ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第42話『新分隊、結成です!(前編)』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第42話『新分隊、結成です!(前編)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辛くもアンツィオ&ピッツァ機甲部隊を破り………

 

3回戦へと駒を進めた大洗機甲部隊。

 

次なる対戦相手に備えての訓練が続く中、遂に………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗女子学園・戦車格納庫内………

 

「お待たせしました。レストア完了です」

 

「良い仕事をさせてもらったよ………」

 

そう言うナカジマと敏郎の背後には、まるで新品同様の輝きを放っているルノーB1bisとクロムウェル巡航戦車が鎮座している。

 

「おおお~~~~っ!!」

 

漸く動かせる様になった自分達の戦車を見て、目を輝かせている聖子。

 

「戦車が2両追加かぁ」

 

「そこそこ戦力の補強は出来たな」

 

生徒会チームの中で、柚子と桃がそう言い合う。

 

「あの、ルノーに乗るチームは如何なったんですか?」

 

とそこで、みほが杏に向かってそう尋ねる。

 

「ああ、それならもう呼んどいたよ」

 

「えっ?」

 

「失礼します」

 

杏がそう答え、みほが首を傾げていると、戦車格納庫内に3人の酷似した髪型をした大洗女子学園の生徒が姿を見せた。

 

「お………」

 

「彼女は………」

 

その3人の少女の先頭に立つ少女………園 みどり子を見て声を挙げる麻子と弘樹。

 

「今日から参加する事になりました、園 みどり子です」

 

「後藤 モヨ子です」

 

「金春 希美です」

 

みどり子が自己紹介をすると、背後に居た風紀委員の2人の少女………

 

みどり子より長いおかっぱ頭の少女『後藤 モヨ子』と、みどり子より短いおかっぱ頭の少女『金春 希美』も自己紹介をする。

 

「略してそど子、ゴモヨ、パゾ美だ。色々教えてやってね~」

 

するとそこで、杏がみどり子の横に立ちながら彼女達の名前を略した渾名を挙げる。

 

「会長、名前を略さないで下さい!」

 

「何チームにしようか~、総隊長?」

 

抗議の声を挙げるみどり子だったが、杏はそれを無視して風紀委員チームのチーム名をみほに問う。

 

「えっ? う~んと………」

 

突如振られたみほは、ルノーを見ながら考え込む。

 

「B1って、カモっぽくないですか?」

 

「じゃ、カモに決定~」

 

「カモですか!?」

 

みほがそう言うと、流れる様に風紀委員チームのチーム名は、『カモさんチーム』となった。

 

「戦車の操縦は冷泉さん、指導してあげてね」

 

「私が冷泉さんに!?」

 

柚子が麻子に操縦の指導を頼むと、みどり子は露骨に嫌そうな態度を露わにする。

 

「分かった………」

 

「成績が良いからって、良い気にならないでよね」

 

了承する麻子の眼前まで行くとそう言い放つみどり子。

 

「じゃあ自分で教本見て練習するんだな」

 

「! 何無責任なこと言ってるの!? ちゃんと分かり易く、懇切丁寧に教えなさいよ!」

 

「ハイハイ………」

 

「ハイは1回で良いのよ!」

 

「ハ~イ………」

 

「………案外良いコンビかもな、あの2人」

 

みどり子と麻子の遣り取りを見ていた地市がそんな事を呟く。

 

「アレはアレだな……トムとジェリーみたいな関係だろ」

 

「ああ、成程………」

 

「そう言われるとしっくりくるな」

 

磐渡、鷺澪、重音の3人もそんな事を言い合う。

 

「ねえ、聖子ちゃん。戦車に乗る時の役割は如何しようか?」

 

とそこで、相変わらずクロムウェルをキラキラとした目で見続けていた聖子に、伊代がそう尋ねた。

 

「あっと、そうか………う~ん………」

 

伊代にそう言われて、聖子は我に返ると考え込む様な様子を見せる。

 

「………取り敢えず、皆で其々に交代交代で役割をやってみて、しっくり来たのをやろうか」

 

「またそんな適当な………」

 

暫し考えた後、聖子がそう意見を挙げると、優が呆れた様子を見せる。

 

「ううん、良いと思うよ。先ずは戦車に乗るって事に慣れないとね」

 

しかし、みほはその案に賛成を示す。

 

「よ~し! いよいよサンショウウオさんチームの戦車道! 始まるよ!! パンツァー・フォーッ!!」

 

聖子はすっかりノリノリな様子で、拳を振り上げてジャンプし、そう声を挙げるのだった。

 

「………生徒会長、意見具申があります」

 

とそこで、今まで黙って成り行きを見ていた弘樹が、迫信に声を掛ける。

 

「君が言いたい事は分かっているよ、舩坂くん」

 

しかし、迫信は口元を広げた扇子で隠しながらそう言う。

 

「流石です、生徒会長………」

 

「うむ………大洗歩兵部隊の諸君、ちょっと聞いて欲しい」

 

弘樹がそれに感心していると、迫信は大洗歩兵部隊の隊員達の呼び掛ける。

 

「「「「「「「「「「………?」」」」」」」」」」

 

突然声を掛けられた大洗歩兵部隊の隊員達は、少々困惑した様子を見せながらも迫信の方を注目する。

 

「この度に於いて、ルノーB1bisを駆るカモさんチームとクロムウェル巡航戦車を駆るサンショウウオさんチームが戦車部隊として参加する事となる。しかし、現在の歩兵部隊の規模では新たなチームを含めた大洗戦車部隊を守るには不十分だと言わざるを得ない」

 

一同が注目して来ているのを確認すると、迫信は演説するかの様にそう言い始める。

 

「そこでだ………実は予てより、大洗歩兵部隊の増員を計画していてね」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

増員と言う言葉に、歩兵部隊の隊員達も、戦車部隊のメンバー達も驚きを示す。

 

「生徒会の方で追加募集を掛けたところ、それなりの人数が集まっている。しかし、増員メンバーとしてはまだまだ心許無い。そこで、諸君等の力を借りたい。君達がスカウト部隊となって、歩兵部隊の新隊員達を勧誘して欲しい」

 

「勧誘、ですか?」

 

「実際に歩兵道を行っている君達の言葉ならば何よりも真実味が有る。無論、生徒会もまだまだ募集を掛けて行くので、それに合わせた形と言う事でお願いしたい」

 

楓がそう呟くと、迫信はそれに答える様にそう言う。

 

「出来うる範囲内で良いので、よろしく頼む」

 

最後にそう言い、迫信は扇子を閉じて、不敵な笑みを露わにした。

 

「それじゃあ、練習始めよっか」

 

それを見計らっていたかの様に、杏がそう言い放つ。

 

「あ、ハイ!」

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

みほが返事を返すと、大洗歩兵部隊の面々も様々な敬礼をして返事をし、一同は頭を切り替えて、その日の練習を開始するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の朝………

 

大洗国際男子校・2年1組教室………

 

「お早う」

 

「おう、弘樹。お早うさん」

 

「オーッス」

 

「お早うございます」

 

登校した弘樹が、既に席に着いて居る地市達に挨拶しながら自分の席へと着く。

 

「弘樹、早速今日の放課後からスカウト開始だぜ」

 

「ああ、分かっている」

 

「やっぱり強そうな奴を誘わないとなぁ………けど、そうなると俺の見せ場が減って、女子からの人気が………」

 

「了平………今まで貴方に見せ場があった事も無ければ、女性から人気があった事もありませんよ」

 

地市と弘樹の会話に、了平が口を挟むと、楓が容赦の無いツッコミを入れる。

 

「静かにしろ~。HRを始めるぞ~」

 

とそこで、担任の教師が姿を見せ、教壇に着いた。

 

教室に居た生徒達は全員自分の席に着き、前を向く。

 

「さて………突然だが、実は今日………このクラスに転校生が来る事になっている」

 

すると、担任の教師がそんな事を言い、生徒達はざわめく。

 

「転校生?」

 

「また随分と急ですね………」

 

「はあ~、コレが普通の学校だったら可愛い女の子との出会いが期待出来るのに………如何してウチの学校は男子校なんだよ!」

 

「煩いぞ、了平!」

 

弘樹、楓、了平、地市もそんな台詞を言う。

 

「静かに!………君、入って来てくれ」

 

「おうっ!」

 

とそこで、担任の教師が生徒達を静かにさせると、教室の外に向かって呼び掛け、教室の外から威勢の良い返事が返って来たかと思うと、1人の男が入って来る。

 

その男は短ランにTシャツ、ボンタン姿で、潰して薄くした革製の改造学生鞄を持って、髪型はリーゼントという、まるで昭和時代の不良の様な恰好をしていた。

 

教室へ入って来た男は、即座にチョークを手にすると、黒板いっぱいに名前を書き始める。

 

「文月 弦一朗(ふみづき げんいちろう)だ!」

 

名前を書き終えた男………『文月 弦一朗(ふみづき げんいちろう)』は、生徒達の方へ向き直ってそう自己紹介する。

 

「絵に描いた様なヤンキーだな………」

 

「リーゼントなんて初めて見たぜ」

 

「まあ、ウチの学校じゃ大人しい方ですね」

 

地市と了平が弦一朗の恰好を見てそう呟き、楓はそんな事を言う。

 

普通の学校ならば明らかに浮く筈の弦一朗の恰好だが、良くも悪くも曲者揃いの大洗男子校の中では、それほど珍しいモノでもなかった。

 

しかし………

 

「俺の夢は、この学校全員の奴と友達になる事だっ!」

 

自己紹介を終えた弦一朗は、教室に居る生徒達を指差しながらそう宣言をした。

 

その弦一朗の宣言に、生徒達は再びざわめく。

 

「学校と全ての奴と友達にだぁ!?」

 

「何言ってんだ、アイツ?」

 

「コレは………思った以上に灰汁の強い人だったみたいですね………」

 

地市、了平、楓もそんな言葉を漏らす。

 

「…………」

 

そんな中弘樹は、戸惑っている生徒達1人1人に、次々と挨拶をして行く弦一朗の事をジッと見ていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時間は流れて昼休み………

 

大洗男子校・学生食堂にて………

 

「ハイよ、大洗定食お待ち」

 

「うっひょ~! 美味そう~っ!!」

 

食堂のおばちゃんから頼んだメニューの乗ったトレイを受け取り、そんな感想を漏らして座る席を探す弦一朗。

 

「文月 弦一朗」

 

「ん?」

 

とそこで、自分を呼ぶ声が聞こえたのでその方向を向くと、何時ものメンバーでテーブルに着いて居た弘樹達の中で、弘樹と目が合う。

 

「おお、弘樹か!!」

 

「いきなり呼び捨てかよ………」

 

「何言ってんだ、ダチだろう? 堅苦しい呼び方なんざ要らねえじゃねえか」

 

いきなり名前を呼び捨てにする弦一朗に了平が呆れる様な言葉を漏らすが、弦一朗はお構い無しに近寄って来て、当然の様に相席する。

 

「面白い男だな………」

 

そんな弦一朗の姿を見て、弘樹はそんな事を呟く。

 

「アンタこそ、良い目をしてるじゃねえか。何者にも屈せず、何者にも従わない、自分の筋を通し抜く男の目だ」

 

すると弦一郎は、そんな弘樹の目を見ながらそう返す。

 

「へえ、スゲェな」

 

「舩坂さんの事を的確に捉えてますね」

 

弘樹の事を的確に捉えた言葉に、地市と楓が感心した様に呟く。

 

「…………」

 

そして弘樹は、そんな弦一朗の事をジッと見据えている。

 

「文月 弦一朗」

 

「んな堅苦しい呼び方すんなよ! 弦一朗で良いぜ!」

 

再び弘樹が、フルネームで弦一朗を呼ぶと、弦一朗は気さくにそう返す。

 

「そうか、分かった………では、弦一朗。単刀直入に聞く。歩兵道をやる気はないか?」

 

「あ? 歩兵道?」

 

「オイ、弘樹。まさかコイツをスカウトするのか?」

 

そう言う弘樹を見ながら首を傾げる弦一朗と、口を挟む了平。

 

「小官の感だが、君は良い素質を持っている。我が部隊としては、是非とも欲しい人材だ」

 

「そう言やぁ、確か大洗は今年から女子校が戦車道を復活させて、今全国大会で大活躍中だったっけ」

 

そこで弦一朗が思い出したかの様にそう呟く。

 

「如何だ? やってみる気はないか?」

 

「ああ、良いぜ」

 

「早っ!?」

 

弘樹が再び尋ねると、弦一朗は即座にそう返事を返し、そのスピード決断に了平がまたも呆れた様に声を挙げる。

 

「ダチの頼みだ! 断るワケにはいかねえだろ! それに、戦車道・歩兵道の全国大会に出りゃ、他の学校の奴とも会うんだろ? そいつ等とも全員友達になりてぇからな!」

 

「ふふふ、そう言う理由か………益々面白いな」

 

そう言う弘樹の顔には微笑が浮かんでいる。

 

「じゃあ、弦一朗さん。後で生徒会長の方に言って下さい。それで参加する事が出来ますから」

 

「それから、今日の放課後、新たな分隊編制の為に、新メンバー確保のスカウトをするから、そっちも手伝ってくれよ」

 

「おう! 任せておけ! 待ってろよー! まだ見ぬ俺のダチーッ!!」

 

楓と地市がそう言うと、弦一朗はそう言って、天井を指差すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時は再び流れて放課後………

 

大洗歩兵部隊のメンバーは、其々に何人かのグループに分かれ………

 

新たな分隊を編制する為の人材スカウトを開始する。

 

尚、弦一朗は早速大洗歩兵部隊のメンバーと打ち解けていた。

 

白狼や磐渡達は勿論の事として、何とあの熾龍や煌人とも友達となっている。

 

特に、大河とは意気投合しており、彼の舎弟達である大洗連合の者達も、弦一朗をダチ公と呼んでいた。

 

 

 

 

 

大洗男子校・武道場………

 

「メーンッ!」

 

「やあーっ!!」

 

「とああああっ!!」

 

剣道部や柔道部、空手部と言った武道系の部活動をしている生徒達の声が、武道場の外まで響いて来る。

 

「弘樹、武道部の連中をスカウトする気か?」

 

「確かに、武道経験者なら、即戦力としては申し分無いですね」

 

真っ先にこの場所へと向かった弘樹に、地市と楓がそう言う。

 

「いや、武道部の人達ももうすぐ大会だ。今力を借りる事は難しいだろう」

 

しかし、弘樹はいつもの仏頂面でそう否定する。

 

「んじゃ何でこんなとこ来たんだ?」

 

「心当たりがあるからだ」

 

続いてそう尋ねて来た了平にそう返し、弘樹は武道場の入り口へ向かう。

 

「? 如何言う事だ?」

 

「アイツ、偶に何考えてるのか分かり難い時あるよな………」

 

「まあ、舩坂さんの事ですから、行き当たりばったりって事は無いと思いますけど………」

 

地市、了平、楓はそんな事を言いながら、そんな弘樹の後に続いたのだった。

 

「………やはり居られたか」

 

と、入り口が見えて来た瞬間に、弘樹がそう言って足を止める。

 

「? 如何した?」

 

地市がそう言って、武道場の入り口を見やると、そこには………

 

「…………」

 

ガタイが良く背が高い、強いパーマがかかったロングヘアに殿様がする様な立派なちょんまげの頭。

 

眉が無く、隈なのかなんなのか、白目の縁の部分が黒い男が、武道場内で稽古をしている剣道部を、ジッと見据えていた。

 

「絃賀先輩」

 

「! おおっ! 兄弟!! 久しぶりだなぁっ!!」

 

弘樹が声を掛けると、その男は矢鱈と高いテンションでそう返事を返す。

 

「誰だよ、弘樹? この無駄に煩い奴?」

 

その様子を見た了平が呆れた様にそう尋ねる。

 

「『絃賀 月人(げんが つきと)』先輩。元剣道部の主将だ。知らんのか? 全国大会個人の部での優勝者だぞ」

 

すると弘樹は了平にそう返す。

 

「小生が絃賀 月人である!!」

 

月人もそう自己紹介をする。

 

「テンション高っ!」

 

「絃賀先輩はいつもこんな感じだ。ところで先輩。また剣道部の様子を見ていたんですか?」

 

ハイテンションな月人に、地市が思わずそう声に出すと、弘樹が月人に向かってそう尋ねた。

 

「うむ! 我が絃賀家は代々武門の家柄! その嫡子たる小生が武道を究めんとするのは当然の事だ!! しかし………学年だけは如何しても覆せん!!」

 

最後の方の台詞は悔しさを露わに叫ぶ月人。

 

「あ~、そう言う人なのね………」

 

その言葉に、了平は多少月人の人柄を理解する。

 

「それならば絃賀先輩。歩兵道に参加してみる気は有りませんか?」

 

「!? 何だと!?」

 

「現在、我が大洗歩兵部隊は、大洗戦車部隊の増員に合わせて、部隊員の増員を行っています。絃賀先輩さえ良ければ、すぐにでも参加する事が可能ですが………」

 

「…………」

 

と、弘樹にそう説明される中、月人は不意に黙り込む。

 

「? 先輩?」

 

「あの、如何かしまし………」

 

「フハハハハハハハハッ! 我が世の春が来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

そんな月人に弘樹が首を傾げ、楓が如何したのかと尋ねようとした瞬間、月人は声の限りにそう叫んだ!

 

余りの大声に衝撃波が発生し、武道場の窓ガラスに罅が入る。

 

「「ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!?」」

 

至近距離でその衝撃波と大声の直撃を受けた了平と地市が、悲鳴を挙げて地面に転がる。

 

「ぐ、あ……鼓膜が………」

 

咄嗟に耳を抑えて蹲った楓も、耳鳴りを覚えて苦悶の表情を浮かべる。

 

「兄弟ぃっ!! 実に良い知らせを持ってきてくれたぁっ!! 実は以前より、戦車道・歩兵道の試合は見させてもらっていたぁっ!! 実に闘争本能を刺激される良いモノだったぞぉっ!! まさか小生も参戦する事が出来るとは! 願っても無い事だぁっ!!」

 

「それは何よりです。では、お手数ですが、生徒会の方に出向いて、届けを出して下さい」

 

更にハイテンションな様子でそう言い放つ月人の眼前で、1人まるっきり平気な様子の弘樹が、何時もと同じく淡々とした様子でそう説明している。

 

「明日っから耳栓が要るな………」

 

「ホントにこんな奴を入れて大丈夫かよ………」

 

まだ地面に転がったままの地市と了平が、そんな2人の様子を見上げながらそんな言葉を漏らすのだった。

 

「では、兄弟。後程な」

 

「ハイ、後程………」

 

そこで月人は、歩兵部隊に入隊すべく、生徒会へと手続きへ向かう。

 

「………ああ、そうだ。増員メンバーを探していると言っていたな?」

 

とその途中、月人は不意に足を止めると、弘樹の方を振り返ってそう言う。

 

「そうですが………」

 

「ならば2年のVクラスに行ってみろ。面白い留学生が居るぞ。何でも先祖代々傭兵の家系らしい」

 

「傭兵の家系?」

 

「案外頼れるかも知れんぞ。フハハハハハハハハッ!!」

 

そう言うと、月人は高笑いを響かせながら、改めて生徒会の元へと向かったのだった。

 

「2年のVクラスか………」

 

「そんな人が居るなんて、知りませんでしたね」

 

「まあ、ウチは1学年のクラスが最低でも20クラス以上は有るからな」

 

「って言うか学生多過ぎだっての。小都市の人口並みだぜ」

 

弘樹が呟くと、漸く回復した楓、地市、了平がそう言って来る。

 

「兎に角、行ってみるぞ。絃賀先輩が薦める様な人間だ。相当な奴だろう」

 

そう言うと、弘樹達は何事かと集まって来ていた武道系の部活動の生徒達の視線を尻目に、月人が言っていた2年のVクラスへと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗男子校・校舎………

 

2年生のクラスが並ぶ廊下………

 

「………此処だな」

 

2-Vと掛かれた教室の表札を見て立ち止まる弘樹。

 

「で、どいつが傭兵の家系の奴なんだ?」

 

「留学生って言ってましたけど………」

 

「って言うか、留学生も多過ぎだぞ、ウチの学校………」

 

地市、楓、了平がそんな事を言いながらクラスの中を覗き込み、そんな事を言い合う。

 

月人が言っていた生徒は留学生との事だが、大洗男子校は国際学校の為、留学生の数も他校に比べかなり多い。

 

今地市達が覗いているVクラスに居る生徒も、凡そ3分の1近くが留学生である。

 

「聞いてみるしかないな………諸君、少し良いか?」

 

そう言いながらVクラスに足を踏み込む弘樹。

 

Vクラスに居た生徒達の視線が一斉に弘樹に集まる。

 

「我々は大洗歩兵部隊の者だ。知っている者も居るだろうが、現在我々は部隊員の増員を行っている。無論、参加するかしないかは諸君等の自由意思で決定してもらう。だが、我々は常に仲間を求めている」

 

先ずは事情の説明と、弘樹は生徒達に向かってそう言い放つ。

 

「そこで尋ねるが………このクラスに先祖代々傭兵の家系の留学生が居ると聞いた。是非会って話をしたいのだが………」

 

と、弘樹がそこまで言うと………

 

「俺の事を言っているのか?」

 

背後からそう言う声が聞こえて来て、弘樹と教室の入り口の外に居た地市達が振り返ると………

 

「………!」

 

「うおっ!?」

 

「うわっ!?」

 

「ぎゃああっ!? 熊だぁっ!? 死んだふりっ!!」

 

弘樹は驚きを示し、地市と楓は半歩後ずさり、了平はそう叫んで倒れ込む。

 

そこには、2メートルを軽く超えた身長に、筋肉隆々と言った体格の、まさに熊と見間違う様な巨大な体躯をした生徒の姿が在った。

 

「外国人を見るのは初めてらしいな」

 

その巨大な体躯の生徒は、弘樹達のリアクションを見てそんな事を言う。

 

「そう言うワケではないが………君がその留学生か?」

 

と一同の中で冷静さを保っていた弘樹が、巨大な体躯の生徒に尋ねる。

 

「『ルダ・シャッコー』だ。祖先はスイス傭兵だった」

 

巨大な体躯の生徒………『ルダ・シャッコー』はそう自己紹介をする。

 

「ほう、あのスイス傭兵か………」

 

それを聞いた弘樹がそう呟く。

 

 

 

 

 

『スイス傭兵』

 

主にスイス人によって構成される傭兵部隊で、15世紀から18世紀にかけてヨーロッパ各国の様々な戦争に参加。

 

特にフランス王家とローマ教皇に雇われた衛兵隊が名高く、後者は現在でもバチカンのスイス衛兵隊として存在している。

 

国土の大半が山地で農作物が余り取れず、目ぼしい産業が無かったスイスにおいて、傭兵稼業は重要な産業となった。

 

傭兵稼業によってスイスは強大な軍事力を保有する事となり、隣接する他国にとっては、侵略が極めて困難であり、侵略してもそれに見合った利益が得られない国と看做されるようになり、スイスの安全保障に貢献し、「血の輸出」と呼ばれた。

 

 

 

 

 

「アレ、でも………スイスは確か中立国じゃ?」

 

「現在はな………だが、俺の祖先達は根っからの傭兵だった様でな。傭兵の輸出が禁止されると国を飛び出し、各地の戦場を渡り歩いたそうだ」

 

楓がそう指摘すると、シャッコーは仏頂面でそう返す。

 

「今は家族も親戚も全員神大コーポレーション傘下のPMCで働いている」

 

「神大コーポレーションの?」

 

「流石世界の神大コーポレーション」

 

更にシャッコーがそう言うと、地市と了平がそう言い合う。

 

「そうか………では、単刀直入に言わせてもらうが、歩兵道をやる気はないか?」

 

とそこで弘樹が、シャッコーの向かってそう尋ねる。

 

「構わんが………俺は傭兵だ。タダで戦う積りは無い」

 

「オイオイ、幾ら何でもそりゃあ………」

 

「報酬の話は生徒会へ通してくれ。生徒会長はあらゆる要求に応える用意があると言っている」

 

傭兵としてタダでは働けないと言うシャッコーに、地市がツッコミを入れようとしたが、弘樹がそれを遮る様にそう言う。

 

「分かった。契約成立だな。では、手続きに言って来る」

 

シャッコーはそう無愛想気味に言い放ち、弘樹達に背を向けると生徒会室に向かって行った。

 

「オイ、弘樹。良いのかよ?」

 

「歩兵道に参加する生徒の要求には応える用意があると言っていたのは生徒会長だ。それに、傭兵は契約を全うする。その意味では信頼出来る」

 

「成程。確かにそうかも知れませんね」

 

了平の言葉にそう返す弘樹の台詞を聞き、楓がそう言う。

 

「コレで2人確保か」

 

「行くぞ。まだまだ人数が必要だ」

 

更にスカウトを続ける弘樹達だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

2回戦を勝ち抜き、次なる3回戦への準備です。
漸くレストアが完了したルノーとクロムウェルに、カモさんチームとサンショウウオさんチームが乗り込みます。

それに合わせて、歩兵部隊も増員を行い、メンバーは新たな隊員のスカウトに走る。
で、今回加入した3人ですが………
元ネタは宇宙キター!のロケットライダー、月の絶好調なテラ子安の御大将、最低野郎に出て来たクエント人の傭兵が元ネタです。

この後も中編、後編と続き、新たな灰汁の強いメンバーが次々に加入します。
楽しみにしていて下さい。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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