが、その瞬間!!
護衛パーシングが急ブレーキを掛けた!!
その速度が仇となり、護衛パーシングを追い越してしまうBT-42。
すぐに反転しようとしたが、それよりも早く護衛パーシングが発砲!!
BT-42の左側の車輪が全て吹き飛ばされる!
………しかし!!
何とBT-42は、残る右側の車輪だけで片輪走行!!
砲塔を傾けながら護衛パーシングへと向かった!!
「トゥータッ!!」
そして、ミカのフィンランド語での撃ての号令が掛かると、アキが発砲!
放たれた砲弾は、粗零距離で護衛パーシングのエンジン部に命中!!
発砲の衝撃で、BT-42の残っていた右側の車輪も全て脱落し、車体が地面に埋まると、白旗を上げる。
だが、護衛パーシングからは既に白旗が上がっている。
「ふう~」
「ああ~、疲れた~」
アキとミッコが大きく息を吐きながらそう漏らす。
「継続ちゃ~ん。大丈夫?」
とそこで、杏が声を掛けて来る。
「大丈夫です。私達は回収部隊を待って一旦補給拠点まで後退します」
「分かった。後でまたね」
「皆さんの健闘を祈ります」
ミカは、杏とそう遣り取りすると、カンテレを鳴らしたのだった。
◇
一方、その頃………
湖上のミズーリでは………
ミズーリ・艦橋………
「カールが1輌やられました!」
通信士が、カールが1輌やられた事を報告する。
「やられたのは何処のカールだ?」
「Ⅲ号車のオーディンです!」
「Ⅲ号車………一番端の位置ですね」
ミズーリの艦長の問いに、通信士がそう返すと、副長が地図を広げてやられたカールの場所を確認する。
「自走砲と列車砲を潰しに出たか」
「そうはさせんぞ。主砲! 砲撃用意っ!!」
「主砲砲撃用意っ!!」
艦長の言葉を、副長が復唱する。
そして、ミズーリの主砲が右舷方向………やられたカールの方角へと向けられる。
「まだそう遠くまでは行って居まい。頭上からたっぷりと砲弾を浴びせてやる………」
『全主砲! 砲撃準備、完了!!』
「良し! 撃………」
『コチラ左舷っ!! 敵接近っ!!』
「!? 何っ!?」
イザ砲撃命令を下そうとした瞬間に、左舷の見張り要員の1人からそう報告が入り、艦長は慌てて双眼鏡を手にして、艦橋から左舷方向を見やる。
そこには、パシフィック機甲部隊の水陸両用車輌部隊の姿が在った。
「チイッ! カールへの攻撃は囮かっ!!」
「主砲旋回、間に合いません! それにこの距離では俯角が足りません!」
艦長が苦々しげに言うと、副長がそう報告する。
「副砲で攻撃しろ! それから! 対空機銃を水平射撃で機銃掃射だっ!!」
「了解っ!!」
艦長は副砲に対空機銃を水平射撃しての迎撃を命じる。
ミズーリの左舷側に在った38口径12.7㎝砲、56口径40㎜対空砲、70口径20㎜対空砲が、接近して来るパシフィック機甲部隊に向かって発砲される!
「! 気づかれたかっ!!」
「チキショーッ! せめてもう少し近づきたかったのにっ!!」
ミズーリから迎撃が始まったのを見て、カジキとホージローがそう声を挙げる。
「戦車部隊に通達! 我々は何としてもミズーリを無力化させねばなりませんわ! コレよりミズーリを攻撃! 歩兵部隊の移乗攻撃を支援致しますわっ!!」
「了解っ!!」
「任せてっ!!」
セイレーンがそう呼び掛けると、水陸両用に改造されているチャーフィー達が、ミズーリに向かって発砲を開始した!
「! 撃って来たぞっ!!」
ミズーリの乗員の1人がそう声を挙げた瞬間………
1箇所の56口径40㎜対空砲が在った機銃座に、榴弾が命中!
「「「「「うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」」」」」
機銃座に居た機銃手と、近くに居た乗員が爆発で吹き飛ばされ、甲板上に落ち、戦死判定となる。
「オノレッ! 倍返しだっ!!」
お返しとばかりに乗員の1人がそう叫んだかと思うと、1門の38口径12.7㎝砲が火を噴く!
「「「「「うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」」」」」
運悪く1輌のLVT-3が直撃を貰い、爆発四散して乗員が放り出される。
漏れたガソリンで湖面が燃える中、戦死判定となったパシフィック歩兵達が漂う。
「このぉっ!!」
1輌のLVT(A)-4が、仇を取ろうとその38口径12.7㎝砲にM3 75㎜榴弾砲を放つ。
しかし、榴弾は命中したものの、頑強な副砲を破壊するまでには至らず、装甲の表面を焦がした程度だった。
「クウッ! 駄目かっ!?」
「我々の火力では戦艦の装甲に対抗出来ん! 一刻も早く取り付くんだっ!!」
LVT(A)-4の車長がそう叫ぶと、カジキが皆に向かってそう呼び掛ける。
果たして、パシフィック機甲部隊は、無事にミズーリに取り付く事が出来るのだろうか?
つづく
新話、投稿させていただきました。
今回は原作劇場版の名シーン………
BT-42無双をお送りしました。
元が素晴らしいシーンですので、改変は有りません。
ほぼ再現になります。
そして、その囮攻撃の隙を衝いて、パシフィックがミズーリに仕掛けますが………
やはり戦艦相手に苦戦は必須。
ですので、あの男が再び動きます。
お楽しみに。
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。