ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第33話『第2次戦車捜索作戦です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第33話『第2次戦車捜索作戦です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2回戦の対戦相手………

 

『アンツィオ高校』と『ピッツァ男子校』からなる『アンツィオ&ピッツァ機甲部隊』との戦いへ向けて訓練に励む大洗機甲部隊。

 

そして、その戦いの日が間近に迫ったとある日………

 

 

 

 

 

大洗女子学園・戦車格納庫前………

 

「良し! 今日の練習はコレまでよっ!!」

 

「「「「「「「「「「ありがとうございましたっ!!」」」」」」」」」」

 

その日の訓練が終わり、空教官に向かって礼をする大洗機甲部隊の面々。

 

「もうすぐ2回戦ね。アンツィオ&ピッツァ機甲部隊はムラっ気のある部隊だけど、今の貴方達には十分な脅威となる相手よ。それに………」

 

何かを言おうとして言うべきか迷った様子を見せる空。

 

「「「「「「「「「「??」」」」」」」」」」

 

そんな空の様子に、大洗機甲部隊の面々は首を傾げる。

 

「………アンツィオ&ピッツァ機甲部隊には………『鬼』が居るって噂が有るわ」

 

「『鬼』?………」

 

その言葉に弘樹が反応し、他のメンバー達もざわめき出す。

 

「その『鬼』って言うのが何を指すのかは分からないけど、脅威である事は間違いないわ。今回も気を引き締めて掛かるのよ!」

 

「「「「「「「「「「ハイッ!!」」」」」」」」」」

 

「じゃあ、またね!」

 

空はそう言うと、10式・改に乗り込み、亜美達と同じ様にフルトンシステムで撤収して行った。

 

それを見送ると、大洗機甲部隊は戦車部隊が戦車を格納庫へ入れて、歩兵部隊が武器を整備班に渡し始める。

 

「良し! 整備開始だっ!」

 

「気合入れてくよ~!」

 

敏郎とナカジマがそう言うと、整備部と自動車部のメンバーは一斉に武器と戦車の整備を開始する。

 

「皆、お疲れ様でした」

 

「お疲れ様でした、西住殿。良い汗掻きましたね」

 

Ⅳ号から降りたみほと優花里がそう言い合う。

 

「小官としてはもう少し続けて居たかったがな」

 

「オイオイ、お前の体力と一般人の体力を一緒にすんなっての」

 

まだまだ訓練し足りない様子の弘樹がそう言うと、地市がツッコミを入れる。

 

「1、2! 1、2!」

 

とそこで、みほ達と弘樹達の耳に、そんな掛け声が聞こえて来る。

 

みほ達と弘樹達が、その声が聞こえて来た方向を見やるとそこには………

 

格納庫内の空きスペースで、ダンスの練習をしている聖子達、サンショウウオさんチームの姿が在った。

 

「聖子さん」

 

「精が出てるな」

 

それを見たみほ達と弘樹達は、聖子達に声を掛ける。

 

「あ! 西住総隊長! 舩坂分隊長! お疲れ様です!!」

 

「「お疲れ様です!」」

 

と、声を掛けられた事に気付くと、聖子達はダンスレッスンを中断し、みほ達と弘樹達に向かって挨拶をする。

 

「頑張ってるね」

 

「ハイ! 今度こそライブ会場をお客さんでいっぱいにしたいですから!!」

 

沙織がそう言うと、聖子が元気良くそんな言葉を返す。

 

「練習熱心なのは感心だが、君達も戦車チームの一員だと言う事は忘れない様にな」

 

弘樹もレッスンに熱心な聖子達を褒めつつも、自分達も戦車チームである事を忘れるなと釘を刺す。

 

「あ、ハイ! それは勿論です!!」

 

「空き時間を利用してマニュアルに目を通したりはしています」

 

「でも~、やっぱり実際に戦車に乗らないと分からない所も多くて………」

 

聖子、優、伊代はそう言葉を返す。

 

「ふむ………」

 

そこで弘樹は顎に手を当てて考え込む様な様子を見せる。

 

と、その時………

 

「!? 誰だっ!?」

 

ふと背後に気配を感じた弘樹が、そう言いながら振り返った!

 

「「「!?」」」

 

すると3つの人影が、整備資材の陰へと隠れる。

 

「!? 誰か居ますよ!?」

 

「まさか、他校のスパイか!?」

 

優花里と地市がそんな声を挙げる。

 

「!!………」

 

それを聞いた弘樹は、即座に腰に下げていた日本刀を抜くと、整備資材の陰へ駆け出す。

 

「動くなっ!!」

 

そして、隠れた人影に向かって、日本刀の刃を突き付けながらそう言い放つ。

 

「「「ヒイイッ!?」」」

 

隠れていた人影………大洗女子学園の制服を着た少女3人は、そんな弘樹を見て怯える。

 

「何っ?………」

 

隠れていたのが他校のスパイではなく、大洗女子学園の生徒だった為、弘樹は一瞬困惑する。

 

「何々っ?」

 

「如何した如何した?」

 

「何があったの?」

 

その様子を見て、沙織達や地市達、聖子達も駆け寄って来る。

 

「あ! 貴方達は!!………」

 

と、聖子は怯えている大洗女子学園の制服を着た少女3人を見て声を挙げる。

 

何故ならば、その3人の少女こそが、サンダース&カーネル機甲部隊との戦いに勝利した後のライブに来てくれた、大洗女子学園の子達だったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後………

 

「誠に申し訳無い!」

 

落ち着きを取り戻した3人の女子生徒に向かって、弘樹が深々と頭を下げて謝罪する。

 

「い、いえ、そんな!」

 

「そんなに頭を下げないで下さい」

 

「無断で入った私達も悪いんです」

 

3人の女子生徒は、弘樹の誠意溢れる謝罪を前に、逆に戸惑ってしまう。

 

「それで一体何の用かな? えっと………」

 

「あ! わ、私!………」

 

聖子が何をしに来たのかと尋ねようとして、女子生徒達の名前を知らない事に気づき、女子生徒の1人が自己紹介をしようとしたところ………

 

「アレ? 明菜じゃねえか」

 

そう言う台詞と共に、自分のバイクの整備を終えた白狼が、その場へ姿を見せた。

 

「! 白狼!」

 

「神狩さんの知り合いですか?」

 

「『植草 明菜』、幼馴染だ。何やってんだ、お前。こんなとこで?」

 

楓が尋ねると、白狼はそう返しながら、改めて少女………『植草 明菜』にそう尋ねる。

 

「え、えっと、その………あ、改めまして初めまして! 私! 普通科1年の植草 明菜です! コッチは友達の………」

 

「あ、えっと………た、『玉元 静香』………です………」

 

「『錦織 満里奈』だにゃ!」

 

そこで明菜が改めて自己紹介を行い、それに続く様に内気そうな少女・『玉元 静香』と、スポーツ少女と言った感じのする語尾がネコの様な少女・『錦織 満里奈』が自己紹介をする。

 

「あ、あの! えっと! その!………」

 

「あ、明菜ちゃん………落ち着いて………」

 

「明菜、深呼吸だよ、深呼吸!」

 

吃って上手く話せなくなる明菜を、静香と満里奈が落ち着かせる。

 

「う、うん………スーッ………ハーッ………スーッ………ハーッ………」

 

アドバイスに従い、深呼吸をして気持ちを落ち着かせる明菜。

 

「それで? 如何したの?」

 

聖子が明菜が落ち着いたのを見て、再度問い質す。

 

「わ、私達も………私達も! 先輩達のチームに入れて下さいっ!!」

 

そこで明菜は、一瞬躊躇した様子を見せながらも、聖子達に向かってそう言い放った。

 

「えっ!?」

 

「それって………」

 

「私達と一緒に戦車道………それとスクールアイドルをやりたいって事ですか?」

 

聖子と伊代が戸惑っていると、優がそう問い質す。

 

「そ、そうです!」

 

「こ、この間のサンダース&カーネル機甲部隊との戦い………か、感動しました!」

 

「それに、その後のライブもスッゴイ良かったし!」

 

明菜、静香、満里奈の3人は、この間のサンダース&カーネル機甲部隊との戦い、そしてその後のライブの様子を思い出しながらそう言う。

 

「そ、それで私達も! 皆さんみたいになりたいって思って!」

 

「だ、だから………」

 

「チームに入れて下さい!!」

 

「「「お願いしますっ!!」」」

 

そう言って聖子達に向かって深々と頭を下げる明菜、静香、満里奈。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

場が一瞬沈黙に包まれたかと思うと………

 

「………勿論! 大歓迎だよ!!」

 

「「「!!」」」

 

聖子のそう言う声が響き、明菜達が顔を挙げるとそこには………

 

自分達に向かって手を差し出している聖子、伊代、優の姿が在った。

 

「「「ようこそ! サンショウウオさんチームへ!!」」」

 

笑顔を浮かべ、明菜達に向かってそう言う聖子達。

 

「「「!………ハイッ!!」」」

 

それに対し、明菜達も笑顔を浮かべ、差し出された手を其々に握る。

 

「やったね、みぽりん!」

 

「仲間が増えましたよ! 西住殿!!」

 

「うん!」

 

その様子に、沙織、優花里、みほもそう声を挙げる。

 

「喜んでばかりも居られないぞ………幾らメンバーが増えても、肝心の戦車が無くては意味が無い」

 

しかしそこで、麻子が1人冷静にそうツッコミを入れる。

 

「ああ………」

 

それを聞いたみほが表情に影を落とすが………

 

「となると、やはり予定を繰り上げるしかないか………」

 

そこで弘樹が、そんな事を呟いた。

 

「? 舩坂くん?」

 

「予定って………何ですか?」

 

その言葉に、みほと華がそう問い質す。

 

「………第2次戦車捜索作戦です」

 

そんな2人に向かって、弘樹はそう言う言葉を返したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日………

 

昨日の内に、弘樹が迫信と杏に上申した『第2次戦車捜索作戦』に対する許可が下り、本日は訓練を中止し、大洗機甲部隊の面々全員による、新たな戦車の捜索が開始される。

 

当時の資料は殆ど残って居なかったが、僅かに残されていた資料に、現在大洗戦車部隊が使用しているⅣ号、八九式、Ⅲ突、38t、M3リーの他にも戦車が存在していた事を示す記録が存在した。

 

今後の戦いの事を考え、戦車部隊の戦力増強は急務であり、更にサンショウウオさんチームを何時までも遊ばせておくワケにも行かないとの判断である。

 

大洗機甲部隊は戦車部隊・歩兵部隊混合で、何人かのグループを作り、学園艦の方々へ散らばって、新たな戦車の捜索へ乗り出した。

 

 

 

 

 

大洗女子学園・旧部室棟………

 

この辺りを捜索するのは、戦車部隊からはみほと麻子、そしてバレー部のメンバー。

 

歩兵部隊から、弘樹、誠也、武志、大河を中心に、ラクビー部と大洗連合のメンバーである。

 

「戦車なんだからすぐ見つかりますよね!」

 

「だと思うけど………」

 

典子の自信満々な声に、若干自信無さげなみほがそう返す。

 

「手掛かりはないのか?」

 

「冷泉先輩、刑事みたい」

 

ぼやく様にそう呟いた麻子に対し、忍がそんな事を言う。

 

「それが、部室が昔と移動したみたいで、良く分からないんだって」

 

「仕方がないさ。前回捜索した範囲を更に見直すと共に、新たに捜索範囲を広げて行くしかあるまい」

 

前途多難な捜索作戦に思わず表情に影を落とすみほに、弘樹が励ます様にそう言う。

 

「よっしゃあ! 気合入れて探すでぇ!! お前等ぁっ!!」

 

「「「「「「「「「「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

「皆も、よろしく頼むよ」

 

「「「「「「「「「「ハイ、キャプテンッ!」」」」」」」」」」

 

当ての無い捜索を前にしても、士気を落とさない大河率いる大洗連合と武志達ラクビー部員達。

 

「頼もしいですね」

 

そんな面々を見て、誠也はそう呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

大洗女子学園の校舎・屋上にて………

 

そこには歴女チームと優花里、白狼の姿が在った。

 

「ハッ!」

 

カエサルが掛け声を挙げ、何やら八卦爻と太極の盤の上の立てていた棒を倒す。

 

「東が吉と出たぜよ」

 

倒れた棒の方向を見て、おりょうがそう言う。

 

「コレで分かるんですか!?」

 

「ド〇えもんのたずね人ステッキかよ」

 

優花里と白狼は、その八卦占いに懐疑的な様子を見せるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に、学園艦の艦内部では………

 

戦車部隊から、沙織と1年生チーム。

 

歩兵部隊からは、地市の他、勇武、光照、竜真、ジェームズ、清十郎、正義と言ったハムスターさん分隊の面々を中心とした分隊が捜索に当たって居る。

 

「何此処? 何~?」

 

「凄い。船の中っぽい」

 

「いや、船だもん」

 

初めて入る学園艦の深部に、優季、桂利奈、あやがそんな会話を交わす。

 

「こんなになってたんだ………」

 

「自分、学園艦に此処まで踏み込んだのは初めてッス!」

 

「僕もです」

 

勇武、正義、光照もそんな事を呟く。

 

「思えば、何で船なんでしょう?」

 

「大きく世界に羽ばたく人材を育てる為と、生徒の自主独立心を養う為に、学園艦が作られた………らしいよ」

 

ふと湧いた学園艦への疑問に、沙織がそう説明する。

 

「無策な教育政策の反動なんですかね」

 

「どっちにしろ、大人の事情に振り回されるのは何時も子供達ですね」

 

清十郎がそんな皮肉めいた事を言う。

 

「でも、スクールシップ構想は非常に有用デス。ステイツでも、色々なスクールシップが建造されてマシタ」

 

「そうなんだ」

 

祖国の事を思い出してそう言うジェームズに、竜真が相槌を打つ。

 

「お疲れ様でーす」

 

とそこで一同は、学園艦の運行を担当している船舶科と呼ばれる水兵姿をした女子生徒2人と擦れ違う。

 

「あ、あの! 戦車知りませんか?」

 

沙織はその船舶科の女子生徒にそう尋ねる。

 

「戦車か如何か分からないけど………何かソレっぽいもの、何処かで見た事あるよね? 何処だっけ?」

 

「もっと奥の方だったかな?」

 

船舶科の女子生徒の片方が、更に学園艦の奥の方を指差す。

 

「よし、行ってみよう!」

 

「どうもありがとうな!」

 

沙織がそう言うと、地市が船舶科の女子生徒にお礼を言って、学園艦内捜索隊は、更に深部を目指して奥へ奥へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、大洗女子学園・生徒会室では………

 

戦車部隊から華と柚子、桃、杏、蛍と言った生徒会チーム。

 

歩兵部隊からは迫信、十河、俊、熾龍と言ったツルさん分隊の面々が、まだ他に資料が残されていないかを調べていた。

 

最も、杏は生徒会長の椅子をリクライニングさせ、俊もソファに寝転んでおり………

 

桃は捜索に出ている者達からの報告待ち、熾龍は何時もの様に腕組みをして壁に寄り掛かっているので、実質働いているのは華、柚子、蛍、迫信、十河の面々である。

 

「戦車道って、随分昔からやってるんですね」

 

「そうね。1920年代頃から………」

 

「まだか!」

 

と、資料を見ながら話し合っていた華と柚子の会話が、桃の大声に中断させられる。

 

「まだ見つからないのか!?」

 

貧乏揺すりをしながら、テーブルの上に置かれた携帯を見据えている桃。

 

「………フンッ」

 

そんな桃の姿を見て、熾龍は一瞬嘲笑する。

 

「オイ! 貴様ぁっ!! 今笑ったかぁっ!!」

 

当然桃は騒ぎ立てるが、熾龍は無視を決め込むのだった。

 

「捨てられちゃったかなぁ?」

 

「でも、処分したんなら、その書類だって残ってる筈だよね」

 

柚子の言葉に、別の資料を見ていた蛍がそう返す。

 

「大丈夫でしょうか?」

 

「クッ! 全くを持って資料が少なすぎる! 大体大洗女子学園が戦車道をやっていたのは20年も前だぞ!!」

 

華がそう呟くと、大量の資料に目を通している十河が愚痴る様にそう言い放つ。

 

「何れ見つかるさ。諦めさえしなければね」

 

その隣では、迫信が十河が見ている資料の3倍近い量の資料を、十河の5倍近いスピードで目を通して行っている迫信の姿が在った。

 

しかもそれで居て、動きが実に優雅でエレガントである。

 

「果報は寝て待てだよ~」

 

「ZZZZZZzzzzzzz~~~~~~~~………」

 

杏はそう言ってリクライニング式の椅子の上で寝てリラックスし、俊は既にイビキを掻いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

捜索開始から数時間が経過………

 

既に日は西へと傾き出し、学園艦の街並みに、薄くオレンジ色が掛かり出す。

 

そんな中で、大洗女子学園・旧部室棟を捜索していたみほ達と弘樹達は………

 

「コレで最後の部室ですよ。手掛かりになりそうな物、無いですね~」

 

旧部室棟の最後の部室の捜索に取り掛かっていた。

 

しかし、典子の言葉通り、手掛かりになりそうな物は見当たらない………

 

「コレはお手上げかなぁ?」

 

忍からそんな弱気な声が漏れる。

 

「諦めるな。もう少し探してみるんだ」

 

そこで弘樹がそう言い放つ。

 

「あ! アレは如何だろう?」

 

とそこで典子が、高い棚の上に乗って居る資料らしき紙束を発見し、手に取ろうとする。

 

「ふっ! くうっ!………届かない!」

 

しかし、身長の低い彼女ではその紙束に手が届かず、棚の前で背伸びした状態でプルプルと震える。

 

「キャプテン、私が取りますよ」

 

見かねた忍がそう言うが………

 

「いいや! コレは私が取る! 根性おおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!」

 

典子はそれを断ると、バレーで鍛えたジャンプ力を発揮し、大きく跳躍する。

 

そして資料に手が届くと、そのまま棚にしがみ付く。

 

「やった!………!? うわぁっ!?」

 

その際の衝撃でバランスが崩れ、典子がしがみ付いた手前に向かって棚が倒れ出す!

 

「!? キャアアッ!?」

 

傍に居た忍が悲鳴を挙げて思わずしゃがみ込む。

 

そして棚が倒れたと思われた瞬間に埃が舞い上がり、2人の姿が見えなくなる。

 

「!? キャプテン!!」

 

「忍!!」

 

「「「「!?」」」」

 

典子と忍が棚の下敷きになったと思った妙子とあけび、みほ達が慌てる。

 

しかし、徐々に舞い上がった埃が収まって来ると………

 

「大丈夫かい? 典子ちゃん」

 

「怪我は無いかぁ?」

 

典子をお姫様抱っこで受け止めていた武志と、忍に向かって倒れようとしていた棚を受け止めている大河の姿が露わになった。

 

「た、武志………あ、ありがとう………」

 

「た、助かったわ………」

 

典子は武志に向かって、忍は大河に向かって頬を染めながらそう言う。

 

「どういたまして」

 

「気ぃつけえや」

 

武志はそう言って典子を床に下ろし、大河は棚を元に戻す。

 

「それで、如何だ? その資料は?」

 

そこで弘樹が、典子が取った資料について尋ねる。

 

「あ、うん………違う。戦車の事は書かれてないや」

 

そう言われて改めて資料を見やる典子だったが、それは戦車に関連する物ではなかった。

 

「そうか………」

 

「やれやれ。無駄に埃が舞っただけだったな………」

 

そこで麻子がそう言い、まだ舞っている埃を換気しようと、近くに在った窓を開ける。

 

「? 何処の部だ? こんな所に洗濯物干したのは?」

 

すると窓の外に、洗濯物が干されているのを発見する。

 

「………アレ? 舩坂くん、ちょっと来て」

 

「如何した?」

 

と、それを見たみほが、弘樹の事を呼ぶ。

 

「! コレはっ!?」

 

その洗濯物………

 

いや、正確には『洗濯物が干されている物干し竿』を見て、弘樹が声を挙げる。

 

何故ならその物干し竿は如何見ても………

 

戦車の砲身だったからだ。

 

 

 

 

 

その後、弘樹達は部室から出ると、改めて間近でその砲身を確認する。

 

「間違い無い。戦車砲だ。恐らく………『7.5cm KwK40』だろう」

 

「うん。きっとⅣ号用の部品だよ」

 

「取り敢えずの収穫だな………」

 

物干し竿となっているその砲身を見て、弘樹、みほ、麻子がそう言い合う。

 

「取り敢えず、輸送科の人達に連絡して、運んでもらいましょう」

 

武志が携帯電話を取り出すと、輸送科に連絡を取ろうとする。

 

「………アレ?」

 

とその時、誠也が何かに気付いた様に、地面の一角へと向かったかと思うと、その場にしゃがみ込み、土を触り出す。

 

「? 塔ヶ崎くん? 如何したの?」

 

「いえ………何だか此処の地面だけ、他と違うから少し気になって」

 

妙子が尋ねると、誠也はそう返す。

 

「違う? 如何言う事だ?」

 

「この辺の土だけ、少し新しいんです。まるで1回掘り起こしたかの様に………」

 

「そんな事が分かるんかいな?」

 

「ええ。僕、家が農家なんで、土に関してはちょっと自信がありますよ」

 

自負する様にそう言う誠也。

 

「1回掘り起こした………!」

 

とそこで、誠也の言葉を聞いていた弘樹の頭に、とある考えが過る。

 

「舩坂くん! ひょっとして………」

 

みほも同じ考えに至ったらしく、弘樹に声を掛ける。

 

「東郷くん。手の空いているメンバーも、スコップを持って此処へ集合する様に連絡してくれ」

 

「えっ? あ、分かりました」

 

弘樹は輸送科へ連絡しようとしていた武志にそう言い、武志は一瞬戸惑いながらもそう返事を返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

第2次戦車捜索です。
サンショウウオさんチームに追加メンバーが入ると共に、遂に彼女達が使う戦車が見つかります。
どんな戦車かは次回明らかになります。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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