ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース 作:宇宙刑事ブルーノア
『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』
第50話『第3回戦です!』
みほが心の師匠と呼ぶ、鉱関高等学園の『金剛崎 堅固』の所属する鉱関機甲部隊が………
本年度より戦車道・歩兵道に参加して来た全くの無名校………
『パシフィック高校』の『パシフィック機甲部隊』の前に敗れ去った………
深いショックを受けたみほは、続く大洗機甲部隊と地走機甲部隊との試合で、勝ち進んでパシフィック機甲部隊と戦い………
堅固達の仇を討とうとして、無茶な指示を出そうとしてしまう。
だが、それを止めたのは他ならぬ弘樹であった。
弘樹の言葉で、何故自分が再び戦車道を始めたのかを思い出すみほ。
我に返ったみほは、大洗機甲部隊の皆へと謝罪し、改めて指示を下す。
果たして、大洗機甲部隊は3回戦を勝ち抜けるのだろうか?
戦車道・歩兵道全国大会第3回戦、大洗機甲部隊VS地走機甲部隊の試合………
試合会場・湿地地帯………
試合会場の所々に点在している沼に注意しながら、各戦車と随伴分隊ごとに分かれ、周囲を警戒しながらゆっくりと進軍している大洗機甲部隊。
『さあ、試合開始から既に10数分。大洗機甲部隊は慎重な進軍を見せています』
『相手は待ち伏せ作戦に特化した地走ですからね。余り大胆が行動は取れないでしょう』
その様子を、ヒートマン佐々木とDJ田中がそう実況する。
「こちらとらさん分隊の舩坂。現在のところ異常無し。敵機甲部隊の姿は見受けられず」
と、先頭を行って居たあんこうチームととらさん分隊の中で、弘樹が通信機でそう報告を挙げる。
『こちらツルさん分隊。コチラでも敵は発見出来ていない』
『ペンギンさん分隊、同じくや』
『ワニさん分隊、以下同文』
『ハムスターさん分隊、勇武です。コチラでも敵影は確認出来ていません』
続いて、迫信、大河、磐渡、勇武の声が通信回線に響く。
『恐れを生したかあぁっ!? 地走機甲部隊っ!!』
『いや、既に待ち伏せの態勢に入っていると考えるのが自然だろう』
初の試合で更にテンションが上がって居る月人が叫ぶが、エースが冷静にそう返す。
「うむ………西住総隊長。敵は既に待ち伏せの態勢に入っているかと思われます」
『分かりました。全軍停止して下さい。周囲を警戒しつつこの場に待機。新しく作戦を考えますので、少し待って下さい』
弘樹がみほへそう推測を挙げると、みほは一旦進軍を停止させ、新たに作戦を練り始める。
「コソコソ隠れおって………姑息な連中だ」
「座布団1枚」
「桃ちゃん、待ち伏せだって立派な戦術だよ」
「って言うか、私達もグロリアーナ&ブリティッシュとの戦いで待ち伏せしたよね」
38tの中で、桃、杏、蛍、柚子がそんな事を言い合う。
「ふん………」
『オイ貴様ぁっ!! 今また私の事を馬鹿にしたろっ!!』
「…………」
『何とか言えぇっ!!』
そしてそのまま桃は、熾龍と何時もの遣り取りに発展する。
「HAHAHAHAHA! ピーチとジェネラル・栗林のディセンダントは仲が良いネー!」
「仲が良いのか………アレは?」
そんな桃と熾龍の様子を見て、ジャクソンがそんな感想を口にし、シャッコーがツッコミを入れる。
「イエス! ジャパンの諺にありマース! ファイトするほどフレンドリーッ!」
「そういうものか………」
得意げに語るジャクソンに、シャッコーは首を傾げながらそう返す。
「ええいっ! 早く小生を戦わせろぉっ!! このままでは我が世の春は遠いいいいいいぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーっ!!」
月人が待ち切れぬかの様に、刀を抜いて振り回しながらそう叫ぶ。
「うおっ!? アブネッ!?」
「分隊長! 分かりましたから落ち着いて下さいっ!!」
周りに居る分隊員達には堪ったものではない。
「う~~ん………」
そんな外の喧騒も耳に入らないくらい、みほは地図を見ながら作戦を真剣に考えている。
「西住殿、如何ですか?」
とそこで、優花里が試合会場の地図を覗き込みながらそう尋ねて来る。
「うん………多分、敵が待ち伏せしているとしたら………此処だと思う」
するとみほは、地図の一点を指差してそう言う。
「敵の戦車は、Ⅱ号自走重歩兵砲が4台。セモベンテ da 90/53が3台。それにⅣ号戦車/70(A)が3台ですね」
試合前の挨拶で、地走機甲部隊の戦車を確認していた優花里がそう告げる。
「やっぱり自走砲中心なだけに、火力は高いね………」
90mmの口径を持つセモベンテ da 90/53と、15cmの砲兵砲のⅡ号自走重歩兵砲、長砲身の75mm砲を持つラングを警戒するみほ。
「ヒトラーはクルスクの戦いの報告を聞き、突撃砲は敵戦車に包囲されない限り、当時の主力戦車であったⅣ号戦車よりも優れた戦闘力を持つと確信したそうだからね」
そこで迫信は、そんな事を呟く。
「やっぱり、如何にか機動戦に持ち込みたいところだな………」
十河もそう言い、頭を捻る。
「………西住総隊長。意見具申、宜しいでしょうか?」
とそこで、弘樹が何か考えがあるらしく、みほにそう問う。
「ハイ、どうぞ」
「ハッ!………サンダース戦で使ったあの手に一工夫加えるのですが………」
みほが許可すると、弘樹は自分の考えを発表する。
「………と言うものです。如何でしょうか?」
「成程! 考えましたね!」
「凄ーい!」
弘樹の案に、優花里と沙織がそう声を挙げる。
「確かに、良い手です。採用します」
「異論は無いね」
みほも弘樹の意見を採用し、迫信もそう言う。
「では、コレより『偽物作戦』、略して『ニ号作戦』を開始します!」
そして、最後にみほがそう号令を掛けると、大洗機甲部隊の面々は一斉に作戦準備に掛かるのだった。
『おっと! 大洗機甲部隊、何かを始めました』
『コレまでも様々な作戦を展開させている西住 みほ総隊長ですからね。この作戦にも注目ですよ』
一方、その頃………
地走機甲部隊サイド………
「ゲコゲコゲコ………大洗機甲部隊め………来るなら来てみろ………」
「此方のキルゾーンに踏み込んだ瞬間が、お前達の最期よ」
背丈の高い草の中で伏せている地走歩兵部隊の総隊長である『轢田 蛙(ひきた かえる)』と、丘を使ってハルダウンさせているフラッグ車のⅣ号戦車/70(A)の中で、戦車部隊隊長・地走機甲部隊総隊長である『処歩 美海(ところふ みみ)』がそう言い合う。
地走機甲部隊は戦車部隊も歩兵部隊も完全にカモフラージュをして、待ち伏せの態勢を続けている。
しかし、大洗機甲部隊は中々姿を見せない………
「来ないですね、隊長」
「慌てるな。待ち伏せは痺れを切らしたら負けだ」
偵察兵の蒼代(あおだい)がそう言うと、蛙はそう言って待つ様に言う。
「待ち伏せと言うのは只管辛抱強く………そして我慢を………」
「! 隊長っ! 前方から大洗機甲部隊の分隊が来ますっ!!」
とそこで、もう1人の偵察兵である治虫(おさむし)がそう報告を挙げる。
「何っ!?」
すぐに少し身を起こし、前方を確認する蛙。
報告通りに、大洗機甲部隊の分隊………マンボウさん分隊に守られたカモさんチームのルノーB1bisが、存在に気づいていないのか、地走機甲部隊が待ち伏せしているポイントへと無防備に近づいて来ている。
そして、ルノーB1bisには、フラッグ車を示す旗が立っている。
「! 敵のフラッグ車だ! コレはラッキーッ!!」
「よし! 勝ちは貰ったっ!!」
蛙と美海は、いきなりフラッグ車が単独で現れた事で、勝利を確信する。
マンボウさん分隊とルノーB1bisは、そのまま地走機甲部隊のキルゾーンへと踏み込んで来る。
「今だ! びっくり箱作戦、開始ぃっ!!」
蛙がそう叫ぶと、地走歩兵部隊の面々が一斉に起き上がり、地走戦車部隊も一斉に砲撃を始める。
「! 敵襲ーっ!!」
「待ち伏せだぁっ!!」
「うわぁっ!? ヤバいぞぉっ!!」
攻撃を受けたマンボウさん分隊の面々が慌てる様子を見せる。
「小癪なああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!」
とそこで、月人がUD M42で9mm弾を辺りにばら撒く様に撃ちまくる。
「伏せろっ!!」
しかし、蛙がそう指示を出すと、地走歩兵部隊の面々はまたも一斉に伏せ、その姿は湿地地帯の背丈の高い草が覆い隠す。
そしてその草の中を動き回り、見えない様に移動してはチマチマと攻撃を続ける地走歩兵部隊。
「オ・ノーレェェェェェェェッ!!」
「ちょっ! 分隊長っ! 落ち着いて下さいっ!!」
そんな小癪な戦い方をする地走機甲部隊にイラだった様に更に弾をばら撒く月人と、そんな月人を落ち着かせようとするマンボウさん分隊員。
「撃てぇっ!!」
美海がそう号令を下すと、彼女の乗るⅣ号戦車/70(A)の砲が火を噴き、他のⅣ号戦車/70(A)と更にⅡ号自走重歩兵砲達にセモベンテ da 90/53達も砲撃をルノーB1bis目掛けて撃ち込む。
至近弾が次々に着弾し、ルノーB1bisは慌てた様に車体を前後させる。
と、1発の砲弾がルノーB1bisの極めて至近距離で爆発!
爆煙と土煙で、ルノーB1bisの姿が見えなくなった。
「やったぁっ!!」
仕留めたと思い、歓声を挙げる美海。
しかし、段々と爆煙と土煙が治まって来ると………
その中から、少し黒煙を上げているルノーB1bisの姿が露わになる。
「あ! カス当たりぃっ!?」
致命傷を与えられなかった事に軽くショックを受ける美海。
だが、ルノーB1bisは旋回を始め、地走機甲部隊のキルゾーンからの離脱を計る。
「撤退っ! 撤退だぁーっ!!」
「逃げろぉーっ!!」
それに合わせて、マンボウさん分隊の面々も撤退を始める。
「あ! 逃げるぞっ!!」
「逃がすな! 追え! 追えーっ!!」
撤退を始めたルノーB1bisとマンボウさん分隊を追撃する様に命じる蛙。
「ちょっ!? 蛙、良いの!?」
「構うもんか! 相手のフラッグ車は瀕死だ! もう待ち伏せに徹する必要なんて無い! 一気に畳み掛けるんだ!」
「それもそうね………よーし! 全部隊、追撃ーっ!!」
蛙のそう言う意見を聞いた美海は、待ち伏せに徹するのを止めて、地走機甲部隊・全部隊で、ルノーB1bisとマンボウさん分隊を追撃する様に命じた。
「「「「「「「「「「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」
雄叫びを挙げて背丈の高い草叢の中から飛び出してルノーB1bisとマンボウさん分隊を追う歩兵部隊を中心に、地走機甲部隊は追撃戦へと移る。
「奴さん、罠に掛かったみたいだぜ」
「よっしゃあっ! このまま引き付けつつ誘い出すぜ!」
そんな地走機甲部隊の様子を見ながら、圭一郎と弦一朗がそう言い合う。
「しかし、中々良い作戦じゃないか………今度の映画の素材に使えそうだな」
そして鋼賀が、『妙に車体や砲塔がガタガタと揺れているルノーB1bis』を見ながら、そんな事を呟くのだった。
『おっとーっ! 地走機甲部隊、待ち伏せを止めて追撃戦に入ったぞーっ!!』
『あ~と、やってしまいましたね』
待ち伏せを止めて追撃戦へと突入した地走機甲部隊の様子を見て、ヒートマン佐々木とDJ田中はそんな実況をする。
ルノーB1bisとマンボウさん分隊は、追撃して来る地走機甲部隊と、付かず離れずの距離を維持しながら、何処かへと誘導して行く。
と、やがて黒煙を上げていたルノーB1bisが、ガクリと力が抜けた様に静止する。
「! フラッグ車が停まりましたっ!!」
「力尽きたか、それとも観念したか………まあ良い。美海! 引導を渡してやれっ!!」
「OK!」
蛙がそう言うと、美海の乗るⅣ号戦車/70(A)が、ルノーB1bisへと向けられる。
「今度こそ貰ったわぁっ! 撃てぇっ!!」
美海の号令で、Ⅳ号戦車/70(A)の主砲が火を噴く。
………その瞬間!!
「脱出っ!!」
「うおおおっ!!」
ルノーB1bisのハッチが開いて、『大洗歩兵部隊の隊員』が飛び出した。
「!? えっ!?」
「何ぃっ!?」
美海と蛙がそれに驚いた瞬間に、Ⅳ号戦車/70(A)が放った砲弾がルノーB1bisに命中!
すると、ルノーB1bis………の形をしたベニヤ板が吹き飛び、その中に在った『くろがね四起』が爆発と共に炎上した!
「!? 偽物っ!?」
「今だ! 全部隊! 攻撃開始ぃーっ!!」
と、美海の声が挙がった次の瞬間に、迫信のそう言う叫び声が聞こえたかと思うと………
地走機甲部隊を包囲する様に、大洗機甲部隊が展開した。
「!? 大洗っ!?」
「馬鹿なっ!? 逆に嵌められたと言うのか!?」
「HAHAHAHAHA! 今更気づいても、アフターカーニバルネッ!!」
美海と蛙の驚きの声が挙がった瞬間、BARを薙ぎ払う様に乱射するジャクソン。
「「「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」」」」」
一気に5人の歩兵が致命傷を受けたと判断され、戦死とされる。
「喰らえっ!!」
更に、地市が1両のⅡ号自走重歩兵砲に向かってバズーカを発射する。
戦車と比べ、装甲の薄い自走砲では攻撃に耐える事が出来ず、バズーカのロケット弾が命中したⅡ号自走重歩兵砲からは白旗が上がる。
「このぉっ! 調子に乗るなぁっ!!」
とそこで、1両のセモベンテ da 90/53が、包囲している大洗機甲部隊の一部に向かって砲撃を見舞う。
「うわぁっ!?」
「姿勢を低くしろぉっ!!」
しかし、直撃弾は無く、爆風の殺傷範囲もギリギリで外れていた為、何人かの負傷判定は出たが、戦死判定者は出なかった。
「クウッ! 次弾装填っ!!」
すぐに次弾を装填させ、再度砲撃を行おうとするセモベンテ da 90/53だったが………
「やらせないよぉーっ!!」
聖子のそう言う叫びと共に、サンショウウオさんチームのクロムウェルが、セモベンテ da 90/53に向かって突撃する!
「先にアンタから片づけてやるわ!」
しかし、セモベンテ da 90/53はすぐさまクロムウェルへと狙いを変え、砲弾を放つ。
「右旋回っ!!」
「おうっ!!」
だが、唯の抜群の操縦テクニックにより、クロムウェルは命中直前で砲弾を回避。
「!? かわしたっ!? あのタイミングでっ!?」
外れるとは思っていなかったセモベンテ da 90/53の車長は驚きの声を挙げる。
「このまま側面に回り込んで密着っ!!」
「あいよっ!!」
その間に聖子は更に指示を出し、クロムウェルはそのままセモベンテ da 90/53の側面に密着する様に接触する。
「キャアッ!? ま、マズイッ!!………」
「優ちゃん! 撃ってっ!!」
「ハイッ!」
セモベンテ da 90/53の車長の声が挙がった瞬間にクロムウェルは零距離で砲撃!!
派手に爆煙が上がったかと思うと、セモベンテ da 90/53から白旗が上がる。
「やったぁっ! 撃破だよっ!!」
「聖子ちゃん! 油断しないで!!」
「すぐ次の目標に!」
歓声を挙げる聖子に、伊代と明菜がそう言い放つのだった。
「サンショウウウオさんチームがやったぞぉっ!!」
「俺達も負けてらんねえぜ!!」
「神大歩兵隊長! 突撃許可を下さいっ!!」
と、そのサンショウウオさんチームの活躍に味方の士気が上がり、迫信に突撃の許可を求め始める。
「よし、良いだろう。歩兵部隊突撃! 砲兵部隊並びに狙撃部隊は援護を続けてくれたまえ!」
「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」
迫信が許可すると、大洗歩兵部隊の面々は、砲兵部隊と狙撃部隊を除いて、一斉に地走機甲部隊に向かって突撃して行った!
「我が世に春が来たああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!」
何より突撃命令を心待ちにしていた月人。
命令が下されるや否や、銃を捨てて刀を抜き、脇目も振らずに地走機甲部隊の中心へと突っ込んだ!
「な、何だコイツはぁっ!?」
「代々武を受け持って来た我が絃賀一門の力を貴様にも教えてやる!!」
驚いていた地走歩兵部隊の隊員を、一刀の元に斬り捨てる!
「小生は! 絶好調であるうううううううぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーーっ!!」
そのまま叫び声を挙げながら、次々に地走歩兵部隊の隊員達を斬り捨てて行く!
「ヒイイッ!? 化け物だぁっ!!」
「ハハハハハハハッ! お主等の生体反応のデータを取りつつ、神の世界への引導を渡してやる!!」
「分隊長、活き活きとしてるな………」
怯える者も容赦無く斬り捨てる月人の姿に、味方からも呆れた様な声が挙がるのだった。
「ライダーブレエエエエエェェェェェェーーーーーーイクッ!!」
「おうわぁっ!?」
叫びと共に、ウィリーで持ち上げた陸王の前輪で、地走歩兵部隊の隊員を跳ね飛ばす弦一朗。
「このぉっ!」
「おっとぉっ! 危ねえっ!!」
別の地走歩兵部隊の隊員が手榴弾を投げたが、すぐにその殺傷範囲外へと脱出する。
「野郎っ! だったらコイツで!!」
すると今度は、10.5cm leFH 18に着いて居た砲兵達が、榴弾を放とうと10.5cm leFH 18の砲身を水平にする。
だが次の瞬間に、砲弾が飛んで来て、そのままバラバラになった10.5cm leFH 18諸共吹き飛んで、戦死判定を受ける。
「あ、当たったよ!」
「良くやったわ、パゾ美!」
その砲弾を放ったカモさんチームのルノーB1bisの車体の47mm戦車砲の砲手であるパゾ美が自分でも驚いていると、みどり子がそう褒める。
「オノレェ! 時代遅れの重戦車めっ!!」
Ⅱ号自走重歩兵砲がそんなカモさんリームのルノーB1bisのに向かって成形炸薬弾を放とうとするが………
突如、バギャッ!!と言う金属を引っぺがす様な音が響いたかと思うと、戦闘室内が明るくなった。
「へっ?………」
何が起こったのかと車長が後ろを振り返ると、そこには………
「…………」
レギュレーションを守る為に取り付けた装甲板を引っぺがし、乗員達を見据えているシャッコーの姿が在った。
「………降りろ」
「………ハイ」
シャッコーにそう言われ、Ⅱ号自走重歩兵砲の乗員達が白旗を振って車両を放棄する。
「…………」
シャッコーは無人となったⅡ号自走重歩兵砲の車内に手榴弾を放り込み、容赦無く撃破する。
「また1両やられたっ!!」
「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」
と、その光景を見ていたⅣ号戦車/70(A)の美海がそう声を挙げた瞬間、エースの投げたガモン手榴弾が至近距離で爆発し、車体が揺れる。
「キャアッ!?………て、撤退よ、撤退!」
「総隊長! ですが、味方が………」
「馬鹿! フラッグ車がやられたら終わりなのよ! 此処は一旦引くのよ!!」
操縦士がそう声を挙げるが、美海はそう叫んで掻き消す。
「美海! 左側の包囲が緩い! あそこから脱出だぁっ!!」
更に、近づいてきた蛙が、大洗機甲部隊が展開している包囲網の緩い所を発見し、そう報告する。
「よし! 突撃ぃーっ!!」
美海は即座にそう指示を出し、Ⅳ号戦車/70(A)は包囲網の緩い所に向かって突撃する。
「フラッグ車に続けぇーっ!!」
蛙と僅かな地走歩兵部隊員達もそれに続く。
「! 敵のフラッグ車!」
「チャンスだ! アタッークッ!!」
丁度その場所に居合わせたアヒルさんチームの八九式が砲撃するが、57mm砲ではⅣ号戦車/70(A)の正面上部装甲を破れず、砲弾は弾かれて明後日の方向へ飛んで行った。
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!」
「俺は絶対に生き延びるんだぁーっ!!」
そのまま美海の乗るフラッグ車のⅣ号戦車/70(A)と、蛙が率いている僅かな歩兵部隊は、大洗機甲部隊の包囲網から脱出。
残る仲間達には脇目も振らず、只管に逃げて行く。
「よ~し、上手く行ったぞ」
「後は西住総隊長と舩坂くんに任せよう………」
しかしその様子を見て、鋼賀と拳龍がそんな事を言うのだった。
『おっとー! 此処で地走機甲部隊のフラッグ車が大洗機甲部隊の包囲網より脱出!』
『上手く行った様に見えますけど、如何ですかねえ?』
大洗機甲部隊の包囲網から脱出した美海の乗るフラッグ車のⅣ号戦車/70(A)と、蛙が率いている僅かな歩兵部隊は………
ドンドンと大洗機甲部隊から離れて行き、小さな沼が彼方此方に点在する場所まで逃げ果せる。
「停止ーっ!!」
「ハア、ハア………此処まで来れば………もう安心だ」
やがて美海がⅣ号戦車/70(A)を停止させると、蛙も立ち止まって他の歩兵達と一緒に呼吸を整えようとする。
だが、その時………
彼女達と彼等は気づいていなかった………
背後付近の近くに在る沼の水面に………
パイプの様な物が付き出している事に………
そして………
そのパイプが動き始める。
「………うん?」
その異変に最初に気づいたのは蛙。
沼の中を動くパイプは、確実に自分達の方へと迫って来ている。
「何だぁ?」
しかし、それが何か分からず呆けていた次の瞬間!!
ザバーッ!と沼の水が持ち上がる様に溢れ、沼の中より………
防水加工を施したあんこうチームのⅣ号戦車が現れた!!
「!? 何ぃーっ!?」
「せ、戦車が水の中から出て来たーっ!?」
予想外過ぎるⅣ号の登場に、蛙達は仰天する!
だが、元々Ⅳ号のD型の一部は、潜水出来る様に改造された車両が存在する。
現在大洗のⅣ号は長砲身化などF2型の仕様になっているが元はD型。
僅かな改造で潜水は可能だったのである。
改造は工兵達の手で行われ、改造に必要だった部品などは、敏郎が事前に『こんなこともあろうかと』取り寄せていたのだ。
と、Ⅳ号が空砲を発砲し、砲口に付けていたゴムキャップを吹き飛ばす!
「優花里さん! 次弾装填急いでっ!!」
「了解でありますっ!!」
空砲用の薬莢を排出すると、優花里が即座に徹甲弾を装填する。
「! 信地旋回! 急いでぇっ!!」
やっとの事で我に返った美海がそう指示を出すと、Ⅳ号戦車/70(A)が慌てて信地旋回を開始する。
「! このぉっ! 潜拉(もぐら)! パンツァーファウストだっ!!」
「おうっ!」
一瞬遅れて我に返った蛙も、生き延びていた歩兵部隊の中に居た唯一の対戦車兵に、パンツァーファウストを撃つ様に指示する。
潜拉(もぐら)と呼ばれた対戦車兵が、パンツァーファウストをⅣ号に向かって構える。
「喰らえっ!!」
そしてイザ発射しようとした、その瞬間!!
ドコンッ!と言う音が鳴り響いたかと思うと、潜拉(もぐら)と呼ばれた対戦車兵が構えていたパンツァーファウストの弾頭が撃ち抜かれた!
「「「「「あっ!?………」」」」」
蛙を始めとした地走歩兵部隊の生き残りが間抜けた声を挙げた瞬間、パンツァーファウストの弾頭が爆発!
「「「「「ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」」」」」
その爆発と破片によって、蛙達は全員戦死判定を受けた。
更にもう1回ドコンッ!と言う音が鳴り響いたかと思うと、今度はⅣ号戦車/70(A)の履帯が千切れた!
「!? 履帯がっ!?」
「撃てぇっ!!」
美海の驚きの声が挙がった瞬間にⅣ号が発砲!
放たれた徹甲弾が、狙いを過たずにⅣ号戦車/70(A)の後部へと命中!!
爆発が起こって黒煙が上がったかと思うと、一瞬間が有って、Ⅳ号戦車/70(A)から白旗が上がった。
『地走機甲部隊フラッグ車、走行不能! よって、大洗機甲部隊の勝利!!』
「やりました!」
「イエーイ!」
「やったー!」
「うん………」
香音のアナウンスに、華と優花里がハイタッチを交わし、沙織が麻子に抱き付く。
「…………」
そしてみほは、ハッチを開けてキューポラから姿を晒すと、湿地地帯の一角を見やる。
そこには、地面に置かれた九七式自動砲の傍に佇む弘樹の姿が在った。
先程、パンツァーファウストの弾頭を撃ち抜き、Ⅳ号戦車/70(A)の履帯を破壊したのは、弘樹がこの武器を使った様である。
「…………」
「うふふ」
弘樹がみほに向かってヤマト式敬礼をすると、みほはニッコリと微笑んだ。
こうして………
大洗機甲部隊は公式戦3回戦を勝ち抜き、4回戦へと駒を進めた。
相手は、あの鉱関機甲部隊を下した………
パシフィック機甲部隊である。
つづく
新話、投稿させていただきました。
公式戦3回戦。
地走との戦いです。
アンツィオの代わりに出オチになってくれると言ってました様に、戦闘シーンこそ書きましたが、今回でもう決着となります。
もう次のパシフィックとの戦いがメインとなっていますからね。
今回のは前哨戦だと思って下さい。
され、パシフィック戦の前の幕間ですが………
いよいよOVAのエピソードを入れようと思います。
ズバリ、『ウォーター・ウォーです!』を。
紳士の方はお楽しみに(笑)
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。