ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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チャプター33『発進! 未完の超重兵器です!!』

『劇場版 ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース ~炎のさだめ~』

 

チャプター33『発進! 未完の超重兵器です!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大学選抜チームの精鋭歩兵達が現れる中………

 

補給地点の防衛に回っていた大洗連合の部隊は………

 

 

 

 

 

大洗連合・第1補給地点………

 

「撃てっ!!」

 

カレンの号令で、ハッピータイガーのアハトアハトが火を噴き、放たれた地面でバウンドすると、パーシングの車体正面下部装甲に命中!

 

爆発の後、そのパーシングは白旗を上げた。

 

「手榴弾、行くぞーっ!!」

 

「伏せろーっ!!」

 

「「「「「!!」」」」」

 

更に続けて、ライが手榴弾を投擲し、味方の知波単歩兵達が一斉に伏せる。

 

「「「「「どわああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」」」」」

 

大学選抜歩兵達が纏めて吹き飛ぶ。

 

「粗方片付いたかしら?」

 

そこで周辺に動く敵影が無い事を確認したカレンがそう言う。

 

「そうみたいだね」

 

ライも随伴歩兵部隊と共に周囲を確認し、同じ様に呟く。

 

「カレンさん、ありがとうございます」

 

そこで、エクレールが乗るソミュアS35が、カレンのハッピータイガーの横に並び、ハッチから姿を見せていたエクレールがお礼を言う。

 

「気にしないで良いわよ、エクレール。貴女には色々と迷惑を掛けたからね」

 

「全くです………」

 

するとそこで、マジノ女学院のルノーB1bisがやって来て、ハッチから姿を見せていた『ガレット』がそう言って来る。

 

「ガレット………」

 

「私はまだ忘れていませんよ………貴女がマジノで何をしたのかを」

 

カレンが反応すると、ガレットは露骨に恨みがましい顔をしながら、カレンを睨み付ける。

 

「ちょっ! ガレット!………! アツツツッ!」

 

そんなガレットを咎めようとするエクレールだったが、持病の胃痛が襲い掛かる。

 

「フン、お嬢様とか言っといて、陰湿なイジメする奴等を懲らしめてやっただけよ」

 

するとカレンも、ガレットを挑発するかの様にそう言い放つ。

 

「何ですって………?」

 

「何よ………?」

 

忽ち2人はメンチを切り合い、視線で火花を散らす。

 

険悪な雰囲気が漂い始める。

 

「ちょっ! カレンッ!………」

 

と、ライが止めようとしたその瞬間!

 

「止めんか、この馬鹿者共ぉーっ!!」

 

「ぐはっ!?」

 

「はわっ!?」

 

突如チハ(旧砲塔)と共に現れた絹代が、急停止の勢いに乗ってキューポラから跳び、先ずカレンに飛び蹴りをかますと、その反動を利用して再度飛び、今度はガレットに跳び蹴りし、またも反動で宙に舞って自分の戦車に戻って砲塔の上に仁王立ちした!

 

「この危急存亡の時にくだらない諍いしてんじゃないっ!! よってこの喧嘩! 私が預かるっ!! 異議は認めんっ!!」

 

「「ハ、ハイ………」」

 

カレンとガレットはその迫力に押され、頷く。

 

(凄い………私に、あんな風に強引にでも纏める力があれば………)

 

そんな絹代の事を、尊敬の眼差しで見つめるエクレール。

 

「! ウッ………!!」

 

そこへまた胃痛が襲って来て、胃の辺りを押さえて苦悶の表情を浮かべる。

 

「大丈夫?」

 

すると、絹代はソミュアS35の横にチハを付け、ソミュアS35の方に移動すると、エクレールを介抱する。

 

「ゴメンなさい、ウチの隊員が」

 

「い、いえ、コレは持病でして………く、薬………」

 

謝る絹代にそう返しながら、エクレールは愛用の胃薬の薬瓶の蓋を開けようとする。

 

しかし、胃痛は深刻なレベルとなっており、手が震え始めて、瓶の蓋が開けられない。

 

(くうっ! こんな時に私は………!)

 

自分の神経の細さに嫌気の差すエクレール。

 

とそこで、横から手が伸びて来たかと思うと、エクレールが持っていた胃薬の薬瓶を引っ手繰る。

 

「あっ………!」

 

エクレールが驚いていると、薬瓶を引っ手繰った絹代は、すぐに蓋を開けると、中の錠剤を適量だけ取り出す。

 

「ホラ」

 

そして、その錠剤を持った手をエクレールの口の前に差し出す。

 

「………!」

 

一瞬戸惑ったものの、すぐに口を開けるエクレール。

 

「ハイ、水」

 

その口の中へ錠剤を流し込む様に入れると、続いて絹代は持っていた水筒を手に取り、これまた蓋を開けてエクレールに差し出す。

 

「んぐ、んぐ………」

 

エクレールは水筒を持つ絹代の手に自分の手を重ね、水を仰ぐ。

 

「ゆっくりとね。焦らないで」

 

甲斐甲斐しくエクレールを介抱し続ける絹代。

 

「プハッ………ありがとうございます」

 

漸く薬を飲めた事で落ち着いたエクレールは、絹代に礼を言う。

 

「気にしなくて良いわ。これぐらい当然よ」

 

それに対し、爽やかな笑みを返す絹代。

 

「…………」

 

マジノでは先ず見ない、正に竹を割った様なサバサバとした性格の絹代は新鮮であり………

 

同性でありながらも魅力的であった。

 

「…………」

 

ボーっとした様子で絹代を見つけるエクレール。

 

「? 如何したの?」

 

そんなエクレールの視線に気づいた絹代が問う。

 

「………お姉様と呼ばせて下さい」

 

次の瞬間には、エクレールはそう言い放っていた。

 

「ハイ………?」

 

しかし、その言葉に要領を得ない絹代は首を傾げる。

 

「アラアラ………」

 

「まあ………」 

 

そして何故か、マジノ女学院の生徒達は、そんな2人の姿を見て何やら頬を染めていた。

 

「………何なの、この空気?」

 

「さあ………?」

 

その光景に、カレンとライは苦笑いを零すしかないのだった。

 

「紅月副総隊長。1度補給に戻りましょう。もう弾も燃料も心許無いです」

 

「足回りもチェックしたいねえ」

 

するとそこで、ハッピータイガーの装填手と操縦手が、カレンにそう意見して来た。

 

「と、そうね。敵の攻撃は凌いだし、一旦………」

 

カレンがそう返していた瞬間………

 

「!? て、敵増援出現っ!!」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

知波単偵察兵の1人がそう声を挙げ、一同に一斉に緊張が走った。

 

その言葉通り、新たな大学選抜部隊が、土煙を上げながら迫って来ていた。

 

「第2波っ!?」

 

「そんなっ!? アレだけの戦力を投入しておきながら、まだ余力があったって言うのっ!?」

 

驚愕の声を挙げるライとカレン。

 

現れた大学選抜部隊は、先程退けた部隊と同等の規模であった。

 

「非常用の戦力まで投入するなんて………コレじゃあ、勝っても大学選抜チームは暫く機能不全になっちゃうよ」

 

その新たに現れた大学選抜部隊の指揮を執っている、チャーフィーに乗る女子大生『アサミ』はそんな事を口にする。

 

「でも家元直々の命令だし………仕方ないか。全部隊、攻撃開始」

 

しかし、割り切る様にそう言うと、攻撃命令を下す。

 

それに従って、大学選抜部隊の戦車部隊が一斉に砲撃を開始した。

 

「くうっ!?」

 

「キャッ!?」

 

至近弾の衝撃に、絹代とエクレールが一瞬たじろぐ。

 

『こ、コチラ竪琴&クメン! 敵の攻撃苛烈! 被害甚大ッ!!』

 

『クレオパトラ&スフィンクス! もう弾薬が足りんっ!! 補給せんと戦闘継続は無理じゃっ!!』

 

『鉱関よ! コッチもコレ以上は持たないわっ!!』

 

そして、補給拠点防衛任務に就いていた各機甲部隊からも次々にそんな報告が挙がる。

 

「マズイわね………せめて補給に戻れさえすれば………」

 

流石の絹代も苦い顔を浮かべていた。

 

するとそこで………

 

轟音が響いたかと思うと、新たに現れた大学選抜部隊の中に、巨大な砲弾が叩き込まれた!!

 

「「「「「キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」」」」」

 

数台のパーシングとチャーフィーが纏めて吹き飛ばされ、白旗を上げる。

 

「! 今のはっ!?」

 

「今の内に後退しろっ!!」

 

カレンが驚きの声を挙げた瞬間、その場に巨大な戦車………『マウス』が姿を現した。

 

「! 黒森峰のマウスッ!?」

 

「ココは私が引き受ける! 今の内に後退して補給するんだっ!!」

 

続いてエクレールがそう声を挙げた瞬間、マウスの車長がそう呼び掛けて来る。

 

「車長、良いんですか? 総隊長からの命令は来てませんけど………」

 

「責任は私が取る! ココで動かなかったら何の為に待機していたのか分からん! 命令が無かったから何もしませんでした、はもう黒森峰じゃ通用しないんだっ!!」

 

不安そうに訊いてきた通信手にそう返し、マウスの車長は毅然とした様子を見せる。

 

そして次の瞬間には、マウスの主砲が再び火を噴いた!!

 

「「「「「「「「「「メメタアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!?」」」」」」」」」」

 

今度は榴弾が放たれた様で、大学選抜歩兵部隊の中に着弾した砲弾は激しく爆ぜ、大学選抜歩兵を一気に数10名纏めて吹き飛ばした!!

 

とそこで、反撃に放たれたチャーフィーやパーシングの主砲弾が、マウスに次々と襲い掛かる。

 

しかし、最大で200ミリ以上あるマウスの装甲を貫通する事は出来ず、火花を散らして弾かれて行く。

 

「そんな物がこのマウスに通用するかぁっ!!」

 

マウスの車長がそう吠えた瞬間、マウスは3度目の発射を行う!

 

砲撃を見舞っていたチャーフィーやパーシングの中に砲弾が着弾したかと思うと、直撃を受けた車輌は一瞬で白旗を上げ、周辺の車輌も着弾時の衝撃波によって引っ繰り返った!

 

「良いぞっ! この調子でドンドン………」

 

と、マウスの車長がそう言おうとした瞬間………

 

マウスの発砲音に負けないくらいの轟音が鳴り響き、マウスの傍に巨大な砲弾が着弾!

 

「!? うおわっ!?」

 

土埃が空高く舞い上がり、マウスにも大きな衝撃が走った。

 

「な、何だっ!?………!!」

 

マウスの車長が砲撃の正体を確認して驚愕を露わにする。

 

そこに居たのは………

 

『T28重戦車』だった!!

 

「『T28重戦車』!? 西部以外にも持っていたのかっ!?」

 

「クソッ! 撃てっ!!」

 

ライがそう叫んだ瞬間、マウスの車長の号令が飛び、マウスの主砲が発砲される。

 

だが、128ミリのマウスの主砲でも、300ミリ在るT28の装甲を貫けず、火花を散らして弾かれる。

 

反撃とばかりにT28が発砲。

 

また幸いにも弾は逸れたが、大きな振動がマウスを襲う。

 

「クッ! 駄目かっ!! 早く後退して補給しろっ!! 奴は私達がこの身に代えても阻止するっ!!」

 

敵わないと悟ったマウスの車長は、せめて当初の目的である部隊の補給の時間を稼ごうと、カレン達に向かって怒鳴る様に言う。

 

「でも………!?」

 

「紅月副隊長! どの道、補給を受けないとコレ以上の戦闘続行は不可能ですっ!!」

 

「だからって………!!」

 

ハッピータイガーの砲手の声に、カレンは分かっているのだが、目の前の味方の危機を目の当たりにして躊躇する。

 

その時………

 

「!? 紅月副隊長っ!!」

 

知波単の随伴歩兵部隊員の1人が突如驚きの声を挙げた。

 

「!? 如何したのっ!?」

 

「我が学園艦の『第7昇降口』が………開いていますっ!!」

 

「!? 何ですってっ!?」

 

その知波単の随伴歩兵部隊員からの報告を受けたカレンは、驚愕を露わに、知波単学園艦の『第7昇降口』を見やった。

 

報告通りに、他の昇降口と比べて分厚い装甲の様で、『封印』と言う文字が書かれていた扉が大きく開け放たれていた。

 

そして、まるで地鳴りを思わせる様な重低音と共に、その扉の奥の暗闇の中から、何かが現れようとしている。

 

それは………

 

マウスにも劣らぬ巨体の………

 

『超重戦車』だった。

 

「あ、アレはまさかっ!? 『オイ車』!?」

 

エクレールがその超重戦車を見てそう声を挙げる。

 

 

 

 

 

『オイ車』

 

大型イ号車、ミト車とも呼ばれる大日本帝国陸軍が開発した超重戦車である。

 

150トン戦車とも呼ばれており、その名前からも分かる様に、マウスと比べると軽い。

 

しかし、全長と全幅はマウスを上回っており、大きさで言えば世界最大の超重戦車である。

 

だが、ドイツ軍のマウスさえ真面に動かなかった超重戦車を、日本に技術力で動かせるワケもなく………

 

結局知らぬ間に開発は止まってしまい、戦後には資料すら存在を危ぶまれた幻の日本製超重戦車だ。

 

 

 

 

 

「いえ、違います! オイ車には車体前部に2門の副砲が在る筈です!!」

 

だがそこで、マジノ女学院の副隊長『フォンデュ』が、オイ車の特徴である副砲が無い事を指摘する。

 

「アレは『五式重戦車』です」

 

するとそこで、ライがそう言って来た。

 

「『五式重戦車』?」

 

聞き慣れない戦車名に、エクレールは首を傾げる。

 

「オイ車の派生型です。計画だけだったそうなんですが………実は本当は密かに作られていたそうなんです。終戦直前にウチの学園艦の奥深くに隠され、厳重に封印されていたんです」

 

「それが如何してっ!? 展示用に引っ張り出そうとはしてたけど………」

 

ライが説明を続ける中、カレンは双眼鏡でその超重戦車………『五式重戦車』を確認する。

 

「!? 福ちゃんっ!?」

 

そして、その砲塔の上で、伝統と信頼と実績の『ガイナ立ち』を決めている福田の姿を目撃する。

 

「クッ! 止めなさい、福ちゃん! 五式重戦車は完全じゃないわっ!!」

 

通信手から通信機を引っ手繰ると、すぐに五式重戦車の福田に通信を送る。

 

『現状で1時間は稼働可能でありますっ!!』

 

だが、福田からそんな返答が返って来た!

 

「けど、機動戦闘は無理よっ!!」

 

『イザとなれば、ぶつけるまででありますっ!!』

 

「! 福ちゃんっ!!」

 

イザとなれば特攻も辞さないと言う福田の言葉に、カレンは思わず怒鳴る。

 

「福田! 目標は飽く迄敵の主力だっ!! 雑魚には目もくれるなっ!!」

 

しかしそこで、絹代がそう言って通信に割り込みを掛けて来た!!

 

『! 西総隊長!………ハイッ!!』

 

「! 西総隊長っ!?」

 

「行けっ!!」

 

福田の行動を認めた絹代に、カレンは驚愕の声を挙げたが、絹代は構わずそう命じる。

 

「戦車っ! 前・進ッ!!」

 

そして福田の号令で、五式重戦車はその巨体を進ませ、荷揚げ用の高架橋を渡り始めた!

 

余りの重量で、通った後の高架橋が崩落して行く。

 

「なっ!? 何アレッ!?」

 

アサミが五式重戦車の存在を確認し、思わず固まる。

 

そしてT28は、狙いをマウスから五式重戦車に変え、主砲を放とうとしたが………

 

「主砲! 撃てえぇっ!!」

 

それよりも早く、再びの福田の号令が響き、五式重戦車の14センチ主砲が火を噴いた!!

 

真面に喰らったT28は、まるでメンコの様に引っくり返され、底部から白旗を上げた!

 

「ヒューッ! やるじゃないか、知波単のっ!!」

 

その光景に、マウスの車長は思わず口笛を吹く。

 

「黒森峰の超重戦車殿! ご協力を願えますかっ!?」

 

そこで福田は、マウスの車長にそう問う。

 

「コッチからお願いするよ! さあ、掛かってきなっ!!」

 

「この福田と五式重戦車が、相手になるでありますっ!!」

 

そしてマウスの車長と福田は、そう言い放って大学選抜部隊の前に敢然と立ちはだかる。

 

「今の内よ! ココはあの子達に任せて補給よっ!!」

 

「! 了解っ!!」

 

絹代達はその場を2人に任せ、補給の為に後退するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

補給地点の防衛に全力を尽くす絹代達。
しかし、敵も本当に出し惜しみ無しの大戦力を繰り出してくる。
黒森峰のマウスも危うくなったその時!
福田が知波単の最終兵器をかって出撃!

恐らく皆さんお分かりでしょうが、発進にシーンは『トップをねらえ!』のガンバスターの初発進シーンのパロディです。
次の知波単を担う福田に、ガイナ立ちとあの遣り取りを是非やってもらいたかったので。

次回からまた、大学選抜の精鋭が登場。
次に登場するのは………超人です。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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