ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第69話『五式中戦車です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第69話『五式中戦車です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プラウダ&ツァーリ機甲部隊との試合を控え、新規参入したアリクイさんチームの練度上げの為に………

 

知波単学園の知波単機甲部隊との試合に臨んだ大洗機甲部隊。

 

弘樹のかつての上官である西 絹代に率いられた高い練度の隊員達に加え、幻の日本戦車を投入して来た知波単機甲部隊の初手を如何にか凌ぐ。

 

しかし………

 

絹代は、大洗の最大の弱点を突く作戦に出るのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

練習試合会場・大洗町の外れ………

 

岩肌が露出している丘陵地帯………

 

挟み撃ちをして来た知波単機甲部隊を突破した大洗機甲部隊は、そのまま西へと移動し、木々が生い茂っている森林地帯へと突入する。

 

道が狭い為、戦車チームは縦一列に並んで進んでおり、歩兵達は其々の随伴している戦車の周りをガードしている。

 

「コチラとらさん分隊の楓。後方に敵影無し。追撃はして来ていない様です」

 

と、最後尾で殿を務めているあんこうチームのⅣ号を守っているとらさん分隊の中で、後方を警戒していた楓がそう報告を挙げる。

 

「了解。引き続き警戒を続けて下さい」

 

「やはり、先程の挟み撃ちは威力偵察だったのでしょうか?」

 

みほがそう通信を返すと、優花里がそう言って来る。

 

「うん………」

 

頷くみほだったが、その顔には納得が行かない様子が出ていた。

 

「! 止まれっ!!」

 

と、先頭を行って居たカバさんチームのⅢ突が、エルヴィンのそう言う声と共に停まる。

 

随伴していたワニさん分隊の面々も停まり、後続の戦車チームと随伴歩兵分隊も停止する。

 

「………橋か」

 

磐渡がⅢ突の前方に在る物………

 

谷の底を流れる川に掛けられた石橋を見てそう呟く。

 

「西住総隊長、如何する? 迂回するか?」

 

エルヴィンがみほにそう尋ねる。

 

「いえ、渡りましょう。この先の地形なら、待ち伏せされている事はありません」

 

みほは地図を見ながら待ち伏せは無いと踏み、渡河する事を決定する。

 

「了解。これより渡河を開始する」

 

エルヴィンがそう言うと、Ⅲ突とワニさん分隊の面々が周囲を警戒しながら石橋を渡り始める。

 

と、その光景を谷川の畔の岩陰で見ている者達が居た………

 

「「「「「…………」」」」」

 

知波単歩兵部隊の工兵達だ。

 

1人はダイナマイト・プランジャーらしき物に付いており、何時でも起爆させられる体勢を取っている。

 

そのダイナマイト・プランジャーから出ている配線は、大洗機甲部隊が渡ろうとしている石橋の底面に取り付けられているダイナマイトに繋がっている。

 

「!!」

 

Ⅲ突とワニさん分隊の面々が橋を渡り始めたのを見て、ダイナマイト・プランジャーに付いて居た知波単工兵がスイッチを入れようとする。

 

「!」

 

しかし、その場の指揮官と思わしき知波単工兵が、右手を上げて『待て』と合図する。

 

やがてⅢ突とワニさん分隊は、石橋を渡り切る。

 

続いて、アヒルさんチームとペンギンさん分隊が橋を渡り、ウサギさんチームとハムスターさん分隊と続く。

 

そして、アリクイさんチームとおおかみさん分隊が渡ったかと思うと、フラッグ車であるサンショウウオさんチームとタコさん分隊が橋を渡り始める。

 

「!!」

 

そこで指揮官と思わしき知波単工兵は、上げていた右手をバッと下ろし、起爆しろと指示する。

 

「!!」

 

それを待っていたとばかりに、勢い良くダイナマイト・プランジャーのスイッチを入れる。

 

………しかし、ダイナマイトは爆発しなかった。

 

「「「「「!?」」」」」

 

知波単工兵達は声を挙げないながらも大慌てとなり、慌ててダイナマイト・プランジャーを点検する。

 

そしてトラブルを発見するとすぐに応急処置を施す。

 

だが、その間に………

 

既にサンショウウオさんチームとタコさん分隊は、石橋を渡り終えていた。

 

「「「「!!………」」」」

 

フラッグ車を仕留める事が出来ず、ガックリと項垂れる知波単工兵達。

 

「…………」

 

しかし、指揮官と思わしき知波単工兵は冷静に、右手を上げてピースサインの様に指を2本立てる。

 

「「「「!!」」」」

 

それを見た知波単工兵達は、すぐに配置へと着く。

 

やがてそのまま、カメさんチームとツルさん分隊が石橋を渡り終えると、カモさんチームとマンボウさん分隊も渡り切る。

 

「全員、無事に渡り切りましたか?」

 

「OKだよ~」

 

「大丈夫です!」

 

「言うに及ばず!」

 

「私達も大丈夫です!」

 

「こちらそど子。随伴分隊員達も含め、全員無事です」

 

「あ、え、えっと………だ、大丈夫だと思います」

 

「後は西住総隊長達だけです」

 

みほが問うと、杏、典子、エルヴィン、梓、みどり子、ねこにゃー、聖子からそう返事が返って来る。

 

「了解しました。麻子さん、私達も」

 

「うん………」

 

「全員、周囲を警戒しろ!」

 

それを聞いたみほが麻子に指示を出し、弘樹は分隊員達にそう命じる。

 

とらさん分隊の分隊員達が後方を中心に、周辺を警戒する中、Ⅳ号がゆっくりと石橋を渡り始める。

 

「!」

 

それを見た指揮官と思わしき知波単工兵が、再びダイナマイト・プランジャーに付いて居る知波単工兵に合図を送る。

 

「!!」

 

知波単工兵はダイナマイト・プランジャーのスイッチを押し込もうとする。

 

「………! 後退しろぉっ!!」

 

とそこで、直感的に危険を感じ取った弘樹が、Ⅳ号に向かってそう叫ぶ。

 

「!!」

 

その叫びが聞こえた瞬間、麻子は反射的にギアをバックに入れていた。

 

急停止したⅣ号が続いて急速後退する。

 

「うわぁっ!?」

 

「キャアッ!?」

 

「わわっ!?」

 

「!?」

 

突然の後退に、車内で揺さ振られる沙織、華、優花里、みほ。

 

と、その直後に知波単工兵はダイナマイト・プランジャーのスイッチを押し込む!

 

今度こそダイナマイトが起爆!

 

爆発と共に石橋が吹き飛び、残骸がガラガラと音を立てて川の中へと落ちて行く!

 

「!? 橋がっ!?」

 

「! 西住総隊長! 2時の方向ですっ!!」

 

キューポラから飛び出す様に姿を見せたみほが驚きを示す中、弘樹は谷川の畔の岩陰に居た知波単工兵達の姿を発見し、報告を挙げる。

 

「! 華さん! 砲塔旋回、2時方向!! 優花里さん! 榴弾装填!!」

 

「ハイッ!」

 

「了解っ!!」

 

みほはすぐさま指示を出し、華が砲塔を知波単工兵達に向け、優花里が榴弾を装填する。

 

「コチラ工兵部隊! 1号、2号作戦、共に失敗! されど3号作戦は成功せり! 申し訳ありませんが我々は此処までです! 後は宜しくお願い致します! 知波単学園! バンザーイッ!!」

 

「「「「バンザーイッ!!」」」」

 

指揮官と思わしき知波単工兵がそう通信を送ると、知波単工兵達は自分達の最期を悟り、万歳をする。

 

「撃てっ!!」

 

直後にⅣ号の主砲が火を噴き、知波単工兵達は隠れていた岩ごと吹き飛ばされた!

 

「まさかあんな所で待ち伏せてたなんて………」

 

「思いも寄りませんでしたね………」

 

「それより如何するんだ? 橋が無くなったぞ?」

 

知波単工兵達の撃破を確認し、みほと優花里がそう言っていると、麻子がそう口を挟んで来る。

 

「総隊長~!」

 

「西住総隊長~!」

 

「大丈夫ですか~!」

 

と、対岸に居る大洗機甲部隊の面々からも心配する声が飛ぶ。

 

「大丈夫で~す! 私達もとらさん分隊の皆も無事です~!」

 

「しかし、マズイ状況です………別の橋まではかなり迂回しないと………」

 

みほがそう返事を返していると、地図を確認していた優花里が、別の橋までの距離がかなりある事を見てそう呟く。

 

「申し訳ありません、西住総隊長。小官がもっと早く敵の存在を察知していれば………」

 

「仕方ないよ。兎に角、早く皆と合流しよう」

 

弘樹が謝罪するが、みほは気にしないでと言う。

 

「皆さん、ポイントG3へ移動して下さい。そこで落ち合いましょう。神大さん。そちらの指揮をお願いします」

 

「心得たよ」

 

みほは大洗機甲部隊の面々にそう指示すると、その指揮を迫信に任せる。

 

そして、あんこうチームととらさん分隊、大洗機甲部隊の面々はポイントG3を目指して移動を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

知波単機甲部隊は………

 

「フラッグ車を撃破の1号作戦と、隊長車を撃破の2号作戦は失敗………けど、総隊長と本隊を分離させる3号作戦成功せりか………良くやってくれたわ。皆」

 

橋を爆破した知波単工兵達の最期の通信を聞いた絹代はそう呟き、通信機越しに陸軍式敬礼を送る。

 

「………皆聞いてたわね! 3号作戦で行くわよ!!」

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

そしてすぐに知波単機甲部隊の面々を見やるとそう言い、知波単機甲部隊の面々も勇ましく返事を返す。

 

「恐らく、大洗機甲部隊の面々はポイントG3へ向かうわ。私だったらそうする」

 

絹代は地図を広げると、大洗機甲部隊の進行先を読む。

 

「孤立しているⅣ号の相手はお願いね。気を付けてよ。随伴している歩兵分隊の中には弘樹も居るから」

 

「了解しました!」

 

その絹代の言葉を受け、五式中戦車が知波単機甲部隊の中から離脱し、単独でⅣ号の元へと向かう。

 

「よし! 私達は大洗機甲部隊の本隊に仕掛けるわよ! 全員付いて来なさいっ!!」

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

「御供します!」

 

「総隊長に続けぇーっ!!」

 

そして、絹代の九七式中戦車を中心として知波単機甲部隊は、あんこうチームととらさん分隊を切り離された大洗機甲部隊の本隊へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あんこうチーム&とらさん分隊………

 

現在両者は、木々が生い茂る森林地帯を進んでいた。

 

「ちょっと見通しが悪いけど、この場所を通れば敵からも発見され難いです。このまま進みます」

 

「警戒は怠るな。何か有ったらすぐに報告しろ」

 

みほがそう言うと、弘樹が補足する様にそう言う。

 

「けどよぉ、フラッグ車は本隊の方だろ? 態々無関係なコッチを狙って来るとは思えねえけどなぁ」

 

とそこで、了平がそんな事を言う。

 

「了平、油断は禁物ですよ」

 

「って言うか、お前のその台詞自体がフラグとしか思えねえよ。何かあったらお前のせいだからな」

 

そんな了平に向かって、楓と地市がそう言い放つ。

 

「ちょっ!? 酷くない! 大体俺は女の子とのフラグしか追ってないての!!」

 

「それが既に死亡フラグなんだよ!!」

 

「ちょっ! 石上さん! 綿貫さん! 喧嘩は………!?」

 

と、言い合いの様な状態になった地市と了平を見て、キューポラから姿を晒していたみほが止めようとしたが、その瞬間に何かに気付いた様に森林地帯の奥を見やる。

 

「………!」

 

同時に弘樹も同じ様にみほが見ている森林地帯の奥を見やる。

 

「西住殿?」

 

「みほさん、如何しました?」

 

優花里と華がそう言った瞬間!

 

「! 散開しろぉっ!!」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

弘樹がそう叫び、あんこうチームととらさん分隊の面々は反射的に方々へと散らばる様に逃げ出す。

 

その直後!!

 

ドゴオンッ!!と言うまるで落石でも落ちたかの様な轟音が鳴り響き、森林地帯の奥から砲弾が飛んで来た!!

 

「「「「!? うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」」」」

 

逃げ遅れていたくろがね四起に直撃した砲弾は榴弾らしく爆発。

 

くろがね四起の爆発と相まって乗員達は全員戦死判定を食らう。

 

「クッ!………」

 

別のくろがね四起の後部座席に乗って居た弘樹が、すぐに砲弾が飛んで来た方向を確認する。

 

そこには、砲口から煙を上げている五式中戦車が、木々の合間からコチラを睨む様に見ていた。

 

「! 敵戦車確認! 五式ですっ!!」

 

「ええっ!? 事実上、知波単機甲部隊の最強の戦車をコチラに投入ですか!?」

 

弘樹がそう報告を挙げると、優花里が知波単機甲部隊の中で最強と思われる五式中戦車を自分達の方へと回して来た絹代の采配に驚く。

 

直後に五式中戦車が再び発砲!

 

砲弾がⅣ号へと向かう!

 

「! 停車っ!!」

 

「!!」

 

みほの指示で慌ててブレーキを踏む麻子。

 

Ⅳ号が若干前のめりになりながらも急停止すると、そのまま進んでいれば居たであろう場所を五式中戦車が放った砲弾が通過!

 

今度は徹甲弾だったらしく、砲弾が命中した太い木々が次々と圧し折られ、メキメキと言う音と共に倒れ伏せた!

 

「す、凄い威力………」

 

「コレが幻の幻………88ミリ砲搭載の五式中戦車の力………」

 

その砲の威力の前に、沙織と優花里が戦慄を覚える。

 

「やられてばかりではいられません!」

 

とそこで、華が砲塔を旋回させ、五式中戦車に向かって発砲する!

 

だが、五式中戦車はⅣ号が発砲した瞬間には移動を開始しており、Ⅳ号から放たれた砲弾は先程まで五式中戦車が居た地面を抉っただけだった。

 

「! 速いっ!?」

 

「だったら俺達の出番だ!」

 

「行くぞぉっ!!」

 

「「「「「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」

 

華がそう声を挙げた瞬間、バズーカを構えた地市を先頭に、数人のとらさん分隊員達が五式中戦車に突撃する。

 

「幾ら強い戦車だろうが、歩兵が居ないんなら肉薄して倒すまでだっての!!」

 

そう言いながら、バズーカの照準器を覗き込む地市。

 

一緒に突撃していた分隊員達も、収束手榴弾や吸着地雷、九九式破甲爆雷を手にする。

 

「! 待て! 罠だっ!!」

 

しかしそこで、弘樹がそう叫ぶ。

 

その直後に、五式中戦車は車体前面に搭載されていた副砲の一式三十七粍戦車砲を発射!

 

目の前に在った木の幹に命中させたかと思うと、その木が突撃して来ていた地市達に向かって倒れ込む!!

 

「!? うわぁっ!?」

 

「「「「「!?」」」」」

 

地市は慌ててバズーカを捨てて逃げ、他の分隊員達も散らばる。

 

「「「!? うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」

 

だが、数名が間に合わずに、そのまま木の下敷きとなり、戦死判定を受ける。

 

直後に五式中戦車が再び主砲から榴弾を発射!

 

「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」

 

逃げ果せたと思っていた分隊員達の間に着弾した榴弾は破片を撒き散らし、またも戦死判定者を続出させた!

 

「チキショー! んなのありかよ………」

 

逃げた際に倒れて来た木の衝撃波に煽られて地面に倒れていた地市がそんな事を口にしながら起き上がろうとする。

 

と、その地市を踏み潰さんとばかりに五式中戦車が突撃して来る!

 

「!?」

 

「地市くん!」

 

思わず身体が固まる地市と、悲鳴の様な声を挙げる沙織。

 

「!!」

 

だがその直後に、弘樹が地市の傍へと現れたかと思うと、その身体を抱える様にして一緒に横へと転がった!

 

五式中戦車はそのまま2人の横を通り過ぎ、再び木々の間へと入る。

 

「迂闊に突撃するな!」

 

「す、スマネェ………」

 

地面の段差に身を隠しながら地市にそう言い放つ弘樹。

 

その直後に五式中戦車がまたもや主砲を発射!

 

「「「「「うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」」」」」

 

榴弾が炸裂し、とらさん分隊の隊員達数名が纏めて吹き飛ばされる。

 

更に五式中戦車は、主砲を右へと旋回させたかと思うと、今度はⅣ号を狙って徹甲弾を放つ!

 

「左旋回!!」

 

「!!」

 

しかし、弾道を読んだみほの指示により、如何にかⅣ号は五式中戦車から放たれた徹甲弾をかわす。

 

「クッ、やはり半自動装填装置を搭載しているのか………次弾発射が早い」

 

弘樹は五式中戦車が素早く主砲を連射するのを見て、半自動装填装置が搭載されている事を確信する。

 

「撃ちますっ!!」

 

とそこで、華が反撃とばかりにⅣ号の主砲を放つ。

 

だが、五式中戦車は素早く後退し、Ⅳ号が放った砲弾が木の幹を吹き飛ばす。

 

「反応が早い………」

 

「相手の戦車の搭乗員はかなりの練度です」

 

みほがそう呟くと、優花里がそう言って来る。

 

『こちらサンショウウオさんチーム! 西住総隊長! 応答願います!!』

 

「!! みぽりん! サンショウウオさんチームから緊急通信だよ!!」

 

とそこで、本隊に居るサンショウウウオさんチームの聖子から緊急通信が入り、沙織がみほへと回す。

 

「如何しました?」

 

『現在我々本隊は知波単機甲部隊に完全に包囲されました! 敵の攻撃は苛烈! このままでは全滅してしまいます!!』

 

「!? 落ち着いて! 郷さん、もっと詳しく状況を………」

 

『!? きゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!』

 

詳しい状況を問い質そうとしたみほだったが、通信機越しに爆発音が聞こえた後、聖子の悲鳴が響き、通信機からはノイズしか聞こえて来なくなった。

 

「!? 郷さん!? サンショウウオさんチーム!? 応答して下さい!!」

 

そう叫ぶみほだが、通信機からはやはりノイズしか返って来ない。

 

「サンショウウオさんチーム、通信途絶! 他の皆にも繋がらないよ!!」

 

「クウッ………」

 

通信機を弄りながらそう報告する沙織の言葉を聞き、みほは苦い顔を浮かべる。

 

幾らみほの指揮能力が優れているとは言え、本隊と敵の状況が分からず、通信も繋がらないこの状況では指揮の取り様が無い。

 

本隊には迫信が居るが、彼は歩兵の総隊長であり、命令系統上、戦車部隊の指揮を完全に取れない。

 

みほの指揮無くしては成り立たない………

 

それこそが、大洗機甲部隊最大の弱点であった。

 

「早く皆と合流しないと………」

 

「ですが! あの五式を無視して突破するのは無理ですよ!」

 

とお、みほの呟きに優花里がそう言った瞬間、五式中戦車が発砲!!

 

砲弾はⅣ号の傍に在った大き目な岩に命中し、岩を粉々にした!!

 

「キャアッ!?」

 

「このままだとジリ貧だぞ………」

 

「当てる事さえ出来れば………」

 

車内に走った振動に悲鳴を挙げる沙織と、ポーカーフェイスに冷や汗を流す麻子に、照準器を覗き込みながら苦い顔をしている華。

 

「…………」

 

みほも必死に打開策を考えているが、良い作戦は思い浮かばない。

 

「オイオイ………マジで絶体絶命じゃねえかよ………」

 

「今回ばかりは了平の意見に賛成です。このままではやられるのを待つだけです………!? うわっ!?」

 

段差の陰に隠れている了平の絶望的な呟きに、楓がそう返した瞬間、近くに榴弾が着弾し、舞い上がった土片が頭上から降り注ぐ。

 

「…………」

 

そんな中、弘樹は決意を固めた様な表情で五式中戦車を見据える。

 

「西住総隊長。残っているとらさん分隊のメンバーと共に本隊へ合流して下さい」

 

「舩坂くん!?」

 

「五式は………小官が食い止めます」

 

驚くみほに向かって、弘樹は淡々とそう言い放つ。

 

「!? そんな!? 無茶だよ! 幾ら舩坂くんでも、歩兵単独で戦車と戦うなんて!!」

 

「危険です! 舩坂殿!!」

 

単独で五式中戦車と戦う積りの弘樹に、みほや優花里の悲鳴にも似た声が飛ぶ。

 

「無茶か如何かは関係ありません………要はやるかやらないかです」

 

「滅茶苦茶だな………」

 

弘樹がそう返すと、麻子が呆れた様にそう呟く。

 

「楓。小官の代わりにとらさん分隊の指揮を取れ」

 

「舩坂さん! しかし………」

 

「分隊長命令だ!」

 

楓が何か言おうとしたのを、弘樹は分隊長命令で遮る。

 

「!………分かりました」

 

「舩坂くん! 止めて! お願いだから………」

 

そう言われて黙り込む楓だったが、みほからはそう言う台詞が泣きそうな声で飛ぶ。

 

「………西住くん」

 

「!」

 

とそこで、弘樹は歩兵モードではなく、普段の口調となってみほへと呼び掛けた。

 

「………君はいつもと同じ様に………小官を信じてくれれば良い」

 

そう言うと弘樹は、Ⅳ号に背中を見せる様に立ち上がる。

 

「…………」

 

その背中を無言で見やるみほ。

 

「………麻子さん、反転して下さい。生き残ったとらさん分隊の皆さんもⅣ号に続いて下さい!」

 

やがて、麻子と残っていたとらさん分隊のメンバーにそう指示を下した。

 

「………分かった」

 

「了解しました」

 

一瞬の間の後に返事を返す麻子と、即座に返事を返す楓。

 

「舩坂くん、お願い………怪我だけはしないでね」

 

「…………」

 

Ⅳ号が反転する中、みほは弘樹にそう言い残す。

 

そして、生き残ったとらさん分隊のメンバーと共に離脱を開始するⅣ号。

 

五式中戦車は当然追撃しようとするが………

 

その目の前に手榴弾が落ち、爆煙が視界を塞ぐ!

 

そして、その爆煙が収まると………

 

「まさか幻と言われた旧日本軍の最強戦車と遣り合う事になるとはな………」

 

一〇〇式機関短銃を構えた弘樹が五式中戦車の前に姿を晒していたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻の幻である88ミリ砲搭載の旧日本軍最強の戦車・五式中戦車………

 

不死身と言われた生きている英霊『舩坂 弘』の子孫・舩坂 弘樹………

 

まさかの対決の火蓋が、ココに切って落とされる………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

知波単の初手をかわした大洗機甲部隊だったが、知波単工兵達により、あんこうチームととらさん分隊が本隊から切り離されてしまう。

みほ達が居なくなった本隊へと強襲を掛ける知波単機甲部隊。
合流を急ごうとするみほ達の前に立ちはだかる旧日本軍最強の戦車・五式中戦車。

みほ達を本隊へ合流させる為、弘樹は単身………
五式中戦車に挑むのだった。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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