ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第64話『4回戦、決着です!(前編)』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第64話『4回戦、決着です!(前編)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜真達が死闘の末にホージローを倒した、丁度その頃………

 

廃墟の別の一角では………

 

弘樹が身を隠している瓦礫に、カジキのM1941ジョンソン小銃から放たれた弾丸が突き刺さる。

 

「!………」

 

射撃が途切れた瞬間に姿を晒し、カジキに向かって九九式短小銃を発砲する弘樹。

 

「チッ!」

 

しかし、カジキは瓦礫に身を隠してかわす。

 

「…………」

 

弘樹は再び瓦礫に身を隠すと九九式短小銃をリロードする。

 

(この装填で最後か………)

 

しかし、既に九九式短小銃の弾は装填した5発だけだった。

 

カジキに遭遇するまでに多数のパシフィック歩兵を倒していた事が逆に仇となっていた。

 

(コレ以上無駄弾は使えんな………)

 

まだコルトM1911A1や手榴弾、日本刀などの武器は有るが、メイン武装である九九式短小銃が弾切れしてしまう状況は非常に痛い。

 

「………弾が残り少ないのか?」

 

とそこで、カジキがそんな事を言って来る。

 

「…………」

 

瓦礫に隠れたままその言葉を聞く弘樹。

 

「フン、残弾の確認を怠るなど、素人のやる事だ。それで今まで良く勝ち残れたものだ」

 

「…………」

 

弘樹を挑発する様にそう言うカジキだが、当の弘樹は無視を決め込んでいる。

 

「………そんな態度が取って居られるのも今の内だ。偽物の英霊」

 

「…………」

 

苛立っている様なカジキの声にも、弘樹はノーリアクションである。

 

「!!………」

 

とそこで、カジキは弘樹が隠れている瓦礫に向かって、マークⅡ手榴弾を投擲する。

 

「!!」

 

すぐ傍に落ちて来たマークⅡ手榴弾を見て、弘樹はすぐさまその場から飛び退く。

 

直後に手榴弾が爆発し、弘樹が隠れていた瓦礫が吹き飛ぶ!!

 

更に衝撃で2人が居るフロアの一部が崩落。

 

舞い上がった粉煙がフロアを埋め尽くし、視界を塞ぐ。

 

(この粉煙に紛れて接近戦で来るか………)

 

弘樹はカジキが接近戦で来ると読み、九九式短小銃に銃剣を着剣する。

 

と、その直後!!

 

弘樹から見て右手側の煙が揺らいだかと思うと、そこから煙に包まれた『何か』が飛び出して来る!

 

「!?」

 

咄嗟に九九式短小銃に着剣した銃剣で受け止める弘樹。

 

「………銛だと」

 

その飛び出して来た『何か』が銛である事を確認した弘樹がそう呟く。

 

と、そこで銛が一旦引っ込んだかと思うと、再び弘樹目掛けて飛び出して来る。

 

「! クッ!」

 

再び九九式短小銃に着剣した銃剣で受け止める弘樹だったが、銛は3撃、4撃、5撃とまるでマシンガンの様に連続で襲い掛かって来る。

 

「何と言う速突き………」

 

連続して襲い掛かってくる銛を前に、弘樹は防戦一方である。

 

「!!」

 

その瞬間!

 

弘樹は何か嫌な物を感じ、その場にしゃがみ込む。

 

直後に発砲音がして、弘樹の頭上を弾丸が通り抜けて行く。

 

「貰ったぞ!」

 

更に間髪入れずにカジキが煙の中から現れて蹴り上げを繰り出して来る!

 

「!!………」

 

咄嗟に飛び退く様にして後ろに下がった弘樹だったが………

 

カジキの蹴りは、弘樹が持っていた着剣している九九式短小銃に命中。

 

着剣している九九式短小銃が弘樹の手からは離れ、ガラスが外れた窓から外へと飛び出す。

 

「!………」

 

すぐにその窓へと駆け寄った弘樹だったが、着剣している九九式短小銃はそのまま道路へと落ち、乾いた音を立てる。

 

「しまった………」

 

「終わりだな………舩坂 弘樹」

 

そう言う声が聞こえて来ると、やっと粉煙が晴れて、弘樹に向かってM1941ジョンソン小銃を構えているカジキの姿が露わになる。

 

「…………」

 

ゆっくりとそのカジキの方を振り返る弘樹。

 

「所詮はココまでか………偽物の英霊のお前には相応しい最期だな」

 

「…………」

 

そう言い放つカジキの姿を只ジッと見やっている弘樹。

 

「間も無くローレライ達もフラッグ車を撃破する筈だ。未熟なチームにフラッグ車を任せた貴様達の采配ミスだ。勝利は我々のものだ」

 

そこでカジキの指が、M1941ジョンソン小銃の引き金に掛けられる。

 

「………お前は2つ勘違いをしている」

 

するとそこで、弘樹はカジキに向かってそう言い放った。

 

「!? 何だとっ!?」

 

弘樹の思わぬ言葉に目を見開くカジキ。

 

「1つはウサギさんチームを未熟だと思っている事。そしてもう1つは………小官を追い詰めたと思っている事だ!」

 

そう言い放った瞬間、何と!!

 

弘樹は自ら窓の外へと飛び出た。

 

「!? なっ!?」

 

カジキが驚きの声を挙げた瞬間!

 

弘樹は左手で廃墟の縁に在った雨樋を掴む!!

 

雨樋は弘樹の体重を支え切れず、固定部分が1つずつ剥がれ始める。

 

その剥がれた雨樋をロープ代わりに、まるでターザンの様に廃墟の外壁の傍を滑空する弘樹。

 

途中、外壁が崩れている部分を発見すると………

 

「トアッ!!」

 

雨樋を手放し、その中へと飛び込んだ。

 

「クッ! 何て奴だ!!」

 

カジキはそう言いながら、すぐに弘樹が飛び込んだフロアへと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弘樹が飛び込んだフロア………

 

「ッ!………」

 

飛び込んだ際に強かに身体を打った為、弘樹の顔が一瞬歪んだが、すぐに物陰へと隠れ、残っている武器を確認する。

 

(………M1911A1は装填している物を含めてマガジンが3つ………手榴弾は1個………厳しいな)

 

そう思う弘樹だが、表情は相変わらず仏頂面のポーカーフェイスである。

 

状況は厳しいが負ける積りは毛頭無い。

 

(兎に角………ライフルが無い以上、接近戦に持ち込むしかないか………)

 

とそこで、フロアの入り口の方から足音が聞こえて来る。

 

「!………」

 

その足音を聞いた弘樹は、瓦礫の陰に完全に隠れて息を潜める。

 

「…………」

 

その次の瞬間に、カジキがM1941ジョンソン小銃を構えながらフロア内へと侵入して来る。

 

「………何処に居る、舩坂 弘樹」

 

「…………」

 

そう言い放つカジキだが、無論返事をする様な弘樹ではない。

 

「…………」

 

カジキは周囲を警戒しながら、更にフロア内へとゆっくり歩を進める。

 

「…………」

 

息を殺し、ジッとカジキが近づいて来るのを待つ弘樹。

 

凄まじい緊張感が、フロア内を支配する。

 

「…………」

 

と、遂にカジキが、弘樹が隠れている瓦礫の傍に立つ。

 

「…………」

 

瓦礫越しにカジキの殺気を感じ、弘樹の顔に冷や汗が流れる。

 

とそこで、弘樹は傍に在った小さな瓦礫の破片をそっと掴む。

 

そして、傍に立っているカジキに気付かれない様にしながら、彼の背中越しに反対方向へと投げる。

 

破片が床に落ち、音を立てる。

 

「!!」

 

それに反応し、弘樹とは反対側を振り返るカジキ。

 

「!………」

 

その瞬間、弘樹は瓦礫の陰から飛び出し、カジキを背中から羽交い締めにする様に押さえ付ける!

 

「! ぬうっ!? 貴様ぁっ!!」

 

弘樹を振り解こうと暴れるカジキ。

 

「クウッ!………」

 

しかし、弘樹は引き剥がされまいと、身長差の有るカジキに必死に喰らい付く。

 

「このぉ………偽物めっ!!」

 

とそこで、カジキは後ろに飛び退く様にし、背中にへばり付いている弘樹を、壁に叩き付ける。

 

「!!………」

 

一瞬顔が歪む弘樹だったが、それでもカジキの事を離そうとしない。

 

「クソォッ! 離せっ! 離せぇっ!!」

 

カジキは苛立った様に、連続で弘樹の身体を壁へと叩き付ける。

 

「…………」

 

だが、それでも弘樹はまるで万力の様にガッチリとカジキに組み付く。

 

「ええいっ! このぉっ!!………!? とっ!?」

 

その時!!

 

カジキが更に勢い良く弘樹を壁に叩き付けようとしたところ、バランスを崩してよろける。

 

「!!」

 

その一瞬を見逃さず、弘樹はカジキの背に組みついたまま、足でカジキが持っていたM1941ジョンソン小銃を蹴り落とす。

 

「ぬあっ!?」

 

「させんっ!!」

 

慌てて拾おうとするカジキだが、弘樹は羽交い締めをしたまま、カジキを落したM1941ジョンソン小銃とは逆の方向へと向ける。

 

そして、足でM1941ジョンソン小銃を蹴り飛ばした。

 

蹴り飛ばされたM1941ジョンソン小銃は、床に空いていた穴に落ち、下層へと落下する。

 

「!? 銃が!? オノレェッ!!」

 

「!!」

 

するとそこでカジキは、羽交い締めにされたまま弘樹の頭を掴み、そのまま背負い投げの様に投げ飛ばす。

 

「ッ!!」

 

床に背中から叩き付けられた弘樹だが、素早く起き上がると刀を抜いて、カジキへと斬り掛かる!!

 

「むんっ!!」

 

しかしカジキは、両袖から飛び出して来た物を連結させた銛で受け止める。

 

(! さっきの銛か!………)

 

その銛が、先程粉煙の中で自分で狙って来ていたものだと気付く弘樹。

 

「せやあっ!!」

 

とそこで、カジキは弘樹を弾き飛ばす様に下がらせる。

 

「!………」

 

「でええいっ!!」

 

そしてそのまま、上半身をバネの様に振り被り、コークスクリューパンチの様に銛を回転させた突きを繰り出す。

 

「!?………」

 

咄嗟に横に転がる様にしてかわす弘樹。

 

外れた銛の先端がコンクリートの壁に命中したかと思うと、壁にまるでドリルで空けた様な穴が空いた!

 

(! コンクリートの壁を………何て威力だ)

 

「まだ終わりではないぞっ!!」

 

その威力に弘樹が内心で軽い戦慄を覚えていた瞬間、カジキは今度は連続で突きを繰り出して来る。

 

「!!………」

 

その連続突きの前に、またも防戦一方となる弘樹。

 

(イカン………コレではさっきと同じだ………)

 

弘樹はこのままでは先程の二の舞になると察する。

 

(………一か八かだ)

 

そこで弘樹は、賭けに打って出る事にした。

 

「せやあっ!!」

 

カジキが更に突きを繰り出す。

 

と、その瞬間!!

 

「!」

 

弘樹は刀を脇に構えたかと思うと、自らその突きを繰り出して来た銛へと突っ込む。

 

「?! 血迷ったかっ!?」

 

思わずそう叫ぶカジキだったが、銛の先端が弘樹の眼前まで迫った瞬間!!

 

「!!………」

 

弘樹は僅かに首を曲げる!

 

銛は弘樹の耳を掠める様にし、顔のすぐ横を通り過ぎる。

 

1歩間違えれば顔面に銛が直撃していたであろう紙一重の回避である。

 

「………!」

 

弘樹はそのまま、カジキの懐へと飛び込み、刀を振る!

 

「!! ガッ!?」

 

咄嗟に後ろに飛び退いたカジキだったが、弘樹が振るった刃が微かに当たる!

 

戦死判定は下らなかったが、傷を負ったと判定され、戦闘服が動きを制限し始める。

 

(浅いか!………)

 

攻撃が浅かったと察して弘樹は、今度は刀を大上段に構え、2撃目を繰り出そうとする。

 

………だがその瞬間!!

 

発砲音が聞こえて来たかと思うと、弘樹が大上段に構えていた刀の横っ腹に銃弾が命中し、刀が弾き飛ばされた!!

 

「!?………」

 

「やったぜっ!!」

 

驚く弘樹が見たものは、何時の間にかフロアの壁に空いている穴から見えている対面の廃墟の屋上の上に居たM1903A4を構えていたシイラの姿だった。

 

(何時の間に!?………)

 

「舩坂 弘樹ぃっ!!」

 

と、得物の無くなった弘樹に、カジキが再び上半身をバネの様に振り被り、コークスクリューパンチの様に銛を回転させた突きを繰り出す。

 

「!!」

 

咄嗟に左腕を盾にする弘樹。

 

銛がその腕に命中した瞬間に痛みが走り、更に弘樹の身体が木の葉の様に吹き飛ばされ、コンクリートの柱に叩き付けられる!!

 

「ぐうっ!」

 

そのまま弘樹の身体が柱の根元にずり落ちた瞬間!!

 

柱に叩き付けられた衝撃で、天井の一部が崩落!

 

弘樹に向かって瓦礫が降り注いだっ!!

 

「!?」

 

逃げる間も無く、そのまま瓦礫の雨を浴びる弘樹。

 

舞い上がった粉煙が、弘樹の姿を覆い隠す。

 

少しして、その粉煙が消えたか思うと………

 

「不覚………」

 

下半身から右半身に掛けて瓦礫が乗っかり、身動きが取れなくなっている弘樹の姿が露わになった。

 

「今度こそ終わりだな………」

 

カジキがそんな弘樹に近づこうとする。

 

………が、途中でその足を止める。

 

(コイツは油断ならん奴だ………この状況でも何か仕出かすかもしれん………確実に仕留めなければ………)

 

弘樹の潜在的な戦闘センスを警戒し、手榴弾を取り出すカジキ。

 

だが、カジキは見落としていた………

 

瓦礫に埋もれてはいるが、弘樹の右手は動かせる状態なのを………

 

「舩坂 弘樹………死ねっ!!」

 

手榴弾のピンを抜き、弘樹目掛けて投げつけようと振り被るカジキ。

 

………その瞬間!!

 

「!!」

 

弘樹は瓦礫に埋もれていた右半身部分から、右腕を引き抜く!

 

その手には、コルトM1911A1が握られていた!

 

「なっ!?」

 

カジキは慌てたが時既に遅し!!

 

弘樹はコルトM1911A1を発砲!

 

放たれた弾丸は、カジキが振り被っていた手榴弾に命中!!

 

手榴弾がカジキの手の中で爆発した!!

 

「!? があああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

破片を諸に浴びたカジキが倒れ、そのまま戦死と判定された。

 

と、その直後!!

 

手榴弾の爆発で、脆くなっていたフロアの床が崩落を開始!

 

「!?」

 

弘樹は崩れた床ごと、下層へと落ちて行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弘樹とカジキが戦っていたフロアが見える向かいの廃墟の屋上………

 

「!? 隊長が!?」

 

「オイ、あの舩坂って奴は如何した!? 戦死したのか!?」

 

カジキがやられた事に驚愕するシイラと、弘樹の所在が分からなくなって慌てるツナ。

 

「分からん………しかし、あの崩落に巻き込まれたんだ。普通なら間違い無く戦死判定ものだ」

 

「相打ちか………だが、隊長がやられたのならば代わりに指揮を執らんと………」

 

「よし、すぐに部隊に指揮委譲の通達を………」

 

カジキがやられた為、指揮委譲を行おうと、シイラが通信機に手を掛けると………

 

発砲音がして、その通信機が撃ち抜かれた!

 

「なっ!?」

 

「!!」

 

驚くシイラとすぐに銃弾が飛んで来た方向を確認するツナ。

 

「…………」

 

そこには、別の廃墟の屋上で、モシン・ナガンM1891/30を構えている飛彗の姿が在った。

 

「! 敵の狙撃兵か!」

 

「このぉっ!!」

 

すぐさまシイラとツナは、M1903A4とL-39を構え、飛彗に反撃を浴びせる。

 

「!!」

 

狙われた飛彗は、廃墟の屋上を逃げ回る。

 

「そらそら! 如何した如何した!」

 

「通信機よりも先に、僕達を撃ち抜くんだったね」

 

防戦一方となっている飛彗に次々と弾丸を放つシイラとツナ。

 

しかし、この時………

 

2人は攻撃に夢中になり………

 

周囲への警戒が疎かとなっていた。

 

その瞬間!!

 

2人の背後から、エンジン音が聞こえて来る!

 

「「!?」」

 

驚いて振り返ったシイラとツナが見たものは………

 

「貰ったぜっ!!」

 

隣の廃墟の屋上から、バイクごとジャンプして、眼下の自分達に向かってカンプピストルからグレネード弾を放つ白狼の姿だった!

 

「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」」

 

グレネードの直撃を食らい、破片を全身に諸に浴びたシイラとツナはそのまま倒れ、戦死と判定される。

 

「よっ、と………へへっ」

 

「…………」

 

着地を決めた白狼が、飛彗に向かってサムズアップすると、飛彗も笑顔で手を振り返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

遂に対決の時を迎えた弘樹とカジキ。
勝負はお互いに一進一退。
シイラ達の協力もあって、弘樹を追い詰めたかに見えたカジキだったが………
最後の最後で詰めを誤り、弘樹の反撃を受けて倒される。
しかし、その弘樹も崩壊した廃墟の中へと消えた。
果たしてどうなったのか?
次回、遂にパシフィック戦、決着です。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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