ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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チャプターFINAL『いつもあなたがです!』

『劇場版 ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース ~炎のさだめ~』

 

チャプターFINAL『いつもあなたがです!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワイズマンは死んだ………

 

西住流と島田流の因縁を利用し、神として現世に現れようとした壊れた機械は………

 

海底の奥底へと消えたのだ。

 

ワイズマンと共に運命を共にしたと思われたロッチナだが………

 

後に行われた沈んだメガフロート艦の調査では………

 

彼の死体は発見されなかった………

 

しかし、状況からして生存は有り得ないとされ、死亡と判断される。

 

それから暫くして………

 

舩坂 弘樹に関する記録を憑りつかれた様に纏めている者が居ると言う噂が、軍事道関係者の間で囁かれる様になったのだった。

 

 

 

 

 

尚、今回の一件については、日本とアメリカ、世界戦車道連盟、そして神大コーポレーションを交えた交渉の結果………

 

一連の騒動の全ての責任はアメリカが取る事となり、それによって発生する損害は神大コーポレーションが補填する事で合意が交わされた。

 

コレにより、島田流へ責任は回避される事となる。

 

試合自体が非公式であったので、世間には知られず、西住流の様に風評被害を受ける事もなかった。

 

日本としても、世界大会を控えた今、日本の2大流派と言う屋台骨を失う事は避けられ、万々歳であった。

 

因みに、1番損をしている様に見える神大コーポレーションだったが、この件で世界での発言力を強める事となり、結果的に1番得たモノが大きい者となった。

 

 

 

 

 

また、例の無人戦車道推奨の派閥の人々は………

 

主導者だったロッチナの計画が実は詐欺であり失敗した事で、一気に勢力を落として行った。

 

元々ネット上での付き合いと言う希薄な繋がりであった為、主計画が失敗すると、まるでゲームに飽きた子供の様に殆どの人間が熱を失ったのである。

 

所詮は、引きこもりのインドア派が考えた『絵に描いた餅』だった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京都多摩地区・立川市の神大コーポ―レーション系列の某病院………

 

「え~と………763………763………」

 

廊下を歩く花束を持った私服姿のみほが、ある病室を探す。

 

「みほくん、此処だ」

 

と、隣を歩いていた同じく私服姿の弘樹が、目当ての病室を発見する。

 

「あ、ホントだ」

 

みほはその病室の扉の前に立つと、ノックする。

 

「ハ~イ、どうぞ~」

 

「失礼します」

 

「失礼致します」

 

室内から女性の入室を許可する声が聞こえると、みほは弘樹と共に病室に入った。

 

「あ、みほちゃんに舩坂くん」

 

「アラ? 貴方達も来たの?」

 

その病室に有ったベッドには、千代の姿が在り、傍にはパイプ椅子に座っている私服姿のしほの姿も在った。

 

「あ、お母さん。来てたんだ」

 

「御無沙汰しております」

 

しほに挨拶しながら、千代のベッドの傍によるみほと弘樹。

 

「コレ、お見舞いの品です。友達が選んでくれたんです」

 

「まあ、綺麗なお花………ありがとね」

 

「花瓶出しとくわね」

 

みほが見舞いの花を千代に渡すと、しほが花瓶を用意する。

 

「もうすぐ退院なされるとの事で、御様子を窺いに参りましたが、本当に御加減は宜しい様ですね」

 

「ええ、もうすっかり………」

 

弘樹がそう言うと、微笑みながら返す千代。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後………

 

精神的なショックの大きかった千代はカウンセリングが必要とされ、神大コーポ―レーション系列の病院に秘密裏に入院となった。

 

当初は完全に塞ぎこんでしまい、ミカや愛里寿達の言葉も届かなかった程だった。

 

そんな中………

 

ロッチナが隠していたと思われる春博士の遺言とも言えるメッセージが発見された。

 

それは千代宛であり、どうやら春博士は、ワイズマンの様な事になる事を危惧しては居たらしい。

 

それでも、人格の移植を決めたのは、やはり千代の為だったそうである。

 

どんな形でも傍に居て上げたい………

 

間違っていたかも知れないが、それは確かに、春博士から千代への愛だった………

 

メッセージを聞いた千代は静かに涙した。

 

それでも回復には時間が掛かるかと思われていたが………

 

ある日を境に急に生気を取り戻していた。

 

看護師によれば………

 

その日、気分転換になればと千代を連れて院外へ散歩に出たらしい。

 

その最中に………

 

パンチパーマの福耳でシッダールタと書かれたTシャツを来た人物と………

 

ロンゲで茨の冠を被ったヨシュアと書かれたTシャツを来た人物と出会い………

 

何やら話をしていたところ、急に生気を取り戻したそうである。

 

その際に、その2人に後光が差していた、動物が集まって来る、自販機のミネラルウォーターが葡萄酒になった等と言う謎の現象が確認されているが、関連は不明である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「退院したら頑張らないと。もうこれ以上ミカや愛里寿ちゃん、イプシロンに迷惑掛けられないもの」

 

「大変ね。手伝える事があったら遠慮無く言ってね」

 

「ありがと、しほ」

 

今では最大の宿敵であったしほともこうして朗らかに会話が出来る程であった。

 

(ホントにすっかり良くなったみたい………)

 

(一安心だな………)

 

そんな千代の姿を見て、みほと弘樹も心の中で安堵する。

 

その後、4人は面会終わりの時間まで、楽しそうに他愛も無い会話を交わしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜………

 

迫信の手配したチャーター機で、弘樹とみほは大洗学園艦に帰還。

 

そのまま、みほは寮への帰路に就き、弘樹はそれの送りを兼ねて付き添っていた。

 

やがてみほの部屋の在る寮の前に到着する2人。

 

「では、みほくん。また明日」

 

「うん、また………」

 

と、別れの挨拶を交わそうとした瞬間、みほの心にある欲求が浮かび上がった。

 

「…………」

 

何やら弘樹から目を逸らし、頬を染めながらモジモジとするみほ。

 

「? 如何した?」

 

そんな様子を見せたみほに、怪訝な表情を浮かべる弘樹。

 

「………あ、あのね、弘樹くん………よ、良かったら………」

 

そう言った後に言葉が途切れるみほだったが………

 

「よ、良かったら! 上がってかないっ!?」

 

やがて覚悟を決めた様な表情でそう言った。

 

(うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ! 言っちゃたぁーっ!!)

 

内心ドオキドキなみほ。

 

まあ、普通に考えれば彼女が彼氏を部屋に招くと言うのは中々大胆かつ勇気のいる行為である。

 

「いや、こんな時間に女子寮の部屋に男子が入るのはマズイだろう。折角だが遠慮しておこう」

 

しかし、この男は妙なところで生真面目さを披露する。

 

「あ、あうう………」

 

渾身の誘いを断られて落ち込むみほ。

 

(………!)

 

だがそこで、ある考えが浮かんだ。

 

「………そう言えば、弘樹くんに撃たれたお詫び、まだして貰ってないよね?」

 

「えっ? ア、アレは………」

 

その言葉には、流石の弘樹も戸惑った。

 

「まさか何のお詫びも無しに済ませようなんて不誠実な事、弘樹くんはしないよね?」

 

「…………」

 

そう言って微笑みみほの顔を見て、弘樹は黙り込む。

 

「………上がってって」

 

「………お邪魔させてもらう」

 

結局折れる弘樹。

 

神をも拒んだ男が、1人の少女に屈した瞬間である。

 

(………ちょっと強引だったかなぁ)

 

そしてそんな行為にちょっと罪悪感を感じている良い子なみほだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女子寮・みほの部屋………

 

「………お邪魔します」

 

やや緊張した面持ちでみほの部屋に踏み込む弘樹。

 

「いらっしゃい………」

 

先に上がっていたみほが、それを笑顔で迎える。

 

「えっと………適当に座っててね。今お茶淹れるから」

 

「ああ………」

 

そう促すと、みほは台所、弘樹はリビングへと移動する。

 

「…………」

 

テーブルの傍に腰を下ろすと、部屋の中を見回す。

 

(………ヌイグルミだらけだな)

 

ボコの並ぶ棚を見て、そう率直な感想を抱く弘樹。

 

(………ん?)

 

すると、その視線があるボコのヌイグルミで止まる。

 

それは、年期が入っていて古惚けているボコ………

 

みほが沙織達に語った『初恋の思い出のボコ』だった。

 

「コレは………」

 

弘樹は立ち上がり、棚に近づくと、そのボコを手に取る。

 

「弘樹くん、コーヒーの方が良いか………! あっ!? そ、それはっ!?」

 

とそこで、台所に居たみほがリビングの方を覗き込むと、弘樹が『初恋の思い出のボコ』を手にしていた為、慌ててやって来る。

 

「………思い出した」

 

すると弘樹は、そんな言葉を口にした。

 

「えっ? 思い出したって………一体何を?」

 

弘樹の言葉に、みほは首を傾げる。

 

「いや、実は………このボコと言うキャラクター、何処かで見た様な記憶があってな………」

 

「えっ? そうなの?」

 

「ああ、しかし小官が大分幼い頃の記憶だからな。中々思い出せなかったんだ」

 

(幼い頃の記憶………)

 

「しかし、このボコを見て思い出せたよ。昔コレと同じ物を人にあげた事があったんだ」

 

「………えっ?」

 

みほの顔が驚きに染まる。

 

「まだ、父と母が生きていた頃に、九州に旅行に連れて行ってもらった事があってな。何処かの街のホテルに宿泊して居た時に、物珍しさで1人で街に繰り出してな」

 

「…………」

 

「その時に、如何やら迷子になってしまって泣いていた同い年くらいの女の子を見つけてな。その子を泣き止ませる為に買ったんだ」

 

「………その街って、熊本市じゃない?」

 

「えっ?………! あ、ああ! そう言えば………」

 

「その時、国民服を着てなかった………?」

 

「何でみほくんがそんな事を………!? まさかっ!?」

 

その瞬間………

 

弘樹の中に有る迷子の少女の顔と、みほの顔が一致する。

 

「あの時の迷子は………みほくん?」

 

「やっぱり! あの時の子は、弘樹くんだっ………」

 

と、思わずみほがそう言いながら、弘樹に近寄ろうとした瞬間………

 

慌てた為か、みほは足を縺れさせてしまう。

 

「!? ふわあっ!?」

 

「!!」

 

転びそうになったみほを慌てて支えようとした弘樹だったが、彼もまた珍しく動揺していた為か、支え切る事が出来ず、一緒に倒れる!

 

「うわっ!?」

 

「きゃあっ!?」

 

音を立てて転倒する2人。

 

衝撃で、棚に飾ってあったボコが床に落ちる。

 

しかし、2人はすぐに起き上がらずに、倒れたままだった。

 

いや………

 

正確には倒れたままではない………

 

仰向けに倒れた弘樹の上に、みほはうつ伏せに倒れ込み………

 

2人の唇が………

 

触れ合っていた。

 

「「…………」」

 

混乱の為、何が起こっているのか理解出来ない2人。

 

「「………!!」」

 

だが、やがて脳が目の前の光景を理解すると、弾かれる様に離れて、慌てて起き上がった!!

 

「ゴゴゴゴゴゴ、ゴメンナサイッ!!」

 

「い、いや! そのっ!? こちらこそ!! だから!!………」

 

真っ赤になって頭から湯気を吹き出して両手を左右に振るみほと、これまた珍しくテンパっている弘樹。

 

「「…………」」

 

最後はお互いに俯いてしまい沈黙。

 

「…………」

 

そんな中で、みほは………

 

弘樹の唇が触れた自分の唇に、指を当てる。

 

まるで感触を思い出すかの様に………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局その後………

 

弘樹は帰るに帰れず、みほも帰すに帰せず………

 

会話も無いまま時間だけが過ぎ去り………

 

深夜を回ったところで、漸く弘樹は帰宅………

 

翌日、演習に顔を出すと………

 

即座に沙織を初めとした戦友達に何か有ったと悟られ………

 

散々質問攻めにされて、恥かしい思いをした2人だった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エピローグ・愛里寿ウォーにつづく




新話、投稿させていただきました。

遂に劇場版もコレにて完結です。
精神的なショックが大きかった千代も、春博士のメッセージと聖人御2人の力で無事回復致しました。

最後はラブコメで締めさせていただきました。
ずっと戦闘ばかり書いていたので、久々にラブコメ書いて居たら、何か気恥ずかしくなりました(笑)
そして、この作品の劇場版のサブエピソード『みほの初恋の思い出』のフラグも無事回収です。
バレバレでしたし、ベタですが、やはりこういう展開はラブコメ的に王道ですから。

いよいよ次回はエピローグの愛里寿ウォー。
この作品では愛里寿に加えて、何とイプシロンもやって来ます。
しかし、彼の方はキャラ崩壊が入ります。
純粋なイプシロンのファンの方は御注意下さい。

それから、過去作の『天元突破インフィニット・ストラトス』を掲載するか如何かのアンケートはまだ継続中ですので、どうかそちらにもご意見をお寄せ下さい。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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