ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第36話『2回戦、始まります!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第36話『2回戦、始まります!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新たな仲間、『ゾルダート・ファインシュメッカー』を加え、公式戦2回戦………

 

『アンツィオ&ピッツァ機甲部隊』との試合に臨んだ大洗機甲部隊。

 

しかし、その総隊長である『アンチョビ』は、去年の全国大会でのみほの行動を否定する。

 

動揺を隠せなかったみほだったが、弘樹や大洗機甲部隊の皆に支えられ、落ち着きを取り戻す。

 

総隊長であるみほを侮辱したアンツィオ&ピッツァ機甲部隊に………

 

怒りに燃える大洗機甲部隊の大攻勢が開始されるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道・歩兵道全国大会公式戦2回戦会場、山と谷が連なる森林地帯………

 

『皆さん、お待たせしました。戦車道・歩兵道全国大会2回戦。本日の対戦カードは、初戦で優勝候補の一角であったサンダース&カーネル機甲部隊を破り、早くも今大会のダークホースとして注目されている大洗機甲部隊』

 

『いや~、あの試合は本当に凄かったですよね』

 

1回戦の時と同じ様に、観客席とTV中継には、ヒートマン佐々木とDJ田中の実況が届いている。

 

『今回の対戦相手はアンツィオ高校とピッツァ男子校からなるアンツィオ&ピッツァ機甲部隊です』

 

『アンツィオ&ピッツァ機甲部隊は調子が良い時と悪い時で成績にかなりの開きが出ますからね。今回の試合の調子が如何なのか。ある意味とても予想し難い戦いになると思いますよ』

 

ヒートマン佐々木とDJ田中がそんな事を言っている中、山の山頂の方へと続いている山道を、大洗機甲部隊が隊列を組んで進んでいる。

 

「森が深いです。敵の待ち伏せに注意して下さい」

 

「各分隊、厳重警戒だ」

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

先頭を行って居たあんこうチームのⅣ号のキューポラから上半身を出しているみほと、その後ろのカメさんチームの38tの傍に居た迫信が、大洗機甲部隊員達にそう言い、大洗機甲部隊の面々は警戒を密にする。

 

「西住くん。敵は如何言った戦略で来ると考えるかね?」

 

とそこで、迫信がみほへそう尋ねる。

 

「あ、ハイ! 今回のフィールドは、山と谷が連なっている山脈地帯となっています」

 

みほは持っていた地図を確認しながらそう言い始める。

 

「そこで先ず、セオリー通りに見晴らしの良い高台となる場所を抑えて、そこに陣地を張ります。そして、相手の出方を窺いつつ、徐々に戦力を消耗させていきます」

 

地図の1箇所に、ペンで丸を描いてそう説明を終えるみほ。

 

「消極的な作戦だな………」

 

「正面切って戦うだけならば馬鹿にも出来る」

 

「貴様ぁっ!! 誰が馬鹿だぁっ!!」

 

「貴様以上の馬鹿が居るならお目に掛かってみたいものだな」

 

「ムキーッ!!」

 

「も、桃ちゃん、落ち着いて………」

 

桃の言葉に熾龍が毒を吐き、怒る桃を蛍が宥める。

 

「しかし、当然敵も同じ事を考えるだろうね」

 

「敵より先に高台へ着けるか………時間との勝負だな」

 

「西住総隊長。とらさん分隊分隊長、舩坂 弘樹。意見具申させて頂きたく存じます」

 

迫信と白狼がそう言い合うと、弘樹がみほにそう呼び掛けた。

 

「ハイ、どうぞ」

 

「ハッ! 偵察も兼ね、砲兵を除いた我々とらさん分隊が先行し、敵と陣地形成予定地の様子を探ります。許可を」

 

「分かりました。とらさん分隊は隊列より離脱。敵部隊と陣地形成予定地の様子を偵察して来て下さい」

 

「了解! 行くぞっ!!」

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

弘樹がそう言うと、とらさん分隊の面々が乗った車両が大洗機甲部隊の隊列から離脱。

 

そのまま先行して、敵部隊と陣地形成予定地の様子を偵察へと向かうのだった。

 

『おっと! 大洗機甲部隊からとらさん分隊が離脱して行きますね』

 

『恐らく、先行してアンツィオ&ピッツァ機甲部隊の偵察を行う積りでしょう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山と谷が連なる森林地帯・陣地形成予定地の高台………

 

「もうすぐ目標地点ですね」

 

「良し、全員停止」

 

先頭を行って居たくろがね四起の助手席で、弘樹がそう言って右手を挙げると、とらさん分隊は停止する。

 

「此処からは徒歩だ。先ず少人数で3方に分かれて、其々の地点から高台を偵察する。くれぐれも敵には注意する様に」

 

地図を取り出し、高台の様子が窺える3つの場所をとらさん分隊の面々に示しながらそう言う弘樹。

 

「楓と了平はA地点。白狼と飛彗はB地点。小官と地市はC地点。以上のメンバーで偵察を行う。他の者達は何かあった時の為に待機」

 

「「「「「「「「「「了解っ!」」」」」」」」」」

 

「地市、行くぞ」

 

「おう!」

 

そう言い放つと、地市と共に高台が見えるC地点に向かう弘樹。

 

「飛彗、乗れ」

 

「ありがとう、白狼」

 

白狼も、バイクの後ろに飛彗を乗せ、B地点へと向かう。

 

「アイタタタタタッ! 持病の『偵察に行ってはいけない病』が………」

 

「ホラ、行きますよ」

 

そして無茶苦茶な仮病を使って危険な偵察任務を回避しようと試みた了平が、楓に引き摺られてA地点へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高台の様子が窺えるC地点………

 

「既にアンツィオ&ピッツァ機甲部隊は到着していたか………」

 

茂みの中に隠れてそう言う弘樹の視線の先には、高台へ集結しつつあるアンツィオ&ピッツァ機甲部隊の姿が在った。

 

「思ってたより早いな」

 

「敵も1回戦を突破している。大口を叩くだけの事はあると言う事だ。舩坂よりあんこうチームへ。西住総隊長、応答願います」

 

地市にそう言うと、弘樹は通信機を手に取り、あんこうチームのみほへ通信を送る。

 

『こちらあんこう。高台の様子は如何ですか?』

 

「既にアンツィオ&ピッツァ機甲部隊は到着しつつあり。現在、陣地を形成する為の準備を行っている模様です」

 

『そうですか………流石に展開が早い………』

 

「まだ全部隊が集結したワケではない様です。牽制も兼ね、我々で攻撃を行う事も可能ですが………」

 

『いいえ、無理は禁物です。発見された場合を除いて、交戦は極力避けて下さい』

 

「了解しました。通信終わります」

 

みほとそう遣り取りを交わすと通信を切る弘樹。

 

「如何すんだ、弘樹?」

 

「取り敢えず、一旦後退して分隊員達と合流だ。その後、本隊に………!?」

 

と、尋ねて来た地市の方を見ながらそう答えていた瞬間!

 

弘樹は、地市の背後の方に広がっている森の中で、一瞬何かが光ったのを目撃する。

 

「? 如何し………」

 

「伏せろっ!!」

 

地市が何事かと問い質す前に、弘樹は彼の頭を掴んで、共に地面へと伏せる。

 

直後に銃声が鳴り響き、先程まで地市の頭が有った位置を、銃弾が通り抜けて行った!!

 

「!? うおっ!?」

 

「狙撃だ! 遮蔽物に身を隠せっ!!」

 

驚きながらも、地市と弘樹は木陰へと身を隠す。

 

直後に、2人が隠れている木の幹に、次々と銃痕が刻まれる!

 

「クソッ! 待ち伏せかっ!?」

 

「煙幕手榴弾を投げる。合図したら一気に走れ」

 

愚痴る様に地市が叫ぶ中、弘樹が煙幕手榴弾を手に握る。

 

「………! 今だっ!!」

 

「クウッ!」

 

そして、狙撃が一瞬止まった瞬間に煙幕手榴弾を投擲し、同時に地市が走り出す。

 

投げられた煙幕手榴弾が地面に落ちると同時に破裂し、煙が辺りを覆い尽くす。

 

「…………」

 

直後に、弘樹もその煙に紛れて退散するのだった。

 

『あ~っと! 偵察に出ていたとらさん分隊の隊員達が発見されてしまった様です!』

 

『小規模で活動していましたからねぇ。上手く逃げ切れるでしょうか』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その狙撃を行っていた地点では………

 

「チイッ! 煙幕か! 小賢しい真似しやがって………」

 

「焦るなって。出鼻は挫いてやったんだ。コレからジワジワと追い詰めようじゃないか」

 

煙幕で狙撃不可能となり、苛立った声を挙げるピッツァ歩兵部隊の狙撃兵『ボンコ』に、傍に居たロマーノがそう言い放つ。

 

『此方マルガリータ。B地点でも敵兵を2名発見』

 

『こちらA地点のガルファロ。此方も敵兵を2名発見。逃走を開始しており現在追跡中』

 

するとそこで、B地点とA地点でも大洗歩兵隊のメンバーを発見したとの報告が、通信機から聞こえて来る。

 

「良し、そのまま追撃を続けろ。但し、他の連中を引き寄せてから撃破しろ」

 

『『了解っ!!』』

 

ロマーノがそう命じると、通信先の相手は返事を返し、通信回線を切った。

 

「フッフッフッ、見てろよ、大洗め………このアンツィオ&ピッツァ機甲部隊のスーパーエースであるロマーノ様をコケにした報いは受けてもらうぜ」

 

試合前に返してもらったベレッタM1934をガンスピンさせながら、恨みがましくそう言うロマーノ。

 

「…………」

 

そんなロマーノの背後で、フォルゴーレが渋い面をしていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、発見された弘樹達は………

 

「チキショウッ! いきなり見つかるなんて、ツイてねえなぁっ!!」

 

「…………」

 

愚痴る様にそんな事を言いながら必死に走る地市と、時折振り返り、追撃して来ているピッツァ歩兵隊に向かって九九式短小銃を発砲している弘樹。

 

「ぐあっ!?」

 

「ぎゃあっ!?」

 

九九式短小銃から放たれた7.7mm弾が頭に当り、仰け反る様に倒れる者が出るピッツァ歩兵部隊。

 

しかし、それでも追撃の手を緩めない。

 

「ええい、しつけぇ連中だっ!」

 

と、地市がそう言い放った瞬間………

 

「お助けぇーっ!!」

 

情けない悲鳴と共に、左側の茂みの中から了平が飛び出して来た。

 

「!? 了平か!?」

 

「弘樹!? やった! 助か………ってねえよっ!!」

 

弘樹の姿を見て、一瞬安堵の表情を浮かべたかに見えた了平だったが、その背後にピッツァ歩兵部隊の姿を見てそう叫ぶ。

 

「すみません! 発見されましたっ!!」

 

その直後に、そう言う台詞と共に楓が姿を見せ、その背後には弘樹達と同じ様に追撃して来ていたピッツァ歩兵部隊の姿が在った。

 

「そっちもかよ!!」

 

「兎に角撤退だ! 急げっ!!」

 

再び愚痴る様に言う地市にそう言い放ち、4人となった弘樹達はピッツァ歩兵部隊から逃げ回る。

 

その時………

 

「!? 伏せろっ!!」

 

「「「!?」」」

 

弘樹が何かを感じ取ってそう叫び、地市達は即座にその場に伏せた!

 

直後に、弘樹達が撤退しようとしていた進路先の地面が爆音と共に炸裂した!!

 

「!!………」

 

弘樹は即座に、伏せたまま背後を確認する。

 

「チイッ! 外したかっ!! 次弾装填、急げっ!!」

 

そこには、新たな歩兵部隊と共に、イタリア製の装甲車・AB41のバリエーションであるCannone da 47/32 su Autoblinda 42が姿を見せた。

 

そのオープントップの戦闘室では、追撃部隊の指揮官と思わしきピッツァ歩兵部隊員が、47mm砲の次弾装填指示を出している。

 

「装甲車か………」

 

「野郎っ!!」

 

そこで、地市が反撃しようと、M9A1・60mmバズーカを構えるが………

 

「フォーコッ(撃て)!!」

 

その前に次弾装填が完了し、再びCannone da 47/32 su Autoblinda 42から47mm砲弾が発射される!

 

「!?」

 

「地市ぃっ!!」

 

驚いて固まってしまった地市の腕を弘樹が掴み、無理矢理地面に引き倒す!!

 

直後に47mm砲弾が大木の幹に直撃し、幹を吹き飛ばしてそのまま大木を倒した!

 

「ス、スマネェ、弘樹!」

 

「!………」

 

助けられた事を謝る地市の言葉もそこそこに、弘樹は牽制にとCannone da 47/32 su Autoblinda 42に向かって発砲する。

 

しかし、小銃弾で装甲車を如何にか出来る筈も無く、弾丸は装甲に跳ね返って少し火花を散らしただけだった。

 

「撤退急げっ!」

 

続け様に弘樹はそう言い、九九式手榴弾を投擲する。

 

追撃して来ているピッツァ歩兵部隊の眼前に落ちた手榴弾が爆発し、ピッツァ歩兵部隊の進行を一時的に停止させる。

 

「そら、今の内だ! スタコラサッサーッ!!」

 

「ホント、逃げ足だけは早いですね………」

 

即座に駆け出す了平と、そんな了平の姿を見て呆れる楓が続く。

 

続いて地市が撤退し、弘樹が殿を務めて撤退を再開する。

 

「逃がすなぁっ! 追えぇっ!!」

 

Cannone da 47/32 su Autoblinda 42に乗って居る指揮官がそう指示すると、ピッツァ歩兵部隊員達は弘樹達に追撃を再開する。

 

「ん?………」

 

するとそこで弘樹は、ピッツァ歩兵部隊の追撃再開のタイミングに違和感を抱く。

 

「舩坂さん! 急いで分隊の皆さんと合流しましょうっ!!」

 

「あと西住ちゃん達にも応援要請だ! 戦車でアイツ等を蹴散らして貰おう!!」

 

撤退しながら、弘樹に向かってそう意見具申する楓と了平。

 

「…………」

 

しかし、弘樹は黙りこくる。

 

「弘樹!? 如何したんだっ!?」

 

地市が、その様子に首を傾げながらも撤退する足を止めずにそう問い質す。

 

と、その時………

 

「退け退けっ!!」

 

そう言う声と共に、弘樹達の横から1台のバイクが、茂みを突き破る様にして飛び出して来たっ!!

 

「!?」

 

「うおおおっ!?」

 

「アブネっ!?」

 

「わわっ!?」

 

驚いて足が止まる弘樹達。

 

「ああ!? んだよ、お前等も追われてんのか!?」

 

「すみません! 見つかってしまいました!」

 

そこで、バイクに乗って居た人物、白狼と飛彗がそう言って来る。

 

「神狩! 宮藤!」

 

「お前達も追われてんのかよぉ!! クソーッ! 最悪だーっ!!」

 

地市が声を挙げると、了平がそう叫ぶ。

 

とそこで、追撃して来たピッツァ歩兵隊が放った弾丸が、弘樹達の足元に命中して甲高い音を立てる。

 

「! チイッ!!」

 

弘樹が反撃とばかりに、一旦足を止めて、九九式短小銃を発砲する。

 

「うおっ!?」

 

「ミートス!? このぉっ!!」

 

ピッツァ歩兵の1人が頭に直撃を貰い、戦死判定を受け、それを見た別のピィツァ歩兵が、弘樹に向かってTZ-45短機関銃を発砲!

 

「!?」

 

咄嗟にその場に伏せる弘樹。

 

目の前の地面に9mmパラベラム弾が次々に着弾し、土片を上げる。

 

「弘樹! 何やってんだ、逃げろっ!!」

 

撤退を続けていた為、やや距離が離れた弘樹に向かって、地市がそう叫ぶ。

 

「クッ………?」

 

そこで立ち上がろうとした弘樹は、ピッツァ歩兵部隊の面々が足を止めているのに気付く。

 

「…………」

 

そして、弘樹が地市達を追う様に動き始めたかと思うと、再び追撃を始めた。

 

「………やはりか」

 

「何がだよ、弘樹ぃ! うわぁーっ! もう駄目だぁっ!!」

 

何かに気付いた様に呟く弘樹に、了平が喚く。

 

「お前も気づいたか、舩坂」

 

と、先行していた白狼が、バイクのスピードを落として、弘樹に隣に並ぶとそう言って来た。

 

「ああ………奴等はワザと追い付かない様に追い掛けて来ている」

 

「? 如何言う事ですか?」

 

弘樹がそう言うと、楓が如何言う事かと尋ねる。

 

「さっきから誰かが足を止めると奴等も足を止めている。恐らく、我々を本隊と合流させた後に反転し、撤退したと見せかけて自分達の部隊が居る場所まで誘導する積りなんだろう」

 

そう推察を述べる弘樹。

 

「敵の狙いは俺達の本隊か!?」

 

「如何しますか?」

 

地市がそう声を挙げると、飛彗が弘樹にそう問う。

 

「奴等の思惑通りには行かんと言う事を教えてやる………奴等は我々で排除するぞ」

 

「うえぇっ!? 冗談だろぉっ!?」

 

「小官は冗談が苦手だ。知っているだろう」

 

何を馬鹿な事を言う様な台詞を言う了平に、弘樹は仏頂面でそう返す。

 

「んなこと言ったって、相手は50人くらい居るだぞっ!?」

 

「西住総隊長がいつも言っているだろう。ようは戦術と腕だ」

 

「面白れぇ………一丁やってやるか!」

 

尻込みする了平だったが、そこで地市が弘樹の案に乗る。

 

「良いぜ。逃げ回るだけってのは癪だからな」

 

「僕も賛成です」

 

「やりますか」

 

続いて、白狼、飛彗、楓が賛同する。

 

「オイオイ! お前等、マジかよっ!?」

 

「了平! 腹くくれ!!」

 

「チキショーッ!!」

 

了平も、地市にそう言われて、無理矢理覚悟を決める。

 

「良し、では作戦は………」

 

『おっと! 追われていたとらさん分隊の面々ですが、何かを思いついた様です』

 

『何を見せてくれるんでしょうね。楽しみですね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、弘樹達がそんな事を話し合っているとは露知らず、追撃しているピッツァ歩兵部隊は………

 

「ハハハハ! 逃げろ逃げろ!!」

 

「本隊と合流したところで誘き寄せて、一気に殲滅してやるぜっ!!」

 

弘樹達が逃げの一手なのに気を良くし、愉快そうに笑いながらそんな事を言い放つ。

 

「オイ、大声を出すな! 作戦が聞こえたら如何するんだ!?」

 

そんなピッツァ歩兵達を、追撃部隊指揮官が嗜める。

 

と………

 

「オイ、アイツ等、分かれたぞっ!!」

 

ピッツァ歩兵部隊の偵察兵の1人がそう声を挙げ、追撃していたピッツァ歩兵部隊員達が弘樹達の姿を見やると………

 

その報告通り、弘樹、地市、楓と、白狼、飛彗、了平の2手に分かれていた。

 

「ぬうっ、面倒な事を………此方も2手に分かれるぞ! 合流させて全員本隊の所まで行かせるんだ!」

 

追撃部隊指揮官はそう命じ、ピッツァ歩兵部隊の追撃部隊も2手に分かれる。

 

追撃部隊指揮官が乗るCannone da 47/32 su Autoblinda 42は、弘樹が居る方を追撃する。

 

「コッチに来たか」

 

「では、手筈通りにやるぞ………楓」

 

「ハイ、行きますっ!」

 

と、ある程度引き付けたかと思うと、弘樹と楓が立ち止まり、追撃部隊の方を振り返って九九式短小銃と九九式軽機関銃を構える。

 

「撃てぇっ!!」

 

「!!」

 

そして、追撃部隊目掛けて弾幕を張り始めた。

 

「うおっ!?」

 

「また撃って着やがった!!」

 

「野郎っ!!」

 

追撃部隊のピッツァ歩兵部隊は、反撃を開始する。

 

「クッ!」

 

「怯むな! 撃ち返せっ!!」

 

至近距離を銃弾が掠めて行き、楓が思わず声を漏らすが、弘樹は眉1つ動かさずに射撃を続ける。

 

「何だアイツ等? あんな所に居座って?」

 

「此方の作戦に気付いたのか?」

 

「構わん。もっと銃撃を浴びせて撤退させろ」

 

ピッツァ歩兵部隊員が疑問の声を挙げるが、追撃部隊指揮官はそう命じる。

 

「! 楓! 援護を頼むっ!!」

 

とそこで、弘樹は九九式短小銃に銃剣を着剣。

 

そして、楓の返事も聞かずに、追撃部隊目掛けて突撃した!!

 

「!!」

 

楓は驚きながらもすぐに弘樹の援護を開始する。

 

「なっ!? 突っ込んで来るぞっ!?」

 

「馬鹿なっ!? 何でこんなタイミングで突撃して来るんだよっ!?」

 

突如として銃剣突撃を敢行した弘樹に、ピッツァ歩兵部隊は動揺を見せる。

 

「せやあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」

 

そんな動揺の隙を突き、弘樹は一気にピッツァ歩兵部隊に肉薄すると、その隊員の1人に銃剣を突き刺した!!

 

「ぐああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」

 

銃剣の突きを喰らったピッツァ歩兵は倒れ、戦死の判定が下る。

 

「サイゼリアっ!?」

 

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」

 

益々ピッツァ歩兵部隊が動揺する中、弘樹は着剣した九九式短小銃を右手に握ったまま、左手を刀を持ち、二刀流となる!

 

「セイヤァーッ!!」

 

「ぐああああっ!?」

 

「でりゃあああっ!?」

 

「ガハッ!?」

 

そのまま着剣した九九式短小銃で突き、刀で斬撃を繰り出し、次々にピッツァ歩兵部隊の隊員達を戦死判定にさせて行く弘樹!

 

「さ、侍!?」

 

「コイツは侍だ! 間違い無い!!」

 

「こんなんに敵うワケないだろーっ!!」

 

途端に混乱し、士気崩壊までもが始まるピッツァ歩兵部隊。

 

「落ち着けっ! 落ち着くんだっ!! オノレェッ!!」

 

そこでCannone da 47/32 su Autoblinda 42に乗って居た追撃部隊指揮官が、47ミリ砲を弘樹に向ける。

 

と、その時っ!!

 

「貰ったぁっ!!」

 

Cannone da 47/32 su Autoblinda 42の後方の方に、M9A1バズーカを構えた地市が突然現れ、Cannone da 47/32 su Autoblinda 42目掛けて、バズーカからロケット弾を発射した!!

 

「!? な………」

 

に、と言う間に、ロケット弾はCannone da 47/32 su Autoblinda 42を直撃!!

 

「ぐああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」

 

Cannone da 47/32 su Autoblinda 42は大破・炎上し、戦闘室に居た追撃部隊指揮官も爆発で投げ出されて地面に転がる。

 

程なくして、戦死の判定が下った。

 

「指揮官殿!?」

 

「指揮官殿がやられた!! 誰か! 代わりに指揮をっ!!」

 

「でりゃあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

指揮官がやられ、混乱するピッツァ歩兵部隊を、次々に弘樹が斬り伏せる!!

 

「うわぁっ!?」

 

「か、固まれぇっ! 固まって防御するんだっ!!」

 

咄嗟に1箇所に集まり、互いを庇い合う様にして守りを固めようとするピッツァ歩兵部隊員達。

 

しかし、彼等はある事を失念していた………

 

「!………」

 

ピッツァ歩兵部隊員達が固まっているのを見た弘樹は、即座に九九式手榴弾を投擲する。

 

「!? て、手榴弾っ!?」

 

「「「「「!?」」」」」

 

慌てるピッツァ歩兵隊員達だったが、時既に遅し!

 

直後にピッツァ歩兵部隊員達の足元へと転がった手榴弾は爆発!!

 

「「「「「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」」」」」

 

即座に爆風と飛び散った破片で、ピッツァ歩兵部隊員達は全員吹き飛ばされ、戦死と判定された!!

 

「やったぜ! 一網打尽だ!!」

 

「流石ですね、舩坂さん」

 

ピッツァ歩兵部隊員達が全滅したのを確認した地市と楓が、弘樹の元へ駆け寄る。

 

「ああ、上手く行った………」

 

弘樹は短くそう返し、刀を納刀し、銃剣を外す。

 

「おうっ! そっちも終わったか?」

 

「コッチも何とかなりましたよ」

 

とそこで、バイクに乗った白狼と飛彗が合流して来る。

 

「ぜえ………ぜえ………乗せてくれよぉ………」

 

やや遅れて、1人歩かされた了平が、息を切らせて現れる。

 

「そっちも大丈夫だったか?」

 

「ああ、追って来ていた連中は全滅させたぜ」

 

「装甲車が居なかったから案外楽でしたよ」

 

弘樹がそう尋ねると、白狼と飛彗がそう返す。

 

「へ、へへへ! この綿貫 了平様に掛かればザッとこんなもんよ!!」

 

「お前どうせ矢鱈めったら撃ち捲ってただけだろ」

 

ドヤ顔をする了平に、地市がそうツッコミを入れる。

 

「良し、一旦分隊の元へ戻るぞ。然る後に本隊と合流。偵察結果を報告して作戦を立てるぞ」

 

そこで弘樹がそう仕切り、一同は分隊員達の元へと戻るのだった。

 

『やりました! とらさん分隊、見事ピッツァ歩兵部隊の追撃部隊を撃破しました!』

 

『こうなるとアンツィオ&ピッツァ機甲部隊は作戦の転換を迫られますね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山と谷が連なる森林地帯・陣地形成予定地の高台………

 

「追撃部隊が全滅しただとっ!?」

 

ロマーノが報告を受けて驚きの声を挙げる。

 

「ハ、ハイッ! その様子かと………」

 

「馬鹿な!? 囮の部隊とは言え、50人は居たんだぞ! 装甲車も入れていた! それがたった6人の歩兵に全滅させられただと!? 有り得ないだろ!!」

 

「隊長(カピタン)。信じられないでしょうが現実です。作戦を練り直す必要があると考えますが………」

 

喚くロマーノに、フォルゴーレがそう言い放つ。

 

「分かっているっ! クソッ! 弱小部隊のくせして………今に見ていろ!」

 

しかしロマーノは怒りが納まらない様子でそう言い放ち、作戦の練り直しに掛かる。

 

「…………」

 

そんなロマーノを、フォルゴーレは険しい顔をして見やっていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

アンツィオ&ピッツァ機甲部隊との試合の幕開け。
先ずは両者出方を窺っての小競り合いでしたが、次回で一気に形成が大洗に傾きます。
一体どうなるのかはお楽しみです。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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