ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第32話『次はアンツィオ戦です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第32話『次はアンツィオ戦です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗国際男子高校・屋内射撃訓練所………

 

突撃兵を中心とした大洗歩兵部隊の面々が射撃訓練に勤しんでおり、訓練所内には乾いた音が断続的に鳴り響いて、射撃訓練用の標的に次々と穴が空いて行く。

 

「…………」

 

中でも1番の腕前を見せているのは弘樹だ。

 

ジョーイから託されたコルト・ガバメントを構え、人間に見立てた標的の頭と心臓部分に次々と弾丸を命中させている。

 

やがて弾倉内の弾が無くなると、弘樹は構えを解き、標的を自分の方へと近寄らせた。

 

「………まあまあか」

 

標的の頭部と心臓部に集中して穴が空いているのを見て、弘樹はそう呟く。

 

「流石ですね、舩坂さん。新しい銃をもうそこまで使い熟すなんて」

 

と、隣のブースでモシン・ナガンM1891/30で射撃訓練をしていた飛彗が、撃ち終えた様子でそう言って来る。

 

そういう彼の弾も、全て標的の頭に命中している………

 

「折角託された物だ。飾りにしておくワケにも行くまい」

 

弘樹はそう返すと、M1911A1から空になった弾倉を抜く。

 

「そう言えば、冷泉さんのお祖母ちゃん、回復なされたそうですね」

 

「ああ………」

 

サンダース&カーネル機甲部隊との試合後、麻子の祖母が倒れて病院に運ばれたと言う連絡を受け、麻子とその付き添いとして沙織が、黒森峰の協力を得て病院へと向かった。

 

そして今朝方、意識が戻ったと言う連絡が入り、みほ、優花里、華がお見舞いで、現在本土に上陸している。

 

歩兵部隊の面々も何人かが見舞いをした方が良いのではと提案したが、大人数で行っても返って迷惑だろうと言う結論に至り、破損した戦車達の修理も終わってない事もあり、本日は歩兵部隊の面々のみで訓練が進んでいた。

 

「しかし、あんなに慌てた麻子ちゃん見たの初めてだぜ」

 

とそこで、同じ様に射撃訓練を終えた了平が会話に参加して来る。

 

なお、彼の射撃の命中率については、お察し下さい………

 

「聞いた話ですが………冷泉さんの家族はお祖母さん1人だけみたいですよ」

 

更に楓も参加して来る。

 

「えっ? 御両親は?」

 

「彼女が小学生の時に、事故で亡くなったそうです………」

 

「…………」

 

楓の言葉に、自身も両親を早くに亡くしている弘樹が、思う所が有る様な顔をするのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日………

 

みほ達が戻り、戦車の修理が完了した為、早速空教官の元、2回戦に向けての合同訓練が開始された。

 

「さて、皆。先ずは1回戦突破おめでとう。優勝候補の1つだったサンダース&カーネル機甲部隊を破るとは、正直言って驚いたわ」

 

集まった大洗機甲部隊の面々を前に、空がそう言い始める。

 

「けど! まだそれだけよ! この後もまだまだ強豪校が控えてるんだから! 今まで以上に気合入れて訓練するわよぉっ!!」

 

最初は褒めた様に見えた空だったが、すぐにそう喝を入れる。

 

「「「「ハイ!」」」」

 

「頑張りま~す!」

 

その言葉に、アヒルさんチームの面々が気合の入った、ウサギさんチームのあやが間延びした返事を返す。

 

「勝って兜の緒を締めよ! ダーッ!」

 

「「「おーっ!!」」」

 

カバさんチームもカエサルがそう声を挙げると、他のメンバーも続く。

 

「お前等ぁっ! 2回戦も気合入れてくでぇっ!!」

 

「「「「「「「「「「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」

 

歩兵部隊の方でも、ペンギンさんチームの大河がそう言って右の拳を突き上げると、大洗連合の面々が同じ様に拳を突き上げて、気合の声を挙げる。

 

「大洗ー! ファイトッ!!」

 

「「「「「「「「「「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」

 

同チームの武志も、ラクビー部メンバーと円陣を組んで声を挙げる。

 

「よっしゃあ、行くぜっ!!」

 

「俺達の快進撃はココからだぁっ!!」

 

「大和魂を見せてやるーっ!!」

 

それを皮切りに、他のメンバー達も声を挙げ始める。

 

「わあ~………」

 

「皆凄いですね」

 

そんなメンバー達の様子に軽く驚きを露わにしていたみほに、華がそう声を掛ける。

 

「うん」

 

それに返事を返しながら、ふとみほは弘樹の事を見やった。

 

「…………」

 

その視線に気づいた弘樹は、無言のまま頷く。

 

「…………」

 

そんな弘樹の姿を見て、みほは微笑を浮かべたのだった。

 

「よ~し! 気合は充分の様ね! ビシバシ行くから、覚悟しなさいっ!!」

 

そんな大洗機甲部隊の面々を見て、空は満足そうにしながらそう言い放ち、その日の訓練が開始される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほんの少し前までは素人の集まりだった大洗機甲部隊も、3度の実戦を潜り抜け、日々厳しい訓練に励んだ結果………

 

その腕前は、飛躍的に向上。

 

特に、バイクでの参戦を決めた白狼の活躍は目覚ましかった。

 

幼き頃からレーサーとして活躍してきた腕前を遺憾無く発揮し、機動力を武器に大立ち回りを演じる。

 

練習試合では敵前逃亡を仕出かしたハムスターさん分隊の面々も、まだまだ腕に未熟な面は見られるものの、メンタル面での成長が見られ始めた。

 

戦車部隊も、隊列行動が迅速に出来る様になり、砲撃の腕も向上している。

 

………河嶋 桃を除いて。

 

その余りにも酷い砲撃の腕を見た空が………

 

「アンタさぁ………辞めた方が良いんじゃないの?」

 

と思わず言ってしまい、泣き出した桃を宥めるのに暫し時間を要した程であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、日が頭上まで登り、お昼休憩となった。

 

大洗機甲部隊の面々は其々に学食へ向かったり、買い食いに出たり、持参した弁当を広げ始めたりと昼食に入る。

 

 

 

 

 

 

そんな中、みほは1人戦車格納庫を訪れ、Ⅳ号を見据えていた。

 

「2回戦………この戦車で勝てるのかな? 歩兵部隊の皆の武器も揃ってないし………」

 

Ⅳ号を見ながらそんな事を呟くみほ。

 

練度こそ上がって来た大洗機甲部隊だったが、やはり戦車の数や性能面では、他校と比較して大きく劣っている。

 

歩兵部隊の装備も、まだ十分なレベルであるとは言い難い。

 

「此処に居たのか………」

 

と、不意に背後からそう言う声が聞こえて来て、みほが振り返るとそこには、戦闘服姿のままの弘樹が居た。

 

「! 舩坂くん! 如何したの?」

 

「うむ、実は今日は湯江の奴が弁当を作ってくれてたんだがな………」

 

みほが尋ねると、弘樹はそう言いながら、脇に下げていた軍用鞄から握り飯が添えられた大きめの弁当箱を取り出す。

 

「その序だと言って、君の分まで作ったみたいでな。良かったら渡そうと思っていたんだ」

 

更にそう言うと、今度は先程のと比べると小さめの弁当箱を取り出し、みほに差し出す。

 

「湯江ちゃんが? そっか、後でお礼言わないと」

 

そう言いながらその弁当箱を受け取るみほ。

 

「アレ? 西住殿に舩坂殿」

 

するとそこで今度は、同じ様に弁当箱を持った優花里が戦車格納庫内に姿を現した。

 

「あ、秋山さん」

 

「何だよ、弘樹。此処だったのか?」

 

「あ~! テメェ! 俺達を差し置いて、1人だけ西住ちゃんと仲良く昼飯かよ! このリア充野郎め!!」

 

「了平、そんな事だから貴方はモテないんですよ」

 

みほが声を挙げると、続いて地市、了平、楓の面々が姿を現す。

 

「あ! 居た居た!」

 

「教室にも食堂にも居ないから、きっと此処だと思って」

 

「飯にするぞ」

 

更に、コンビニの袋を携えた沙織、華、麻子も現れる。

 

「皆も………」

 

「何だ、騒がしいな………」

 

と、みほがそう呟くと、Ⅳ号の隣に停められていたAEC 四輪駆動装甲指揮車から煌人が姿を見せる。

 

「あ? お前等か」

 

「どうも」

 

「何だよ、此処で飯にすんのか?」

 

「何や、ワイ等と一緒かいな」

 

続いて白狼、飛彗、海音、豹詑がゾロゾロと出て来る。

 

「何時の間にやら大所帯だな………」

 

かなりの人数になったメンバーを見ながら、弘樹がそう呟いて苦笑いするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、みほ達がⅣ号戦車の上で………

 

弘樹達は格納庫の床に座って、昼食を取り始める。

 

「母がコレ、戦車だって言い張るんです」

 

優花里が自分の弁当を見せながらそう言う。

 

彼女の言葉通り、ごはんの上に海苔で戦車らしき物が作られていた。

 

「凄い! キャラ弁じゃん!!」

 

メロンパンを片手に持った沙織がそう言い、携帯のカメラで優花里の弁当を撮影する。

 

「食べるの勿体無いですね」

 

膝の上に大量のサンドイッチを乗せた華が、そんな事を言う。

 

「さ! 遠慮無く食ってくれ!」

 

「沢山あるでぇっ!!」

 

一方、床に座っている弘樹達の中で、海音がそう言って寿司桶に入った寿司を………

 

豹詑がお好み焼き、たこ焼き、串カツと言った大阪の食べ物を広げる。

 

「おおっ! スゲェなぁ!!」

 

「如何したんですか、コレ?」

 

その献立を前に舌を巻く地市と、2人に向かって尋ねる楓。

 

「俺ん家寿司屋なんだよ。ガキの頃からよく手伝わされて握り方を覚えたんだ」

 

「ワイも実家が大阪に居た頃、道頓堀で食い物屋やっててなぁ。今日は気合入れてみたんや」

 

海音と豹詑はそう返す。

 

「うっひょ~! まさか学校で寿司が食えるとは思わなかったぜ!」

 

「オイ! 高いモンから手え付けてんじゃねえよっ!!」

 

了平が遠慮無く高級食材の寿司から手を付け始め、白狼がツッコミを入れる。

 

「やれやれ………騒がしい連中だ」

 

そんな一同の様子を見ながら、持っていた水筒のカップに中身の紅茶を注ぐ煌人。

 

その直後に、砂糖とミルクを大量に入れ始める。

 

「煌人くん………いつも思うんだけど、入れ過ぎじゃないのかい?」

 

色がすっかり白くなり、解けきれなかった砂糖が山になっているのを見て、飛彗はそうツッコミを入れる。

 

「ズズズ………うん、丁度良い」

 

しかし、そんな飛彗の言葉を無視する様に、煌人は粗砂糖とミルクの紅茶を飲んでそう呟く。

 

「見てるだけで胸焼けがして来るな………」

 

そんな煌人の姿に、苦笑いを浮かべてそう呟きながら、塩の利いた握り飯を齧る弘樹。

 

「あ! そう言えば見ました!? 生徒会新聞の号外!!」

 

とそこで、優花里が思い出した様にそう言う。

 

「コレの事か?」

 

すると、それを聞いた煌人が、その新聞を取り出した。

 

「お前、どっから持って来たんだよ」

 

「機密事項だ」

 

海音が呆れた様にそう言うと、煌人は平然とそう返す。

 

「何々………『1回戦に大勝利! 圧倒的ではないか、我が校は!』」

 

「どっかで聞いた様な台詞だな、オイ」

 

その新聞を手に取った弘樹が、1面の見出し文を読み上げると、地市がそうツッコミを入れる。

 

「凄かったね」

 

「そりゃあ、サンダース&カーネル機甲部隊に勝ったんですから」

 

「『勝った』って言うか、『何とか勝てた』って感じだけど………」

 

「でも、勝利は勝利です!」

 

イマイチ勝利感の薄いみほがそう言うが、優花里は拳を握って力説する様に言う。

 

「………そう、だよね」

 

「「「「??」」」」

 

その言葉を聞いたみほが沈んだ様な様子を見せ、優花里達は首を傾げる。

 

「勝たないと………意味が無いんだよね」

 

「? そうですか?」

 

「えっ?」

 

絞り出すかの様にそう言ったみほの言葉が、優花里によって即座に否定される。

 

「楽しかったじゃないですか」

 

「うん」

 

優花里の言葉に、沙織も同意する。

 

「あ………」

 

「サンダース&カーネル機甲部隊の試合も、天竺ジョロキア機甲部隊との戦いも、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊との戦いも、それから訓練も、戦車の整備も、練習帰りの寄り道もみんな!」

 

「うんうん。最初は狭くてお尻痛くて大変だったけど、何か戦車に乗るの楽しくなった!」

 

「そうですね………正直言って、僕も最初の頃は戸惑いの方が大きかったですけど………今はとても楽しいと思えています」

 

「僕だよ」

 

優花里と沙織がそう言うと、楓と飛彗が同意する様にそう声を挙げる。

 

「そう言えば………私も楽しいって思った。前はずっと、『勝たなきゃ』って思ってばっかりだったのに………だから負けた時に、戦車から逃げたくなって………」

 

「私! あの試合、テレビで見てました!」

 

と、みほがそう言うと、優花里がみほが戦車道から離れる切っ掛けとなった出来事………

 

昨年の戦車道・歩兵道の全国大会決勝戦………

 

黒森峰機甲部隊VSプラウダ&ツァーリ機甲部隊との戦いを、テレビで見ていたと言う。

 

「えっ? 何があったの?」

 

「みほさんが戦車道から逃げ出したくなった切っ掛けとは、一体?………」

 

まだ戦車道に関するみほの事は良く知らない沙織と華も、興味深げにみほに尋ねる。

 

「君達、それ以上は………」

 

しかし、弘樹がそれ以上はみほの心の傷に障ると思い、沙織達を止めようとしたが………

 

「舩坂くん、良いよ。私、話すから………」

 

他ならぬみほが、それを制した。

 

「! 西住くん………」

 

「沙織さんも華さんも、それに弘樹くん達も友達だから………良い機会だし、ちゃんと話しておこうと思うの」

 

「…………」

 

そう言うみほの言葉を聞いて、弘樹は黙り込み、話を聞く態勢を取った。

 

「「「「「…………」」」」」

 

地市達と沙織達も、みほの話に真剣に耳を傾ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

去年の戦車道・歩兵道の全国大会決勝戦、黒森峰機甲部隊VSプラウダ&ツァーリ機甲部隊との戦いに於いて………

 

序盤より両軍は激しく交戦し、お互いに消耗戦へと発展していた。

 

だが、その試合中に天候が急変。

 

試合中断とはならなかったものの、豪雨で視界が悪くなった為、両軍は一旦交戦を停止し、互いに距離を取っての睨み合いとなり、膠着状態へ発展。

 

そこまでの消耗戦では、僅かに黒森峰機甲部隊側の戦果が、プラウダ&ツァーリ機甲部隊を上回っていたが………

 

確実な勝利の為に、黒森峰機甲部隊はプラウダ&ツァーリ機甲部隊の奇襲を計画する。

 

豪雨に紛れて、谷川沿いの道を進軍し、プラウダ&ツァーリ機甲部隊の背後を取ろうとしたのである。

 

その奇襲部隊の指揮を取っていたのが、当時黒森峰機甲部隊の戦車部隊副隊長で、フラッグ車の車長であったみほだった。

 

本来ならばフラッグ車だけは後方に下げて置くべきであったが、序盤の消耗戦で戦車の数が減っていた黒森峰機甲部隊はフラッグ車も借り出さねば確実な勝利は掴めないと判断。

 

フラッグ車の車長が副隊長であるみほであり、護衛を歩兵部隊の総隊長である都草と、彼が選んだ精鋭の歩兵部隊が担当する言う事もあって、フラッグ車を奇襲部隊へと編入したのである。

 

 

 

 

 

だが、それが悲劇の引き金だった………

 

 

 

 

 

順調に進んでいたかに見えた奇襲作戦だったが、プラウダ&ツァーリ機甲部隊はこの奇襲を察知。

 

谷川沿いの道の出口で待ち伏せていたのである。

 

そして、みほが乗るフラッグ車の前方を行って居たⅢ号戦車が、逆に奇襲攻撃された事に慌てて退避行動を取ろうとした結果、谷へと滑り落ち、そのまま川へ水没してしまったのである。

 

本来ならばこの時点で審判によって試合が中断され、水没した戦車の乗員救助が行われなければならなかった。

 

しかし、悪天候の為に審判側の確認が遅れたのである。

 

豪雨で川は増水しており、救助には一刻を争うと判断したみほは戦列を離れ、水没した戦車の救助へ向かった。

 

車長が居なくなったフラッグ車は命令系統が混乱。

 

その場で立ち往生してしまい、後続の戦車と梶の歩兵部隊が盾になろうとしたが間に合わず、撃破される。

 

試合後に、審判側と連盟が確認不備を謝罪し、再試合を行う事を提案したが、黒森峰の戦車道指導者であるみほとまほの母………『西住 しほ』がコレを拒否。

 

『黒森峰が求めるのは王者としての勝利。再試合のでの勝利など、恥の上塗りである』との弁である。

 

結果、黒森峰は前人未到とされていた全国大会10連覇の逃す事となった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

みほの話を聞き終えた弘樹達と沙織達は黙りこくる。

 

「私のせいで負けちゃったんだ………10連覇も逃して………隊の皆や梶さん………お姉ちゃんにも………迷惑掛けて………」

 

「私は、前にも言いましたが、西住殿の判断は間違っていなかったと思います!」

 

が、みほがそう言うと、即座に優花里がそう言い放った。

 

「秋山さん………」

 

「それに………助けに来てもらった選手の人達は、西住殿に感謝してると思いますよ」

 

そう言ってみほに笑い掛ける優花里。

 

「秋山さん………ありがとう」

 

「!? ハワァッ!? 凄いっ!! 私、西住殿にありがとうって言われちゃいましたぁ~~っ!!」

 

みほに感謝され、優花里は感激の余りか、癖毛の髪を撫でまわしながら身をくねらせる。

 

………と、その時!!

 

「!? ハワァッ!?」

 

身をくねらせた事でバランスを崩したのか、優花里の身体が仰け反り、Ⅳ号の上から落下し始める!!

 

「!? 秋山さん!?」

 

「ゆかりん!?」

 

「危ないっ!!」

 

みほ、沙織、華が慌てて手を伸ばすが間に合わず、優花里の身体は格納庫の床に………

 

「ぐえっ!?」

 

叩き付けられる前に、間一髪で滑り込んだ白狼が、自らの身体をクッション代わりに受け止めた!!

 

「!? 神狩殿!」

 

「神狩!!」

 

「オイオイ、大丈夫かよ!?」

 

「しっかりせえっ!!」

 

優花里が驚きの声を挙げ、飛彗、海音、豹詑が慌てて駆け寄る。

 

「おっふ………食ったもんが口から出るかと思ったぜ………」

 

「す、すみません、神狩殿! 私の為に………」

 

「そう思うんなら先ず退いてくれないか?」

 

慌てて白狼に謝る優花里だったが、白狼にそう返されて、未だに彼の身体の上に乗ったままだった事に気付く。

 

「!? はわぁっ!? すいませんっ!!」

 

すぐさま飛び退く様にして白狼の上から降りる優花里。

 

「くうう~~っ! 俺が後一歩早く飛び出してれば!!」

 

「お前の場合は潰れてそれで終わりだろ」

 

了平が心底悔しそうにしていると、地市が容赦無いツッコミを入れる。

 

「ったく、気を付けろよなぁ」

 

「本当にすみません………あと………ありがとうございます」

 

やれやれと言った具合に身を起こす白狼を見ながら、優花里は若干頬を染めた様子でお礼を言う。

 

「良かった………」

 

「本当に良い友達ばかりだ………そう思わないか、西住くん」

 

その優花里の姿にみほが安堵していると、弘樹がそう声を掛けて来た。

 

「舩坂くん………うん、そうだね………」

 

「武道に於いて、勝つ事は大切だ。だが、それ以上に、何の為に勝つのかを考える事が大事だと小官は思っている」

 

「何の為に………」

 

「西住くん。君は君の戦車道を貫けば良い。それは西住流とは違うかも知れないが………その戦車道こそが、君にとっての真の戦車道になる筈だ」

 

「私にとっての………真の戦車道………」

 

弘樹の言葉に、何か思う様な所がある顔となるみほ。

 

「そうですよね。戦車道の道は、1つじゃないすよね」

 

「そうそう! 私達が歩いた道が、戦車道になるんだよ!」

 

華がそう同意し、沙織も天を指差しながらそんな事を言った。

 

「おっ! 良いな、ソレ!」

 

「俺達の歩いた後に出来た道が、か………」

 

地市達も、沙織のその言葉に感銘を受ける。

 

「「…………」」

 

みほはそんな沙織の言葉を聞いて笑顔で天井を見上げ、弘樹はそんなみほを見て微笑を浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

大洗女子学園の生徒会室では………

 

杏、柚子、桃、蛍の女子校側生徒会メンバーと、迫信、十河、逞巳、俊、清十郎、熾龍の男子校生徒会メンバーが合同で食事を取りながら、次の試合となる2回戦の対戦相手………

 

『アンツィオ高校』と『ピッツァ男子校』からなる『アンツィオ&ピッツァ機甲部隊』への簡易的な対策と、大洗機甲部隊の戦力の見直しを話し合っていた。

 

「ふう~~………今の戦力で、2回戦勝てるかなぁ?」

 

「絶対勝たねばならんのだ!」

 

柚子が重い溜息と共に不安そうにそう言うと、桃がテーブルを叩きながらそう言う。

 

「フン………口でそう言ってれば勝てるものではないぞ」

 

「何だとっ!!」

 

「も、桃ちゃん、落ち着いて!」

 

そんな桃に向かって熾龍は毒を吐き、桃が激昂した様子を見せると、蛍が慌てて宥める。

 

「2回戦の相手は確か………『アンツィオ高校』と『ピッツァ男子校』からなる『アンツィオ&ピッツァ機甲部隊』だっけかぁ?」

 

「ハイ、確かそうです」

 

俊が2回戦の相手について確認すると、清十郎が返事を返す。

 

「過去のデータを確認したが、調子が良い時と悪い時の落差が激しい部隊の様だな………」

 

「決勝戦まで行った事もあれば、初戦で敗退した年もありますね」

 

事前にアンツィオ&ピッツァ機甲部隊の昨年度までの全国大会での成績を確認しておいた十河と逞巳がそう言う。

 

「ノリと勢いだけは有るって事だね」

 

「調子に乗らせると手強い相手です」

 

「油断せずに戦うに越した事はないね」

 

杏と柚子がそう言い合うと、迫信は扇子で口元を隠しながらそういうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

サンダース&カーネル機甲部隊との戦いが終わり、次なる相手………
『アンツィオ&ピッツァ機甲部隊』との戦いに向けた幕間です。

今回、原作に於いて、みほが戦車道から逃げ出す切っ掛けとなった事件を詳しく語ったわけですが………
お分かりかと思いますが、大分私なりの解釈と辻褄合わせが入っています。
話の中でも書いた通り、ああいう人命に関わる様な事態が起こったら、試合どころではないだろうし、審判が何らかの介入をすると思うんですよね。
その辺を私なりに考えて、如何してああなってしまったのかを書き上げてみました。
飽く迄、私なりの解釈と辻褄合わせなので、その辺はご了承下さい。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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