ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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恥ずかしながら、帰って参りました。

とある読者の方より、自分の作品の至らない点を指摘された事と、最後規約に引っかかってしまったショックで少々塞ぎ込んでおりましたが、やはりこの作品を書き上げたいと思い、帰って来ました。

読者の皆様には大変なご迷惑をお掛けしましたが、もしまだ応援していただけるというなら、
どうかこれからも、よろしくお願い致します。


第5話『舩坂家、訪問です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第5話『舩坂家、訪問です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業初日から、教官である最豪 嵐一郎は大洗歩兵部隊に厳しい訓練を課した。

 

しかも、それでもまだ序の口だと言う。

 

弘樹や迫信以外のメンバーは、早くも先行きに不安を感じ出していた。

 

そして、漸く訓練が終わると、授業の見物に来ていたみほ達に気付いた弘樹達は、彼女達と共に帰路に就いたのだった………

 

 

 

 

 

学園艦・艦舷の公園にて………

 

「この水平線と共に眺められる夕陽の景色は、学園艦の住民ならではの特権だな………」

 

自販機で買ったお茶の缶を手に持っていた弘樹が、水平線に沈む夕陽を見ながらそう呟く。

 

「うん。とっても綺麗だね」

 

「ですね」

 

みほと優花里が、弘樹に同意する。

 

「ハア~~~、疲れた~~。これから毎日、あんな授業が続くのかよ~」

 

「大丈夫?」

 

一方、地市は歩兵道の授業での訓練が相当応えたらしく、沙織に心配されながら、ベンチに凭れ掛かる様にしながら夕焼けの天を仰ぎ見ている。

 

「あ~、俺もう駄目~~。五十鈴さ~~ん。その魅惑のおみ足で膝枕して~」

 

「ええっ!? いきなりその様な事を言われましても………」

 

「すみません。この人の言う事は聞き流して下さい」

 

ドサクサに紛れて華に膝枕をせがむ了平と、そんな了平を咎める楓。

 

「そう言や、今週末には寄港だったか?」

 

ふとそこで、地市からそんな話が出る。

 

「うむ、そう言えばそうだな………」

 

「そろそろ陸に上がりたいもんね。アウトレットで買い物もしたいし」

 

弘樹が肯定の返事を返すと、沙織もそう言う。

 

「今度は何処の港だっけ? 私港々に彼が居て、大変なんだよね~」

 

「ええ~っ!? そうなの!?」

 

「それは行きつけのカレー屋さんでしょ」

 

沙織の恋愛ごとの冗談を真に受けた了平がショックを受け、割と容赦の無いツッコミを入れる華。

 

「あ、あの!………良かったら、ちょっと寄り道して行きませんか?」

 

するとそこで、優花里が一同にそんな事を言って来た。

 

「えっ?」

 

「寄り道?」

 

「「「「「「??」」」」」」

 

みほと弘樹が返事をすると、他の一同も優花里に注目する。

 

「駄目ですかね?」

 

断わられると思っているのか、優花里の表情が曇る。

 

それを見た一同に、断ると言う選択肢は残っていなかった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

せんしゃ&ほへい倶楽部………

 

優花里が一同を連れてやって来たのは、戦車と歩兵関連の商品を取り扱っている専門店だった。

 

「こんな店が在るんだ………」

 

「知らなかったぜ」

 

全く未知の店の存在に戸惑いの声を挙げる沙織と、弘樹達の中では唯一大洗出身の地市も初めて目にする店に驚く。

 

そして優花里を先頭に店の中へと入ると………

 

目に入って来たのは当然ながら、所狭しと並べられた戦車と歩兵の関連商品である。

 

転輪にマガジン。

 

砲弾や砲身、銃弾にモデルガン。

 

パンツァージャケットに迷彩服。

 

プラモや書籍もかなりの数が置かれている。

 

「凄いですね」

 

「コレは圧倒されますね」

 

華と楓がそんな感想を漏らす。

 

「おおっ! コレは萌え萌えミリタリー大辞典!!」

 

「ブレないな、お前も………」

 

目敏く萌え要素の入ったミリタリー誌を見つける了平と、そんな友人の姿に呆れる弘樹。

 

「でも、戦車ってみんな同じに見える」

 

とそこで、沙織が素人らしい意見を挙げると………

 

「ち、違います! 全然違うんです! どの子も皆、個性と言うか特徴が有って………動かす人によっても変わりますし」

 

優花里が頬を染めてウットリとした表情でそう反論する。

 

「華道と同じですね」

 

「うんうん。女の子だって、皆其々良さが有るしねえ。目指せ、モテ道」

 

すると、華と沙織はそう言葉を返す。

 

「アレは会話が成立しているのか?」

 

「話が噛み合ってる様な、無い様な………」

 

弘樹が3人の会話にズレを感じ、みほも思わず苦笑いする。

 

 

 

 

 

その後、優花里がシミュレーターの様な戦車ゲームをプレイし始めた。

 

「ふっ! ほっ!」

 

見事な腕前で、高得点を挙げて行く優花里。

 

「へえ~、上手いモンだな」

 

「アクティブで楽しそうです」

 

そんな優花里の姿を見て、地市と華がそう言う。

 

「でも、顔は怪我したくないなぁ………」

 

「つーか、俺達歩兵は生身で戦車とも戦うんだよな? 危なくね?」

 

「今更ですか? 了平」

 

と、沙織が戦車道でのそんな懸念を口にすると、了平もそんな事を言い、楓がツッコミを入れる。

 

「大丈夫です。試合では実弾も使いますけど、十分安全に配慮されてますから」

 

「その通りだ。特に歩兵の場合は危険度の度合いが大きいから、更に2重3重の安全対策がしてある」

 

優花里がそう返すと、弘樹もそう補足する。

 

 

 

歩兵道の場合………

 

男子は生身で戦車と対峙する事もある為、安全には戦車道以上の配慮が行われている。

 

試合時には、特殊合金を繊維状にして編み込まれた『特殊制服(戦闘服)』を着込み、更に使用される武器の弾薬や火薬等は特殊な物となっている。

 

 

 

「例え敵戦車の砲弾の直撃を受けたとしても、重戦車に轢かれたとしても、死ぬ事は先ず無い。最も、かなり痛いだろうがな」

 

「止めてくんないっ!? そういうの!!」

 

普段と変わらない表情でサラリとそう言い放つ弘樹に、了平はツッコミを入れる。

 

『次は、戦車道の話題です』

 

「?」

 

とそこで、店内に設置されていたテレビからそう言う声が聞こえて来て、みほはふと画面を見やる。

 

『高校生大会で、昨年MVPに選ばれて、国際強化選手となった、『西住 まほ』選手にインタビューしてみました』

 

「あ………」

 

(西住? と言う事は………)

 

西住 まほと言う名前に、みほが思わず声を漏らし、弘樹も画面に注目する。

 

『戦車道の勝利の秘訣とは何ですか?』

 

『諦めない事、そして………どんな状況でも、逃げ出さない事ですね』

 

レポーターの質問にそう答え、カメラを見据えるまほ。

 

「!………」

 

それを聞いたみほは俯いてしまう。

 

「む………」

 

弘樹はみほに何か声を掛けようとしたが………

 

「そうだ! コレから、みほの部屋に遊びに行っても良い?」

 

それよりも早く、沙織がみほにそう問い掛けた。

 

「えっ?」

 

「私もお邪魔したいです」

 

みほが戸惑っていると、華もそう言って来る。

 

「! うん!」

 

(………良い友達だな)

 

それを聞いてみほは笑みを浮かべ、弘樹も2人の気遣いに微笑を浮かべる。

 

「あの~………」

 

「秋山さんも如何ですか?」

 

乗り遅れていた優花里がオズオズと言った様子で手を上げながら声を掛けると、華がそう言う。

 

「! ありがとうございます!」

 

「じゃあ、俺達も!!………」

 

「帰るぞ、了平」

 

優花里が感謝をしている中、便乗しようとしていた了平の言葉を遮り、弘樹がそう言う。

 

「ええ~~っ!? 何でだよ!?」

 

「女子の部屋の男が複数人上がり込むと言うのは少々マズイだろう。それに我々まで言ったら部屋が狭くなってしまう」

 

「そうですね。僕達はココで失礼しましょう」

 

露骨に不満そうにしている了平に、弘樹はそう言い放ち、楓もその意見に同意する。

 

「あ! 待って下さい! 私は大丈夫ですから!!」

 

しかし、弘樹達だけ帰らせるのは悪いと思い、みはが引き止めて来る。

 

「ほらぁ、西住ちゃんだってこう言ってくれてるぜ」

 

「いや、そうも行かんだろう」

 

ここぞとばかりにそれに乗っかる了平だが、弘樹は尚も反論する。

 

「じゃあ弘樹ん家に行けば良いじゃねえか」

 

するとそこで、地市がそう言って来た。

 

「何っ?」

 

「お前ん家平屋だろ? 広さ的にも十分だし、逆なら別に構わねえだろ」

 

思わず地市の事を見やる弘樹に、地市はそう言葉を続ける。

 

「そうなんですか?」

 

「如何する? みほ?」

 

「私は別にそれでも良いけど………」

 

「私は是非! 舩坂 弘軍曹殿にも線香をお上げしたいですし」

 

それを聞いたみほ達も同意して来る。

 

「決まりだな」

 

「………仕方ない。ちょっと待ってくれ」

 

地市が強引に決める様にそう言うと、弘樹は一瞬迷った様な表情を見せたが、やがて諦めた様にそう言うと、携帯電話を取り出しながら、一旦店の外へ出る。

 

そして、少し携帯で何やら話していたかと思うと、やがて携帯を切ってポケットに戻しながら、再び入店して来る。

 

「湯江に聞いたが、大丈夫だそうだ。君達さえ良ければ遠慮無く来てくれ」

 

「よっしゃあっ!!」

 

「了平………」

 

弘樹のその言葉を聞いた途端、了平が歓喜の声を挙げ、楓がそんな了平の姿に呆れる。

 

「湯江?」

 

と、みほは弘樹の口から出た名前に首を傾げる。

 

「ああ、小官の妹だ」

 

「コイツと兄妹だとは思えねえスッゲェー可愛い妹だからな。見て驚くなよ」

 

弘樹が答えていると、地市が弘樹の隣に立ち、顔を指差しながらみほ達にそう言う。

 

「余計なお世話だ。行くぞ」

 

仏頂面でそう言うと、弘樹は一同を自宅へと案内し始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一同は途中スーパーで夕飯の材料の買い物をし………

 

夕日が完全に沈んで暗くなり始めた頃に、舩坂家へと辿り着いた。

 

「此処が舩坂殿の自宅ですかぁ~」

 

「凄~い………」

 

「結構大きいね~」

 

「純和風の家とは、珍しいですね」

 

純和風で、結構な広さの家を見て、優花里、みほ、沙織、華がそう感想を漏らす。

 

「何、知り合いの不動産が安く紹介してくれただけさ。さ、遠慮無く上がってくれ」

 

弘樹はそう言うと玄関の引き戸に手を掛け、ガラッガラッと言う音と共に開け放つ。

 

「今帰ったぞ」

 

「お帰りなさい、お兄様」

 

弘樹がそう言うと、廊下の奥の方から、紬姿でおかっぱの黒髪の少女・舩坂 湯江がやって来て出迎える。

 

「すまないな。急に友人達を招く事になってしまってな」

 

湯江に一旦鞄を預けると、学生帽と外套を脱ぐ弘樹。

 

「構いませんよ。お兄様の御友人でしたら、大歓迎ですから」

 

「助かる………皆も上がってくれ」

 

「お邪魔するぜ」

 

「こんばんわ、湯江ちゃん」

 

「突然の訪問で申し訳ありません」

 

そこで弘樹が外に向かってそう呼び掛けると、先ず地市、了平、楓の3人が玄関へ入って来る。

 

「ようこそ、皆さん」

 

湯江は3人に向かって、深々と御辞儀をしながら挨拶をする。

 

「えっと、お邪魔します」

 

「失礼致します」

 

「わあ~! 貴方が舩坂くんの妹?」

 

「まるで人形の様に可愛らしい方ですね」

 

地市達が家へと上がると、続いてみほ、優花里、沙織、華が入って来る。

 

「あら? 西住 みほさん?」

 

とそこで、湯江がみほの姿を見ると、口元に手を当てて、驚いた様子を見せる。

 

「えっ?………」

 

「みほさんの事をご存じなんですか」

 

「ええ。先日、兄が話していまして………そうですか。貴方が大洗女子学園の戦車部隊に………」

 

みほが驚き、華がそう尋ねると、湯江はみほを見ながらそう言う。

 

「ああ、ゴメンなさい。私とした事が、お客様を玄関に立たせたままで………ささ、どうぞ、上がって下さい」

 

とそこで、みほ達を玄関に立たせたままだった事に気付いた湯江が、慌ててそう言い、みほ達を家の中へと招く。

 

「あ、お邪魔します」

 

「「「お邪魔しま~~す」」」

 

湯江にそう言われ、みほ達は改めて舩坂家へと上がり込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

舩坂家・居間………

 

「改めまして初めまして。舩坂 弘樹の妹、舩坂 湯江です。兄がお世話になってます」

 

一同を居間へと通すと、湯江は畳の上に座り込み、みほ達に向かって手を付いて深々と頭を下げてそう自己紹介する。

 

「は、初めまして! 西住 みほです!」

 

「あ、秋山 優花里です!」

 

「た、武部 沙織です!」

 

かなり畏まった挨拶をされ、みほ、優花里、沙織も慌てて同じ様に頭を下げて挨拶する。

 

「五十鈴 華です。御丁寧にありがとうございます」

 

華だけは、華道の家元と言う事もあり、ごく自然に同じ挨拶を返す。

 

「湯江。夕食の材料は冷蔵庫に入れておけば良いか?」

 

とそこで、台所に居る弘樹のそう言う声が聞こえて来る。

 

「あ、ちょっと待ってて下さい。すみません、お騒がせして………すぐにお夕飯に致しますから、ご自由に寛いで居て下さいね」

 

それを聞いた湯江は、壁に掛けてあった割烹着を手に取り袖を通すと、頭に三角巾を巻いて台所へと向かう。

 

「あ、アタシ手伝うよ。華もお願い」

 

「あ、ハイ」

 

それを見た沙織が、華に声を掛けながら立ち上がる。

 

「いいえ、お客様にそんな事はさせられませんよ。どうぞごゆっくりしてて下さい」

 

「良いから良いから、気にしないで」

 

湯江は客である沙織達にそんな事はさせられないと言うが、沙織は気にせず、半ば強引に華と共に台所へと入る。

 

「私! 御飯炊きま~す!」

 

するとそこで、優花里がそう言って台所へと入って来たかと思うと、背負っていた軍用を思わせるリュックサックを床の上に下ろす。

 

そして、中から野外炊飯用の食器やら飯盒やらを取り出し始めた。

 

「何で飯盒?」

 

「何時も持ち歩いているのか?」

 

その光景を見た沙織と弘樹がツッコミを入れて来る。

 

「ハイ、何時でも何処でも野営出来る様に………」

 

「うわぁっ!?」

 

と、優花里がそう答えていると、ジャガイモの皮を剥いていた華の声が挙がる。

 

見ると、ジャガイモを握っていた左手の人差し指から血が流れていた。

 

「すみません。花しか切った事無いもので………」

 

「アラ、大変。ちょっと待ってて下さいね。絆創膏が此処に………」

 

華が血が流れる指を口に吼えると、湯江が台所の棚から絆創膏を取り出す。

 

「五十鈴さ~~ん! もしよろしければ、俺が舐めてあげ………げふっ!?」

 

「座ってろ、テメェーは!」

 

了平がまたも下品な行動に走ろうとし、地市が無理矢理押さえ付ける。

 

「皆意外と使えない。ハア~~………良し!」

 

と、その光景を見て呆れていた沙織が、目からコンタクトを外し、メガネを掛けたかと思うと、気合を入れる様な声を発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後………

 

全員が囲める様な大きなちゃぶ台の上に、肉じゃがや唐揚げ、刺身を初めとした色取り取りな料理が所狭しと並べられている。

 

「「「おおお~~~っ!!」」」

 

「うひょお~! 美味そう!!」

 

歓声を挙げるみほ、優花里、華と、思わず涎が零れそうになる地市。

 

「じゃあ食べよっか!」

 

「頂きます」

 

「「「「「「「「頂きま~す!」」」」」」」」」」

 

沙織と弘樹が音頭を取る様にそう言うと、全員が一斉に手を合わせて頂きますと言い、料理に手を付け始めた。

 

「はむ………むぐむぐ………う~ん! 美味しい~!!」

 

「コレは見事な肉じゃがですね。沙織さん」

 

沙織が作った肉じゃがに手を付けたみほと楓がそう感想を述べる。

 

「いや~、男を落とすには、やっぱ肉じゃがだからね~」

 

照れた様子でそう返す沙織。

 

「沙織さ~ん! 俺のとこだったら何時でもお嫁に来て………!? フゴッ!?」

 

「黙って食え。飯が不味くなる」

 

ドサクサに紛れて沙織にアプローチしようとした了平の口に、地市が唐揚げを突っ込む。

 

「落とした事、あるんです?」

 

とそこで、華が相変わらずの容赦無いツッコミを沙織に入れる。

 

「何事も練習でしょう~」

 

「と言うか、男子って本当に肉じゃが好きなんですかね?」

 

「都市伝説じゃないですか?」

 

反論する沙織だが、優花里と華はそんな事を言い合う。

 

「そんな事ないもん! ちゃんと雑誌のアンケートにも書いてあったし!!」

 

「まあ、間違ってねえとは思うぞ。俺は好きだしよ」

 

剥れた様にそっぽを向いてしまう沙織だったが、そこでその肉じゃがを頬張っている地市がそう言う。

 

「! 本当!?」

 

途端に沙織は上機嫌になり、感激した目で地市を見やるのだった。

 

「お花も素敵………」

 

とそこで、ちゃぶ台の中央に置かれた花瓶に挿された一輪の花を見やり、みほが呟く。

 

「ゴメンなさい。コレぐらいしか出来なくて………」

 

「ううん、お花が在ると、部屋が凄く明るくなる」

 

「そうですよ。一輪と言えど、花は花ですから」

 

「ありがとうございます」

 

華は申し訳無さそうにそう言うが、みほと湯江にそう言われて、笑顔を見せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小一時間後………

 

食事は終わり、湯江と弘樹達が後片付けに入っている中………

 

みほ達は仏壇に向かい合っていた。

 

仏壇には弘樹と湯江の祖先である舩坂 弘………

 

そして、弘樹と湯江が成長したかの様な男女の写真と、1人の老人の写真が置かれている。

 

「! この写真は………」

 

「舩坂さんの御両親と、お祖父様でしょうか………」

 

「仏壇に飾ってあるって事は………」

 

「舩坂殿の御両親達は既に………」

 

「ああ、湯江が生まれて間も無い頃に事故でな」

 

みほ達がそう言い合っていると、弘樹がそう言いながら姿を見せた。

 

「それ以来、小官達は祖父に育てられた………その祖父も、2年前に亡くなった」

 

そう仏壇の両親と祖父の写真を見やりながら、弘樹はそう言う。

 

「幸い、祖父はかなりの遺産を残してくれたから生活には困らなかったが、なるべく大切に使いたくてな………学費が安かったこの学園艦に引っ越して来たんだ」

 

「そうだったんだ………」

 

「すみません………私、無神経に舩坂軍曹に線香をあげたいだなんて………」

 

みほが悲しそうな顔をしてそう呟き、優花里は弘樹に謝罪する。

 

「いや、君達が気にする事では無い。小官も湯江も既に現実を受け止めている」

 

だが、弘樹は気にする事は無いと言う。

 

「「「「…………」」」」

 

それを聞いて、みほ達は互いに顔を見合わせると、やがてそれぞれ仏壇に線香をあげ、手を合わせたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、遅くなった為、弘樹達はみほ達を寮と家まで送りに出る。

 

1人別方向だった為、みほが住んでいる寮への送りは弘樹が担当した。

 

「あ、もう此処で大丈夫だから」

 

寮の入り口へと辿り着くと、みほは弘樹にそう言う。

 

「そうか………」

 

「それじゃあ、また明日。おやすみなさい」

 

「ああ、おやすみ」

 

みほと別れの挨拶を交わすと、弘樹は自宅への帰路に就き始める。

 

「…………」

 

と、みほはそんな弘樹の背中を見ながら、何かを言うべきか、言わざるべきか迷っている様子を見せるが………

 

「あ、あの! 舩坂くん!!」

 

やがて意を決した様に弘樹を呼び止める。

 

「?………」

 

「やっぱり私………この学園艦に転校して来て良かったよ!」

 

弘樹が振り返ると、みほは笑みを浮かべて弘樹に向かってそう言う。

 

「…………」

 

それを聞いた弘樹も微笑を浮かべると、一旦みほに向き直り、ヤマト式敬礼をした後、再び帰路へと着いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

大洗女子学園・戦車格納庫では………

 

「ホシノ~、レンチ取って」

 

「ハイ」

 

「その配線は左の方へ繋いで」

 

「ハイハ~イ」

 

繋ぎ姿の大洗女子学園自動車部のメンバー………ショートヘアの『中嶋 悟子』こと『ナカジマ』、褐色肌の『スズキ』、セミショートの『ホシノ』、そばかすの『ツチヤ』が、ボロボロの状態の戦車達を整備していた。

 

「やっぱり明後日までに直すのは厳しいんじゃないの? 資材も足りないし………」

 

ふと、ホシノがナカジマに向かってそう言う。

 

如何に彼女達が自動車部と言えど整備している物は戦車………

 

それも5両も有り、たった4人で整備するのは厳しかった。

 

「でも、会長の命令だし………出来なかったら何言われるか」

 

「ああ~、今夜と明日は徹夜かな~………」

 

ナカジマがそう返すと、スズキが愚痴る様に呟く。

 

するとそこで、戦車格納庫の出入り口がノックされた。

 

「? 誰だろう? こんな夜遅くに?」

 

「ハ~イ」

 

ホシノが夜分の訪問者に驚いていると、ツチヤが扉を開ける。

 

「ど~も、夜分遅くにスイマセ~ン」

 

「戦車整備の責任者は居るかね?」

 

そこには、作業着に身を包んだ2人の男性が居た。

 

作業着には大洗国際男子校の校章が刻まれており、1人はメガネを掛けて帽子を被っている。

 

「え? えっと………ちょっと待って下さい。ナカジマ~、ちょっと来てくれる~」

 

「? 何~?」

 

ホシノは戸惑いながらもナカジマを呼び、呼ばれたナカジマが2人の男の前に立つ。

 

「君が戦車整備の責任者か?」

 

「貴方は?」

 

「失礼、申し遅れた。私は県立大洗国際男子高校で整備部の部長をしている『真田 敏郎(さなだ としろう)』だ」

 

「同じく、副部長の『志波 藤兵衛(しば とうべえ)』ッス!」

 

ナカジマに尋ねられて、作業着姿の眉毛が薄いので若干強面に見える男………『真田 敏郎』と、同じく作業着姿でメガネを掛けて帽子を被っている男………『志波 藤兵衛』が自己紹介をする。

 

「神大生徒会長の命令で、君達の応援に来た」

 

「たった4人だけじゃ辛いでしょう? 人手なら用意して来たんで、好きな様に使って下さい!!」

 

「「「「「「「「「「オースッ!!」」」」」」」」」」

 

藤兵衛がそう言うと、2人の背後から100名程の整備員と言った姿の男子達が姿を現す。

 

「うわぁっ! 凄い!!」

 

「助かるよ! ありがとう!!」

 

その姿を見て、ツチヤとナカジマが歓声を挙げる。

 

「あ、でも、資材が………」

 

「大丈夫だ。『こんなこともあろうかと』、神大閣下に頼んでおいた」

 

と、ナカジマが思い出した様にそう呟くと、整備員の後ろに、資材を満載したトラックが現れる。

 

「資材面等については、神大コーポレーションが全面的にバックアップしてくれる。必要な物を好きなだけ言ってくれ」

 

「………至れり尽くせりだね」

 

用意周到な敏郎に、ナカジマは思わず苦笑いした。

 

「では、全員早速取り掛かってくれ」

 

「「「「「「「「「「ヘイ、部長!!」」」」」」」」」」

 

敏郎にそう言われると、整備部のメンバー達は戦車格納庫へと入って行き、ボロボロの戦車達の整備を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、翌日………

 

この日、嵐一郎は朝から歩兵道の授業を開始。

 

歩兵道受講者全員が、特大教室へと集められた。

 

「本日は歩兵道に於いて重要な要素………『兵種』についての説明を行う」

 

嵐一郎がそう言うと、教室のカーテンが閉められ、一同が向かっている黒板の方向にスクリーンが展開。

 

そして一同の背後から、映写機による投影が開始される。

 

最初に映し出されたのは、双眼鏡を目に当てて遠方を見ている軽装備の歩兵の周りに集まっている、同じく軽装備の歩兵達の姿が映し出された。

 

「先ずは『偵察兵』だ。その名の示す通り、敵の動きを偵察する斥候を主な任務とする兵種だ。また、軽装備ならではの機動力を活かせば、十分に他の兵種の兵とも渡り合える」

 

嵐一郎がそう言うと、映像が廃村と思われる場所で機動力を活かして敵を攻撃している偵察兵達の姿に切り替わる。

 

「だが、軽装備故に装甲戦闘車両等の装甲目標に対しては無力と言わざるを得ない。主な武装は散弾銃や軽機関銃などだ」

 

そこで再びスクリーンの映像が切り替わり、60mmバズーカを構えている兵士の姿が映し出される。

 

「次は『対戦車兵』だ。コレもその名の示す通り、対戦車戦闘を専門とした兵種だ。攻撃力の高さとある程度の機動力を持つので、対戦車戦闘では中心となる存在だ」

 

映像が切り替わり、パンツァーファウストで敵戦車を撃破した対戦車兵の姿が映し出される。

 

「但し、歩兵に対する迎撃能力は低い為、敵の歩兵に肉薄されると弱い。主な武装は対戦車ロケット擲弾や無反動砲だ」

 

またも映像が切り替わり、塹壕の中に設置された榴弾砲を撃っている兵士達の姿が映し出される。

 

「続いては『砲兵』だ。火砲を使用し、味方歩兵の支援や敵戦車の撃破を務める兵種だ。その火力は全兵種の中で最高を誇る」

 

映像が、対戦車砲で敵戦車を撃破した砲兵達の姿に切り替わる。

 

「しかし、武器の特性上、機動力は皆無だ。対戦車兵以上に肉薄されると何も出来なくなる。主な武装は野戦砲全般に対戦車砲だ」

 

そこで映像が切り替わり、スコップを片手に地雷を埋めようとしている兵士が映し出される。

 

「『工兵』だ。トラップの設置や、戦車の移動を補助する工事、陣地や塹壕の構成等を行う特殊な兵種だ。搦め手の戦法を得意とし、一見地味だが、戦場では縁の下の力持ちとなる存在だ」

 

映像が変わり、戦車を渡河させる為に工作車を操っている工兵の姿の写真が現れる。

 

「弱点は直接戦闘能力に乏しい事だ。主な武装は火炎放射器、対戦車用を含めた地雷や爆薬全般だ」

 

またまた映像が切り替わり、全身に草木や小枝を張り付けて森林地帯に同化し、狙撃銃を構えている兵士の写真が映し出される。

 

「『狙撃兵』。これもまたその名の通り、狙撃を専門とする兵種だ。息を潜めて敵を狙い、確実に倒す、戦場の殺し屋だ。更に対戦車ライフルを使えば戦車にもある程度打撃を与える事が出来る」

 

嵐一郎の言葉で映像が切り替わり、対戦車ライフルで戦車の転輪を破壊している狙撃兵の姿が映し出される。

 

「されど、隠密性が重視される為、一度発見されると偵察兵より脆くなってしまう為、注意が必要だ。主な武装は狙撃銃、対戦車ライフルだ」

 

そして次に映し出されたのは、銃剣を装着した突撃銃を持って、塹壕から飛び出して行こうとしている兵士だった。

 

「最後に『突撃兵』だ。コレは歩兵の主となる兵種だ。火砲を除いた他の兵種のあらゆる武器を使える為、幅広い戦術が展開出来るのが魅力だ」

 

映像が切り替わり、擲弾発射器で擲弾を敵兵の中へと撃ち込む突撃兵の姿が映し出される。

 

「が、当然の事だが、人間1人が持ち運べる武器の量は限られている。上手く立ち回らない事には器用貧乏になり易い。尚、拳銃、投擲武器、ナイフ、軍刀と言った近接戦闘用装備は、共通装備として全兵種が装備出来る」

 

そこで映写機が止まり、スクリーンが閉じると、カーテンが開いて特大教室内が明るくなる。

 

「以上が歩兵道に於ける兵種と主な役割だ。一応希望は取るが、どの兵種にするかは、本日の武器訓練の結果を見て、最終的に私が適性を見て決める」

 

嵐一郎がそう言うと、歩兵道受講者達は互いに顔を見合わせる。

 

「では、早速武器訓練に移る! 全員演習場まで駆け足ぃっ!!」

 

だが、続いて嵐一郎がそう言うと、一同は一斉に立ち上がり、我先にと演習場を目指したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、武器訓練が終わり………

 

其々の希望と、嵐一郎が適性を照らし合わせた結果………

 

偵察兵:大空 楓、銅 秀人、蛇野 大詔、葉隠 小太郎、蹄 磐渡、ジェームズ・モンロー、竹中 清十郎、小金井 逞巳。

 

対戦車兵:石上 地市、東郷 武志、狗魁 重音、炎苑 光照、江戸鮫 海音。

 

砲兵:本多 明夫、鶏越 鷺澪、塔ヶ崎 誠也。

 

工兵:神居 十河、水谷 灰史、柳沢 勇武。

 

狙撃兵:浅間 陣、宮藤 飛彗。

 

突撃兵:舩坂 弘樹、綿貫 了平、神大 迫信、栗林 熾龍、司馬 俊、黒岩 大河、疾河 竜真、桑原 正義、日暮 豹詑。

 

………と言う配置になった。

 

明日にはいよいよ戦車道側も教官が到着し、合同練習が開始される日も近づいて来ている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




復帰の最初の新話投稿をさせていただきました。

今回は弘樹達とみほ達の交流と、歩兵道に置ける要素である兵種の説明をさせていただきました。

みほ達との交流は、原作での最初の御飯会に弘樹達を加えた感じです。
まあ、この作品はラブコメでもありますので、所謂フラグ要素的なイベントだと思って下さい(爆)

そして、兵種についてですが………
歩兵道での歩兵は、使う武器によって役割が分かれているって設定です。
某シミレーションRPGや某FPSなんかを参考に考えました。
一見すると突撃兵が万能に思えますが、作中の教官の言葉通り、上手く立ち回らないと器用貧乏に成り易い兵種でもあります。

それで、お知らせなんですが………
復帰早々で申し訳ないのですが、リアルの事情でまた暫く更新が出来なくなります。
パソコンに全く触れない状態になるので、感想の返信も行えなくなるかもしれません。
具体的には、8月22日から9月11日まで間です。

復帰早々の休止宣言で誠に申し訳ないのですが、コレまでで大分休んでしまっていたので、『この作品は続けますよ』と言うのと、『完結まで書き上げます』という決意表明をする意味でも、今回の話を更新させていただきました。
読書の皆様には度々ご迷惑をお掛けして誠に申し訳ありません。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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