ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第60話『大苦戦です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第60話『大苦戦です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道・歩兵道全国大会、第4回戦………

 

大洗機甲部隊VSパシフィック機甲部隊の試合が開始された。

 

パシフィック機甲部隊が得意な水辺での戦いを避ける為に、廃墟の島を占拠しようとする大洗機甲部隊。

 

しかし、それを読んでいたパシフィック機甲部隊は、既に廃墟の島を占領し、歩兵部隊を展開させていた。

 

上陸した直後を襲われ、大損害を被る大洗歩兵部隊。

 

更に、海上を進んでいた大洗戦車チームにも、パシフィックが支援要請で投入したガトー級潜水艦・ガトーとパシフィック戦車部隊に襲われる。

 

止むを得ず、大洗歩兵部隊は撤退を開始するのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合会場・諸島海域………

 

海上を進むみほ達の大洗戦車チームに、ガトーと浮沈特火点、そしてパシフィック戦車部隊からの砲撃が容赦無く襲い掛かる。

 

大洗戦車部隊の周辺に、幾つも水柱が上がっては消え、上がっては消えて行く。

 

「敵の攻撃は苛烈です!」

 

「クッ! 波に揺られて照準が………」

 

優花里がそう声を挙げ、反撃を試みていた華も、Ⅳ号が荒れる波で揺さ振られている為、照準を付けられずに居た。

 

「! みぽりん! 歩兵部隊の皆が!」

 

「!?」

 

とそこで沙織がそう声を挙げ、みほがペリスコープで前方を見やると、廃墟の島の海岸から離れ、撤退を開始している大洗歩兵部隊の姿を確認する。

 

「如何やら持ち堪えられなかったみたいだな………」

 

「無理もありません。アレ程の銃火に晒されては………」

 

麻子がそう呟くと、優花里が仕方が無いと言う。

 

「………全車、速やかに歩兵部隊と合流して下さい。その後、一時撤退して態勢を立て直します」

 

そんな中で、みほは冷静にそう指示を下すのだった。

 

「急げーっ! 急いで戦車チームと合流するんだぁっ!!」

 

「撤退だーっ! 撤退ーっ!!」

 

そんな声を挙げながら、上陸用舟艇や水陸両用車で戦車チームとの合流を計る大洗歩兵部隊。

 

「取り敢えず、戦車と合流すれば一安心だな………」

 

と、先頭を行って居たシュビムワーゲンに乗って居た歩兵隊員の1人がそう声を挙げた瞬間………

 

「ザッバーンッ!!」

 

そう言う声が響き渡ったかと思うと、突如水中から潜水服型戦闘服を来たホージローが、まるでイルカの様に飛び出して来た!!

 

「「「「!?」」」」

 

「ホラ、プレゼントだっつーのっ!!」

 

驚くシュビムワーゲンに乗る歩兵隊員達を目掛けて、ホージローは防水加工されたマークⅡ手榴弾を投擲する。

 

「「「「! うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」」」」

 

手榴弾はシュビムワーゲンを爆発させ、乗って居た歩兵隊員全員を戦死判定させ、海に浮かばせた。

 

「!? アレは!?」

 

「ホージローさんだっ!!」

 

「クウッ!!」

 

その光景を見ていた正義と竜真が驚きの声を挙げ、ジェームズが九九式軽機関銃を発砲する。

 

「ザッパーンッ!!」

 

しかし、ホージローは海中へと姿を消し、銃弾は海面を少し爆ぜさせるだけに終わる。

 

「Oh! 逃がしマシタ!」

 

「構うな! 今は戦車チームと合流するんだっ!!」

 

ジェームズがそう声を挙げると、弘樹が今は戦車チームとの合流が優先だと呼び掛ける。

 

とそこで、戦車チームとの距離が詰まって来た為か、今まで戦車チームを優先して攻撃していたガトーと浮沈特火点、そしてパシフィック戦車部隊からの砲撃が、大洗歩兵部隊の方にも襲い掛かる。

 

「うわぁっ!?」

 

「うおっ!? アブネッ!?」

 

周辺で次々に水柱が上がり、それによって発生した波により、上陸用舟艇や水陸両用車が思う様に進まなくなる。

 

「クソォッ! 好き勝手にやりやがってぇっ!!」

 

やられてばかりではないと見せようとしたのか、大発に乗って居た重音が、バズーカを構えて身を乗り出す。

 

同乗していた他の対戦車兵も、同様にバズーカや噴進砲を構える。

 

「そこですわっ!!」

 

しかし、それを確認したセイレーンが乗るM24軽戦車が発砲。

 

「「「「「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」」」」」」」

 

「重音ーっ!!」

 

放たれた砲弾は大発を直撃。

 

大発は爆発炎上して沈没。

 

重音を始めとした歩兵隊員達が戦死判定となって波間に浮かぶ。

 

「貰ったぁっ!!」

 

「パシフィック歩兵の戦い方を見せてやるっ!」

 

更にそこで、先程水中から姿を見せたホージローと同様に、続々と水中から姿を現したパシフィック歩兵達が、次々と銃撃や手榴弾を見舞って来る!!

 

「チキショーッ! 陸から離れてもコレかよっ!!」

 

「もう駄目だーっ! 御終いだぁーっ!!」

 

地市が銃撃から身を隠しながらそう言い、了平が絶望の悲鳴を挙げる。

 

「また貴様か! いい加減にしろっ! この根性無しめっ!!」

 

そんな了平に向かって、日本兵モードとなっている弘樹がそう言い放つ。

 

「! 根性無しだと! 俺が根性無しだとぉっ!!」

 

すると了平は、何時もと違う雰囲気を見せる。

 

「? 了平?」

 

「トオッ!」

 

そんな了平の姿に楓が声を挙げた瞬間、了平は乗って居た大発から飛び出し、搭乗者全員が海へ落されて戦死判定を受け、無人となっていたシュビムワーゲンへ乗り移る。

 

そして、車内に残されていた梱包爆薬を見つけると、自分が持っていた手榴弾と弾薬を追加し、シュビムワーゲンのボンネットの上に固定した。

 

「オイ、何する気だ!?」

 

「漢・綿貫 了平の生き様! 篤と見やがれっ!!」

 

地市がそう言った瞬間、了平はシュビムワーゲンの速力を全開にし、パシフィック戦車部隊目掛けて突っ込んで行った!!

 

「了平っ!!」

 

「アイツ、神風をやる気か!?」

 

遠ざかって行く了平の姿を見て、楓と地市がそう言い合う。

 

「アラ? 歩兵が1人、水陸両用車で突っ込んで来るわ?」

 

と、その了平の姿を目撃したメロウがそう声を挙げる。

 

「!? ちょっ!? ボンネットに爆弾括り付けてるわよっ!?」

 

そこで、同じ様にその姿を目撃したローレライが、了平の乗るシュビムワーゲンのボンネットの上に梱包爆薬を中心とした大量の爆弾が括り付けられているのに気付く。

 

「か、神風っ!?」

 

「嘘っ!?」

 

「か、回避ーっ! 回避ーっ!!」

 

了平の命知らずな行動に恐れを為したパシフィック戦車部隊は、命令を待たずに其々の車両が勝手に回避行動を取り始める。

 

「ちょっ! 待ちなさいっ! 勝手な行動を取らないでっ!!」

 

「うおおおおおっ! アレがフラッグ車かぁっ!! 行くぜえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーっ!!」

 

セイレーンが慌てて指示を出そうとするが、そのセイレーンが乗るフラッグ車でもあるM24軽戦車目掛けて、了平の乗るシュビムワーゲンは突っ込んで行く。

 

「!?」

 

「総隊長! 危ないぃっ!!」

 

だがその間に、パシフィック戦車部隊のT-40の1両が割って入る。

 

了平の乗るシュビムワーゲンがそのT-40に激突した瞬間………

 

シュビムワーゲンはT-40ごと大爆発!

 

巨大な水柱が、雲を突かんばかりに立ち上った!!

 

「了平ええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーっ!!」

 

「了平………貴方にそれ程の勇気が有ったとは………」

 

「見事な散り様だったぞ………了平」

 

その光景を見ていた地市が叫び、楓は思わず目頭を押さえ、弘樹はヤマト式敬礼を送る。

 

「ああ………空が青いぜ………」

 

そしてその了平は、全身黒焦げのアフロヘアーとなった状態で波間を漂っていたかと思うと、ガクリと気絶して、戦死と判定された。

 

「彼の行動を無駄にするな! この隙に撤退するんだっ!!」

 

「皆さん! 付いて来て下さいっ!!」

 

そこで迫信がそう言い放つと、漸く合流した戦車チームの中でみほがそう言い、大洗機甲部隊は近くの海岸へと撤退して行く。

 

「総隊長! ご無事ですかっ!?」

 

「セイレーンッ! 大丈夫っ!?」

 

一方、パシフィック戦車部隊の方でも、水中に居たパシフィック歩兵達までもが集まり、セイレーンにそう呼び掛ける。

 

「え、ええ、何とか………彼女達が盾になってくれなければ危ないところでしたわ」

 

セイレーンはそう答えながら、撃破判定を受けて波間を漂っているT-40を見やる。

 

「オイ、総隊長! アイツ等逃げて行くぜ! 追い掛けるかっ!?」

 

とそこで、水中に隠れていたパシフィック歩兵部隊を回収に来たLVT(A)-4の上に乗って居たホージローが、撤退して行く大洗機甲部隊を指差しそう言う。

 

「いいえ、深追いの必要は有りませんわ。既にコチラは大損害を与えていますわ………例え大洗が再度仕掛けて来たとしても、返り討ちにすれば宜しい事ですわ」

 

「ハハハッ! 言えてるぜっ!!」

 

笑い声を挙げながら、セイレーンの言葉に同意するホージロー。

 

「…………」

 

と、別のLVT(A)-4の上に乗って居たカジキは、撤退して行く大洗機甲部隊の姿を睨む様な眼差しで見ていた。

 

(初手でこれ程までの一方的な展開………戦力の大半を失い、士気も低下するだろう………終わりだな、大洗………そして、舩坂 弘樹………)

 

その内心では、既に勝利を確信し始めている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廃墟の島の近くの小島の海岸………

 

「大分手酷くやられたな………」

 

大詔が、既に半分近くとなっている大洗歩兵部隊の面々と、大小に損傷を受けている上陸用舟艇や水陸両用車を見ながらそう呟く。

 

「戦車チームもアヒルさんチームが脱落か………」

 

「もう駄目だぁ~っ!! 御終いだぁ~っ!!」

 

ゾルダートも撃破されたアヒルさんチームの事を思いながらそう呟くと、毎度の如く絶望の悲鳴を挙げる桃。

 

「…………」

 

「ちょっ! 栗林先輩! あんなのでも一応味方ですからっ!!」

 

そんな桃の様子を見て、熾龍が無言で収束手榴弾を取り出したのを見て、逞巳が割りと酷い事を言いながら止める。

 

「西住総隊長。如何なさいますか?」

 

とそこで弘樹は、総隊長であるみほに指示を仰ぐ。

 

「やはり海上で戦っても、勝ち目は有りません。如何にかしてあの島に上陸して、陸上戦に持ち込まない事には………」

 

「けど、あの激しい攻撃を掻い潜って上陸を強行するのは危険だよ」

 

みほがそう答えると、それを聞いていた拳龍がそう言う。

 

「敵もそれを分かっているから、コチラを追撃せず、海上に留まっている様だな………」

 

「まあ、攻めて来られたら、数で劣るコッチに勝機は無いけどな………」

 

追撃を掛けて来ないパシフィック機甲部隊の様子を見ながらゾルダートがそう言うと、俊がそう呟く。

 

「攻めても勝機無し、守っても勝機無し………」

 

「完全に手詰まりじゃねぇかよ………」

 

鷺澪が項垂れながらそう呟く。

 

他のメンツも、多かれ少なかれ、勝機の無さを感じ取り、表情に影を落としている。

 

「まだ負けたワケじゃありません!」

 

しかしそこで、竜真がそう声を挙げた。

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

「その通りデス! 私達はまだ負けていまセン!」

 

それに大洗機甲部隊の一同が反応すると、今度はジェームズがそう声を挙げる。

 

「敵の攻撃の要は水中に潜んでいる歩兵っす! そいつ等の足止めを如何にかすれば、戦車に支援して貰って上陸する事が可能っす!!」

 

そして最後に、正義がそう言い放った。

 

「何とかって言ったって、具体的に如何するんだよ?」

 

そんな竜真達に、海音がそうツッコむ様に言うが………

 

「疾河、モンロー、桑原………ものに出来たのか?」

 

弘樹は竜真達を見ながらそう尋ねる。

 

「完全に、とは言えませんが………」

 

「形にはなっていマス………」

 

「先輩! 自分達にやらせて下さい!」

 

「僕からもお願いします!」

 

「先輩!」

 

竜真、ジェームズ、正義がそう言い、勇武と光照も賛同して来る。

 

「「…………」」

 

誠也と清十郎も、真剣な眼差しを送る。

 

「………西住総隊長。彼等を信じてやらせてくれませんか?」

 

それを受けて弘樹は、みほにそう呼び掛ける。

 

「舩坂くんが信じるんなら、私が信じない理由は無いよ………ハムスターさん分隊の皆さん。お願いします!」

 

みほはそう言って笑みを浮かべたかと思うと、次の瞬間には引き締まった表情でハムスターさん分隊の面々にそう指示を出した。

 

「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」

 

ハムスターさん分隊の面々は、まるで弘樹を見習うかの様に、全員でヤマト式敬礼をしてそう返事を返す。

 

「ならば援護は拙者に任せてもろおう」

 

するとそこで、小太郎がそう名乗りを挙げた。

 

「! 葉隠さん!」

 

「先程はパシフィックのアンブッシュに不覚を取ったでござるが、今度は奴等に教えてやるでござる………キューソーは猫を噛んだら殺す」

 

「言葉の意味は分からないが、兎に角凄い自信だ」

 

小太郎がゴキゴキと指を鳴らしながらそう言い、明夫がそうツッコミを入れる。

 

「では、作戦を立て直します!」

 

そこでみほはそう言い放ち、大洗機甲部隊の面々は新たな作戦に入るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廃墟の島の近海………

 

「来ないね~、大洗~」

 

「ふあああああ………私、眠くなってきちゃった………」

 

M2中戦車の操縦席でメロウがそう呟くと、車長席のローレライも、戦車が波に揺られているのが心地良い為か、そんな事を呟く。

 

「ちょっと御2人共! 試合中ですわよ! もっと緊張感を持って下さいまし!!」

 

そんなメロウとローレライを、即座にセイレーンが注意する。

 

「す、すみません!」

 

「ふぁ~い」

 

メロウは即座に謝るが、ローレライは欠伸混じりな返事を返す。

 

「全くもう………」

 

「! 1時方向に敵発見っ!!」

 

セイレーンが呆れる様な声を漏らした瞬間、LVT(A)-4上で双眼鏡を構えて周辺を警戒していたパシフィック歩兵部隊の偵察兵が、パシフィック機甲部隊から見て1時の方向に大洗機甲部隊を発見し、そう声を挙げる。

 

「! 来ましたわね!」

 

「島の方に向かってるわね………」

 

「コッチを無視して、島に上陸して陸上戦に持ち込む気でしょうか?」

 

セイレーンが声を挙げると、ローレライとメロウが自分達を無視する様に島へと向かって居る大洗機甲部隊の様子を見てそう呟く。

 

「へっ! そうはさせねえっつうの!!」

 

するとそこで、LVT(A)-4の上に居た潜水戦闘服姿のホージローが、海へと飛び込んだ!

 

他の兵員輸送用のLVTからも、次々に潜水戦闘服を来たパシフィックの歩兵達が飛び出し、海へと飛び込んで行く。

 

そしてそのまま、水中を泳ぎながら、大洗機甲部隊の方へと向かって行く。

 

「! パシフィックの歩兵達が海に飛び込みました!」

 

「来るっすよぉっ!!」

 

その様子を見ていた、M3リーにタンクデサントしているハムスターさん分隊の中で、竜真と正義がそう言い合う。

 

「「「「「…………」」」」」

 

それを聞いたハムスターさん分隊の面々が其々に身構える。

 

(へへ………宣言通りに潰させてもらうぜ)

 

水中を進むホージローは、フラッグ車でもあるM3リーとそれを守るハムスターさん分隊に狙いを定める。

 

そしてそのまま、水中から至近距離まで接近したかと思うと………

 

「ザッパーンッ!!」

 

勢い良く海面から飛び出し、背にしていた防水加工済みのパンツァーファウストを構える!

 

と、その瞬間!!

 

「「! そこだぁっ!!」」

 

光照と正義が戦車の上からジャンプし、まるでホージローの出現位置を読んでいたかの様にタックルを食らわせた!!

 

「!? ん何ぃっ!?」

 

驚きの声と共にパンツァーファウストを手放してしまい、海中へ逆戻りするホージロー。

 

如何に高身長があっても、空中で攻撃を受けては体格差も関係無かった。

 

「ハッ!」

 

と、ホージローが落としたパンツァーファウストを竜真がキャッチし、そのままパシフィック戦車部隊の方へと向ける。

 

「!? ちょっ!? 狙われてるって!!」

 

「ぜ、全車、回避運動っ!!」

 

「遅いっ!!」

 

セイレーンが慌てて指示を出したが、その瞬間には竜真はパンツァーファウストを発射。

 

装着されていた弾頭が、白煙の尾を引きながら特二式内火艇に命中!

 

一瞬間が有って、特二式内火艇から撃破を示す白旗が上がった!

 

「やったぁっ!!」

 

「1両撃破っ!!」

 

あやが歓声を挙げ、竜真が報告する様にそう声を挙げる。

 

「このぉっ!!」

 

とそこで、別の水中に潜んでいたパシフィック歩兵が飛び出してくるが………

 

「ドリャアアアアアアッ!!」

 

「ガッ!?」

 

タイミングを計って居たかの様な正義の、着剣した三八式歩兵銃での突きが決まる。

 

飛び出して来たパシフィック歩兵は戦死と判定されて海へ落ちると、そのまま波間を漂い始める。

 

「先先の先手攻撃です! 忘れないで!!」

 

「相手に態と攻撃させて、その隙を衝くんです!」

 

誠也と清十郎が、確認するかの様に皆にそう言い放つ。

 

「海に帰りなサイ!」

 

「ぐああっ!!」

 

そう言っている間にも、ジェームズが新たに海中から飛び出して来たパシフィック歩兵を、エンフィールド・リボルバーで撃ち抜く。

 

「ええいっ!!」

 

「「「うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」」」

 

勇武も、海から姿を見せていたパシフィック歩兵達に向かって手榴弾を投擲。

 

3人纏めて戦死判定を下させる。

 

「ホージローさん達の攻撃を凌いだ!?」

 

「馬鹿なっ!?」

 

「チキショウッ! 俺達も行くぞっ!!」

 

それを見た、まだLVTに乗って居たパシフィック歩兵達が、自分達も海中へ潜ろうとする。

 

と、その時である!!

 

「Wasshoi!」

 

ニンジャシャウトと共に、海中から影が飛び出し、イルカめいた曲芸を決めて、LVTの上に着地する。

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

「ドーモ。パシフィックの皆=サン。葉隠 小太郎です」

 

その人物………小太郎は、パシフィックの歩兵達に向かって身体の前で両手を合わせると頭を下げて、アイサツと共にオジギをする。

 

「アイエエエエ!」

 

「ニンジャ!? ニンジャナンデ!?」

 

「コワイ!」

 

「ゴボボーッ!」

 

サツバツ!

 

NRSが起こり、パシフィックの歩兵達は恐怖のあまり容易に(自主規制)し、嘔吐した。

 

「パシフィック殺すべし。慈悲は無い! イヤーッ!!」

 

と、そんなパシフィック歩兵部隊の乗るLVTに、小太郎は容赦無く収束手榴弾を投げ込む。

 

「イヤーッ!!」

 

そして小太郎が跳躍して離れた瞬間に投げ込んだ収束手榴弾が爆発!

 

「「「「「「アバーッ!?」」」」」」

 

LVTは、乗って居たパシフィック歩兵達諸共爆発四散する。

 

「ザッケンナコラー!」

 

「スッゾオラー!!」

 

「海に落ちた瞬間を狙え! 海中の連中と一緒に追い込むんだっ!!」

 

パシフィック歩兵達は怒り心頭で、小太郎の跳躍先に狙いを定め、更に海中に居たパシフィック歩兵も、着水地点に先回りして小太郎を待ち構える。

 

このままでは小太郎の運命はネズミ袋である。

 

だが、しかし!!

 

小太郎が着水すると思われた瞬間………

 

「イヤーッ!!」

 

ニンジャシャウトと共に海面を蹴り、そのまま海の上を走り始めた!!

 

「「「「「「「「「「!? アイエエエエェェェェェ!?」」」」」」」」」」

 

海中で待ち構えていた潜水歩兵と船上から狙いを定めていたパシフィック歩兵の悲鳴めいた声が挙がる。

 

おお、見よ!

 

アレぞ小太郎のニンジャ脚力によって可能とされた水上走法………『ミズグモ・ジツ』である!!

 

ゴウランガ!!

 

「イヤーッ!! イヤーッ!! イヤーッ!!」

 

小太郎は海上を爆走し、両腕を鞭の様に振ってスリケンを投げまくる。

 

「アバーッ!!」

 

「アバババーッ!!」

 

「アバーッ!!」

 

そのスリケンが命中したパシフィック歩兵が、次々に戦死判定を受けて行く。

 

「な、何なんですの!? あの男は!?」

 

「ニンジャだ! ニンジャが居る!!」

 

「ニンポを使うぞ! ニンポを使うぞ!」

 

その光景を見ていたセイレーン、ローレライ、メロウにも混乱が走る。

 

とそこで、砲撃音と爆発音が連続して聞こえて来る。

 

大洗機甲部隊が廃墟の島へと辿り着き、戦車チームがパシフィック歩兵部隊がトーチカとして使っていた廃墟に砲撃を撃ち込み始めたのだ。

 

「華さん! 11時の方向!!」

 

「ハイッ!!」

 

みほの指示を受けた華が、Ⅳ号から見て11時の方向に在った廃墟に砲弾を放つ。

 

「「「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」」」」」

 

野戦砲とその砲に付いて居たパシフィック砲兵部隊が纏めて吹き飛ぶ。

 

「良し、今だ! 全員上陸しろーっ!!」

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

段々と廃墟が更地と化して来たところで、弘樹がそう号令を挙げ、大洗歩兵部隊は一斉に上陸。

 

そのまま廃墟の島の内部へと進軍する。

 

「私達も続きます! 皆さん、付いて来て下さい!!」

 

「「「「「了解っ!!」」」」」

 

それに続く様に、Ⅳ号を先頭に戦車チームの島へと上陸。

 

歩兵部隊の後を追う様に、島の内部の方へと進軍するのだった。

 

「しまった! 完全に上陸されたわ!!」

 

「時間稼ぎはココまででござるな………サラバ!」

 

と、ローレライがそう声を挙げた瞬間、小太郎は懐から煙玉を取り出して、海面に叩き付ける。

 

「うわぁっ!?」

 

「何も見えねえぞっ!!」

 

煙幕が海面一帯に広がる。

 

暫くして煙幕が晴れたかと思うと、小太郎の姿は完全に消え失せていたのだった………

 

「!? 居ない!? ああ、もうっ!!」

 

「完全にしてやられたわね………」

 

セイレーンが地団駄を踏み、ローレライは半ば感心した様にそう言い放つ。

 

「…………」

 

そしてLVTに乗って居るカジキは、大洗機甲部隊が上陸した場所を睨みつける様に見ていた。

 

「ええーい、チキショー! してやられたぜ!!」

 

とそこで、潜水艦の甲板の上にホージローが海から上がって来る。

 

竜真と光照にタックルを食らったが、戦死判定には至らなかったので、海中を泳いで此処まで退避して来た様だ。

 

「あのおチビちゃん達………意外とやるみたいだな」

 

「………『シイラ』、『ツナ』。お前達も前線に出ろ」

 

ホージローが真面目な顔でそう言うと、カジキが通信機を手にそう言い放つ。

 

「やっと出番か!」

 

「待ってました!」

 

すると、ガトーのセイルのハッチが開き、シイラと長身のパシフィック歩兵部隊の中では小柄だが、それでも日本人の平均身長以上は有る男子………『ツナ』が姿を見せる。

 

「『スクイッド』、お前は引き続きガトーを任せたぞ。海から奴等の姿が見えたら容赦無く攻撃しろ」

 

「了解しました」

 

ガトーの艦長をしている『スクイッド』にそう命令すると、カジキは銛を手にする。

 

「いい気になるなよ………この俺がいる限り………貴様等には負けはしない………」

 

「良し! コレより大洗機甲部隊の追撃に入る! 全部隊、私に続きなさいっ!!」

 

カジキがそう呟くと、セイレーンがそう指示を出し、パシフィック機甲部隊は大洗機甲部隊を追って、自分達も廃墟の島へと上陸し始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

初手からパシフィック機甲部隊より大打撃を受けた大洗機甲部隊。
しかし、竜真達ハムスターさん分隊と小太郎の活躍により、如何にか軍艦島への上陸に成功する。
まだ、逆転の可能性は十分にあるのだった。

では、ご意見・。ご感想をお待ちしております。

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