ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース 作:宇宙刑事ブルーノア
『劇場版 ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース ~炎のさだめ~』
チャプター26『沈黙の戦艦です!(後編)』
湖上に浮かぶ大学選抜チームのミズーリを制圧する為に、移乗攻撃を仕掛けようとするパシフィック機甲部隊。
しかし、ミズーリの火力に阻まれ、思う様に作戦が進まなかった。
だが、知波単の協力を得た弘樹が………
何と、空から『特三号戦車 クロ』で奇襲!
ミズーリへと取り付き、大暴れ。
パシフィック機甲部隊も遂に移乗攻撃を敢行。
今まさに、歩兵の力で戦艦が沈黙しようとしていた………
湖上のミズーリ………
「ん………?」
射撃管制室へと向かう途中だった弘樹が、ふと艦尾が見える扉を発見する。
ミズーリの艦尾にはカタパルトが有り、水上偵察機『OS2U』が乗せられていた。
「…………」
弘樹は少し考える様な素振りを見せたかと思うと、身を隠しながら艦尾へと向かった。
すると、弘樹が隠れている場所の傍を、乗組員の1人が通り掛かる。
如何やら、弘樹には気づいていない様だ。
「…………」
弘樹はジッと息を潜め、乗組員が通り掛かった瞬間に飛び出し、同時に足を払った!!
「うわあっ!?」
そして、倒れた乗組員の首に向かって手刀を打ち込む!!
「ぐえっ!?」
潰された蛙の様な声を挙げたかと思うと、乗組員は戦死判定となって気絶した。
「良し………」
それを見つからない様に湖に流すと、改めてカタパルトのOS2Uを目指した。
見張りの目を避け、OS2Uの操縦席を漁る。
「………在った」
そして、予備の燃料が入ったポリタンクを見つける。
それを持ち出すと、艦橋側から見えない艦尾側のOS2Uの陰に隠れる。
そのまま、OS2Uの給油口を発見し、蓋を開けたかと思うと、ポリタンクの下部分に銃剣で穴を空け、燃料を注ぎ、給油口から溢れさせる。
すると、手榴弾のピンを抜き、ポリタンクを上から被せる様に乗せ、レバーを押さえさせた。
ポリタンクの燃料が無くなって倒れれば、手榴弾が爆発すると言う一種の時限装置だ。
「良し………」
上手い具合に設置が完了すると、弘樹はワザと露骨に姿を晒す様にする。
「!? オイ!! 向こうで何か動いたぞ!!」
「カタパルトの傍に何か居るぞ!!」
案の定、それを見た乗組員は、砂糖に群がる蟻の如く、次々にOS2Uのカタパルトの元へと集まってくる。
弘樹はギリギリまで出来るだけ多くの乗組員達を引き付けると、足元に在ったケーブルを1本摑み、艦尾から飛び降りた!!
その次の瞬間!!
燃料が無くなりポリタンクが倒れ、押さえていた手榴弾のピンが外れ、燃料に引火しながら爆発!!
忽ちOS2Uを巻き込んだ大爆発が起こった!!
「「「「「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」」」
集まって来ていた多数の乗組員が、その爆風の直撃を喰らう。
「………上手く行ったな」
爆音を聞きながらそう呟く、ケーブルで艦尾にぶら下がっている弘樹。
「チキショーッ! やりやがったなぁ!?」
「何処行きやがった!?」
生き残った乗組員達が、炎を上げているカタパルトを避けながら、艦尾に集まる。
しかし、まさか艦尾の装甲にへばり付いているとは思わず、湖面を覗き込む様な事はせず、一通り見回したかと思うと、そのまま行ってしまう。
「…………」
それを確認すると、思ったよりも間抜けな連中なのかと思いながら、再度甲板へと上がる弘樹。
と、そこで………
「ん? 何か物音がしなかったか?」
その際の音を聞きつけたのか、4人程の乗組員がカタパルトの方へと戻ってきた。
「むっ………?」
弘樹は、M1911A1を構えて物陰に隠れる。
4人の乗組員達は、2人1組を組んで、弘樹が隠れている方へと近づいて来る。
と、先に進んでいた2人が、弘樹の視界に入った瞬間!!
「!!」
弘樹はバッと飛び出し、1人を後ろから首を絞める様に拘束。
もう1人の後頭部にハイキックを見舞って、倒した。
「「グアッ!?」」
「「!?」」
そして、後から来ていた2人の方にM1911A1を向け、其々1発で頭を撃ち抜き倒す!
続いて倒れていた1人を撃ち抜き、最後に捕まえていた1人を背中から撃ち抜いた!!
この間、僅か6秒!!
4人の乗組員を瞬殺した。
「!? 何だっ!?」
「銃声だぞっ!?」
と、その銃声を聞きつけ、他の乗組員達が集まって来る。
「…………」
弘樹はすぐさま艦内へと逃げ込むと、バルブ式のハッチを閉めて、そこにピンを抜いた手榴弾を置き土産に残して行く。
「あそこだぁ!」
「逃がすな! 追えぇっ!!」
すぐさま乗組員達は、チーフを追って扉を開けようとする。
「止せっ! 深追いするな!!」
乗組員の1人がそう叫ぶが、時既に遅し。
乗組員達がドアのバルブを回した瞬間、手榴弾が床に落ち、爆発!!
吹き飛ばされたハッチと溢れ出た爆風が、乗組員達を襲った!!
「「「「「「うわああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!?」」」」」」
数人の乗組員達が、戦死判定となる。
「クソッ! またしてもっ!!」
「動くんじゃねえっ!!」
「「「「「!?」」」」」
とそこで頭上から声が降って来て、生き残っていた乗組員達は上を向く。
そこにはホージローを中心に、上部デッキから銃を向けているパシフィック歩兵達の姿が在った。
「艦橋は制圧した! もう抵抗は無意味だ! 武器を捨てろっ!!」
「「「「「…………」」」」」
ホージローにそう言われた乗組員達は、敗北を悟ったのか、潔く武器を捨てると、自ら戦死判定装置を作動させる。
「へへ、潔いじゃねえか。そう言うの、好きだぜ」
そんな乗組員達の姿を見て、ホージローは不敵に笑うのだった。
一方、その頃………
再び艦内へと侵入した弘樹は………
「…………」
遂に射撃指揮所に辿り着き、侵入。
しかし、そこには1人の乗組員の姿も無かった。
「…………」
警戒しながら、弘樹はM1911A1を構えて射撃指揮所内へ入り込む。
物陰に敵が潜んでないかをチェックする。
「…………」
慎重に歩を進める弘樹。
だが………
「銃を捨てろ」
入って来た扉の方からそう言う声が聞こえた。
「…………」
弘樹は特に動揺する事も無く、素直に持っていたM1911A1、そして背負っていた四式自動小銃も床に置く。
「両手を上げろ」
「…………」
更に指示通りに両手を上げると、声の主の方を振り返る。
それは、ミズーリの艦長だった。
「そこに座れ」
射撃指揮所内に在った椅子の1つに腰掛ける様に命じる艦長。
「…………」
弘樹は特に抵抗する様子も見せず、素直に腰掛ける。
それを見て艦長は、拳銃を突き付けたまま、弘樹の眼前まで近づく。
「流石は絢爛舞踏だ。殆どの者がお前1人にやられた………全く、情けない限りだ」
「…………」
「だが、もうお終いだ。仮にこの状況を如何にか出来たとしても………我が大学選抜チームを率いている島田流を如何にかは出来ん」
「………1つ聞かせて貰おう。貴様は今の島田流が正しいと思っているのか?」
そこで弘樹は初めて、艦長に声を掛ける。
「正しいか正しくないかは関係無い。我々は命令を受け、それを実行する………それだけの存在の筈だ!」
やや興奮気味に、更に弘樹に近づく艦長。
と、その瞬間!!
「!!」
弘樹は艦長が持っていた拳銃を蹴り上げた!
「うわっ!?」
拳銃が手から弾き飛ばされ、隙を見せてしまう艦長。
「!!」
空かさず弘樹は、艦長に諸手突きを喰らわせる!
「ガッ!?」
計器に叩きつけられる艦長。
「クウッ!!」
しかし、すぐに立ち上がると、ナイフを抜いて構えた。
「…………」
それに対抗する様に、弘樹も敵兵から奪って隠し持っていたナイフを抜いた。
「フッ! ハッ! トアアッ!!」
艦長は素早い動きで、何度もナイフを振るう。
しかし、やはり本職は船乗り。
その動きは本場の歩兵と比べると、洗練されていない。
「フッ………」
「うおっ!?」
艦長の悲鳴と共に、戦闘服の一部が切り裂かれる。
「…………」
「ぐあっ!?」
更に今度は、左手の手首を切り裂かれる。
左手の手首の先から動きが鈍くなる。
「クソッ!」
「………!」
艦長は1歩下がると、右手に逆手に持っていたナイフを振り被って踏み込んだが、読んでいた弘樹はアッサリと躱し、艦長の背中を押す!
「ぎゃあっ!?」
コンパネの上を転がって床の上に落ちた艦長だが、素早く立ち上がる。
「…………」
そんな艦長をナイフを構えて待ち構える弘樹。
「ふあっ!!」
「!!」
と、艦長が再びナイフを持っていた右腕を振り上げると、素早く弘樹が近づき、その右腕を左手で摑む。
「!!」
「ぬうっ!?」
そして右手のナイフを艦長に見舞おうとしたが、コレも艦長が左手で摑んで止める。
互いに押し合いの揉み合い状態となる。
「ぐうううううっ!!」
「………!!」
必死な様子の艦長と、僅かに仏頂面が崩れている弘樹。
「ぐううっ!!」
艦長は無理矢理弘樹を突き刺そうと、右腕に力を入れる。
「………!!」
すると、僅かに押された弘樹のヘルメットに艦長のナイフの刃が掠り、火花を散らす。
そして、一瞬怯んだ様な様子を見せる弘樹。
「貰ったっ!!」
それを好機と見た艦長が一気に仕掛ける。
だが………
それは弘樹の誘いであった。
「!!」
艦長のナイフに噛み付く弘樹!
「なっ!?」
驚く艦長から、弘樹はそのままナイフを奪う。
そして自由にした左手の曲げた人差し指と中指で、艦長に目潰しを見舞う!
「!! ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」
コレには艦長も堪らず悲鳴を挙げた!
「!!」
その次の瞬間には、弘樹は艦長のヘルメットの脳天に、ナイフを突き刺す!
「!!」
そしてトドメとばかりに、コンソールに頭から叩き付けた!
艦長はコンソールに頭が突き刺さった状態で気絶し、戦死判定となった。
「正しい者は救われる………」
動かなくなった艦長を見ながら、弘樹はそう呟く。
「舩坂」
「終わったみてぇだな」
とそこへ、カジキとホージローが姿を見せる。
「そっちは如何だ?」
ナイフを艦長の脳天に突き刺したままにしてしまったので、代わりに艦長が使っていたナイフを鹵獲しながら尋ねる弘樹。
「各所の制圧は完了した」
「残っていた乗組員の連中は全員降参したぜ」
「そうか………」
「けど、如何すんだ? まだ列車砲やカールが残ってんだろ?」
ホージローの言う通り、ミズーリは押さえたものの、大洗連合はまだ列車砲とカールの砲撃に晒されている。
「………カジキ」
すると弘樹は、カジキの方に声を掛けた。
「何だ?」
「砲術の心得が有る歩兵は居るか?」
◇
その頃………
メガフロート艦上の演習場・とあるポイント………
そこには、80㎝列車砲『グスタフ』が陣取っていた。
「装填、完了しました!!」
「方位、並びに仰角修正!」
「方位及び仰角修正っ!!」
グスタフの指揮官が叫ぶと、転車台が回転し、主砲の仰角も上がる。
「カールが1輌やられたのは想定外だが、まだ6輌もある。それにこの列車砲も健在だ。高校生の連中はさぞ慌てているだろうな」
その様子を見ながら、グスタフの指揮官はそう言う。
「しかし、先程ミズーリに敵部隊が向かったと言う報告が有りましたが………」
そこで、グスタフを任せられている砲兵の1人がそう言って来るが………
「心配するな。幾ら奴等でも、ミズーリをどうこう出来はしまい」
心配無いとグスタフの指揮官は言い放つが………
そこで、風切り音が聞こえて来た。
「? 何………」
だと言い切る前に、上空から降り注いだ多数の砲弾が着弾!!
用意して在ったグスタフの主砲弾にも誘爆し、巨大な爆発が発生!!
グスタフはバラバラとなり、付いていた砲兵達も、何が起こったのか分からないまま、全員が戦死判定となったのだった。
「な、何なのっ!?」
「何が起こったんだっ!?」
護衛に付いていた大学選抜機甲部隊の戦車部隊員と歩兵の1人がそう声を挙げる。
その直後に、再び風切音が聞こえて来たかと思うと、再び多数の砲弾が着弾!
「「「「「キャアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!?」」」」」
「「「「「うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」」」」」
凄まじい爆発が起き、歩兵部隊はおろか、40トン以上のパーシングまでもが軽々と宙に舞い、地面に叩き付けられて白旗を上げた。
「コ、コレは………艦砲射撃………まさか………ミズーリが………」
辛うじて意識を失っていなかった歩兵の1人がそう呟くと、限界を迎えて気絶。
そのまま戦死判定となる。
その艦砲射撃を行った艦………
ミズーリでは………
「次弾装填!!」
「次弾装填! アイッ!!」
「装薬急げっ!!」
主砲塔内で、パシフィックの歩兵達が慌しく動き回り、新たな砲弾を装填し、装薬を込める。
「1番砲塔、装填完了!!」
「2番完了!」
「3番も良し!!」
「目標、12………04!」
射撃管制室で、各砲塔からの装填完了の報告を聞いたカジキが、地図を見ながら射撃位置を指示。
それに合わせて、ミズーリの主砲塔が旋回し、仰角と方位角を調整する。
「痛いのをブッ喰らわせてやれっ!!」
「てぇーっ!!」
ホージローがそう言うと、カジキの砲撃指示が飛び、ミズーリの全主砲が斉射される!
砲弾は弧を描いて飛び、演習場の一角に在ったカールを、護衛部隊ごと吹き飛ばす!!
「ハハハハハッ! 痛快だなっ!!」
「まさか自分達が用意した戦艦でやられる事になるなんて………大学選抜チームに同情するね」
景気良く主砲をブッ放すミズーリの姿を見て、シイラとツナがそう言い合う。
「………分かった。ありがとう」
そんな中で、何者からか通信を受けていた弘樹が、そう言って通信機を切った。
「カジキ、新たな目標が出来た。そちらも頼む」
そして、艦砲射撃の指示を出しているカジキにそう言う。
「新たな目標? 何だ?」
「それは………」
◇
一方、その頃………
愛里寿とイプシロンの居る大学選抜機甲部隊の本隊では………
「何たる事だ! ミズーリを奪われるとは!!」
「…………」
イプシロンが忌々し気にそう言い放ち、愛里寿も若干苦い顔を浮かべていた。
「総司令! 最後のカールが撃破されました! 長距離砲部隊は全滅です!」
そこで、センチュリオンの装填手兼通信手から、最後のカールが撃破され、長距離砲部隊が全滅したとの報告が挙がる。
「分かった。では………」
と、それに対し、愛里寿が新たな指示を下そうとしたところ………
爆発音が聞こえて来た!!
「「!?」」
その爆発音が聞こえた、左後方を振り返る愛里寿とイプシロン。
自分達が今いる場所から結構離れた位置で、空高くまで爆煙が舞い上がっていた。
「! あの場所は!?」
イプシロンが爆煙が上がっていた場所を見て、何かを思い至った瞬間………
『こちらアズミ! 総司令! 応答願いますっ!!』
試合開始直後に、手痛い目に遭わされて補給地点にまで後退していたアズミ隊のアズミから焦った様子での通信が入る。
「! 回して!………アズミ、如何したの?」
愛里寿はすぐに装填手兼通信手から通信を回してもらうと、アズミに応答する。
『第1補給地点が砲撃されました! 私の隊は間一髪で退避が間に合いましたけど、第1補給地点の機能は喪失しました!!』
「!!」
アズミから報告を聞いた愛里寿が驚きを示した瞬間………
更に立て続けに爆発音が響き、遠方数ヶ所で爆煙が上がった!
「! 他の補給地点に飛行場までっ!?」
「馬鹿な! 何故奴等がコチラの補給地点の場所を知っている!? 制空権が拮抗している今、偵察機は居ない筈だ!!」
それが他の補給地点や、航空機用の飛行場の場所である事を愛里寿が察すると、イプシロンがそう叫ぶ。
『総司令。補給地点に居た隊員の話ですが………『歩く段ボール』を見たと」
「『歩く段ボール』?」
「何だ、それは? ふざけているのか?」
そこでアズミからそう報告が挙がるが、愛里寿とイプシロンは困惑するばかりだった。
「………第1ラインを放棄。第2ラインまで後退する」
しかし、すぐに頭を切り替え、更に後方に在る第2補給ラインまで後退する事を決定した。
「おのれ、大洗連合め………この借りはすぐに返すぞ」
イプシロンは恨みがましくそう言い放ち、後退する大学選抜機甲部隊本隊の護衛に就く。
つづく
新話、投稿させていただきました。
ミズーリ制圧戦後編。
遂にミズーリを占拠。
そしてそのまま利用して、大学選抜部隊の長距離砲撃部隊を全滅させました。
更に補給地点も攻撃し、大学選抜部隊は後退を余儀なくされます。
いよいよ次回から遊園地跡での戦いに突入します。
お楽しみに。
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。