ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第25話『強豪・シャーマン&機械化歩兵軍団です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第25話『強豪・シャーマン&機械化歩兵軍団です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遂に、戦車道・歩兵道全国大会の1回戦を迎えた大洗機甲部隊。

 

その試合前の準備中に、対戦相手であるサンダース&カーネル機甲部隊の戦車部隊副隊長であるナオミとアリサ。

 

歩兵部隊の総隊長と副隊長であるジェイとボブが姿を見せる。

 

試合前の交流と称し、大洗機甲部隊を食事に誘うナオミ達とジェイ達。

 

断る理由も無かった大洗機甲部隊の面々は、サンダース&カーネル機甲部隊の野営陣へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サンダース&カーネル機甲部隊の野営陣………

 

ナオミ達とジェイ達によって連れて来られた大洗機甲部隊の面々は、そこに並んでいる様々な移動用車両を目にする。

 

「凄~い!」

 

「救護車にシャワー車、ヘアーサロン車まで」

 

「ホントにリッチな学校なんですね」

 

その光景を見て、沙織、優花里、華の3人が、そんな言葉を漏らす。

 

「ったく、金持ちを自慢してぇのかよ………」

 

「そう言う積りは無いと思いますけど、コレは差を感じますね………」

 

地市と楓も、そんな事を呟く。

 

「ああもう、何か戦う前から負けって感じで………」

 

「…………」

 

「! い、いいえっ! 何でもありませんっ!!」

 

了平は戦う前から気持ちで負けそうになったが、弘樹が軽く睨むと、すぐに自分を無理矢理奮い立たせた。

 

「熾龍さんは?」

 

「メリケンの施しは受けねぇってよ。相手も日本人だってのに」

 

「まあ、この場に居る全員アメリカ人だと言っても信じてしまいそうだがな………」

 

1人来なかった熾龍の事で清十郎、俊、十河がそう言い合う。

 

「ヘイ! アンジーッ!! サコーッ!!」

 

するとそこでそう言う声が響いて来て、サンダース戦車部隊の隊長であるケイが姿を現す。

 

「アンジー?」

 

「会長の事かな? 角谷 杏だからアンジーとか?」

 

「馴れ馴れしい」

 

ケイが言ったアンジーと言うのが誰の事か分からず首を傾げる蛍と、推察する柚子に、いきなりのフレンドリーな態度に毒を吐く桃。

 

「サコーと言うのは………」

 

「恐らく私の事だろうね」

 

飛彗の呟きに答える様に、迫信がそう言う。

 

「やあやあ、ケイ」

 

「この度はお招きを如何も」

 

「何でも好きな物食べてって。OK?」

 

「OK、OK。おケイだけに」

 

「HAHAHAHAHA! ナイスジョークッ!!」

 

杏のダジャレが面白かったのか、ケイは腹を抱えて笑う。

 

「あ、そうそう。貴方、此間はどうもね」

 

するとそこで、今度は蛍の事を見てそう言う。

 

「あ、いえ、その………」

 

蛍は何と返答して良いか分からず口籠る。

 

「他の3人は如何したの?」

 

「あ、優花里ちゃんが、アッチに………って、しまった!?」

 

とそこで、ケイがそう尋ねて来たので、思わず素直に答えてしまい、ハッとする。

 

しかしその瞬間には、ケイは既に優花里の元へ向かって居た。

 

「ヘイ! オッドボール三等軍曹!」

 

「!? はわぁっ!? 見つかっちゃった!?」

 

フレンドリーに声を掛けるケイだが、優花里は慌てる。

 

「怒られるのかなぁ?」

 

沙織が心配そうにそう言い、みほの如何して良いか分からずに困惑する。

 

するとそこで、国防色の影が、優花里達の前に立ちはだかる。

 

「…………」

 

「! 舩坂くん!」

 

戦闘服姿の弘樹だ。

 

まるで優花里達を守る様に、向かって来るケイの姿を見据えている。

 

「大丈夫よ。別に彼女をどうこうしようって言うんじゃないわ」

 

しかし、ケイはそんな弘樹の行動が杞憂であると言う様にそう言い、弘樹を挟んで優花里の前で止まる。

 

「此間、大丈夫だった?」

 

「へっ? ハイ………」

 

そう尋ねられて、弘樹の後ろに隠れていた優花里は、拍子抜けした様に返事を返す。

 

「また何時でも遊びに来て。ウチは何時だってオープンだからね」

 

そんな優花里の様子を知ってか知らずか、ケイは更にそう言葉を続けた。

 

(良かった………)

 

(隊長は良い人みたいだね)

 

(フレンドリーだな)

 

それを聞いた華、沙織、麻子が小声でそう言い合う。

 

「ところで、ひょっとして貴方が、『グンソー・フクダ』の子孫さん?」

 

とそこで、ケイは今度は弘樹の事を見ながらそう尋ねる。

 

「………それ知っているとは、驚きですね」

 

弘樹は軽く驚いた様な様子を見せてそう答える。

 

「『グンソー・フクダ』?」

 

「舩坂 弘軍曹殿が米軍の捕虜になった際に使っていた偽名ですよ」

 

沙織がワケが分からないと言った様子を見せると、優花里がそう説明する。

 

「まさかあの英霊の子孫と戦う事が出来るなんて、光栄ね。でも、ウチにだって、貴方に負けないくらいのストロングな奴が居るのよ」

 

「ケイ総隊長!」

 

とケイがそう言った瞬間、アメリカ陸軍の戦闘服に身を包んだジョーイ・ミヤギが姿を現す。

 

「我が第442連隊戦闘団の戦闘準備は万全です。ご命令が有れば、何時でも出撃可能です」

 

「OK。でも、試合はまだ始まってないんだから、もっとリラックスして良いのよ」

 

「ハッ! 了解しました!」

 

ケイとそう遣り取りするジョーイ。

 

その姿は弘樹と同じく本物の軍人さながらである。

 

「第442連隊戦闘団………だと?」

 

と、ジョーイが所属する部隊の名を聞いた弘樹が、表情を厳しくする。

 

「!? 第442連隊戦闘団!?」

 

更に優花里も驚きの声を挙げる。

 

「きゃあ!?」

 

「ど、如何したの!? ゆかりん?」

 

「びっくりしました………」

 

「何事だ?」

 

突然大声を挙げた優花里に、みほ達も驚く。

 

「あ、あの………ひょっとして貴方は、日系アメリカ人の方ですか?」

 

しかし、優花里はそれには返事をせず、ジョーイに向かってそう尋ねた。

 

「如何にも………私は日系アメリカ人だ。そして私の祖先は………アメリカ陸軍第442連隊戦闘団に所属していた」

 

ジョーイはそれに対し、淡々とした様子でそう答える。

 

「! やっぱり!」

 

「ねえ、何なの? 第442連隊戦闘団って?」

 

ワケが分からない沙織がそう質問する。

 

「………太平洋戦争中に組織された、アメリカ陸軍の日系アメリカ人による歩兵部隊だ」

 

すると意外にも、弘樹がそう言葉を返した。

 

「えっ? ちょっと待って! 確か、太平洋戦争って、アメリカと日本が戦ったんだよね?」

 

すると沙織は、日本史の授業で習った事を思い出し、そう言う。

 

「そうです。その際に、アメリカはハワイや国内に居た日系アメリカ人を強制収容所に送っているんです」

 

「だが、アジアの白人支配からの打倒を謳う日本がその事を『白人の横暴の実例』として宣伝した為、それに反駁する必要に迫られ、日系人の部隊を編制する事になった」

 

優花里がそう答えると、ジョーイが自らそう語り出した。

 

「しかし、その背景には人種差別問題が絡み、弾除けの為の部隊と噂が立った。だが、我が祖先達は周りからの差別と偏見と戦いながらアメリカに忠誠を誓い、ヨーロッパ戦線で戦った」

 

「その奮戦ぶりは、死傷率314%と言う数字が物語っている」

 

ジョーイが語っていると、弘樹がそう口を挟む。

 

「し、死傷率314%って………」

 

「「「「…………」」」」

 

凄まじさが伝わる数字に、みほ達は言葉を失う。

 

「数多くの仲間を失いながらも、442連隊は終戦まで戦い続け、遂にはアメリカ史上もっとも多くの勲章を受けた部隊となった。私はそんな祖先達を誇りに思っている。私達が今日、アメリカで暮らして居られるのは、祖先達のお蔭だ」

 

そこでジョーイは、戦闘服の二の腕部分に着けられていた442と書かれた部隊章を撫でる。

 

「今日は力の限り、正々堂々と戦おうではないか。無論、勝つのは私達だがな」

 

「それは如何かな………」

 

絶対の自信の元にそう言うジョーイだったが、弘樹はそんな言葉を返すのだった。

 

「あ、そうだ! 話は変わるんだけど、ちょっと良いかしら?」

 

とそこで、ケイがそう言ってやや強引に話を変える。

 

「? 何ですか?」

 

「「「「「??」」」」」

 

突然話を変えたケイに、弘樹は少し戸惑いを見せ、みほ達も首を傾げる。

 

「ニンジャは? あのニンジャの人は何処に居るの?」

 

するとケイは、目をキラキラさせて、大洗歩兵部隊のメンバーを見回す。

 

「総隊長………」

 

「また悪い癖が………」

 

そんなケイの姿を見たアリサとナオミが溜息を吐き、ジェイとボブが頭を抱える。

 

「ニンジャ………と言うと」

 

「葉隠殿ですね。間違いありません」

 

弘樹がそう呟くと、優花里はそれは紛れも無く一緒に潜入任務を行っていた小太郎の事であると推察する。

 

しかし、当の小太郎は、顔を合わせるのはマズイと思っているのか、姿を消している。

 

「ふむ、葉隠くんに御用かね?」

 

とそこで、迫信が近づいて来てそう言った。

 

「YES! 如何しても彼に会いたいの」

 

「ふむ………彼はニンジャだからねぇ」

 

すると迫信は一旦間を置くと………

 

「小太郎は居るか?」

 

少々時代掛かった様な渋い声でそう言う台詞を呟く。

 

「ハッ、閣下殿! 此処に!!」

 

すると迫信の背後に、小太郎が音も無くスーッと現れ、膝を着いて畏まるポーズを取った。

 

「舩坂くん」

 

「! 確保ぉっ!!」

 

とそこで迫信が弘樹に呼び掛け、弘樹はとらさん分隊の面々と共に小太郎の身柄を確保する。

 

「ぬおおっ!? しまったでござる!! ついニンジャ条件反射で!!」

 

仲間から拘束を受けるとは予想していなかったのか、アッサリと確保されてしまう小太郎。

 

「確保致しました」

 

「ご苦労………」

 

確保した小太郎を、迫信の前に突き出す弘樹。

 

「ワオッ! ニンジャさん!!」

 

「うう………」

 

小太郎の姿を見て嬉しそうな様子を見せるケイだったが、小太郎の方は気まずそうにしている。

 

すると………

 

「ドーモ。葉隠 小太郎=サン。ケイです」

 

何とケイは、小太郎が何時も相手にする礼儀………アイサツを小太郎に向かってしたではないか!

 

「! ドーモ。ケイ=サン。葉隠 小太郎です」

 

アイサツされた小太郎は一瞬驚きながらも、即座に自分もアイサツを返す。

 

「コレ、返しておくね」

 

そこでケイは、ポケットから布の様な物を取り出す。

 

それは、小太郎が潜入した際に残して行った、覆面だった。

 

良く見ると、破れていた所が繕われている。

 

「コレは………忝い」

 

「それと………」

 

小太郎がそれを受け取ろうと少し身を乗り出した瞬間!

 

ケイはそのまま小太郎に抱き付く様に寄り添い、小太郎の頬にキスをした!

 

「「「「「「「「「「!?!?!?!?!」」」」」」」」」」

 

コレには小太郎本人ばかりでなく、一部を除いた大洗機甲部隊の面々とサンダース&カーネル機甲部隊の面々も驚きを露わにする。

 

「な、何を!?」

 

「助けてくれたお礼よ………嫌だった?」

 

バッとケイから離れた小太郎が動揺しながら聞くと、ケイは恥ずかしそうに頬を染めて、上目遣いで聞き返す。

 

「い、いや! 決してその様な事は………あ、いや、その!!………」

 

「落ち着き給え、葉隠くん」

 

上手く言葉が出ない小太郎を、迫信がそう言って落ち着かせようとする。

 

「ぐぎぎぎぎぎぎぎ………リア充め………爆発しろ………」

 

「了平、血の涙を流すの止めろ。不気味だぞ」

 

その光景を見て、血の涙を流す了平と、その了平の姿にツッコミを入れる地市。

 

「本当にニンジャに会えて、しかも命を助けてもらうなんて………アタシ、感激しちゃったぁっ!」

 

「………君は忍者が好きなのか?」

 

はしゃぐケイの様を見て、弘樹がそう尋ねる。

 

「オフコース! ニンジャは東洋の神秘! 古事記にもその存在が記されてるくらいですもの」

 

「………古事記に?」

 

自信満々でそう言うケイだったが、弘樹は古事記に書かれていると言う部分に「えっ?」と言う顔を浮かべた。

 

「ケイ、またその話か………」

 

「何度も言ってますけど、総隊長のニンジャ観って絶対間違ってますって」

 

するとそこで、ナオミとアリサが呆れた様子を見せながら、再びケイの元へ歩み寄って来る。

 

その後ろで、ジェイとボブも「うんうん」と言った感じに頷いている。

 

「え~、何言ってるのよ? 何処もおかしくないじゃない。ねえ」

 

「アッハイ」

 

ケイが「何を言ってるんだ?」と言う様な感じで返し、小太郎に呼び掛けると、小太郎は即座に頷く。

 

「総隊長はニンジャを何だと思ってるんですか?」

 

と、ジェイがそう問い質すと………

 

「決まってるじゃない! ニンジャとは、平安時代の日本をカラテによって支配した半神的存在の事よ!!」

 

「「「「「「「「「「いやいや! おかしいおかしい!!」」」」」」」」」」

 

自信満々にそう答えたケイに、大洗機甲部隊の面々がそうツッコミを入れた。

 

「何で忍者が空手なんだよ!?」

 

「平安時代って、時代違うぞ!!」

 

「そもそも半神的存在って何っ!?」

 

次々にケイへとそうツッコミを飛ばす大洗歩兵部隊の面々。

 

「………貴方達も偽りの歴史を信じてるのね。まあ、それも所為が無い事ね。ニンジャ達はキンカク・テンプルで謎のハラキリ儀式を行い、歴史から姿を消したのだから」

 

「キンカク・テンプルって何っ!?」

 

「あとハラキリって、それ忍者じゃないよ!」

 

「歴史は改竄され、隠蔽され………ニンジャの真実は忘れ去られたわ」

 

「今までの全てが真実じゃないよ!!」

 

最早大洗歩兵部隊のツッコミを無視して語り出すケイに、大洗機甲部隊からは次々にツッコミが飛ぶ。

 

「え~、何処から如何聞いてもニンジャ真実じゃない。ねえ、小太郎=サン」

 

「オイ、葉隠。このお嬢さんに本当の忍者の事を教えてやれや」

 

ケイが不満そうに小太郎に問い掛けると、大河も小太郎へそんな台詞を言う。

 

「………良くぞそこまでニンジャ真実に辿り着いたでござるな」

 

「「「「「「「「「「えええええぇぇぇぇぇぇ~~~~~~~っ!?」」」」」」」」」」

 

小太郎のその返しに、大洗機甲部隊の面々は驚きの声を挙げる。

 

「流石! やっぱり貴方は本当のニンジャね!! そんなアトモスフィアがしてたのよ!!」

 

「うむ。カラテあってこそのニンジャだ」

 

先程までの初々しい雰囲気とは一転し、そのまま2人は仲良さげに、2人にしか分からない会話を繰り広げて行く。

 

((((((((((………もう好きにしてくれ))))))))))

 

大洗機甲部隊とサンダース&カーネル機甲部隊の面々は、最早ツッコム事にも疲れ、そのまま2人の会話を聞かない様にスルーを始めたのだった。

 

一方、同じくサンダース&カーネル機甲部隊へ潜入任務を行っていた大詔はと言うと………

 

「美味過ぎるっ!!」

 

「そ、そう………ど、どうもありがとう」

 

「もっと食わせろっ!!」

 

「あ、ハ、ハイ………ちょっと待ってて下さいね」

 

そんな出来事があったなど露知らず、サンダース&カーネル機甲部隊のフードコート車を、次々に食べ歩きしていたのだった。

 

そしてその後………

 

大洗機甲部隊の面々は、サンダース&カーネル機甲部隊の御持て成しを堪能すると、自陣へと引き上げて行った………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗機甲部隊の野営陣地………

 

「あ! 皆~っ!!」

 

大洗機甲部隊の面々が自陣へと帰ると、華やかな衣装に身を包んだ聖子、伊代、優が出迎える。

 

「あ、聖子さん。伊代さん。優さん」

 

「ほう………それが君達のアイドルとしての衣装かい? 中々様になっているよ」

 

みほが気付くと、3人の恰好を見た迫信がそう言う。

 

「ホントですか!? えへへ、嬉しいなぁ~」

 

ピンク色の衣装に身を包んだ聖子が、それを聞いて嬉しそうに、その場でターンして見せる。

 

「そう言われると、苦労して作ったかいがあるよ~」

 

ライトグリーンの衣装に身を包んだ伊代も、笑みを浮かべてそう言う。

 

家が衣装屋であり、自身も裁縫や絵が得意な彼女が、衣装の作成を担当していた。

 

「けどさあ………優ちゃんは何で下ジャージなの?」

 

とそこで、沙織が1人だけスカートの下にジャージを穿いている優の姿を見てそう言う。

 

「いや、その、えっと………や、やっぱり、恥かしくて………」

 

優が顔を赤くしながらそう言ってモジモジとしていると………

 

「優ちゃん………往生際が悪~いっ!!」

 

聖子がそう言い放ち、優が穿いていたジャージを引き下ろした!!

 

「!? いや~んっ!!」

 

「おおおっ!?………?! ぶべぇっ!?」

 

「何を身を乗り出している、貴様は………」

 

悶える優の姿に身を乗り出した了平を成敗する弘樹。

 

「恥ずかしがって、如何するの? スカート穿いてるのに」

 

「で、ですがぁ!」

 

「優ちゃん。可愛いよ」

 

「あ、あううう………」

 

聖子と伊代にそう言われ、すっかり縮こまってしまう優。

 

「今日が私達のスクールアイドルとしてのデビューの日になるんだ………」

 

「頑張れよ」

 

「必ず勝って歌わせてやるからな」

 

「全くだぜ。折角俺達が会心の出来で作った曲を使わずに終わらせるなんて事になって堪るかってんだ」

 

聖子がそう言うと、今回聖子達が歌う歌の作曲を手掛けた磐渡達もそんな事を言う。

 

「それにしても優。お前さんの作詞………良かったぜ」

 

とそこで、磐渡は歌の作詞を手掛けた優に向かってそう言う。

 

「そ、そうですか?」

 

「ああ、久々にこう、胸にガツーンと来る詞だったぜ」

 

「あんな良い詞の作曲を担当出来ただなんて、光栄だな」

 

優が照れていると、鷺澪と重音もそう言う。

 

「そ、そんな………」

 

優は益々縮こまってしまう。

 

「お~い!」

 

「飛彗~っ!」

 

するとそこで、諸事情で大洗機甲部隊から離れていた海音と豹詑が姿を現す。

 

「あ! 海音、豹詑。如何だった?」

 

「駄目だ! やっぱり白狼の奴、来てないみたいだ」

 

「全く、今日に限って1匹狼モードかよ」

 

飛彗がそう尋ねると、海音と豹詑はそう返す。

 

そう………

 

2人が部隊を離れていた理由………

 

それは白狼が原因だった。

 

何と、彼は今朝から行方をくらましており、現在も居場所が知れていないのである。

 

「何やってんだ、アイツは? 今日は大事な試合だってのによぉ」

 

「嫌になって逃げたんじゃないのか? アイツ、碌な戦果挙げてないし」

 

「それは貴方が言える事ですか? 了平?」

 

地市が愚痴る様に言うと、了平が無責任にそう言い、楓がツッコミを入れる。

 

「そうだぞ、了平。無責任な事を言うな」

 

更に、弘樹も了平を咎める。

 

「舩坂さん………」

 

「小官は君達ほど彼との付き合いが長いワケではない。だが、彼がいい加減な事をする様な性分ではないのは理解している積りだ。きっと何か事情があるのだろう。参加登録は済ませてあるから、試合途中からでも参戦する事は出来る。今は只待とうじゃないか」

 

飛彗が何か言おうとしたが、それを遮って弘樹はそう言い放つ。

 

「わ、悪かったよ………」

 

それを聞いて、了平は気まずそうに黙り込む。

 

『間も無く、試合開始となります! 両チームは集合場所へ集結して下さいっ!』

 

するとそこで、間も無く試合開始である事を告げるアナウンスが流れた。

 

「ふむ………では、諸君。そろそろ行くとしようか」

 

「総員、移動!」

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

迫信がそう言い、弘樹が号令を掛けると、大洗歩兵部隊の面々は、集合場所へ移動を始める。

 

「私達も行きましょう」

 

「「「「「「「「「「は~いっ!」」」」」」」」」」

 

更にみほもそう言い、大洗戦車部隊の面々も、移動を始める。

 

「頑張ってね~」

 

「しっかり~」

 

「応援してますからぁ!」

 

聖子達はその姿を見送ると、応援の為に関係者観覧席へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

両チーム集合場所………

 

『さあ、いよいよ始まりました! 第63回戦車道・歩兵道全国大会第1回戦! 実況は私、『ヒートマン佐々木』! 解説にはお馴染みの『DJ田中』さんに来て頂いております! よろしくお願いします!』

 

『どうも、『DJ田中』です。皆さん、よろしくお願いします』

 

実況席・解説席に居る、戦車道・歩兵道全国大会の実況及び解説を担当している『ヒートマン佐々木』と『DJ田中』が声を挙げる。

 

『さて、早速ですが田中さん。この試合、如何見ますか?』

 

『そうですね~………大洗機甲部隊ですが、女子校側が20年程前に戦車道を廃止しており、今回久々の出場となっています。ですので、出場している選手は粗新人同然と言えます。対する相手は優勝候補の一角であるサンダース&カーネル機甲部隊。普通に考えれば大洗に勝ち目は無いでしょうね』

 

『そうですか』

 

『しかし、情報によれば、この大洗機甲部隊には如何やら西住流の選手と、あの舩坂 弘の子孫が在籍している様ですよ』

 

『何と! あの西住流と英霊・舩坂 弘軍曹の子孫がですか!?』

 

実況者らしく、大げさに驚いて見せるヒートマン佐々木。

 

『ええ、ですので、ひょっとすると………今大会では、大洗機甲部隊が意外なダークホースとなる可能性もありますよ』

 

DJ田中は、何処か楽しそうにそう解説をする。

 

『成程、ありがとうございます。さて、間もなく試合開始となります! 集合場所では、両チームの代表が試合前の挨拶を交わそうとしています!』

 

ヒートマン佐々木の実況通り、観覧席と試合状況を伝える超大型モニターの間には、大洗機甲部隊とサンダース&カーネル機甲部隊の面々が集結し、代表者である杏とケイが挨拶を交わそうとしていた。

 

「よろしく」

 

「ああ」

 

握手を交わすと、言葉少なげにそう言い合うケイと杏。

 

そして2人が其々の部隊の元へと戻ると、両チームはスタート地点へと移動を開始。

 

そのまま試合開始の合図を待つ。

 

『では此処で、改めて戦車道・歩兵道全国大会のルールを確認しておきましょう。本大会では、フラッグ戦ルールが採用されており、相手チームのフラッグ車を行動不能としたチームが勝利となります』

 

『如何にフラッグ車を攻めるか守るかが勝負のポイントですね』

 

『さあ、果たして勝利の女神はどちらに微笑むのでしょうか! いよいよ試合開始です! 大洗機甲部隊! そしてサンダース&カーネル機甲部隊! 君達に、幸されっ!!』

 

ヒートマン佐々木がそう言い放つと、信号弾が打ち上がり、試合開始の合図が送られた。

 

それと同時に、両チームは移動を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

観覧席エリアにある、小高い丘の上………

 

「始まったか………」

 

「ええ、そうね………」

 

「数の上ではサンダース&カーネル機甲部隊が圧倒的です。大洗機甲部隊に勝ち目は有るんでしょうか?」

 

そこには聖ブリティッシュのアールグレイ、聖グロリアーナのダージリンとオレンジペコの姿が在った。

 

「アラ? ペコ。貴方は大洗機甲部隊がそう簡単に負けると思って?」

 

「それは………でも、戦車の数は倍。歩兵の数に至っては6倍の差が有るんですよ。戦車の性能や武器の性能を見ても………」

 

ダージリンがそう言うと、オレンジペコはそう返す。

 

「歴史上、数や質の有利を覆して勝ったと言うのは良くある事だ」

 

しかし、アールグレイが仏頂面で超大型モニターを見ながらそう言う。

 

「まあ、兎に角………今は見守りましょう。彼女達と………彼等の戦いをね」

 

ダージリンはそう言い、持っていたカップの紅茶を飲むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、別方向の丘の上でも………

 

「始まったか………」

 

「フン、サンダース&カーネル機甲部隊の勝ちは決まっているわ………大洗が勝てる要素は何1つ無いんだから」

 

黒森峰のまほとエリカが陣取り、試合を見ている。

 

「それは分からないよ。勝負と言うものは、始まってから終わるまで、如何転ぶか分からないものさ」

 

エリカの言葉に、都草がそう返す。

 

「梶歩兵隊長。隊長は大洗が勝つと思っているのですか?」

 

「フフフ、その方が私としては望ましいね。彼とは銃火を交わそうと言う約束もしているし」

 

不満そうに言うエリカだったが、都草は笑みを浮かべている。

 

「何を馬鹿な事を………あんな奴等が勝ち残れる筈が………」

 

と、エリカがそう言いかけた瞬間………

 

「フレー! フレー! み・ほ・ど・の!! ガンバレ! ガンバレ! 大洗っ!!」

 

会場中に響き渡るんじゃないかと思う様な大声と共に、『必勝! 西住 みほ! 大洗機甲部隊!!』と書かれた応援旗を振り回している久美が挙げる。

 

「!? ちょっ!? 久美!? アンタ何やってんの!?」

 

「何って、決まっているであります! みほ殿の応援であります!! さあ、エリカ殿も一緒にやるであります! フレー! フレー! み・ほ・ど・の!! ガンバレ! ガンバレ! 大洗っ!!」

 

仰天するエリカに、久美は当然の様にそう返すと、再びみほと大洗機甲部隊の面々に向かって声援を送り始める。

 

「ちょっ! 止めなさいっ! アンタ、どっちの味方なの!?」

 

「みほ殿の味方に決まっているであります!!」

 

止めようとするエリカを振り払い、久美は再び当然の様にそう言い放った。

 

「…………」

 

「ハハハハ、久美くんはホントにブレないな」

 

「総隊長! 梶歩兵隊長! 見てないで止めて下さ~いっ!!」

 

そんな久美を横目に、我関せずと言った態度を取っているまほと、笑ってその様子を見ている都草に、エリカの情けない声が挙がるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

サンダースとカーネルとの交流(特に小太郎とケイの絡み)やその他のキャラの描写が長引き、1回戦が試合開始のところで終わりとなってしまいました。
本格的な戦闘は次回からとなります。
申し訳ありません。
次回は白熱する試合内容をお届けできると思うので、楽しみにしていて下さい。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。


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