ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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チャプター38『死闘です!(その3)』

『劇場版 ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース ~炎のさだめ~』

 

チャプター38『死闘です!(その3)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メガフロート艦上・遊園地跡………

 

ワールドランドのウェスタンランドの外れ………

 

「波紋法だと………?まさか未だにそんなモノを修行する奴が居たとはな………」

 

まだ右手から煙を上げている影将軍Aを横目に、影将軍Bは蟷斬を見据えてそう言い放つ。

 

「仙道って、あの選択科目の中に在ったアレか?」

 

一方白狼は、蟷斬が言った波紋法………仙道が必修選択科目の中に在った事を思い出す。

 

「ケッ、授業なんかでやるのと一緒にするな。アレは所詮、真似事だ」

 

しかし蟷斬は心外だと言う様な言葉を返す。

 

「本物の仙道………波紋法は、特殊な呼吸法により、体を流れる血液の流れをコントロールして血液に波紋を起こし、『波紋』………即ち生命エネルギーを生み出す」

 

そして、白狼に向かって得意気に説明を始める。

 

「そのエネルギーは太陽にも匹敵する!」

 

「太陽だぁっ!?」

 

蟷斬の説明に半信半疑な様子の白狼。

 

「フフフ、確かに波紋のエネルギーはそれ程までに凄まじい………」

 

とそこで、右手から白い煙を上げたまま、影将軍Aが立ち上がる。

 

「「!!」」

 

咄嗟に身構える白狼と蟷斬。

 

「だが、それを使えるのは貴様だけでは無い」

 

「!? 何ぃっ!?」

 

続く影将軍Aの言葉に、蟷斬が驚きを示した瞬間………

 

白煙が上がり、オレンジ色のスパークが走っていた影将軍Aの右手に、より強力なオレンジ色のスパークが奔り、白煙と最初から上がっていたオレンジ色のスパークが掻き消される。

 

「!? アレはッ!?」

 

「波紋だとっ!?」

 

その様子を見て、再度驚きを示す白狼と蟷斬。

 

「フフフ、俺が最早使う者も殆ど居なくなった波紋を知っていた事で気づかなかったのか?」

 

そんな2人に対し、影将軍Aは不敵に笑う。

 

「チイッ! 自分の波紋で俺の波紋を打ち消しやがったのか!!」

 

舌打ちをしながら、両手にナイフを逆手に持って構える蟷斬。

 

「さっきからお前が使っている手品みたいな技も波紋の技か!?」

 

白狼もそう問い質す様に言いながら構えを執る。

 

「それは自分で確かめて見たまえ………」

 

そこで、そう言う台詞と共に影将軍Bが、影将軍Aと並び立つ。

 

「チッ! オラァッ!!」

 

「テメェッ! 抜け駆けすんじゃねえっ!!」

 

白狼が影将軍Bに踊り掛かると、蟷斬も遅れは取らぬと言う様に影将軍Aに斬り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白狼VS影将軍B………

 

「ホワタァッ!!」

 

「ぬんっ!」

 

繰り出された白狼の飛び蹴りを、左腕で防いだかと思うと、そのまま身体を回転させて受け流す影将軍B。

 

「セアッ!!」

 

そして、その回転の勢いに乗せて右手の影剣で白狼の首を狙って突きを繰り出す。

 

「フッ!」

 

だが、今度は白狼がそれを回転する様に躱し、その勢いに乗せた右の裏拳を繰り出す。

 

しかし、その裏拳が当たるかと思われた瞬間に、影将軍Bの姿が無数のトランプとなって消える。

 

「そいつはもう見切ったっつったろぉっ!!」

 

するとその瞬間!

 

白狼は右腕を振り被って、右の拳を地面に叩き付けた。

 

余程の威力だったのか、右腕が地面に肘の辺りまで突き刺さる。

 

「やるなっ!!」

 

その腕がグイッと持ち上がったかと思うと、地面の中から白狼の右手を摑んでいた影将軍Bが飛び出して来て、白狼を投げ飛ばす。

 

「ハッ!!」

 

後方宙返りをしながら着地を決める白狼。

 

「ムウン…………」

 

その白狼に向かって、油断無く影剣を構える影将軍B。

 

(トランプもだが、あの剣も厄介だな………)

 

白狼も油断無く構えながらも、影将軍Bが持つ影剣への攻略に思案を巡らせる。

 

(………よしっ!)

 

するとそこで、何かにを思い付いた様な顔になったかと思うと………

 

「ホワタァッ!!」

 

何を思ったのか、近くに在った西部劇風の建物の木造施設に蹴りを入れた!

 

「むっ!?」

 

何の積りだと影将軍Bが身構えると………

 

「………コイツが良いか」

 

白狼は壊れて崩れ落ちた施設の木材の中から、丁度良い長さと太さの木材を手にし、まるで演武をする様に振り回し、構えを執った。

 

「ほう? 棒術か」

 

その構えが棒術の構えである事を見抜いた影将軍Bがそう言って来る。

 

「カンフーだけじゃなくて、一通りの武術は齧ったんでね」

 

「そうか………トランプカッターッ!!」

 

白狼がそう返すのを聞いた後、影将軍Bはトランプカッターを投げつける。

 

「ホオオワタアアアァァァァーーーーーッ!!」

 

だが、白狼は飛んで来るトランプを、手に持っていた棒をまるで扇風機の羽の様に回転させ、弾き飛ばす。

 

「トランプショットッ!!」

 

すると影将軍Bは、今度は爆発するトランプショットを繰り出す。

 

「!!」

 

しかし白狼は、その場にしゃがんだかと思うと、下半身のバネを目一杯使って、低い姿勢のまま影将軍Bに向かって水平に跳躍した!

 

「ゼヤアッ!!」

 

そして影将軍Bの懐に飛び込むと、棒を振り被る。

 

「馬鹿め! 懐に入っては棒術の方が不利だぞっ!!」

 

だが、白狼が棒を振り降ろすよりも早く、影将軍Bの振り降ろした影剣が白狼の脳天に向かう!

 

「如何かなっ!!」

 

と、その瞬間!!

 

白狼は振り降ろそうとしていた棒の機動を変えて地面に柄を付ける様にしたかと思うと、そのまま棒高跳びの要領で身体を持ち上げ、影将軍Bの頭上を飛び越えようとする。

 

「何っ!?………と言うと思ったのか?」

 

一瞬驚いたかの様な様子を見せた影将軍Bだったが、それは見せかけであり、素早く影剣の軌道を変え、白狼が支えにしていた棒を斬り裂いた!

 

「!? おうわっ!?」

 

バランスを崩した白狼は、影将軍Bに向かって落下する。

 

「終わりだ、若造」

 

影将軍Bは、落下して来る白狼に対し、影剣を突き上げようとする。

 

(クソッ! このままじゃ!!………)

 

如何にか体勢を整えようと空中で身体を捻る白狼だが落下位置は変わらない。

 

「トドメだ! 影剣っ!!」

 

そして遂に、影将軍Bの影剣が白狼目掛けて突き上げられる!!

 

「チキショウッ!!」

 

白狼は悪態を吐きながら、自分に向かって突き上げられて来る影剣の刀身を、無意識の内に摑もうとしていた。

 

その瞬間………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方………

 

蟷斬VS影将軍Aの様子は………

 

「オラァッ!!」

 

影将軍Aの顔面目掛けて、ナイフを握ったままの拳を繰り出す蟷斬。

 

「フッ………」

 

影将軍Aはスウェーの様に身を反らして避けようとする。

 

が!

 

「!? グッ!?」

 

突如伸び切ったと思われた蟷斬の腕が更に伸び、間合いが伸びた事で影将軍は真面にパンチを喰らってしまう。

 

「ぬうっ! 腕の関節を外してリーチを伸ばしたかっ!?」

 

「コイツも波紋の応用よ!」

 

顔を押さえながら言う影将軍Aに、蟷斬はそう返す。

 

今蟷斬が使った技は『ズームパンチ』と言い、腕の関節を外しパンチの射程を延ばす波紋法の基本技である。

 

関節を外した際の激痛は、波紋で和らげているのだ。

 

「小癪な………」

 

そう呟きながら構えを執り直す影将軍だったが、その瞬間には蟷斬は影将軍の懐に飛び込んでいた。

 

「!?」

 

「おせぇっ! 仙道波蹴っ!!」

 

慌てて防御しようとした影将軍Aだったが、それよりも早く蟷斬が、波紋を込めたひざ蹴りを、再度影将軍の顔面に叩き込む!

 

「ぬおおっ!?」

 

先程のズームパンチのダメージも合わさり、影将軍Aの特徴である頭全体を覆う様な透明なヘルメットに罅が入る。

 

「そらぁっ!!」

 

駄目押しとばかりに、波紋を両手に握っているナイフに流し、切り付けようとする蟷斬。

 

「舐めるなぁっ!!」

 

だが、そこは腐っても大学選抜精鋭歩兵。

 

素早く体勢を立て直したかと思うと、自らも波紋を影剣に流し、蟷斬のナイフを2本とも受け止める。

 

両者の波紋がぶつかり合い、激しいスパークが飛び散る!

 

「ぐうううううっ!!」

 

「ぬうううううっ!!」

 

両者は1歩も引かずに鍔迫り合いを展開する。

 

やがて、2人の波紋エネルギーは相反して爆発を起こす!

 

「ぬあああっ!?」

 

「おおおっ!?」

 

その爆発の爆風で吹き飛ばされる蟷斬と影将軍A。

 

「チイッ!!」

 

背中から地面にぶつかった蟷斬だったが、すぐに後転する様に受け身を執り、体勢を立て直す。

 

すぐさま、影将軍Aの姿を探すが何処にも見当たらない。

 

と、次の瞬間!!

 

蟷斬の事を5枚の巨大トランプが取り囲んだ!

 

「!?」

 

蟷斬が驚いていた瞬間!

 

5枚の巨大トランプから、一斉に火炎放射が放たれた!

 

「! 波紋っ!!」

 

咄嗟に身体の表面に波紋を流し、火炎を防御する蟷斬。

 

だが、巨大トランプからの火炎は絶え間無く出続ける。

 

「フフフ………何時まで耐えられるかなぁ?」

 

「コノヤロウッ!!」

 

何処からとも無く響いてくる影将軍Aの声に、蟷斬は苛立っている様な声を挙げる。

 

(クソッ! マズイッ! 酸素が無くなって来て呼吸が………波紋の呼吸のリズムが乱れる!)

 

しかし、火炎に包まれているせいで徐々に酸素が無くなって行き、呼吸が乱れ始める。

 

波紋のエネルギーは呼吸によって生み出される。

 

逆に言えば、呼吸が乱れると波紋エネルギーは消えてしまう。

 

酸素が徐々に減少して行けば、当然呼吸は出来なくなる。

 

今蟷斬を守っている波紋のバリアーが無くなれば、即座に蟷斬は戦死判定だ。

 

しかし、今の状況で波紋のバリアーを解いても即座に戦死判定になるのは変わりない。

 

正に進退窮まる状況だった。

 

「クソがぁっ!!」

 

「このままジワジワと焼き尽くして………!? むっ!?」

 

悪態を吐く蟷斬に、影将軍は得意気に言い放とうとして、何かに気づく。

 

「分身が倒された………と言う事は」

 

白狼と対峙していた分身の影将軍Bが倒された事を察した瞬間………

 

「こう言う事だぁっ!!」

 

そう言う叫びと共に白狼が姿を現し、巨大トランプの1枚に空中回し蹴りを喰らわせる。

 

その際に、白狼の足からオレンジ色のスパークが発せられる。

 

「ぬあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!?」

 

その蹴りを喰らった瞬間、全ての巨大トランプにオレンジ色のスパークが走り、ボンッ!と煙を発して巨大トランプが消える。

 

「!? テメェッ! それはっ!?」

 

漸く火炎攻撃から解放された蟷斬が、着地した白狼の蹴りを繰り出した方の足に迸っているオレンジ色のスパークを見て驚愕する。

 

「へっ、見様見真似だったが、上手く行ったみたいだな」

 

そう言って不敵に笑う白狼。

 

今彼が使っていたのは、紛れも無く『波紋』だった。

 

(見様見真似だと!? コイツ! アレだけ見ただけで波紋をラーニングしやがったのかっ!?)

 

そんな白狼に対し、蟷斬は内心で驚愕を続けていた。

 

「ぐううっ! オノレェ………」

 

とそこで、本体だけとなった影将軍が舞い散るトランプと共に姿を現す。

 

その全身にはオレンジ色のスパーク………波紋が迸っている。

 

「………むううんっ!!」

 

だが、次の瞬間に気合を入れる様な動きをしたかと思うと、波紋を吹き飛ばす。

 

「貴様の見様見真似の波紋など通用せんっ!!」

 

そう言い放つ影将軍だったが、やはりダメージは有るのか、少し息が上がっている様に見える。

 

「クソッ! ハア………ハア………」

 

「ゼエ………ゼエ………」

 

だが、それは白狼も蟷斬も一緒だった。

 

お互いに残る体力は1撃分………

 

つまり、次の攻撃で全てが決まる。

 

「………オイ、クソ蟷斬………10秒だけ手ぇ貸せ………」

 

「………妥当な時間だ」

 

するとそこで、白狼と蟷斬はそう言い合ったかと思うと、白狼が蟷斬の背後に隠れる様に移動する。

 

「「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」」

 

そして、その状態で影将軍目掛けて突進した!

 

(1人が盾となり、もう1人が仕掛ける積りか………だが、そう上手くは行かんぞ)

 

2人の狙いをそう読み、影将軍は影剣を構える。

 

「喰らえっ! 波紋疾走っ!!」

 

最初に仕掛けたのは蟷斬。

 

波紋を纏った右の拳を影将軍に繰り出す!

 

「セエアッ!!」

 

それに対し、影将軍は影剣を振るう!

 

蟷斬の波紋パンチと影将軍の影剣がぶつかり合い、激しくスパークを散らす。

 

とそこで、白狼が蟷斬の背後から飛び出す。

 

「馬鹿め! お見通しだっ!!」

 

読んでいた影将軍は左手に持っていたトランプを投擲しようとする。

 

だが………

 

「ハアッ!!」

 

仕掛けるかと思われた白狼は大きく迂回し、影将軍の右背後に回った!

 

「!? 何っ!?」

 

何故態々背後にと思いつつ、自分の身体が邪魔でトランプを放れない為、蟷斬にトランプの標的を変更し、白狼には影剣を振り直して対応しようとする影将軍。

 

しかし………

 

「!? 離れんっ!?」

 

何と!

 

蟷斬の拳とぶつかっていた影剣が、まるで強力な磁石にくっ付いた様に剥がれなくなっていた!

 

「波紋にはこういう使い方も有るんだぜ!」

 

蟷斬が影将軍に向かってそう言い放つ。

 

如何やら、波紋によって影剣を拳に吸い付けている様だ!

 

「!? しまっ………」

 

「うおおおおおっ!!」

 

た、と言い切る前に、白狼の波紋を纏ったパンチが、影将軍の背中に叩き込まれた!

 

「ぬおおおおおおおおおっ!?」

 

「刻むぜっ!」

 

「波紋のビートッ!!」

 

影将軍の悲鳴が挙がる中、白狼と蟷斬は、己の中に残る全ての波紋を、影将軍へと流し込んだ!!

 

2人分の波紋を流し込まれ、更に激しいスパークが影将軍の全身に迸る!

 

「「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!!」」

 

白狼と蟷斬の最後の気合の咆哮が木霊した瞬間!

 

巨大な爆発が起こり、3人を包み込んだ!!

 

朦々と立ち込める黒煙………

 

それがやがて晴れた時………

 

「「…………」」

 

お互いに吹き飛ばされて仰向けに倒れている白狼と蟷斬………

 

そして爆心地点で片膝を着いて、影剣を支えにしている影将軍の姿が在った。

 

とそこで、影将軍の懐から1枚のトランプが零れ落ちる。

 

スペードのA(エース)のカードだった。

 

「スペードのA(エース)………ククク、成程………俺の負けは決まっていたと言う事か………」

 

そのトランプを見た影将軍は自嘲する様に笑ったかと思うと、最後の力を絞って立ち上がる。

 

そして………

 

「大学選抜チーム………万歳っ!!」

 

大学選抜チームを称えて万歳をし、そのまま倒れて動かなくなった。

 

やがて、戦死判定を告げるブザーが鳴った。

 

「「…………」」

 

一方、既に倒れていた白狼と蟷斬も動かず、程無くして戦死判定を告げるブザーが鳴った。

 

如何やら、全ての体力を使い果たし、戦死と判定された様だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その頃………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

影将軍と蟷斬・白狼の死闘。
波紋を駆使する蟷斬と見様見真似で会得する白狼。
しかし、影将軍も一筋縄ではいかない。
そして最後は2人が力を合わせて相討ちに。
続いての激戦の場は………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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