ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース 作:宇宙刑事ブルーノア
『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』
第34話『新戦車、発見です!』
公式戦2回戦の相手であるアンツィオ&ピッツァ機甲部隊との戦いを前に………
戦力補強を考え、まだ存在していると思われる戦車の捜索へ掛かった大洗機甲部隊。
メンバー全員による捜索が続く中………
弘樹達とみほ達が、旧部室棟にてⅣ号用の物と思われる『7.5cm KwK40』を発見。
輸送科に連絡を入れ、運ぼうとしたところ………
誠也が、その近くの地面に1度掘り起こされた形跡を発見する。
大洗女子学園・旧部室棟付近………
輸送科の面々が、7.5cm KwK40を回収している横にて………
弘樹を中心に集まった大洗歩兵部隊の面々………
そして、ジャージ姿のサンショウウオさんチームの皆がスコップを手に、誠也が言っていた掘り返された形跡のある地面を掘っていた。
「オイ、弘樹。ホントなのか? 此処に戦車が埋まってるって?」
スコップを手に地面を掘っていた了平が、同じ作業をしている弘樹にそう尋ねる。
「間違い無い。きっと有る」
弘樹はそう短く答え、黙々と土を掘り続ける。
「けどよぉ、もう大分掘ってるけど、戦車どころから、石ころ1つ出て来ないぜ」
了平の愚痴るかの様な言葉通り、既に大洗歩兵部隊は3メートル近く地面を掘り起こしているのだが、戦車らしき物が出て来る気配は無い。
「もう少し掘ってみるんだ」
しかし、弘樹はそう言って作業を続ける。
「此処に戦車が………」
「そしたら、私達も………」
「戦車に乗れる」
漸く自分達の戦車が手に入るかも知れないと思っているサンショウウオさんチームも、只管に土を掘っている。
「み、皆さん! 頑張って下さい!!」
「根性ーっ!!」
その作業を見守っているみほ達と典子達からそんな声援が飛ぶ。
数分後………
既に掘り起こした深さは6メートルに達しようとしていた。
しかし、未だに戦車らしき物は出て来ない………
「あ~、もう駄目だぁ~っ!!」
汗だくの了平が、その場に尻餅をついて座り込む。
「ハア………ハア………出て来ませんね………」
「本当に埋まってるんでしょうか?」
楓もそう言って手を止めてしまい、武志も作業を続けているが、そんな声を漏らす
「満里奈も疲れたにゃあ」
「わ、私も………」
サンショウウオさんチームの方でも、満里奈と静香がそう言って、突き立てたスコップに寄り掛かる様に蹲ってしまう。
「流石にココまで掘って出ないとなると、やっぱり違ったのでは………」
優もそんな呟きを漏らす。
「…………」
しかし、聖子だけは滝の様に汗を流しながらも、黙々と土を掘り続けている。
「聖子ちゃん………」
「「「「…………」」」」
そんな聖子の姿に、伊代も優達も何も言えなくなる。
(私達も戦車に乗って試合に出るんだ………もう見てるだけじゃなくて………西住総隊長や舩坂さん達と一緒に………)
そう思いながら、只管土を掘って行く聖子。
と、その時!!
スコップの先が何かにぶつかり、ガキィンッ!と甲高い金属音を立てた!
「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」
「!?」
その音で、作業をしていた一同の視線が聖子の元へ集まり、聖子はすぐさまスコップを放ると、その場所の土を手で掻き分ける様に退かし始める。
やがて、鉄板の様な物が見えてきたかと思うと、その鉄板に白いペンキで漢数字の『零』が掛かれているのが露わになる。
「! 有った! 有ったよ~~~っ!!」
「やったね! 聖子ちゃん!!」
「やりましたね!!」
「「「先輩~~っ!!」」」
思わず歓喜の声を挙げる聖子に、伊代と優、明菜に静香、満里奈が抱き付く。
「「「「「「「「「「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」
周りに居た大洗歩兵部隊の面々も、歓声を挙げるのだった。
その後、迫信が手配してくれた超大型特殊クレーン車が数台掛かりで、埋まっていた戦車を引き上げ、輸送科が大洗女子学園の戦車格納庫前まで輸送。
また、優花里と白狼、歴女チーム達も沼の中に放棄されていた戦車を発見。
そちらの戦車も回収され、同じく戦車格納庫前へと輸送された。
大洗女子学園・戦車格納庫前………
発見された2台の戦車と、Ⅳ号用の長砲身の前に、一部を除いて集合している大洗機甲部隊の面々。
「コレが秋山くん達が見つけた戦車か………」
「『ルノーB1 bis』………」
優花里達が見つけた戦車………フランス軍の『ルノーB1 bis』を見て、弘樹とみほがそう言い合う。
「で、コイツはどないな戦車なんや?」
その2人に向かって、豹詑がそう尋ねる。
「一応、形式上は重戦車に分類されるな」
「最大装甲厚は60mm。車体に75mm砲を搭載。砲塔は47mm砲だね」
「おお! 重戦車か!」
「砲も2つあって、火力も良さそうだな」
重戦車と言う言葉を聞いて、重音と鷺澪が嬉しそうな声を挙げる。
「いや、余り過度な期待はしない方が良いぞ」
しかしそこで、煌人が首から紐で下げたノートPCを弄りながらそう言う。
「? アインシュタイン? 如何言う事だよ?」
「この戦車には弱点がある。1つは構造上の問題で、左側面が機関室の給排気用の格子となっている事だ。此処を撃たれればそれまでだ。次にコイツの砲塔は1人用で、車長は47mm砲の砲手および装填手を兼任するから、1人3役を熟さざる得ない。当然、指揮に支障が出る」
「うえぇっ? マジかよ………」
「折角見つけたのに………」
漸く見つけた戦車が、性能的に微妙だと言われて、何名かがガッカリした様な様子を見せる。
「まあ、それは運用法と戦術でカバーするしかないね」
「んで、もう1つの方は?」
そんな一同をフォローするかの様に迫信がそう言い、続いて杏が、弘樹達が発掘した、もう1両の戦車について尋ねる。
「コレはイギリスの巡航戦車、『Mk.ⅤⅢ クロムウェル』ですね。型はMk.Ⅲです」
するとそこで、優花里はその戦車………『クロムウェル巡航戦車』を見てそう言う。
「クロムウェル巡航戦車か………」
「コイツも微妙なのか?」
先程のルノーB1 bisの事もあり、不安そうに煌人にそう尋ねる海音。
「いや、性能的には悪くない。寧ろ、優秀な戦車だと言えるだろう。特に速度に関しては最大時速64キロを記録し、『第2次世界大戦中最速の戦車』と言われた程だ」
「最大装甲厚も、この型なら76ミリ有りますし、主砲の6ポンド砲も決して威力は低くはありません」
しかし、煌人と優花里からはそう言う答えが返って来る。
「時速64キロ!?」
「凄いです! 現代戦車の速度にも負けてませんよ!!」
最高時速が64キロも出ると聞いた磐渡と清十郎がそう声を挙げる。
「只、史実での活躍はパッとしなかった様だがな………」
「うむ。有名な話で、ノルマンディー上陸作戦後のヴィレル・ボカージュの戦いにおいて、ドイツ軍の戦車乗りのエースである、『ミハエル・ヴィットマン』が指揮するティーガーⅠ1両が、クロムウェル一個大隊の15両を全滅させたというものがあるな」
だが煌人がそう呟き、エルヴィンがどや顔でそんなエピソードを語る。
「お前等、持ち上げたいのか、貶めたいのか、どっちだ?」
そんな煌人とエルヴィンを見て、俊が呆れた様にそう言う。
「まあ、兎も角………戦車2両と長砲身1つ………先ず先ずの成果だな」
「そうですね………」
十河が纏める様に言うと、みほが改めてルノーB1 bisとクロムウェル巡航戦車、7.5cm KwK40を見てそう言う。
「西住総隊長! この戦車! 私達が使っても良いですよね!!」
とそこで、聖子がクロムウェルを示しながら、みほにそう尋ねた。
「えっ? えっと~………」
みほは戸惑いながら、杏と迫信の姿を見やる。
「良いんじゃないの~?」
「西住総隊長が問題無いと仰られるのでしたら、我々から特に申し上げる事はありません」
杏は両腕を頭の後ろで組んで、迫信は畳んだ扇子を顎元に付けながら、いつもの様に不敵に笑ってそう言う。
「………うん。じゃあ、サンショウウオさんチームは、クロムウェルを担当して下さい」
「分っかりましたーっ!! ああ~~、遂に私達も戦車に乗れるんだ………コレで本当にスクールアイドルだよ~!」
「大袈裟ですよ、聖子」
目をキラキラとさせてクロムウェルを見上げる聖子に、優が苦笑いしながらそうツッコミを入れる。
「ルノーの方の乗員は如何するのですか?」
クロムウェルの乗員が確定すると、弘樹がルノーの方についてそう尋ねる。
「それはコッチで何とかするから。まあ、任せといて」
「今、交渉してみてる子達が居るんだ」
それに対し、杏と柚子がそう返す。
「そう言えば………沙織さんと1年生チームの皆さん、遅いですね」
「勇武くん達もですね………如何かしたのでしょうか?」
とそこで、華と誠也が、学園艦内の捜索へ向かった沙織達が、未だに戻らない事を気に掛ける。
すると、麻子の携帯が鳴った。
「ん?………遭難、したそうだ」
メールを確認した麻子が、相手が沙織で、学園艦内で遭難した事を告げる。
「「ええっ!?」」
「何処でですか!?」
華とみほが慌て、優花里がそう問い質す。
「船の底だが、何処に居るか分からないと………」
「何か表示がある筈だ。それを探して伝えろと言え」
麻子がそう返すと、それを聞いていた桃がそう言い放つ。
「ん………」
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
それを聞いて麻子がメールを返信していると、みほ達と弘樹を除いた大洗機甲部隊の面々が、驚きの表情で桃を見やっている。
「な、何だ、お前等?」
「河嶋さんが、何か頼りになる事を言ったぞ」
「明日にはこの学園艦、沈むんじゃねえのか?」
桃が一同の視線に戸惑うと、小声でそんな事を言い合っているのが聞こえて来る。
「貴様等ぁーっ!! 私を何だと思ってるんだぁーっ!!」
「無能、怯懦、虚偽、杜撰………まだまだ有るぞ」
「貴様ーっ!!」
怒声を挙げる桃に、熾龍の毒舌が炸裂し、最早お馴染みとなった、桃が一方的に怒鳴って、熾龍がそれを只無視すると言う光景が繰り広げられる。
「兎に角、捜索に行くぞ。何人か小官に付いて来てくれ」
「警察に頼んだ方が良いんじゃないのか?」
「馬鹿か、お前は。大会期間中に警察沙汰なんて事になったら、最悪出場停止だろうが」
捜索隊を募ろうとした弘樹に、了平がそんな事を言い、白狼が容赦無い罵声を浴びせる。
「ハイ、コレ、船の地図ね」
とそこで、杏がみほに学園艦の地図を手渡す。
「えっ?………」
そしてそのままみほ達も、ワケが分からぬ内に捜索隊へと組み込まれてしまうのだった。
◇
学園艦・内部………
戦車部隊からみほ、優花里、華、麻子。
歩兵部隊からは弘樹、白狼、飛彗、了平、楓の面々が捜索隊となり、学園艦内にて遭難した沙織達を探して、薄暗い船内を進んでいた。
「こえ~よ~………何でこの辺り電気が点いてねえんだよぉ」
「節電の為ですよ」
懐中電灯を手に、おっかなびっくりと言った様子で捜索している了平に、楓が淡々とそう言う。
「全員、足元に注意するんだ」
先頭を行って居る弘樹が、後続のみほ達にそう注意する。
「………何か、お化け屋敷みたいですね」
ライト付きヘルメットを被った優花里が、不安げにそう言う。
と、その時!
金属性の物が床に倒れた様な音が鳴り響く!
「「!? きゃああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」」
みほと優花里が思わず悲鳴を挙げ、みほは前に居た弘樹の背中に、優花里は後ろに居た白狼に抱き付いた。
「!!」
弘樹はすぐに、音がした場所を懐中電灯で照らす。
そこには、通路の隅に置かれていた資材らしき物が倒れていた。
「………心配無い。只の自然現象だ」
それを確認した弘樹が、背後からしがみ付いたままのみほにそう言う。
「………ホント? ビックリした~」
「大丈夫ですよ」
みほが安堵の息を吐くと、全く動じていなかった華がそう言って来る。
「五十鈴殿………ホント、肝が据わってますよね」
「オイ、何時までしがみ付いてる気だ?」
優花里がそう言っていると、そんな彼女にしがみ付かれていた白狼がそう言う。
「!? はわぁっ!? す、すみません、神狩殿!!」
「!! ゴ、ゴメン、舩坂くんっ!!」
その言葉で、優花里は白狼から、みほは弘樹からバッと離れた。
「ったく、別に良いけどよぉ………」
「気にするな。暗がりでは誰もが不安になるものだ」
やれやれと言った様子を見せる白狼に、特にリアクションを見せない弘樹。
「? 了平?」
と、こういう時に騒ぎ立てそうな了平が静かな事に気付いた楓が振り返ると………
「…………」
そこには、口から泡を吹いて床に倒れている了平の姿が在った。
「………気を失ってます」
「何をやってるんですか、貴方は?」
了平の状態を調べた飛彗がそう言うと、楓からは相変わらず容赦無いツッコミが入る。
「? 麻子さん? 大丈夫?」
更に、みほが麻子が青褪めた表情で立ち尽くしている事にも気づく。
「お………」
「お?」
「お化けは………早起き以上に無理」
『やれやれ、非科学的な物を怖がるなんて、ナンセンスだな』
麻子が怯えながらそう呟くと、通信機から煌人の声が響いて来た。
「あ、平賀さん………」
「アインシュタイン。俺達は今、Bの7ブロック辺りに居る」
『確認している。武部くん達が居るらしいブロックはその先だ』
「了解。急ぐぞ、皆不安がっている筈だ」
「うん」
弘樹の言葉にみほが返事を返し、一同は更に奥を目指して進み始める。
一方、その頃………
遭難した沙織達や地市達はと言うと………
「だぁ~~っ! 駄目だ! 全然分かんねぇっ!!」
携帯の写真撮影用のライトで、地図を照らしていた地市が頭を掻きながらそう声を挙げる。
必死に現在位置を割り出そうとしていた様だが、如何にも上手く行かなかったらしい。
「お腹………空いたね」
「うん………」
「今晩は………此処で過ごすのかな?」
段々と不安になって来たのか、あや、桂利奈、梓からそんな声が漏れる。
そしてそのまま、嗚咽が漏れ始めた。
「だ、大丈夫ですよ!」
「そうッスよ! きっと今! 先輩達が捜索に来てくれてる筈ッスよ!!」
清十郎と正義が、慌てて励ます。
「そう思いたいけど………」
「ハア~~………」
しかし、そんな1年生チームに釣られたのか、勇武と光照の雰囲気も暗くなる。
「…………」
「あの、丸山サン………さっきから何を見てるンデスカ?」
そんな中、1人明後日の方向を向いて上の空な様子の紗希に、ジェームズが声を掛ける。
「…………」
「コワッ! 何か怖いよ、この子!」
しかし、紗希は只虚空を見つめるばかりだったので、真竜は思わず怖がるのだった。
「み、皆! 大丈夫だよ! みぽりん達や舩坂くん達が捜索に来てくれてるから! あ、そうだ! 私、チョコ持ってるから、皆で食べよう」
皆が不安がる中、沙織は一同を励まし、落ち着かせようとする。
一方、捜索隊のみほ達と弘樹達は………
「第17予備倉庫近くだったら、この辺りだと思うんだけど………」
「この辺りの通路は複雑になっている。慣れていないと迷うのも無理はない」
壁に貼られた案内図を見ながら、みほと弘樹がそう言い合う。
するとそこで、砲撃音が鳴り響く。
「ふえっ!?」
「あ、私の携帯です」
「良い趣味してんな、お前………」
突如聞こえて来た砲撃音に麻子が驚き、優花里が自分の携帯の着信音だと言うと、白狼が呆れた様にそう言う。
「あ、カエサル殿だ。ハイ!」
『西を探せ、グデーリアン』
「西部戦線ですね。了解です」
電話の相手はカエサルだったらしく、優花里はそう遣り取りをすると、電話を切る。
「誰だ、ソレは?」
麻子が、電話の中で優花里がグデーリアンと呼ばれていた事にツッコミを入れる。
「魂の名前を付けてもらったんです」
「ああ、歴女さん達が互いに付けてる、アレですか?」
「ハイ」
楓がそう尋ねると、優花里は嬉しそうにそう返す。
「しかし、西と言っても………」
「大丈夫です。コンパス持ってます」
「お前、何でも持ってるんだな」
華が方角が分からないと言う様子を見せると、優花里はコンパスを取り出し、白狼がまたも呆れた様子を見せる。
「しかし、如何して西なんだ?」
「卦、だそうです」
「えっ?」
麻子の問いにそう返す優花里に、みほが戸惑った様な様子を見せる。
「卦と言うと、つまり………八卦占いの事か?」
「占いって………当てになるのかよ、ソレ?」
了平が占いで割り出したと言う事に疑念を抱く。
「当たるも八卦、当たらぬも八卦ですよ」
「まあ、他に何かあるワケでもないですし、行ってみましょう」
しかし、華と飛彗がそう言い合い、一同は西を目指して進み始めた。
再び、沙織達の方では………
「遅いですね………舩坂先輩達………」
「まさか、見つからなかったから帰っちゃったんじゃ………」
中々来ないみほ達や弘樹達に、光照が思わずそんな事を呟く。
「馬鹿野郎! アイツ等がそんないい加減な奴等か! お前、一体アイツ等の何を見て来たんだ!!」
途端に、地市が光照に向かってそう怒鳴る。
「ヒイッ! す、すみません………」
それにビビった光照は、すっかり縮こまってしまう。
「あ、いや、ワリィ………」
流石にその様子に申し訳なくなったのか、地市はすぐに謝罪する。
「大丈夫だって! 皆すぐに来てくれるよ!」
そんな中、女子の中で1人平気な様子を見せている沙織が、皆をそう励ます。
「武部先輩………」
「ひょっとしたら、もうそこまで来てるかも………私、ちょっと見て来るね」
そして、もう捜索隊がそこまで来ているかも、と言う考えに至り、立ち上がると一旦その場から離れる。
「あ、オイ! 1人で動くなよ! アブねーぞ!」
と地市がそう言うが、沙織は聞こえていないのか、スルーしてしまう。
「オイ!………しょうがねーな。すぐ戻るから、此処を動くなよ」
それを見た地市は、勇武達にそう言うと、沙織の後を追った。
梓や勇武達が固まっている場から少し離れた場所………
「オーイ、武部ぇ! 何処行ったぁっ!!」
携帯の僅かな灯りを頼りに、沙織の姿を探す地市。
とそこで、脇道の通路から何やら小声が聞こえるのを耳にする。
「そこか? オイ、武部………」
そのまま通路に入りながら声を掛けようとして、地市は黙り込む。
何故ならそこには………
通路の壁に背を預け、震える身体を自分の両腕で抱き締めている沙織の姿が在ったからだ。
「みぽりん………来てくれるよね?………」
地市がすぐ傍まで来ている事にも気づかず、そんな呟きが沙織の口から漏れる。
如何やら、不安がっている後輩達の手前、自分も不安な事は見せられずに居た様だ。
「………武部」
一瞬の躊躇の後、地市は意を決した様に沙織に声を掛ける地市。
「!? い、石上くん!? ど、如何したの!?」
沙織は慌てながら、慌てて不安がっていた様子を隠そうとする。
「無理すんな。お前だって不安だったんだろ?」
そんな沙織に、地市はそう言う。
「あっちゃ~、バレてたか? ハハハハハ………」
無理に笑い飛ばそうとして、乾いた笑いを挙げる沙織。
「…………」
と、地市はそんな沙織の傍へ無言で歩み寄る。
「な、何?………」
突然詰め寄られ、沙織は戸惑う。
「…………」
すると、そこで………
地市は沙織の左手を、自分の右手で握った。
「!? ふえっ!? い、石上くん!?」
突如手を握られ、沙織は赤面する。
「ワリィ………」
しかし、地市の口から漏れたのは謝罪の言葉だった。
「えっ?………」
「こんな事しか出来なくて………すまねぇ」
「あ………」
地市のその言葉を聞いて、沙織は彼が彼なりに自分を励まそうとしてくれている事に気付く。
「………ううん、ありがとう。何か少し気持ちが楽になったよ」
手を握られ、沙織は本当にそう思い、地市にそう言った。
「そうか………」
そのまま2人は暫し、手を握り合ったまま無言で過ごす………
「………みぽりん達、近くまで来てるかな?」
「弘樹の奴も一緒らしいから、そうなんじゃねえか」
やがて出た沙織に言葉に、地市はそう返す。
「石上くんって、舩坂くんのこと信頼してるんだね」
「まっ、ダチだからな」
「ねえ? 石上くんと舩坂くんって、如何やって知り合ったの?」
ふと興味が湧いたのか、地市に向かってそう尋ねる沙織。
「ん? ああ………アイツと知り合ったのは、大洗男子校に入学してからだな。まあ、最初の頃は只の古風な変わりモンだと思ってたんだけどな」
「そうなの?」
「だってよぉ、自己紹介の時に………『舩坂 弘樹です。至らぬ点もございますでしょうが、ご指導・ご鞭撻の程、よろしくお願い致します』って言ったんだぜ」
「アハハハハ、何だか想像出来るなぁ」
弘樹のモノマネをしながらそう言う地市に、沙織はその光景が容易に想像出来て、思わず笑う。
「んで、あの通り生真面目な性格だからよぉ………正直言うと、ちょっと苦手な奴だったな」
「そうなんだ………」
「けど、アイツは只生き方が不器用なだけだった。そう気づかされる事があってな」
「? どんな事?」
「自分で言うのも何だが、俺って特撮ヒーローが好きでな、コレでも正義感が強い方でよ。ある日、街で悪さしてる不良達を見つけてよぉ。後先考えずに喧嘩売った結果、そいつ等の人数の前に返り討ちにされそうになっちまってなぁ」
「ええっ!? だ、大丈夫だったの!?」
地市の話に沙織が慌てる。
「けど、そこに現れたのが弘樹だった。あっちゅう間に不良共を一掃しちまって、俺は助かったワケだ」
「そうなんだ。良かった………」
「けど、問題はその後でよぉ………あんまりに派手な喧嘩だったもんだから、学校に知られちまってなぁ。弘樹の奴が呼び出しを食らったんだ」
「ええっ!?」
「俺は半分ボコられたから被害者だと思われててよぉ。弘樹の方が主犯だって思われちまったみてぇでな」
思い出しても情けないのか、地市が頭を掻く。
「そ、それで如何なったの?」
「それがよぉ………あの野郎、まるで言い訳も弁明もしなかったんだよ。自分が喧嘩をしたのは事実だって」
「ああ~、それも何か想像出来るなぁ~………」
「まあ、結局神大会長が説得と揉み消しをやってくれたんで、御咎め無しって事になったんだが、アイツは自主的に反省文を提出したんだよ」
「舩坂くんらしいね………(今何か凄いこと言ってた様な気がしたけど気のせいだよね………)」
揉み消しと言う単語は完全にスルーする沙織。
「まあ、そんで色々と関わる様になってよ。気づいたら何時の間にかダチになってたって感じだ」
「ふ~ん、良いなぁ~。そう言う男同士の友情って………」
「ハハハ、汗臭いだけだぜ」
「そんな事ないよ! 少なくとも石上くんは結構爽やか系だと思うよ」
「えっ? そ、そうか?………いや~、ハハハ………! おおっと!?」
余り女性から褒められた事の無い地市は、沙織の言葉に照れくさくなり、メガネを上げようとして落してしまう。
「あ、大丈夫?」
すぐに沙織がそのメガネを拾う。
「………アレ? このメガネ、度が入ってないよ?」
するとそこで、地市のメガネに度が入っていない事に気付く。
「あ、いや、その………そのメガネ………実は伊達でよぉ」
「えっ? 如何してそんなメガネなんか掛けてるの?」
「だってよぉ………知的な男っぽく見えた方がモテると思ってよぉ」
そう言われた地市が、恥かしげにそう答える。
「そうかなぁ? 私は普段コンタクトしてるけど、石上くんはメガネが無くてもカッコイイと思うよ?」
沙織はそう言いながら、ふざけて地市のメガネを掛けてみる。
「! そ、そう言うお前は、メガネ掛けてても可愛いじゃねえか」
「えっ!?」
地市は思わずそんな事を口走ってしまい、沙織は顔を赤くする。
「「…………」」
そのまま、お互いに相手から顔を背けてしまう。
先程は意識していなかった握り合っている手同士の体温が妙に感じ取れる。
「「…………」」
無言の状態が続く2人。
「「………あの!」」
やがて2人して同時に何かを言うとしたところ………
「沙織さん!?」
「地市か?」
そう呼ぶ声を共に2人の姿が光に照らされる。
「「!?」」
2人が驚いて照らされた方向を見やると、そこにはみほと弘樹を先頭に、捜索隊の面々の姿が在った。
「みぽりん!?」
「弘樹!?」
「良かった! 無事だったんだ」
「他のメンバーは如何した?」
驚く2人に向かって安堵の言葉を掛けるみほと、他のメンバーの所在を尋ねる弘樹。
「あ、ああ、他の連中もこのすぐ先に居るぜ」
「そうか………ところで、2人は此処で何をやってたんだ?」
地市がそう尋ねると、弘樹は続いてそう尋ねる。
「「そ、それは………」」
「アレ? 御2人共、手を………」
地市と沙織が口籠っていると、楓が2人が手を握り合っている事に気付く。
「「!? わあああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!?」」
それを聞いた地市と沙織は、互いに大声を挙げながらバッと手を離して大袈裟に離れる。
「な、何でも無い! 何でも無いから!」
「そ、そうそう! 何でもねえって! ハハ、ハハハハハッ!!」
そしてそのまま2人して、強引な誤魔化しに掛かる。
「「??」」
みほと弘樹は2人の行動の意味が分からず、首を傾げる。
「如何したのでしょう? 武部殿と石上殿は?」
(成程ね………)
優花里も分からない様子だが、白狼は何となく察する。
「アラ、うふふふ………」
「おやおや………」
華と飛彗は、意味有り気な笑みを零す。
「地市………裏切り者めぇ………」
「気持ち悪いですよ、了平」
そして了平は、そんな2人の姿を見て、歯軋りをしながら血涙を流し、楓がそんな了平に容赦無いツッコミを入れるのだった。
その後、みほ達と弘樹達は、改めて取り残されていた1年生チームとハムスターさん分隊の面々を救助。
やっと助けが来た事に安堵した両チームは、互いに抱き合って喜びを露わにしていた。
更に、その際………
両チームが居た場所にて………
新たに1両の戦車を発見したのだった。
つづく
新話、投稿させていただきました。
遂にサンショウウオさんチームの戦車が見つかりました。
それはズバリ………
『クロムウェル巡航戦車』です。
グロリアーナ辺りが持っていそうな戦車ですが、クロムウェルを選んだ理由は、やはり速度です。
元々ガルパンでは、戦車の動き等をリアルに見せている点が魅力の1つですが、速度の描写だけは下駄を履かせていると言っていたらしいので、なら元々速い戦車なら描写的にはF1並みになるんじゃないかと思い、クロムウェルを選びました。
次回のアンツィオ戦には間に合いませんが、その次の試合でデビューしますので、楽しみにしていて下さい。
そして地市と沙織にフラグが!
この2人にも今後注目しておいて下さい。
さて、今日は大洗で海楽フェスタ。
残念ながら、私は急な仕事で行けませんが、行ける方は楽しんで来て下さい。
次回ですが、原作における『紹介します!』をやらせていただこうかと思っています。
予定としましては、先ず現在のとらさん分隊、ツルさん分隊、ペンギンさん分隊、ワニさん分隊までのキャラを紹介させていただこうかと。
ハムスターさん分隊はその次回で、サンショウウオさんチーム、その他のキャラ(家族や教官等)、敵機甲部隊のキャラと一緒に紹介させていただこうかと思っています。
予めご了承いただきたいのですが、登場するキャラクターは私が考えたものの他に、友人2人と弟が考えてくれたキャラクター達がいます。
ですのでキャラによって色々なバラつきがあるかと思いますが、その辺のご理解をお願いします。
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。