ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第44話『新分隊、結成です!(後編)』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第44話『新分隊、結成です!(後編)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗歩兵部隊が、新入隊員の適性テストを兼ねた訓練を行う中………

 

大洗戦車部隊も、新規参入チームの訓練を行っていた。

 

しかし、サンショウウオさんチームは操縦士に問題を抱え、参戦が危ぶまれていた。

 

そんな中………

 

サンショウウオさんチームに新しい仲間………

 

元スケ番の少女『天地 唯』が加わる。

 

歩兵部隊もまだまだ増員を考える中、この新メンバーの加入はサンショウウオさんチームに………

 

そして大洗機甲部隊に何を齎すのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日が傾き始めた頃、漸く大洗男子校での訓練が終わり、歩兵部隊の隊員達は帰路へと就く。

 

弘樹も夕暮れの街中を、自宅目指して歩いていた。

 

(生徒会長が仰られていた様に、もう少し腕利きのメンバーが欲しいな………特に狙撃兵等が欲しいところだ)

 

帰路の中、歩兵部隊の編成について思案を巡らせている弘樹。

 

現在、大洗機甲部隊には飛彗と陣を筆頭にした狙撃兵が数10人居るが、弘樹としては腕が立つ者が更に欲しいと考えていた。

 

狙撃兵は優秀な者となれば、1人で大軍の敵を足止めする事が可能となる。

 

だが、それ故に、他の兵種に比べ、才能が要求される側面がある。

 

(如何したものか………)

 

弘樹は頭を悩ませる。

 

と、その時………

 

「狙い撃つぜっ!」

 

「………?」

 

そう言う声が聞こえて来て、ふと弘樹がその方向を見やると、そこには………

 

ゲームセンターのスナイパーライフルタイプのガンコントローラーを使うシューティングゲームに興じている、服に大洗男子校の校章を付けた生徒の姿が在った。

 

弘樹が見ている事など気づきもせず、その生徒は次々と画面に現れる標的を射抜き、ポイントを稼いで行く。

 

(! コレは………)

 

その姿を見て、弘樹は何かに気付く。

 

やがて最後の標的が射抜かれ、ゲーム画面にはランキングが映し出され、彼の成績は1位となっていた。

 

「フフ、また記録更新だな」

 

ガンコントローラーから離れると、生徒は表示されている成績を見てそう呟く。

 

(間違い無い………彼には狙撃の才能がある)

 

そして弘樹は、その生徒に狙撃の才能が有ると確信し、脇目も振らずに歩み寄って行った。

 

「君」

 

「ん? アンタ、誰………って、舩坂 弘樹か」

 

「小官を知ってるのか?」

 

「そりゃあ、有名人だからね」

 

何処かキザな態度で、生徒はそう言い放つ。

 

「そうか。ならば自己紹介は無用か。君の名前を教えてくれないか?」

 

「どうせならかわい子ちゃんに名乗りたいとこだが、まあ良いぜ。俺は『伊達 圭一郎(だて けいいちろう)』だ」

 

そう名乗る生徒………『伊達 圭一郎(だて けいいちろう)』

 

「では、伊達 圭一郎。単刀直入に言う。歩兵道をやらないか?」

 

「ああ? 歩兵道を?」

 

「そうだ。先程の遊戯の様子を見させてもらったが、君には狙撃兵としての才能が有る」

 

「オイオイ、止してくれよ。あんなんで才能が有るってんなら、ゲーセンに通ってる奴は皆歩兵道の達人になっちまうぜ」

 

何を馬鹿な事を言う様な様子の圭一郎。

 

「確かに、半ば小官の直感での部分はある。だが、それを差し引いても君は十分な才能がある。如何だ? 歩兵道をやる気は無いか?」

 

「悪いな。折角の誘いだけど、断らせてもらうぜ。興味無いからな」

 

重ねてそう言う弘樹だったが、圭一郎はヒラヒラと手を振ると、弘樹に背を向けて立ち去って行く。

 

「………まだまだ諦めんぞ。伊達 圭一郎」

 

しかし、弘樹は諦めていない様子で、立ち去る圭一郎の背中を見ながら、そう呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

所変わって、学園艦の甲板都市の一角………

 

ごく平凡な1軒の民家にて………

 

「只今ーっ!」

 

「あ! 兄ちゃんが帰って来たー!」

 

「御帰り~、お兄ちゃん」

 

スーパーのレジ袋を携えた大洗男子校の校章を付けた生徒が帰宅すると、ドタドタと言う足音が響いて来て、幼い男子3人、女子3人の計6人が出迎える。

 

「只今、皆。良い子にしてたかい?」

 

その少年少女達………弟と妹達にそう尋ねる生徒………『白鳥 弁慶(しらとり べんけい)』

 

「うん、してた~」

 

「兄ちゃん~。お腹減った~」

 

と、弟の1人がそう言ったかと思うと、その弟の腹の虫がぐぅ~と鳴く。

 

「ああ、ゴメンゴメン。ちょっと待っててね。すぐ晩御飯にするから」

 

それを聞いた弁慶はすぐに家へと上がると、居間で制服の上着だけを脱いでハンガーに掛け、隣に掛けてあったエプロンを身に着ける。

 

そして台所に立つと、スーパーのタイムセールスで買って来た食材を調理し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小一時間後………

 

白鳥家の居間………

 

「さあ、出来たよ~。今日は兄ちゃん特製のカレーだぞ~」

 

「「「「「「わ~~~いっ!!」」」」」」

 

弁慶のカレーが出来上がり、ちゃぶ台を囲んでいた弟・妹達が歓声を挙げる。

 

「さあ~、沢山有るから、どんどん食べるんだぞ~」

 

「兄ちゃんのカレー、大好きぃっ!!」

 

「テレビ点けよう! テレビ!」

 

弁慶が弟・妹達にカレーを装ってやっていると、弟の1人がテレビを付ける。

 

『では、続いて戦車道・歩兵道の全国大会のニュースです。本日行われた試合では、黒森峰機甲部隊、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊、プラウダ&ツァーリ機甲部隊が其々勝利しました』

 

映っていた番組はニュース番組であり、丁度戦車道・歩兵道の全国大会のニュースを流していた。

 

「!!」

 

そのニュースに反応し、動きが止まる弁慶。

 

「? 兄ちゃん?」

 

「如何したの?」

 

突然動きが止った弁慶の事を、弟・妹達が怪訝な目で見上げる。

 

「! あ、ああ、ゴメンゴメン! 何でも無いよ! さっ! 早く食べようか!! いただきます!!」

 

「「「「「「いただきま~すっ!!」」」」」」

 

しかし、弁慶は誤魔化す様にそう言い、弟・妹達と共に食事に入るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に時間は流れ………

 

食事を終えた弁慶と弟妹達は、風呂を済ませると、弁慶を除いた全員が就寝。

 

弁慶だけが、2人分の食事を用意して、居間でテレビを見ていた。

 

見ている番組は、やはり戦車道や歩兵道関連のモノである。

 

「…………」

 

番組を見ながら、何やら複雑そうな表情を浮かべている弁慶。

 

「「只今~」」

 

とそこで、玄関の方から男性と女性の声が聞こえて来た。

 

そして、居間の方へ向かう足音が聞こえて来て、スーツ姿の1組の男性と女性………弁慶の両親が姿を見せる。

 

「あ、お帰りなさい。お仕事お疲れ様です。今日はカレーですよ」

 

「おお、そうか!」

 

「それは良かったわ」

 

弁慶がテレビを消しながらそう言うと、父と母は上着だけをハンガーに掛けて、弁慶が作ったカレーに手を付け始める。

 

「うん、美味い! 流石だな、弁慶」

 

「いや~、そんな、ははは………」

 

「ゴメンナサイね。私達がいつも忙しいものだから、家の事は貴方に任っせきりで………」

 

父がカレーに舌鼓を打っていると、母がそう言って弁慶に謝罪する。

 

弁慶の両親は、共に大洗学園艦の運行に関わる仕事に就いている。

 

通常、学園艦の運行は、その学園艦に存在する船舶科と呼ばれる生徒達が運行しているが、船舶科と言えど学生。

 

責任が伴ったり、大人の監督が要る箇所には、弁慶の両親の様なオブザーバーの立場を取る大人の乗組員達も居るのである。

 

学園艦は常に運行されているので、交代制勤務であるとはいえ、その仕事は多忙を務め、時には数日間は帰宅出来ない事もある。

 

そんな両親に代わって、まだ幼い弟妹達の面倒を見ているのが、他ならぬ弁慶なのである。

 

「母さん。その話はしないでって言ったでしょう」

 

「でも、貴方、歩兵道を………」

 

「良いんだよ。僕が好きでやってる事だから」

 

「「…………」」

 

そう言って無理に笑う弁慶の顔を見て、両親達は何も言えなくなってしまうのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日………

 

大洗男子校の校門にて………

 

「1日ぶりだな、伊達 圭一郎」

 

「! 舩坂 弘樹」

 

登校して来た圭一郎を待ってきた弘樹が声を掛ける。

 

「オイオイ、態々早くに登校して俺を待ってたのかい? ご苦労なこって………」

 

「それだけ我々には君の力が必要なのだ。重ねて言う………歩兵部隊に入隊してくれ」

 

呆れる様な圭一郎の態度も気にせず、弘樹はそう言う。

 

「言ったろ。興味無いって………それじゃあな」

 

だが、圭一郎はにべもなく断り、弘樹から逃げる様に教室へと向かっていったのだった。

 

「…………」

 

その姿を黙って見送る弘樹。

 

しかし、それで舩坂 弘樹という男は、それで諦める様な奴ではなかった………

 

休み時間、昼休み、そして放課後………

 

空いた時間を見つけては圭一郎の元へ赴き、何度も熱心にスカウトを行ったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンタもホントしつこいね」

 

「そうしなければならない理由がある」

 

何時もの仏頂面でそう言い放つ弘樹。

 

その表情には、一片の揺らぎも感じられない。

 

「………そこまで言うんだったら、1つ勝負をしないか?」

 

「勝負?」

 

「な~に、単なるじゃんけんさ。アンタが勝ったら、俺は大人しく入隊してやる。但し、俺が勝ったら、もう2度と俺の前に現れないでもらおうか」

 

「………良いだろう」

 

一瞬考える素振りを見せた後、弘樹はその勝負に応じた。

 

「んじゃ、行くぜ。一発勝負だ。勝っても負けても恨みっこ無しだぜ」

 

「無論だ………」

 

そう言い合うと、両者の間に沈黙が訪れる。

 

「「…………」」

 

雰囲気はまるで西部劇の決闘である………

 

「行くぜ! じゃんけん!………」

 

「ポンッ!」

 

やがて、お互いのほぼ同時のタイミングで、右手を出しあった。

 

弘樹の手はグー。

 

対する圭一郎の手は………

 

「………やれやれ。負けちまったか」

 

チョキだった。

 

「ま、約束しちまったからな。分かったよ………入隊するよ」

 

「………何故途中で手を変えた?」

 

そう言う圭一郎だったが、弘樹はそう指摘する。

 

「何?」

 

「お前はパーを出す積りだった筈だ。だが、直前でチョキに変えた………ハッキリと見えたぞ」

 

「オイオイ、言い掛かりは止せよ。俺は入隊するって事で決まったんだ。それで良いだろう」

 

飄々とした態度で弘樹にそう言う圭一郎。

 

「…………」

 

弘樹はそんな圭一郎の目を見やる。

 

「良いだろう。では、手続きに向かって貰えるか?」

 

「仰せのままに………」

 

やがて弘樹がそう言うと、圭一郎は入隊の手続きへと向かった。

 

(全く………まさか見切られてたとは思わなかったぜ。けど、確かに俺はアンタに負けてたぜ………アンタのその熱意にな)

 

圭一郎は、内心でそんな思いを巡らせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

大洗女子学園・戦車格納庫前のグラウンド………

 

「右旋回!」

 

「あいよっ!!」

 

車長の聖子が指示を出すと、唯が操るクロムウェルは即座に右へと旋回する。

 

「続いて左旋回!」

 

「ホイ来たっ!!」

 

続いて間髪入れずに左旋回の指示を出すが、唯は難なく対応して見せる。

 

そのまま右に左へのスラローム走行で、予め用意されていたパイロンの間を擦り抜けて行く。

 

パイロンとパイロンの間は、クロムウェルが通れるギリギリの幅しかないが、先程からクロムウェルはパイロンに掠る様子すら見られない。

 

「す、凄い………」

 

「驚きだにゃ~」

 

今回の見学組である明菜と満理奈が、そんなクロムウェルの動きを見て呆気に取られる。

 

「まさか天地さんにココまで操縦の才能があるなんて………」

 

「世が世なら絶対名戦車乗りですよぉっ!!」

 

Ⅳ号からその様子を見守っていたみほも驚きを露わにし、装填手用ハッチから上半身を出していた優花里が興奮気味にそう語る。

 

「コレで操縦士の問題はクリアされたな………」

 

「漸くサンショウウオさんチームの皆さんとも一緒に戦えるんですね」

 

「何か楽しみ~」

 

麻子、華、沙織が続いてそう言う台詞を言う。

 

とそこで、クロムウェルが戦車格納庫の前まで戻って来て、全てのハッチが開くと、車長の聖子と操縦士の唯、装填手の静香、砲撃手の優、通信手の伊代が降りて来る。

 

「唯ちゃん最高~っ!!」

 

「うわぁっ!?」

 

聖子が感極まった様子で唯に抱き付く。

 

「凄い! 凄いよ、唯ちゃん! 唯ちゃんが操縦してくれれば、私達も遂に試合に出られるよ~!!」

 

「あ、ああ………えっと、その、あの………」

 

「聖子。唯さんが困ってますよ」

 

抱き付いたままはしゃぐ聖子に戸惑うばかりの唯だったが、そこで優が聖子を引き剥がす。

 

「ルノーのカモさんチームの訓練も上手く行ってる。コレで戦力はかなり整ったな」

 

「歩兵部隊の方の増員も進んでるみたいだよ」

 

そこで桃と蛍がそう言い合う。

 

「んじゃ今日からまた合同練習だね」

 

「ハイ、歩兵部隊の皆さんが到着次第、練習を再開します」

 

「「「「「「「「「「ハーイ!」」」」」」」」」」

 

続いて杏がそう言うと、みほは集まっていた大洗戦車部隊のメンバーにそう呼び掛ける。

 

そして程なく、大洗歩兵部隊が姿を見せると、一同は演習場へと向かい、合同訓練を開始するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃………

 

学園艦甲板都市の一角にて………

 

「とと、ちょっと買い過ぎたかなぁ?」

 

今日も今日とて、スーパーで買い物をした弁慶が、満杯となっているレジ袋を両手に、自宅への帰路に就いて居る。

 

「しかし、凄いなぁ、大洗女子学園と大洗男子校は」

 

「ホントホント。20年ぶりに戦車道・歩兵道の全国大会に参加したのに、3回戦まで勝ち進んだんだぜ」

 

「正直、1回戦で優勝候補のサンダース&カーネル機甲部隊とぶつかった時は駄目だと思ったけど、ココまで奮戦するとは予想外だったよ」

 

「学園艦に住む者達としては鼻が高いよな。コレからも勝ち進んで欲しいね」

 

とそこで、道行く人々が戦車道・歩兵道の話をしているのを耳にする。

 

「…………」

 

その話を聞いた弁慶は立ち止まり、考え込む様な素振りを見せる。

 

するとそこで………

 

満杯のレジ袋の中に入っていた林檎が、袋から零れ、弁慶から離れる様に転がって行く。

 

「! あっ!? ま、待って~~っ!!」

 

慌てて転がった林檎を追う弁慶。

 

林檎はやがて、1人の男の足に当たって止まる。

 

その林檎を拾い上げる男。

 

「あ、ありがとうございます」

 

男から林檎を受け取ろうとする弁慶。

 

「………何時まで自分の心を誤魔化す積りだ?」

 

するとその男は、弁慶に向かってそんな事を言い放つ。

 

「えっ? あ、あの………貴方は?」

 

思いもよらぬ言葉に弁慶は戸惑いつつも、その男の名を尋ねる。

 

「君の行くべき道を知っている者だ」

 

「えっ? な、何ですかいきなり………一体僕の何を知っていると言うんですか?」

 

「君の心は既に答えを見た。後は………正直に生きろ!」

 

「!!」

 

その言葉に衝撃を受ける弁慶に、男は林檎を手渡し、背を向けて去って行く。

 

「………正直に………生きろ」

 

男が去って行った後、その言葉を反芻する弁慶。

 

そのまま悩んだ様子を見せつつ、帰路を急いだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白鳥家………

 

「只今~」

 

男に言われた事が頭の中を堂々巡りしている状態で帰宅する弁慶。

 

しかし、いつもなら全員で出迎えてくれる筈の弟妹達が、何故か1人も出迎えない。

 

「? アレ? 皆? 帰ってるんだろう?」

 

弁慶は奇妙に思いながら家の中へと上がり、居間へと顔を出す。

 

するとそこには………

 

「あ、兄ちゃん!」

 

「御帰り~!」

 

妹の内の2人が、干し終わった洗濯物を畳んでいた。

 

「! お前達、何をやって………」

 

「お風呂掃除終わったよ~」

 

「終わったよ~」

 

弁慶が驚きを露わにすると、背後からそう言う声が聞こえて来て、スポンジを片手に、鼻の頭に泡を乗せた弟達2人が現れる。

 

「あ! 兄ちゃん! 帰ってたんだ!」

 

「お前達まで!?」

 

「兄ちゃん」

 

「お兄ちゃん」

 

またも弁慶が驚いていると、台所の方からエプロン姿の残った弟と妹が姿を見せる。

 

「皆!………」

 

「兄ちゃん。僕達も家の事ぐらい出来るよ」

 

「だからお兄ちゃん。歩兵道やっても良いよ」

 

「えっ?………」

 

「知ってるよ。お兄ちゃんがずっと歩兵道をやりたかったって事」

 

戸惑う弁慶に向かって弟の1人がそう言う。

 

「兄ちゃん。歩兵道、やりなよ。僕、兄ちゃんが活躍してるとこ、テレビで見たいんだ」

 

「アタシも~」

 

「お前達………」

 

弟妹達の気遣いに、思わず涙が出て来る弁慶。

 

「兄ちゃん? 泣いてるの?」

 

「い、いやぁ、ちょっと目にゴミが入っただけさ………」

 

弁慶はそう言いながら、弟妹達全員を抱き締める。

 

「ありがとう………皆、本当にありがとう………」

 

そしてそのまま、何度も何度も感謝の言葉を述べるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日の放課後………

 

大洗女子学園・戦車格納庫前にて………

 

「諸君、新メンバーを紹介する。2年の白鳥 弁慶くんだ。本日より、歩兵道に参加してくれる事となった」

 

「白鳥 弁慶です! 皆さん! 今日からお世話になります!!」

 

迫信が、戦闘服姿の弁慶を、大洗機甲部隊の面々に紹介する。

 

「あ! コレ、僕が作ったキャンディーです! 良かったらどうぞ! コレからよろしくお願いします!」

 

とそこで、弁慶は携えていたバスケットの中にたんまりと入っていたキャンディを、大洗機甲部隊の面々1人1人に配り始める。

 

「よろしく! よろしくお願いします!」

 

「あ、ああ………」

 

大洗機甲部隊の面々は戸惑いながらキャンディを受け取って行く。

 

「何かまた変わった奴が来たな………」

 

「今更やないけ………お! このキャンディー美味いなぁ!」

 

地市がそんな弁慶の姿を見てそう呟き、大河がツッコミを入れながら、弁慶が配ったキャンディーに舌鼓を打つ。

 

「さて………では続いてのメンバーの紹介だ」

 

「えっ? まだ新メンバーがいらっしゃるんですか?」

 

とそこで、迫信がそう言うと、清十郎がそう反応し、一同も再び迫信に注目する。

 

するとそこで、一同の背後から2人の物と思われる足音が聞こえて来た。

 

大洗機甲部隊の一同が振り返るとそこには………

 

戦闘服姿の、2人の男の姿が在った。

 

「『内藤 英洲(ないとう えいす)』だ。エースと呼んでくれ」

 

「『杷木 拳龍(はき けんりゅう)』です………よろしく」

 

2人の男………『内藤 英洲(ないとう えいす)』こと『エース』と『杷木 拳龍(はき けんりゅう)』は、大洗機甲部隊の面々に向かってそう自己紹介する。

 

「!! 君は………」

 

弁慶がその2人の内、エースの方を見て驚きの声を挙げる。

 

何故なら、その彼こそが、昨日弁慶にアドバイスをしたあの男だったからだ。

 

「…………」

 

エースはそんな弁慶に向かって笑みを浮かべ、無言でサムズアップしてみせる。

 

「さて………では新メンバーも大分増えたところで、新たに参戦する戦車チームであるカモさんチームとサンショウウオさんチームの随伴分隊を発表する」

 

そんな様子を見ながら、迫信がそう宣言するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして………

 

戦車部隊にカモさんチームとサンショウウオさんチームが参入するのに合わせ………

 

新たに増員を行った大洗歩兵部隊に、新たな随伴分隊………

 

カモさんチームの随伴分隊である絃賀 月人(突撃兵)を分隊長とする、鎧 鋼賀(突撃兵)、文月 弦一朗(突撃兵)、伊達 圭一郎(狙撃兵)を中心とした『マンボウさん分隊』

 

そして、サンショウウオさんチームの随伴分隊である内藤 英洲(突撃兵)を分隊長とする、杷木 拳龍(偵察兵)、白鳥 弁慶(対戦車兵)、ルダ・シャッコー(突撃兵)、ジャクソン・ダート(偵察兵)を中心として『タコさん分隊』が結成されたのだった。

 

3回戦の時は近い………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

遂に新たなる分隊………
マンボウさん分隊とタコさん分隊の結成です。

今回登場した新キャラは、三木眞一郎さんが演じたキャラを3つ程混ぜた感じ、電車に乗る仮面ライダーの2号ライダーの相棒、そして正々堂々とスポーツをするロボットアニメの主人公とそのチームメイトの1人が元ネタとなっています。

さて、次回からなんですが………
ここいらで1つ、ラブコメをやってみようかと思います。
主人公ズの弘樹とみほを中心に、あんこうさんチームのらぶらび作戦をご覧下さい。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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