ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第75話『絶対絶命です!(前編)』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第75話『絶対絶命です!(前編)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遂に始まった戦車道・歩兵道全国大会の第5回戦………

 

大洗機甲部隊VSプラウダ&ツァーリ機甲部隊の試合………

 

部隊規模にて圧倒的な差が有る為、慎重に行こうとしたみほだったが………

 

コレまでの試合でなまじ勝ち続けた為に勢い付いた大洗機甲部隊の面々は、一気に攻める事を提案する。

 

その意見に押され、みほは短期決戦を挑む事を決定する。

 

だが、それは慢心以外の何者でもなかった………

 

弘樹不在の中、大洗機甲部隊は泥沼へと嵌って行く………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第5回戦・試合会場………

 

北緯50度を超えた、雪の降り頻る雪原地帯………

 

雪を履帯で踏み締めながら、プラウダ戦車部隊の戦車達が進軍している。

 

その数、T-34-76が5両。

 

T-34-85が8両。

 

KV-2が1両。

 

KV-1が2両。

 

T-28が2両。

 

T-26が3両。

 

IS-1が2両。

 

IS-2が1両。

 

IS-3が1両。

 

ISU-152が1両。

 

ISU-122が2両。

 

SU-100が2両。

 

SU-85が2両。

 

SU-76が3両。

 

実に35両ものソ連製戦車並びに自走砲の大軍団である。

 

更に、その全ての戦車・自走砲の上には、ツァーリ歩兵部隊の隊員達がタンクデサントしており、周囲にも凄まじい数の兵員輸送車や装甲車に乗るツァーリ歩兵部隊隊員達が展開している。

 

「良い! アイツ等にやられた奴は、全員シベリア送り、25ルーブルよ!!」

 

と、先頭を行くT-34-85のハッチから姿を晒していたカチューシャが、プラウダ&ツァーリ機甲部隊の面々に向かってそう言い放つ。

 

「日の当たらない教室で、25日間の補習って事ですね」

 

「おお~、やだやだ」

 

「精々頑張るとしますか」

 

ノンナがカチューシャの言葉の意味を補足すると、ピュートルとマーティンがおどけてそう言い合う。

 

「行くわよ! 敢えてフラッグ車だけ残して、後は皆殲滅してやる………力の違いを見せつけてやるんだから!!」

 

「「「「「「「「「「ウラアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」」」」」」」」」」

 

カチューシャが続けてそう言い放つと、プラウダ&ツァーリ機甲部隊の面々からロシア語の勇ましい掛け声が挙がった。

 

更にその後、ノンナとカチューシャが、ロシア民謡『カチューシャ』を歌い始め、プラウダ&ツァーリ機甲部隊の士気は更に高まるのだった。

 

『さ~て、いよいよ始まりました、戦車道・歩兵道全国大会の第5回戦! 大洗機甲部隊VSプラウダ&ツァーリ機甲部隊の試合!』

 

『プラウダ&ツァーリ機甲部隊の様子………正に赤軍そのものですね。怖いですね~』

 

そんなプラウダ&ツァーリ機甲部隊の様子を、ヒートマン佐々木とDJ田中はそう実況する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

一気に攻めるべく、全軍で進んでいる大洗機甲部隊は………

 

「冷える~………」

 

先頭を行って居るⅣ号の中で、沙織がそう呟く。

 

時間が経つと共に気温はドンドン下がっており、鋼鉄製の戦車の中はまるで冷蔵庫の様に冷え切っていた。

 

「一気に決着を着けるのは正解かも知れませんね」

 

「…………うん」

 

それを聞いた華がそう言い、キューポラから姿を晒しているみほは周囲を警戒しながら返事を返す。

 

「ポットにココア入れて来ました。良かったらどうぞ」

 

そこで、優花里がみほに温かいココアを差し出す。

 

「ありがとう………」

 

お礼を言いながらココアを受け取り、口を付けるみほ。

 

と、その時………

 

「西住総隊長、サンショウウオさんチームが遅れている」

 

「えっ?」

 

迫信からそう報告が挙がり、みほが後ろを振り返ると、部隊の中から落後し始めているサンショウウウオさんチームのクロムウェルの姿が目に入る。

 

「サンショウウウオさんチーム、如何しました?」

 

『唯ちゃん、如何したの?』

 

『エンジンの調子が悪い。おかしいな………試合前に点検した時は何でも無かったのに………』

 

みほが問い質すと、聖子と唯のそう言う会話が返って来る。

 

尚、今回のサンショウウオさんチームの参戦者は………

 

聖子が戦車長、伊代が通信手、明菜が砲撃手、唯が操縦士、郁恵が装填手となっている。

 

『オイ、何をやっているんだ! このままでは作戦に支障が出るではないか!!』

 

空かさず桃の叱咤の声が通信回線に割り込んで来るが………

 

「貴様が作戦に支障を出さなかった事が有れば聞いてみたいな………」

 

『何ーっ!! 私が何時作戦に支障を出した!!』

 

「今までの全てでだ」

 

『むきーっ!!』

 

熾龍に毒舌が入り、そのまま何時もの遣り取りを展開するのだった。

 

「………他に遅れている方は居ませんか?」

 

「砲兵部隊が少し遅れているね。それと、アリクイさんチームの面々も僅かに………」

 

そこでみほが迫信にそう問い質すと、迫信は大洗機甲部隊全体を見回してそう言う。

 

「やはり、今回が初試合のアリクイさんチームと重たい砲を運んでいる砲兵に、この雪中での進軍は厳しいみたいですね」

 

「…………」

 

優花里がそう言うと、みほは考え込む様な様子を見せる。

 

『西住総隊長。私達は後から追い付きますから、先に行って下さい』

 

「でも………」

 

『一気に攻めるならスピードは大事です。大丈夫、歩兵の皆が護衛してくれますから』

 

「………分かりました。但し、アリクイさんチームとおおかみさん分隊。それに砲兵部隊の皆さんも一緒に残って下さい」

 

『えっ?』

 

「俺達もか?」

 

と、みほのそう言う指示が飛ぶと、ねこにゃーと白狼から戸惑いの声が挙がった。

 

「小隊規模での行動は危険です。万が一と言う事もあります」

 

『わ、分かりました』

 

「仕方ねえな………」

 

みほが続けてそう言うと、ねこにゃーがそう返事を返し、白狼も不承不承ながらも了承する。

 

「すまないな、西住総隊長。後で必ず追い付く」

 

「ハイ、十分に気をつけて下さい」

 

砲兵部隊を代表する様に明夫がそう言うと、みほがそう返し、アリクイさんチームとサンショウウオさんチーム、そしてその随伴分隊であるおおかみさん分隊とタコさん分隊、それに砲兵部隊を加えた一同が、本隊から離脱する。

 

そして、大洗機甲部隊の本隊は、更に進軍を続けた。

 

「………敵は北東方面に進行中。時速約20キロ。尚、戦車2両を含む中隊規模が遅れて進軍中。コチラは時速10キロ程です」

 

と、その様子を盗み見ている者達が居た………

 

ツァーリ歩兵部隊の偵察兵達である。

 

稜線に伏せて顔だけを出し、双眼鏡で覗き見た大洗機甲部隊の様子をプラウダ&ツァーリ機甲部隊本隊へと送っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合会場の別の場所………

 

プラウダ&ツァーリ機甲部隊本隊が駐留している地点………

 

「ふ~ん、一気に勝負に出る気? 生意気な………ノンナ!」

 

その報告を受けて、軽食を取っていたカチューシャは傍らに居たノンナに呼び掛ける。

 

「分かってます………」

 

ノンナはそう答えると、プラウダ&ツァーリ機甲部隊本隊に向かって手を上げた。

 

「………出撃!」

 

それに答える様にデミトリがそう声を挙げたかと思うと、プラウダ&ツァーリ機甲部隊は一斉に動き出すのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、サンショウウオさんチーム達を残して進軍している大洗機甲部隊の本隊は………

 

「停止」

 

みほがそう呼び掛けると、大洗機甲部隊の本隊は停止する。

 

一同の前方には、降り積もった雪によって出来た壁が在った。

 

「うわぁっ、コレ全部雪かよ………」

 

「どんだけ降ってたんだか………」

 

その雪の壁を見て、磐渡と俊がそう言い合う。

 

「進路を確保します」

 

と、灰史を初めとした工兵部隊が、雪を除去しようとスコップを手にする。

 

「あ、待って下さい」

 

しかし、みほはそれを制止すると、Ⅳ号の車内へと引っ込む。

 

「華さん、前の雪中を榴弾で撃ってくれる?」

 

「分かりました」

 

「榴弾、装填完了です!」

 

みほがそう指示を出すと、華が返事を返し、優花里が即座に榴弾を装填する。

 

そして、華がトリガーを引くと榴弾が発射。

 

放たれた榴弾は雪の壁に突っ込み、一瞬の間の後、爆発!

 

雪の壁を吹き飛ばした。

 

「おお! スゲェッ!!」

 

「やる事が派手ですね………」

 

重音が声を挙げ、清十郎が思わずそう呟く。

 

そのまま、大洗機甲部隊の本隊は、雪の壁を吹き飛ばした部分から更に進軍して行く。

 

「奥様! 撃ったのはお嬢ですよ!」

 

「花を活ける手で………」

 

その様子を観客席で見ていた新三郎は拍手を送るが、百合は渋い顔をする。

 

「………ココまで来たんですから、応援して差し上げて下さい」

 

「…………」

 

執り成す様にそう言う新三郎だったが、百合は渋い顔のままだった。

 

『さて、続いて大洗機甲部隊の様子ですが………如何やら一気に勝負を仕掛ける積りの様ですね』

 

『う~ん、確かに相手の得意なフィールドで戦う以上、長期戦より短期決戦を挑んだ方が良いと言う考え方も有りますが、さてこれは………』

 

「………! 敵を発見しました!!」

 

ヒートマン佐々木とDJ田中の実況が続く中、大洗機甲部隊の先頭を行って居たⅣ号に随伴していたとらさん分隊の中で、双眼鏡を覗き込んで前方を警戒していた楓がそう声を挙げる。

 

「!!」

 

すぐにみほも双眼鏡を取り出し、前方の様子を確認する。

 

そこには、T-34-76、T-26、T-28の3両のプラウダ戦車。

 

そして、その3両の随伴歩兵分隊と思われる中隊規模の歩兵部隊の姿が在った。

 

「! 11時に敵部隊! 各部隊警戒!!」

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

みほがすぐにそう指示を出すと、各部隊が行動に入る。

 

「軽戦車が2両と中戦車が1両に中隊規模の歩兵部隊………外郭防衛線かな?」

 

敵の規模から、みほは外郭防衛線かと推測する。

 

と、そこで、T-34-76、T-26、T-28が、大洗機甲部隊に向かって発砲して来た!

 

「! 気づかれた!」

 

「任せてくれ、西住ちゃん! 漸く配備されたパンツァーファウストの威力を見せてやるぜ!」

 

みほが声を挙げると、地市がそう言って、パンツァーファウストを構える。

 

 

 

 

 

パンツァーファウストとは、第二次世界大戦中のドイツ国防軍が使用した携帯式対戦車擲弾発射器の事である。

 

擲弾発射器の為、ロタ砲やバズーカのロケット弾みたいに、弾頭自体に飛翔能力は無いが、その分後方へ噴出される爆炎が少ないと言う利点がある。

 

最も特筆すべきはその威力であり、初期型のものでも140mm、後期型のものは200mmの装甲を貫通する威力を持っていた。

 

連合軍のあらゆる戦車を撃破可能であり、友軍の誤射であのヤークトティーガーを撃破したと言う話も存在する。

 

すぐ後に出たパンツァーシュレックと共に、第二次世界大戦中に開発された歩兵用の対戦車装備としては最強の部類に入る代物である。

 

しかし、それ故に歩兵道では絶大な人気を誇っており、品薄で強豪校ででもなければ、中々数を揃えられないのが現状である。

 

実際、大洗機甲部隊でも回されたのは地市を初めとした一部の対戦車兵だけであり、他の者達は未だにバズーカやロタ砲である。

 

 

 

 

 

「よ~く狙って………」

 

起こした照準器を覗き込み、T-34-76に狙いを定める地市。

 

「「「「「「「「「「ウラアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」」」」」」」」」」

 

と、そんな地市の存在に気付いたツァーリ歩兵達が、一斉に突撃を行って来る。

 

「やらせるかいなっ!!」

 

「…………」

 

だが、邪魔はさせないと大河とシャッコーがヴィッカース重機関銃とブローニングM1917重機関銃で弾幕を張る。

 

「撃てぇーっ!!」

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

それに呼応する様に、軽機関銃や短機関銃を持っていた大洗歩兵達も一斉に射撃を行う。

 

「うわぁっ!!」

 

「ぎゃああっ!?」

 

突っ込んで来ていたツァーリ歩兵部隊は、弾幕を浴びて次々に倒れて行く。

 

「奴さん、射的の的になりたいようです!!」

 

「撃てぇーっ!! 即刻攻撃ーっ!!」

 

次々に倒れて行くツァーリ歩兵部隊の姿を見て、大洗歩兵部隊の面々の士気が高揚して行く。

 

「地市! 早く撃てって!」

 

「分かってるよ! 喰らえっ!!」

 

と、M3サブマシンガンで弾幕を張っていた了平がそう言うと、地市が遂にパンツァーファウストを発射!

 

放たれた擲弾は、弧を描く様にT-34-76に命中!

 

爆発の後、一瞬間が有って、T-34-76の砲塔上部から白旗が上がった。

 

「よっしゃあっ!!」

 

「スゲェッ! 1発で仕留めたぞ!!」

 

地市がガッツポーズをすると、大洗歩兵部隊の中からそんな声が挙がる。

 

「コチラも攻撃します!」

 

直後にみほがそう言うと、Ⅲ突とⅣ号は発砲!

 

砲弾はT-28の車体に直撃し、T-28は白旗を上げた。

 

「命中しました!」

 

「凄~い! 一気に2両も!!」

 

優花里が命中の報告を挙げ、沙織がいきなり敵戦車を2両も撃破した事に歓声を挙げる。

 

「やった!」

 

「昨年の優勝校を撃破したぞ!」

 

「時代は我等に味方している!」

 

「コレは行けるかもしれん!」

 

「この勢いでGoGoだね!」

 

更に、典子、エルヴィン、カエサル、桃、杏からも歓声が挙がる。

 

「ロシアのT-34を撃破出来たなんて! コレは凄い事ですよ!………?」

 

「…………」

 

優花里が興奮した様子でみほにそう声を掛けるが、みほは強張った表情を浮かべていた。

 

「如何したの?」

 

「………上手く行き過ぎる」

 

沙織がそう尋ねると、みほは強張った表情のままそう呟く。

 

「あ! オイ、逃げるぞっ!!」

 

「!!」

 

と、その直後に大洗歩兵部隊員のものと思われる声が挙がり、みほがキューポラから顔を出すと、残っていたT-26とツァーリ歩兵部隊が、大洗機甲部隊に背を向け、逃走を始めていた。

 

「全軍前進! 追撃します!!」

 

「「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」」

 

すぐにみほの指示が飛び、大洗機甲部隊はT-26と残存ツァーリ歩兵部隊の追撃に入るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪原の中、大洗機甲部隊に背を向けたまま只管逃走しているT-26と残存ツァーリ歩兵部隊。

 

「何で逃げてるの?」

 

「コッチが全軍で追い掛けているからじゃないですかぁ」

 

沙織が逃げの一手のT-26と残存ツァーリ歩兵部隊の事を疑問に思ったが、優花里が戦力差の違いだと言う。

 

「そうだよね~。何故か追うと逃げるよね~、男って」

 

それを聞いた沙織は、それ以上疑問に思わなくなる。

 

「! 逃走中の敵部隊の前方に新たな影を発見!」

 

「確認します!」

 

とそこで、清十郎からそう言う声が挙がり、M3リーのハッチから姿を晒していた梓が双眼鏡で影を確認する。

 

それは、SU-76、KV-1、T-26、T-28、T-34-76のプラウダ戦車部隊。

 

更に、53-K 45mm対戦車砲に付いて居るツァーリ砲兵部隊だった。

 

そして、T-34-76には、フラッグ車である事を示す青い旗がある。

 

「あそこに固まってる………フラッグ車、発見しました!」

 

「千載一遇のチャンス! よし! 突撃!!」

 

「「「「「「「「「「行けええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

「アターックッ!!」

 

と、フラッグ車発見の報告を受けた桃が、みほを待たずに独断で指示を出し、大洗戦車部隊は突っ込んで行く。

 

「遅れを取るなぁーっ!!」

 

「行け行けーっ!!」

 

「前進ー! 前進あるのみーっ!!」

 

それに触発される様に、大洗歩兵部隊の面々も突撃する。

 

「アゴーニッ!!」

 

「「「「「ウラァーッ!!」」」」」

 

撃てと言うロシア語が叫ばれたかと思うと、ツァーリ砲兵部隊が53-K 45mm対戦車砲を撃ち始める!

 

更に、プラウダ戦車部隊も砲撃を始める。

 

次々と砲弾が飛来する中、勢いに乗っている大洗機甲部隊は果敢に攻める。

 

「喰らえっ!!」

 

「「「「「おわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」」」」」

 

重音がそう言ってバズーカを放ち、1門の53-K 45mm対戦車砲とそれに付いて居たツァーリ砲兵達を吹き飛ばす!

 

「ええいっ!!」

 

更に、自慢の足で接近した竜真が、逃走していたT-26に向かって収束手榴弾を投げつける。

 

収束手榴弾が爆発すると、装甲の薄い軽戦車では耐えられず、逃走していたT-26は失速して停止すると、砲塔上部から白旗を上げる。

 

押され始めたプラウダ戦車部隊とツァーリ砲兵部隊は、フラッグ車を守る様に展開し始める。

 

「撃てぇっ!!」

 

その瞬間にⅢ突が発砲!

 

砲弾がKV-1の砲塔基部に命中すると、白旗が上がる。

 

「KV-1がやられた!」

 

「駄目だ! 逃げろぉーっ!!」

 

と、途端にツァーリ砲兵部隊は対戦車砲を放棄し、撤退を始める。

 

プラウダ戦車部隊も、フラッグ車を庇いながら後退し始める。

 

「逃がすかっ!!」

 

「追え追えっ!!」

 

「ブリッツクリーク!!」

 

「撃て撃てーっ!!」

 

「行け行けーっ!!」

 

「ぶっ潰せー!!」

 

「ぶっ殺せーっ!!」

 

「やっちまえーっ!!」

 

「ストレート勝ちしてやる!!」

 

「ちょっと待ちなさいよ!!」

 

それを見た大洗機甲部隊の面々は命令を待たずに更に追撃に入る。

 

「ちょっと! 待って下さい!」

 

「待ちたまえ、諸君! 敵の動きがおかしい!!」

 

みほと迫信が制止を掛けるが、熱くなり過ぎている為、誰の耳にも入らない。

 

止むを得ず、みほ達もその後を追う。

 

『プラウダ&ツァーリ機甲部隊、大洗機甲部隊の前に逃げの一手に見えますが、コレは………』

 

『ちょっとマズイですよぉ………』

 

そんな試合の様子を、ヒートマン佐々木ととDJ田中はそう実況する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

追撃途中、何故かフラッグ車のT-34-76が部隊から離れて単独で逃げ出した為、大洗機甲部隊はそちらを全戦力で追撃。

 

そのまま廃村の在る窪地へと入り込んでいた。

 

大洗戦車部隊からの絶え間ない砲撃を只管かわしているフラッグ車のT-34-76。

 

「フラッグ車さえ倒せば!」

 

「勝てる!」

 

「この試合貰ったーっ!!」

 

「6回戦進出だぁーっ!!」

 

勝利は目前だと思っている大洗機甲部隊の面々からそんな声が挙がる。

 

だが、その時………

 

大洗機甲部隊の背後に在った家の陰から、2両のT-34-76が出て来る。

 

「! 西住総隊長! 後ろだっ!!」

 

「!?」

 

迫信の声で、みほは背後のT-34-76達に気付く。

 

「東に移動して下さい! 急いで!!」

 

「!? 何だ!?」

 

慌てて部隊に東に移動する様に指示を出し、大洗機甲部隊は戸惑いながらも東へ向かおうとする。

 

だが、そこには既に、ISU-152が1両、ISU-122が2両、待ち構えていた。

 

「! 南南西に方向転換………!?」

 

今度は南南西へと向かおうとしたみほだったが、その方向にも、IS-1が2両、IS-2が1両、IS-3が1両のIS戦車部隊が、雪を掘って作った塹壕の中から出て来る。

 

更に、残りのプラウダ戦車部隊の戦車も、大洗機甲部隊を取り囲む様に出現する。

 

「囲まれてる!」

 

「周り全部敵戦車だよ!!」

 

「罠だったのか………」

 

「ええっ!?」

 

「ああっ!?」

 

「はっ!?」

 

取り囲まれた事に、大洗戦車部隊から次々と驚きの声が挙がる。

 

その次の瞬間には、プラウダ戦車部隊の一斉砲撃が始まる!

 

次々と砲弾が飛び、大洗戦車部隊の周辺に着弾する!

 

と、その内の1発が、M3リーの主砲部分に命中し、砲身を破壊した!

 

「! 主砲が!」

 

「このぉっ!!」

 

梓の声が挙がった瞬間、光照がバズーカを発射する。

 

ロケット弾がT-28に命中し、白旗を上げさせる。

 

「怯むなぁっ! 相手の歩兵部隊は居ないぞ!」

 

「肉薄して1発お見舞いしてやれぇーっ!」

 

プラウダ戦車部隊に、護衛の歩兵部隊が居ないのを見て、大洗歩兵部隊からそう声が挙がる。

 

すると………

 

突如として地鳴りの様な振動と、大勢の叫び声が聞こえて来た。

 

「!?」

 

「何だっ!?」

 

大詔がそう声を挙げた瞬間………

 

「「「「「「「「「「ウラアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」」」」」」」」」」

 

ロシア語の雄叫びと共に、凄まじい数のツァーリ歩兵部隊が、窪地の廃村内へと突入して来た。

 

余りの数の多さで、雪原が見えず、地面が黒く染まって見ている。

 

「な、何だアリャッ!?」

 

「! ツァーリ歩兵部隊!!」

 

「何だよ、あの数!?」

 

「ありゃ5万人どころじゃねえ! 10万は居る!!」

 

途端に悲鳴の様な叫び声が挙がる大洗歩兵部隊。

 

それもその筈………

 

突撃して来たツァーリ歩兵部隊の数は凡そ10万人………

 

まるで人の津波の様だった。

 

「「「「「「「「「「ウラアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」」」」」」」」」

 

と、そこでツァーリ歩兵部隊からの銃撃が始まる!

 

「!? うわぁっ!!」

 

「ぐああっ! やられたぁっ!!」

 

四方八方から銃弾が飛んで来て、大洗歩兵部隊に次々と戦死判定者が出る。

 

「クソッタレェっ!!」

 

磐渡が悪態を吐きながらFM mle1924/29軽機関銃を発砲する。

 

「うわぁっ!」

 

「ぐああっ!?」

 

弾丸を浴びたツァーリ歩兵数名が戦死判定を受けて倒れ伏す。

 

「「「「「「「「「「ウラアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」」」」」」」」」

 

しかし、すぐにその100倍以上の人数が、倒れた仲間を文字通り踏み越えて殺到して来る。

 

「だ、駄目だぁっ! 抑えられないっ!!」

 

「全軍! 南西の大きな建物に移動して下さい! あそこに立て籠もります!」

 

磐渡の悲鳴が挙がった瞬間、廃村の中に教会だったと思われる大きな建物を発見したみほが、そこへ向かう様に指示を飛ばす。

 

大洗機甲部隊の面々はすぐさま、その教会跡へと退避を始める。

 

「急げ! 早くしろ!!」

 

「戦車の方が優先だぞっ!!」

 

大洗歩兵部隊は、戦車部隊の退避を優先し、ギリギリまでプラウダ&ツァーリ機甲部隊に立ち向かう。

 

「ウラァーッ!!」

 

と、ツァーリ歩兵の1人が、掛け声と共にF1手榴弾を投擲する。

 

「「「「「うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」」」」」

 

爆発の直撃と破片を浴びた大洗歩兵隊員数名が纏めて戦死判定を受ける。

 

「アゴーニッ!!」

 

更に、ツァーリ砲兵部隊から、D-1 152mm榴弾砲が放たれる!

 

「「「「「ぐわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」」」」」

 

炸裂した榴弾の破片を浴び、またも大洗歩兵隊員数名が纏めて戦死判定を受ける。

 

「クソォッ!」

 

「オイ、しっかりしろっ!!」

 

ヤケクソ気味にツァーリ歩兵部隊に向かって撃ち返す大河と、戦死判定は免れたが負傷判定を受けた大洗歩兵に肩を貸して教会へと逃げ込む大詔。

 

その間に、大洗戦車部隊は八九式、M3リー、ルノーB1bis、38tが教会内への退避を終える。

 

それに続く様にⅢ突が教会内に入ろうとした瞬間!

 

右側の履帯にプラウダ戦車部隊が放った物と思われる砲弾が直撃!

 

「履帯と転輪をやられました!」

 

エルヴィンの報告が挙がり、Ⅲ突は教会の入り口で立ち往生してしまう。

 

そんなⅢ突に、2両のT-34-76が狙いを定めるが、Ⅲ突を守る様に、Ⅳ号がプラウダ戦車部隊に正面を向けながらⅢ突へ接触!

 

Ⅳ号にT-34-76の砲撃が命中したが、角度が浅かった為、弾かれる。

 

反撃にとⅣ号も発砲。

 

砲弾は手前に居たT-34-76の車体側面に命中したが、コレも角度が悪かった為、弾かれてしまう。

 

その直後に、奥に居たT-34-76が発砲。

 

砲弾がⅣ号の砲塔左側を掠る様に被弾する。

 

「砲塔故障!」

 

「後退!!」

 

その被弾の衝撃で砲塔旋回装置が故障した事を華が告げる中、みほは後退を指示。

 

Ⅳ号はⅢ突を押し込む様にして、教会内へと退避する。

 

「アゴーニッ!!」

 

「「「「「ウラァーッ!!」」」」」

 

教会内に立てこもった大洗機甲部隊に、プラウダ&ツァーリ機甲部隊は容赦無い攻撃を続ける。

 

砲弾や銃弾が次々に教会の壁に命中し、教会内にはまるで地震の様な振動が走る!

 

と、その容赦無い砲撃が、不意に止んだ………

 

「!? 砲撃が止んだ?………」

 

「オイ、誰か来るぞっ!!」

 

みほが戸惑いの声を挙げると、地市がそう声を挙げた。

 

それは、白旗を掲げたプラウダ戦車部隊の隊員と思われる2人の少女だった。

 

何事かと、大洗機甲部隊は戦車部隊員、歩兵部隊員全員が入り口付近に集まる。

 

「カチューシャ総隊長の伝令を持って参りました」

 

「伝令?」

 

「『降伏しなさい。全員土下座すれば許してやる』………だそうです」

 

「!?」

 

「何だと!? ナッツッ!!」

 

何ともテンプレ的な降伏勧告にみほが驚き、桃が悪態を吐く。

 

「総隊長は心が広いので3時間は待ってやる………と仰っています。では………」

 

それだけ伝えると、プラウダ戦車隊員は踵を返して自軍の元へと帰って行った。

 

「誰が土下座なんか!」

 

「全員自分より身長低くしたいんだな!」

 

「徹底抗戦だ!」

 

「戦い抜きましょう!」

 

「そうだそうだ!」

 

「あんな降伏が呑めるかっちゅーんや!」

 

「全くだ!」

 

「せめて一矢報いましょう!」

 

「プラウダになァーッ! 降伏など、出来るわきゃーねェだろォォォーーーッッ!!」

 

典子、桃、エルヴィン、梓、地市、大河、磐渡、勇武、月人からそう声が挙がる。

 

「でも、こんなに囲まれていては………一斉に攻撃されたら、怪我人が出るかも」

 

だがみほはそう懸念する。

 

戦車は傷つき、歩兵部隊も既に半分まで数を減らしている。

 

そのうえ完全に囲まれているとなれば、最早戦っても勝利の望みは薄い………

 

「みほさんの指示に従います」

 

そこで、華がみほにそう言う。

 

「あ………」

 

「私も、土下座くらいしても良いよ!」

 

「ココまで来ただけでも上出来だ。無理はするな」

 

それに続く様に、沙織と麻子もそう言う。

 

「…………」

 

しかし、みほの件を知る優花里だけは何も言えず、俯いていた。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

その言葉で、大洗機甲部隊の面々も冷静になり、静まり返る。

 

「駄目だっ!!」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

だが、その静寂を破る様に、桃がそう大声を挙げた。

 

「絶対に負けるワケにはいかん! 徹底抗戦だ!!」

 

身体を震わせてそう言う桃。

 

「…………」

 

いつもなら毒舌の1つも浴びせる熾龍も、何故か黙っている。

 

「でも………」

 

「勝つんだ! 絶対に勝つんだ! 勝たないと駄目なんだ!!」

 

みほの言葉を遮り、桃は尚そう叫ぶ。

 

「如何してそんなに………初めて出場して、ココまで来ただけでも凄いと思います! 戦車道と歩兵道は戦争じゃありません。勝ち負けより大事なものがある筈です」

 

(! 西住殿!!)

 

自分の勘当の件などおくびにも出さずそう言い放つみほを見て、優花里が心の中で叫ぶ。

 

「勝つ以外の何が大事なんだ!!」

 

「私………この学校に来て、皆と出会って、初めて戦車道の楽しさを知りました。この学校も、戦車道も大好きになりました! だから、その気持ちを大事にしたまま、この大会を終わりたいんです」

 

「みほちゃん………」

 

「くう、泣けるで」

 

みほの言葉を聞いて、大河を初めとした一部の者達が涙ぐむ。

 

しかし………

 

「何を言っている………負けたら我が校は無くなるんだぞ!!」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

続けて桃が放ったその言葉で、大洗機甲部隊の全員に衝撃が走る。

 

「え………学校が………無くなる?」

 

みほは桃が言った言葉の意味が分からず混乱する。

 

「………河嶋の言う通りだ」

 

すると、そんなみほと他の一同に説明するかの様に、杏が口を開く。

 

「この全国大会で優勝できなければ………我が大洗女子学園は廃校になる」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

杏のその言葉に、大洗機甲部隊のメンバー全員が言葉を失い、愕然としたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

原作よりも車両数が増えているプラウダ戦車隊。
何と、35両も居ます。
そしてツァーリ歩兵部隊は10万人!
正におそロシアです。

原作通りに、サンショウウオさんチーム達を除いて完全包囲されてしまう大洗機甲部隊。
降伏勧告が出される中、最悪のタイミングで廃校の話が表に出てしまう。
果たして、大洗機甲部隊の運命や如何に?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。
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