ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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今年もあんこう祭りの季節がやって来ました。

御来場になられる皆様は、混雑に御注意下さい。


※注意

今回のお話は飲食の最中に読まれる事はお勧め出来ません。

御注意下さい。


エピローグ『愛里寿・ウォーです!(後編)』

『劇場版 ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース ~炎のさだめ~』

 

エピローグ『愛里寿・ウォーです!(後編)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗女子学園に転校を考える愛里寿に、コッソリと従いて来た、実はシスコンだったイプシロン。

 

無論、弘樹を前にして黙っているワケもなく………

 

再び2人の対決が幕を開けようとしていた………

 

その勝負とは………

 

 

 

 

 

大洗女子学園・戦車格納庫前………

 

「行けーっ! 弘樹ーっ!!」

 

「頑張れーっ!!」

 

弘樹に向かって声援を飛ばす大洗機甲部隊の面々。

 

「お兄ちゃん! ファイトッ!!」

 

愛里寿も、イプシロンに向かって声援を送る。

 

その一同の視線の先では………

 

「ぬおおおおおっ!!」

 

「…………」

 

1つの机を挟んで向かい合って椅子に座っているイプシロンと弘樹が………

 

その机の上に置かれた紙で出来た土俵を指で叩き、上に乗っている力士の紙人形をぶつかり合わせている。

 

所謂『紙相撲』だ。

 

「…………」

 

「負けん! 負けんぞぉっ!!」

 

機械の様に正確なリズムで土俵を叩く弘樹と、全身全霊を掛けて叩いているイプシロン。

 

2人の紙力士は、土俵の中央で激しく組み合っている。

 

すると………

 

「むっ………」

 

弘樹の紙力士が、イプシロンの紙力士に押されて、パタリと倒れた。

 

「勝負有り! 島田の海~っ!!」

 

審判を務めていた紫朗が、軍配をイプシロンの方に挙げて宣言する。

 

「抜かったか………」

 

「いやったーっ!!」

 

椅子を蹴倒して立ち上がり、喜びを露わにするイプシロン。

 

「遂に! 遂に舩坂 弘樹を倒したぞーっ!!………って、違ーうっ!!」

 

歓喜の声を挙げたイプシロンだったが、次の瞬間に我に返り、土俵と紙力士を払い除ける。

 

良いノリツッコミである。

 

「ああ! 折角作ったのに!!」

 

その紙相撲一式の製作を担当した藤兵衛が、慌てて回収する。

 

「誰が紙相撲で勝負するなどと言ったっ! 何をやらせるんだっ!?」

 

「………ノリノリでやってただろうに」

 

喚くイプシロンに、弘樹は冷静にそうツッコミを入れる。

 

「煩いっ! 兎に角勝負だっ!! 武器を取れっ!!」

 

「まあ、待ちたまえ、イプシロンくん」

 

するとそこで、迫信が割り込んだ。

 

「何だ、貴様っ!? 邪魔をするな! コレは私と舩坂 弘樹の………」

 

「イプシロンくん。君はパーフェクト・ソルジャーだったね?」

 

迫信に向かって怒鳴るイプシロンだったが、迫信は気にせずに言葉を続ける。

 

「そうだ! 私はパーフェクト・ソルジャーだ!」

 

「パーフェクト・ソルジャー………つまりは完全なる兵士。ならば如何なる対決であろうと受けて立ち、真正面から捻じ伏せるのが筋ではないかね?」

 

「! そ、それは………」

 

「完全であるならば、何時、如何なる状況で、どんな勝負であろうと勝つ………それこそがパーフェクト・ソルジャーとして正しい姿ではないのかね?」

 

「………そうだ! 私はパーフェクト・ソルジャー! 如何なる勝負であろうと受けて立つ! そして勝つっ!!」

 

「そう来なくては………」

 

イプシロンがそう言うのを聞いて、迫信は不敵な笑みを浮かべる。

 

(上手い具合に会長に乗せられたな………)

 

(理屈だろうが屁理屈だろうが、あの人に口では勝てませんからね………)

 

そしてそんな迫信の姿に、何とも言えない感情を感じる俊と清十郎だった。

 

「さて………では、この勝負、我々が取り仕切らせてもらおう」

 

こうして、弘樹とイプシロンのリターン・マッチは、両校の生徒会の思惑通りに進められる事となった。

 

その勝負内容とは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第1回! チキチキ! 牛乳早飲み対決~っ!!」

 

「「「「「「「「「「おお~~~~~っ!!」」」」」」」」」」

 

マイクを持った杏がそう言うと、大洗機甲部隊員達から歓声が挙がる。

 

その中心には、弘樹とイプシロンの姿が在り、2人の前には其々7本ずつ、牛乳の入った瓶が置かれている。

 

「ルールは簡単! 2人の目の前に用意された農業科が用意してくれた搾りたて牛乳を早く先に全部飲んだ方が勝ちだーっ!!」

 

「「「「「「「「「「オオーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

「………何で牛乳の早飲みで対決なんだよ」

 

盛り上がる大洗機甲部隊を尻目に、1人冷静にツッコミを入れる白狼だが、それは喧騒に掻き消される。

 

「フフフ、今度こそ決着を着けてやるぞ」

 

「…………」

 

闘志を燃やしているイプシロンだが、対照的に弘樹は何処か呆れ気味だった。

 

「それでは! 両者! 用意っ!!」

 

「………!」

 

「…………」

 

とそこで、杏が用意の合図を送ると、イプシロンが身構え、弘樹も牛乳を見る。

 

「プレイボールッ!!」

 

「何でやっ!?」

 

何故か開始の合図がプレイボールだった事にツッコミを入れる豹詑。

 

「「………!」」

 

しかし、2人は御構い無しに勝負を開始した!

 

「ングング!………プハッ! ングング!………プハッ! ングング!………プハッ!」

 

「うお! 早ええぞ、アイツッ!?」

 

「尋常ではない速度で飲み干してるな………」

 

物凄い勢いを見せているイプシロンに、重音と鷺澪が思わず声を挙げる。

 

それもその筈………

 

何とイプシロンは1瓶につき2秒と言う、人間離れした速度で牛乳を飲み干して行っている。

 

あれだけあった牛乳瓶が、既に半分近く空いている。

 

「…………」

 

それに対する弘樹は、特段に早く飲んでいる様子は無い………

 

まるで1瓶1瓶味わうかの様に、マイペースに飲み進めている。

 

「オイ! 如何したんだ、弘樹っ!?」

 

「負けちゃうよっ!?」

 

「…………」

 

地市と沙織が叫ぶが、それでも弘樹のペースは変わらない。

 

「ハハハハッ! 勝負を諦めたか、舩坂 弘樹! 不甲斐ない奴めっ!!」

 

そんな弘樹の事を嘲笑いつつ、更にハイペースで飲み進めるイプシロン。

 

とうとうその残りは3瓶となる。

 

「この勝負、貰った!」

 

その3瓶の内の1瓶を飲み干すイプシロン。

 

だが、その時………

 

イプシロンの口の端から、飲み切れなかった牛乳が零れる。

 

「ん?」

 

「オイ、今零れなかったか?」

 

それに気づいた大詔と海音が声を挙げるが、イプシロンは次の牛乳に手を付ける。

 

「!? うっ!?」

 

それを飲み切った瞬間、イプシロンの表情が激変。

 

一瞬にして真っ青になったかと思うと、逆流した牛乳が鼻の穴から噴き出す。

 

「うおっ!? エンガチョッ!?」

 

「きったねぇな、オイッ!?」

 

磐渡と隆太が、そんなイプシロンの姿に1歩退く。

 

「ぬあああっ!!」

 

しかし、イプシロンは構わず最後の1瓶を胃の中に流し込む。

 

………既にキャパを大幅にオーバーしているにも関わらず。

 

「………クッ!」

 

瓶の中の牛乳を全て流し込み、弘樹を見やるイプシロン。

 

「…………」

 

対する彼は、まだ4瓶目を飲み終えようとしているところだった。

 

「勝っ………」

 

勝利を宣言しようとイプシロンが口を開けた瞬間………

 

そこからブバッと、白い液体が飛び出した!!

 

「あ、吐いたっ!!」

 

「吐いたっ! 負けっ!! 負けっ!!」

 

「ぐうっ!」

 

竜真と正義が指摘すると、それが引き金となった様に、イプシロンはその場に後ろを向いて蹲ったかと思うと、飲んだ牛乳を吐き始めた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イプシロン! リバースッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「「「「アッハッハッハッハッハッ!!」」」」」」」」」」

 

その光景に揃って大笑いする大洗機甲部隊員達。

 

「お、お兄ちゃんっ!? 大丈夫っ!?」

 

そんな中で、愛里寿がイプシロンに駆け寄ろうとする。

 

「来るなっ!!」

 

「!?」

 

しかし、他ならぬイプシロン自身がそれを制する。

 

(こんな顔を愛里寿には見せられん………)

 

兄としての最後のプライドか、吐いた牛乳に塗れた顔を見られんとするイプシロン。

 

ハッキリ言って、かなりみすぼらしい………

 

「イプシロンさん………」

 

「大リバースデス………」

 

そんなイプシロンの姿を見て、勇武とジェームズがそう呟く。

 

「頑張り過ぎだよぉ………」

 

「見ていた通りに大分差が有ったと言うのに………」

 

憐れみながらも、イプシロンにそうツッコミを入れる沙織と麻子。

 

「恐らく、大差をつけて勝ちたかったんでしょうね………」

 

「男の方のプライドですか………」

 

「うう………」

 

と、優花里と華がそう話す中、顔を拭き終えたイプシロンが、グッタリとした様子で立ち上がる。

 

「大丈夫か?」

 

「煩い………貴様に心配をされる謂れは無い………」

 

対戦相手である筈の弘樹にまで心配されるが、イプシロンは気丈にそう返す。

 

その顔は牛乳塗れであったが………

 

「兎に角、この勝負………イプシロンが吐いたので、舩坂 弘樹の勝利だ!」

 

「「「「「「「「「おおーっ!!」」」」」」」」」」

 

そこで、審判の紫朗がそう告げると、大洗機甲部隊の面々から歓声と共に拍手が送られる。

 

「勝負あったな………」

 

「………度だ」

 

「うん………?」

 

「もう1度だっ!!」

 

しかし何と!

 

イプシロンは泣きのもう1回を要求して来た!!

 

「ええっ!?」

 

「まだやる気かよ………」

 

「とっくに身体が限界を超えて悲鳴を挙げてますけど………」

 

光照が驚きの声を挙げ、速人と飛彗が呆れた様に言う。

 

「あんな無様を曝して………おめおめと引き下がれるか!」

 

(恥を上塗りするだけだと思うが………)

 

吼えるイプシロンだが、弘樹は内心でそんな冷ややかな事を考えていた。

 

「如何するかね? 舩坂くん?」

 

そんな弘樹に、迫信が尋ねて来る。

 

「………分かった。もう1回だけ付き合ってやる」

 

「それでこそだ! 舩坂 弘樹っ!!」

 

「…………」

 

再度闘志を燃やすイプシロンだが、弘樹は正直ウンザリしていた。

 

かくして………

 

イプシロンの要望による泣きのもう1回が開始される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び両者の前に、7瓶の牛乳が用意される。

 

「…………」

 

「今度こそ………」

 

いつも以上に仏頂面な弘樹と、闘志は燃え滾っているが顔色が頗る悪いイプシロン。

 

「じゃあ泣きのもう1戦! レディ………ゴーッ!!」

 

「「!!」」

 

再び杏の掛け声で勝負を開始する2人。

 

「……………」

 

「んぐ………んぐ………」

 

相変わらずマイペースで飲む弘樹と、ドンドン胃へと流し込んで行くイプシロン。

 

しかし、先程のダメージはやはりデカイのか、明らかにペースが落ちている。

 

「!? ぐっ!?」

 

そして4瓶目を飲んだ瞬間に、呻き声を漏らして動きを止める。

 

「…………」

 

その間に、弘樹が逆転。

 

残り2瓶にまで数を減らす。

 

「ぐがあああっ!!」

 

イプシロンは込み上げる吐き気を我慢して、無理矢理牛乳を体内に入れて行く。

 

だが………

 

「よっしゃあ! 最後の1瓶っ!!」

 

「!?」

 

そう言う声が聞こえて、弘樹の方を見やると、そこには最後の1瓶を正に飲み終えようとしている弘樹の姿が在った。

 

その瞬間………

 

「…………」

 

イプシロンの目が………

 

最高に悲しいものとなる。

 

「………ああ」

 

大量の牛乳にウンザリしながら、遂に飲み終える弘樹。

 

「勝負有り! 舩坂ちゃんの勝利ーっ!!」

 

「「「「「「「「「「おおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

杏が弘樹の勝利を宣言すると、大洗機甲部隊の面々からは歓声が挙がる。

 

「…………」

 

一方、負けたイプシロンは、飲み切れなかった牛乳を戻すと、その場に失意のあまり体が前屈した。

 

「やあ~、残念だったねぇ、イプ………」

 

と、そのイプシロンに杏が声を掛けようとしたが、途中で立ち止まる。

 

何故なら、失意体前屈して伏せられているイプシロンの顔の辺りから………

 

白い液体が垂れるのを見たからだ。

 

「お兄ちゃん………?」

 

愛里寿も、イプシロンの様子がおかしい事に気づいた………その瞬間!!

 

「………ううおおええっ!!」

 

イプシロンは飲んだ牛乳を思いっきり吐き出し始めた!

 

「「「「「「「「「「! アハハハハハハッ!!」」」」」」」」」」

 

その光景に最早笑うしかない大洗機甲部隊の面々。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イプシロン!

 

再び!

 

散るっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「吐いちゃった………」

 

「物凄い勢いで吐いてるな………」

 

清十郎と俊が言う通り、イプシロンは今飲んだものと、先程飲んでまだ吐き切れていなかった牛乳を纏めて吐き出している。

 

その量、実に2.2リットル!

 

余りの嘔吐量に、シャーッと言う音が聞こえて来て、イプシロンの真下に白い水溜まりが出来始める。

 

「…………」

 

流石に不憫に思ったのか、弘樹がイプシロンの背中を摩ってやる。

 

「う、うう………」

 

「だから止めておけと言ったのに………」

 

漸く吐くのが治まったイプシロンが、牛乳塗れの顔を挙げる。

 

「………私は………あんまり凄くないな………」

 

(ある意味十分凄いと思うがな………)

 

すっかり弱々しくなってしまったイプシロンがそう呟くと、弘樹は心の中でそう突っ込んだ。

 

「では、勝者の舩坂ちゃん。今のお気持ちをどうぞ」

 

「1つも嬉しくないな」

 

「だよね~」

 

杏のインタビューに弘樹はそう返し、ココにある意味で壮絶だった弘樹とイプシロンの再戦は幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして日が暮れて………

 

とうとう弘樹の提案が実行される時となった。

 

その提案とは………

 

 

 

 

 

大洗女子学園・体育館………

 

「わあ~、良く似合ってるよ、愛里寿ちゃん!」

 

「そ、そう?」

 

今愛里寿は、ボコをモチーフにしたフード付きパジャマに身を包んでいた。

 

愛里寿だけではない。

 

大洗戦車チームの面々も、同じ様にボコパジャマに身を包んでいる。

 

体育館内には人数分の布団が敷かれ、雑魚寝が出来る状態となっている。

 

コレが弘樹が考えた策………

 

『就寝を共にする』である。

 

幼少時より歩兵道に明け暮れていた弘樹は、試合や合宿での先等で、仲間と共に枕を並べる事が多かった。

 

そんな時の会話は弾み、親睦も深まったと言う実体験から、皆で就寝を共にすれば仲も深まり、大洗に転校してくれるのではないかと考えたのだ。

 

「じゃあガールズトークしよ! ガールズトークッ!!」

 

「お前のガールズトークは恋愛の事ばかりじゃないか………」

 

「では、朝まで戦車トークを!」

 

「それもちょっと………」

 

沙織、麻子、優花里、華の会話を皮切りに、大洗戦車チームのパジャマパーティーが幕を開ける。

 

「…………」

 

「? 愛里寿ちゃん? 如何かしたの?」

 

と、そのパジャマパーティーの様子を、羨望にも似た眼差しで見ている愛里寿に気づき、みほが声を掛ける。

 

「うん、何だかとっても楽しくって………」

 

「そう、良かった。やっぱり友達と一緒に過ごせるのが学校での楽しみだよね」

 

「友達………」

 

「勿論、愛里寿ちゃんも友達だよ」

 

「! ありがとう」

 

みほの言葉に、愛里寿は照れながらはにかむ。

 

「転校して来たら、戦車道も一緒だね」

 

「あ………」

 

しかし、続いてみほがそう言うと、愛里寿は何かに気づいた様な様子を見せるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

男子校の体育館では………

 

「それっ!」

 

「ブッ! やったなぁっ!!」

 

お約束とも言える枕投げが勃発していた。

 

連隊規模のメンバーによる枕投げであり、大盛り上がりを見せている。

 

枕が四方八方に飛び交っている。

 

「…………」

 

そんな中で、昼間の事で少々精神的に疲れていた弘樹は、布団を隅の方に寄せ、喧騒も気にならない様子で眠ろうとしている。

 

「………ん?」

 

「…………」

 

とそこで気配を感じて目を開けると、そこにはイプシロンの姿が在った。

 

「何だ? まだ何かあるのか?」

 

「………昼間の事は悪かった」

 

弘樹が尋ねると、意外にもそんな事を言ったイプシロンは、弘樹に向かって頭を下げる。

 

「………お前がそんな事を言うとはな」

 

「………愛里寿に怒られてな」

 

「成程………」

 

意外そうな顔をした弘樹だったが、続くイプシロンの言葉を聞いて納得が行った表情になる。

 

「………再戦なら受けてやる」

 

「! 何っ!?」

 

「だが、今じゃない………何れまた戦う時が来るだろう。それまでに精々精進していろ」

 

「………何故敵である私にそんな事を言う」

 

「『敵』じゃない………『ライバル』だ」

 

「!!」

 

イプシロンは驚きを露わにする。

 

………が、その瞬間!

 

「!? ブッ!?」

 

イプシロンの後頭部に、枕が思いっ切り直撃した!

 

「やったーっ! 命中ーっ!!」

 

「! 貴様等ーっ!!」

 

すぐさま枕を手にすると、一団の中へと駆けて行くイプシロン。

 

「…………」

 

弘樹はそんなイプシロンを尻目に、今度こそ眠りに就くのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日………

 

連絡船への昇降口にて………

 

「えっ!? 愛里寿ちゃん、行っちゃうのっ!?」

 

「うん………」

 

驚きの声を挙げるみほに、愛里寿はそう返す。

 

「何故だっ!? 我々の何が気に入らなかったのだっ!?」

 

桃は何か不手際があったのかと大騒ぎする。

 

「ううん、大洗はとっても良い学校。転校しても良いと思えた」

 

「なら!」

 

「でも………そしたらみほさんとは戦えなくなっちゃうから」

 

「えっ?」

 

再び驚きの声を挙げるみほ。

 

「私、みほさんとはもう1度戦いたいの。今度は島田流とか西住流とか関係無く………1人の戦車乗りとして」

 

「!」

 

愛里寿のその言葉を聞いて、みほは納得の行った様な表情となる。

 

「………うん。私も愛里寿ちゃんともう1度戦いたいかな」

 

「だから………その日まで」

 

「うん!」

 

そう言って、みほと愛里寿はガッチリと握手を交わす。

 

「愛里寿、行くぞ」

 

とそこで、既にタラップに足を掛けていたイプシロンがそう呼び掛ける。

 

「あ、うん! 今行くね………それじゃあ、バイバイ、みほさん」

 

「バイバイ、愛里寿ちゃん」

 

そう言って愛里寿を見送るみほ。

 

「「…………」」

 

一方、弘樹とイプシロンの方は、一瞬だけ視線を交差させたかと思うと、お互いに何も言わずに見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

島田兄妹の乗る連絡船が、大洗学園艦から遠ざかって行く。

 

「いや~、残念だねぇ」

 

いつもの様に干し芋を齧りつつそういう杏。

 

「でも、愛里寿ちゃんの気持ち、分かります。私も同じですから」

 

「だよね~」

 

だが、みほの言葉に笑顔で同意する。

 

「あああ~~~っ! 大洗の安泰がぁっ!! 盤石の基盤がぁ~っ!!」

 

しかし、桃だけは諦め切れない様子で喚いている。

 

「桃ちゃん、落ち着いて………」

 

柚子が落ち着かせようとするが………

 

「ううー! 西住! お前が何処かへ転校しろっ!!」

 

「!? ええっ!?」

 

桃は感情のままに、みほにそんな事を口走る。

 

「あ………」

 

「桃ちゃん………」

 

「あちゃ~………」

 

途端に、杏、柚子、蛍が頭を抱えた。

 

「えっ?」

 

桃が戸惑っていると………

 

「河嶋広報官殿………」

 

底冷えしそうな冷たい声色と共に、弘樹が桃の肩に手を置いた。

 

「!?」

 

油の切れたブリキの玩具の様な音を立てながら、桃は恐る恐る弘樹の方を振り返る。

 

「…………」

 

そこには、見ているだけで怖くなる様な無表情の弘樹の姿が在った。

 

「!?!?」

 

「ちょっとお話があります」

 

声にならない悲鳴を挙げる桃に、弘樹は無慈悲にそう言い放つ。

 

「ひ、弘樹くん! 私気にしてないからっ!!」

 

「安心しろ、みほくん。小官は女性には手を上げん。さ、コチラへ………」

 

みほが止めようとするが、弘樹は止まらず、桃の肩を摑んだまま連れて行こうとする。

 

「ちょっ!? か、会長! 柚子ちゃん! 蛍ーっ!!」

 

泣きながら杏達に助けを求める桃だったが………

 

「「「…………」」」

 

3人は無言で敬礼を桃へと送る。

 

つまり、満場一致で見捨てられたのだった。

 

「た、助けてくれええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」

 

桃の断末魔の悲鳴が………

 

大洗学園艦中に響き渡ったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おわり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………新たな戦いが始まる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「河嶋さんが留年っ!?」

 

「正確には浪人の危機らしい………」

 

大洗機甲部隊に突如降って湧いた『河嶋 桃・留年事件』

 

何やかんやで愛されている彼女を救う為………

 

大洗機甲部隊は、軍事道の冬季大会である『無限軌道杯』への参加を決める。

 

その1回戦の相手は、アスパラガスの改革が行われた『BC自由学園』………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何あの連携!?」

 

「凄いコンビネーション………私がお姉ちゃんと組んでた時並みだよ!」

 

「コレが真のBC自由機甲部隊の力だ! 行くぞ、レナ!!」

 

「任せておけ、ルカッ!!」

 

「さあ、踊りなさい………BC自由機甲部隊の舞曲、『終わらない円舞曲(エンドレス・ワルツ)』を」

 

『押田 ルカ』、『安藤 レナ』のコンビネーションに苦戦するみほ達を見て、不敵に微笑むBC自由機甲部隊総隊長・『マリー』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして弘樹の前にも、新たな敵が立ちはだかる………

 

「お探しモンはコレか?」

 

「! 小官の武器を………手癖の悪い奴だ」

 

「ぬほほほ、そりゃそうさ。俺様は『泥棒』だかんな」

 

「『泥棒』だと? 貴様、何者だ?」

 

「ぬほほほ。俺の名は『ルパン13世』!」

 

「ルパン………だと? まさか………」

 

「そう! 俺の祖先は大怪盗! 『アルセーヌ・ルパン』よ!!」

 

それは、世紀の大怪盗の子孫だった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース 最終章』

 

公開予定未定!




新話、投稿させて頂きました。

遂に行われる弘樹とイプシロンの再戦。
その内容は………
牛乳の早飲み!!
そしてリバース!!(笑)
元ネタは勿論、北海道のローカル移動番組です。
そちらの方も確認して笑って下さい。

さて………
5年以上続いたこの作品『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』も今回で完結となります。
最終章は、原作が全話上映してから取り掛かる事になるかと。
取り敢えず、今の時点で決まっているBC自由学園の様子をオマケでお送りしました。
改変点としましては、安藤レナと押田ルカが超仲が良いって点ですかね。
この作品では、前隊長と言う位置づけのアスパラガスが既に登場しているので、仲違い作戦は通用しないと思い、逆に抜群のコンビネーションを見せると言う方向で行こうと思いまして。

そして気になるBC自由の歩兵は、ルパンの3代目がモチーフです。
何故、ルパンかと言いますと、フランス繋がりは勿論ですが………
BC自由学園のメンバーはベルサイユのばらのキャラクターをモチーフにされていますが、実はルパン三世に、ベルばらの主人公であるオスカルが登場した回があるのです。
しかも、コレはベルばらがアニメ化される前の話なのです。
なので、その繋がりで歩兵にはルパンをモチーフにしたキャラを登場させようとかと。
他のメンバーについては、まだ検討中です。

次からは過去作の天元突破ISを掲載しようよ思ったのですが………
つきましては、紹介します!でまだ紹介してない人物が居るとご指摘を頂いたので、紹介しますシリーズを編集し直して纏めようと思います。
なので、次週の更新はそちらになります。
ひょっとしたら2回に分けるかも知れませんので、予め御了承下さい。
何せ、登場人物が多いので(汗)

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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