ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース 作:宇宙刑事ブルーノア
『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』
第82話『ツァーリ歩兵部隊大襲撃です!』
プラウダ&ツァーリ機甲部隊の包囲網を、『ところてん作戦』と弘樹の援護、非正規部隊の反乱………
そしてカメさんチームの奮戦により突破した大洗機甲部隊。
追撃部隊が迫る中、弘樹と合流を果たしたみほ達は、主力部隊として反転。
廃村の中に居る敵フラッグ車の撃破を試みる。
押し寄せるデミトリ達を含んだツァーリ歩兵部隊を、大洗歩兵部隊が食い止めている間に………
みほが率いる戦車部隊は、一斉にフラッグ車の元へと向かうのだった。
第5回戦・試合会場………
北緯50度を超えた、雪の降り頻る雪原地帯の窪地の中に在る廃村………
「間も無く目標地点です! 全車! 周囲に注意を払って下さいっ!!」
『『『了解っ!!』』』
大洗戦車部隊の先頭を行くⅣ号のキューポラから姿を晒しているみほが、各チームにそう呼び掛ける。
「赤い壁の建物………」
みほも周囲を見回し、楓が言っていた赤い壁の建物を探す。
「! みぽりん! 11時の方向っ!!」
「!!」
するとそこで、みほを手伝おうと、通信手席のハッチを開けて顔を出した沙織がそう叫び、みほは即座にその方向を見やる。
そこには、赤い壁の建物の陰から僅かに覗いている敵フラッグ車であるT-34-75の車体が在った。
「! 発見しましたっ!!」
「!? 敵来襲っ!!」
みほが発見の報告を挙げるのと同時に、敵フラッグ車も大洗戦車部隊の存在に気付いて急発進!
「逃がしません! 追撃を!!………」
と、みほがそう指示を出そうとした瞬間………
敵フラッグ車が逃げた方向とは別の方向から、砲弾が飛んで来て、Ⅳ号の目の前に着弾!
「!?」
舞い上がった雪から顔を庇いつつも、すぐに砲弾が飛んで来た方向を確認するみほ。
そこには、砲口から硝煙を挙げているIS-1の姿が在った。
「!? IS-1!!」
「此方に残っていたんですか!?」
みほと優花里が驚きの声を挙げる中、IS-1は主砲をⅣ号の方へと旋回させる。
「! 全車散開っ!!」
『『『!!』』』
すぐさまみほの指示が飛び、固まって移動していた大洗戦車部隊は方々に散らばる。
直後にIS-1が再び発砲し、先程まで大洗戦車部隊が居た場所に砲弾が着弾する。
「今の内に逃げろっ!」
「あんがとぉーっ!」
IS-1の車長がそう言い放つと、敵フラッグ車は逃走して行く。
「みぽりん! フラッグ車が!!」
「くうっ!………」
沙織の声に、みほは苦い表情を浮かべる。
その間にも、IS-1は再び砲塔を旋回させる。
と、その時!!
発砲音がして、2発の砲弾がIS-1へと命中!
どちらもIS-1の重装甲の前に弾かれて火花を散らしただけだったが、衝撃でIS-1は動きを止める!
「!!」
「西住総隊長! ココは私達が!!」
「総隊長達はフラッグ車を!!」
驚くみほの耳に、サンショウウオさんチームの聖子と、アリクイさんチームのねこにゃーの声が響く。
そしてクロムウェルと三式が発砲。
砲弾はIS-1へと命中したが、またも装甲で弾かれて明後日の方向へ飛んで行く。
「! カバさん! あんこうに続いて下さいっ!!」
「了解した!!」
それを受けてみほは躊躇わずにカバさんチームのⅢ突を連れ、敵フラッグ車を追撃して行った。
「行かせるかっ!!」
IS-1がそんなⅣ号とⅢ突に主砲を向けようとするIS-1だったが………
そこで三度砲弾が直撃!
「うおわっ!?」
またも装甲で弾かれるが、衝撃で車内が揺れ、砲撃のタイミングを逃してしまう。
「貴方の相手は!」
「ぼ、僕達です!!」
「オノレェッ!!」
聖子とねこにゃーがそう言うと、IS-1はクロムウェルと三式の方へと向かって行くのだった。
一方………
ツァーリ歩兵部隊と交戦中の大洗歩兵部隊の面々は………
「俺は攻撃を行う!!」
「りょーかーいっ! ドンドン行けぇーっ! 貴様の後に続くーっ!!」
「行くぞぉっ!」
「戦友達の仇だぁーっ!!」
即席で掘った塹壕の中に隠れ、或いは廃村の建物内に籠り、突撃して来るツァーリ歩兵部隊に銃撃を見舞っている。
「我等が母校の栄誉の為にぃーっ!!」
「同志カチューシャ様の為にぃーっ!!」
それに対し、相も変わらず人数に任せた強行突撃を続けるツァーリ歩兵部隊。
しかし、半数以上の非正規部隊が反乱を起こし、更にその鎮圧の為に部隊を割いてしまっている現在のツァーリ歩兵部隊でその戦術を行うのは余りにも非効率的だった。
「ぐあっ!?」
「ぎゃあっ!?」
大洗歩兵部隊の銃撃の前に、ツァーリ歩兵部隊の隊員達は次々と地に倒れ伏して行く。
「奴さん射的の的になりたいようです!」
「良いぞっ! ドンドン撃てぇーっ!!」
「こりゃ行けるんじゃねえのか!?」
その光景に、了平が思わずそう声を挙げる。
「止めろ! お前が言うとフラグにしか聞こえねえんだよっ!!」
護身用の十四年式拳銃を撃っていた地市が、了平のその台詞を聞いてそう言い放つ。
と、その瞬間!!
「ヒャッハーッ!!」
世紀末的な叫びと共に、RF-8の乗ったピョートルとマーティンが突撃した来た!!
「そらそらそらぁっ!!」
マーティンが操縦するRF-8の後部座席に立っているピョートルが、両手に握っていたトカレフTT-33での二丁拳銃撃ちを繰り出す!
「「「「「うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」」」」」
大洗歩兵部隊の隊員数名が、薙ぎ払われる様に弾丸を浴び、戦死判定を受けた。
「ホレ、見ろ!」
「俺のせいかよ!?」
それを見た地市と了平がそう言い合っていた瞬間!!
「猟犬部隊! 突撃ぃーっ!!」
「「「「「「「「「「ヒャッハーッ!!」」」」」」」」」」
またも世紀末的な叫びが響き渡り、RF-8に乗ったピョートルの率いる『猟犬部隊』が一斉に突撃して来る。
猟犬部隊は、大洗歩兵部隊の隊員達が籠っている塹壕や家の周りを走り回り、機関銃掃射や手榴弾を投擲する。
「うわぁっ!?」
「ぎゃあっ!?」
次々と戦死判定者が出て行き、更に動き回る猟犬部隊によって、大洗歩兵部隊は徐々に分断されて行く。
「マズイな………分断して各個撃破を狙う積りか………」
そう言いながら、九七式狙撃銃で1人のRF-8の操縦手と後部座席に居たツァーリ歩兵を、続け様にヘッドショットする迫信。
「数は元々俺達が有利だ!」
「分断したらジワジワと嬲り殺しにしてやるぜぇっ!!」
RF-8で走り回っているピョートルとマーティンがそう言い放つ。
「そうはさせるかってんだぁっ!!」
とそこで!
陸王に乗った弦一朗が、ピョートルとマーティンが乗るRF-8に向かって行く。
「馬鹿め! バイクでアエロサンに挑む積りか!」
「やってみなけりゃ分かんねえだろぉっ!!」
馬鹿にする様にそう言い放つピョートルだったが、弦一朗は構わずにアクセルを更に吹かして、ピョートル達の乗るRF-8に追いすがる!
雪上にも関わらず、弦一朗は巧みなテクニックで徐々に距離を詰め、遂には並走する!
「へっ! どうだぁっ!!」
「ぬおっ!? コイツゥ!」
「生意気なぁっ!!」
勝ち誇る様にそう言う弦一朗を見て、ピョートルとマーティンは苦々しげな表情を浮かべる。
「退け! ピョートル! マーティン!」
とそこで、そう言う声が響き、BA-64が突撃して来て、銃座に居たデミトリが火炎放射器を構える。
「! ヤッベッ!」
「逃げろ逃げろ!」
それを見ると、すぐさまピョートルとマーティンが乗るRF-8は離脱する。
「焼け死ぬが良いっ!!」
直後に、弦一朗目掛けて、デミトリが火炎放射器から火炎を放つ!
「!? おうわっ!?」
間一髪のところでハンドルを切り、火炎をかわす弦一朗。
「何しやがる! 危うく自慢の髪型が台無しになるとこだったぜ!!」
ヘルメットから覗いているリーゼントを撫でながら弦一朗はそう言い放つ。
「「ヒャッハーッ!!」」
と、その弦一朗目掛けて、またも世紀末的な叫びを挙げながら、ピョートルとマーティンがRF-8を突っ込ませて来る!
「貰ったぜぇっ!!」
「コレで終わりだぁっ!!」
「!? 舐めんななぁっ!!」
ピョートルとマーティンがそう言い放った瞬間!!
弦一郎はバイクを思いっきりジャンプさせ、ピョートルとマーティンが乗るRF-8の頭上を飛び越えた!!
「!? ん何ぃーっ!?」
「そんなのアリかよ!?」
驚くピョートルとマーティンが乗るRF-8の背後で、弦一朗の乗る陸王は着地を決める。
「少しは出来る様だな………ならば本気で相手をしてやろう! イグニッション! ファイヤーッ!!」
そこでデミトリがそう叫んだかと思うと、何と!!
背負っていた火炎放射器の燃料タンクの両脇に付けられていた筒状の物の下部から炎が上がり、デミトリの身体が宙に舞い上がったっ!!
「!? 何ぃーっ!?」
「飛んだっ!?」
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
歩兵が空を飛ぶと言う有り得ない事態に、弦一朗だけでなく、大洗歩兵部隊の全隊員が驚きを露わにする。
「アレはロケット弾の推進装置か………恐らく、彼の火炎放射器の燃料はロケット燃料なんだろう。随分と奇抜な装備を考えたものだ」
「冷静に観察してる場合ですか、会長!」
迫信がそのデミトリの姿を観察してそう言うと、傍に居た逞巳がツッコミを入れる。
「覚悟しろ! 今度は逃げられんぞっ!!」
デミトリは空中を飛翔したまま、陸王に乗る弦一朗に狙いを定める。
「チキショー! 上から狙われたんじゃ如何にもならねえっ!!」
弦一郎の言葉通り、真上から火炎を浴びせられては逃げ場が無かった………
「憤怒の炎を!………」
そして遂にデミトリの指が火炎放射器の引き金を引く………
かに思われた瞬間!
発砲音がして、デミトリの眼前を銃弾が掠めた!!
「!? クウッ!? 狙撃か!?」
思わず仰け反ったデミトリはバランスを崩し、そのまま一旦雪の上に着地するのだった。
森林地帯………
「しまった、外した!」
その狙撃を行った主………戦場からやや離れた森林の中に居た飛彗は、外した事に少し慌てながらもすぐに排莢を行い、次弾を装填。
改めてデミトリを狙う。
するとその時!!
「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」
獣の咆哮の様な叫び後が聞こえたかと思うと、1本の木が根元から折れ、飛彗目掛けて倒れて来た!!
「!? うわあぁっ!?」
慌ててその場から移動し、難を逃れる飛彗。
倒れて来た木は衝撃で、積もっていた雪を粉の様に舞い上げる。
「な、何ですかっ!?」
飛彗がそう声を挙げた瞬間………
「うがああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」
再び獣の咆哮の様な叫び声が響いて、木々の間から巨大な影………
2m60cmは有ろうかと言う身長に熊の様な体躯………
鉄仮面を被って赤いモヒカン刈りの頭をしたツァーリ歩兵………
『ニキータ』が姿を現した!
「!? ツァーリ歩兵!?」
飛彗が驚きの声を挙げるが、次の瞬間にもっと驚かされる光景が展開する。
「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」
ニキータが再び獣の様に咆哮したかと思うと………
何と!!
傍らに置いてあった、移動用の器具を外してあったD-1 152mm榴弾砲を持ち上げて、まるでバズーカの様に肩で構えた!!
「!? なっ!? 榴弾砲を担いで構えた!?」
「うがああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」
飛彗が驚愕の声を挙げた瞬間に、ニキータは咆哮を挙げてD-1 152mm榴弾砲を発砲した!
「!? うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!?」
慌てて走り出した飛彗だったが、放たれた榴弾が背後に着弾して爆発!
その爆風に煽られる形で転倒してしまう。
「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」
ニキータが倒れた飛彗にD-1 152mm榴弾砲を向ける。
「!?」
飛彗、万事休すか!?
と、思われたその時!!
「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ! させるかいなぁーっ!!」
そう言う叫び声と共に大河が現れ、飛彗の元へ素早く駆け寄ったかと思うと、ファイヤーマンズキャリーで抱え上げ、これまた素早く退避!
D-1 152mm榴弾砲から放たれた榴弾は、地面を爆ぜさせるだけに終わった。
「しっかりせい! 大丈夫かいな!?」
「く、黒岩さん………助かりました」
そのまま近くに在った岩の陰へと隠れた大河は、岩に寄り掛からせる様にして飛彗を降ろす。
「アイツはワシに任せい! お前さんは他の連中の援護に向かうんや!」
そこで、大河はそう言って携帯していたMP38に新たな弾倉を装填する。
「! ですが!………」
「任せいっちゅうとるやろ! はよ行けい!!」
何か言おうとした飛彗だったが、大河はそう言って飛彗の言葉を遮る。
「! 御武運を!!」
飛彗はそう言うと、7.62mm ZielGew256(r)を担いで移動を始める。
「うがああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」
その姿を発見したニキータが、担いでいたD-1 152mm榴弾砲を向けるが………
「させんっちゅうんやっ!!」
そのニキータに向かって、大河が横からタックルを食らわせた!!
「!? うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!?」
雪の上へと倒れ、派手に粉雪を舞わせるニキータ。
「うがああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」
しかしすぐに咆哮を挙げながら起き上がると、D-1 152mm榴弾砲を投げ捨て、大河を睨む様に見据える。
「ほう? ステゴロかいな? ええで………そっちの方がワシとしても好都合や」
それを見た大河もMP38を捨てると、構えを取る。
「来んかい!」
「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」
大河がそう言い放つと、ニキータは咆哮を挙げて突撃するのだった。
再び、大洗歩兵部隊とツァーリ歩兵部隊が激突している戦場では………
「猟犬部隊! 集まれぇっ!!」
「「「「「「「「「「ヒャッハーッ!!」」」」」」」」」」
ピョートルが号令を掛けると、世紀末的な叫びと共に、RF-8に乗ったツァーリ歩兵部隊の中の猟犬部隊が集まって来る。
「大洗の連中は分断は順調だ! ココで一気に畳み掛ける! 全部隊! 俺とマーティンに続けぇっ!!」
「「「「「「「「「「ヒャッハーッ!!」」」」」」」」」」
またもや世紀末的な叫びが挙がると、RF-8に乗った猟犬部隊が、大洗歩兵部隊目掛けて一斉に突撃する。
だが、その瞬間!!
「…………」
その猟犬部隊の前に、1人の大洗歩兵部隊員が立ちはだかった。
「ああっ!? 何だ、アイツは!?」
「構わん! 跳ね飛ばせぇっ!!」
突如単身で立ちはだかった大洗歩兵部隊員の姿にマーティンが怪訝な顔をするが、ピョートルはそう指示を出し、RF-8に乗った猟犬部隊は構わず突っ込んで行く。
RF-8に乗った猟犬部隊が立ちはだかった大洗歩兵部隊員を跳ね飛ばす………
………かと思われた瞬間!!
「!!」
その立ちはだかった大洗歩兵部隊員の周辺で、銀色の閃光が幾重にも煌めいた!
そして、RF-8に乗った猟犬部隊は、立ちはだかった大洗歩兵部隊員を素通りして行く。
「!? オ、オイ!? 如何したっ!?」
と、ピョートルが戸惑いの声を挙げると………
「ガハッ!?………」
突如マーティンが断末魔を挙げて気絶。
戦死判定を受ける。
「!? マーティン!?」
ピョートルが驚愕の声を挙げるが、更に………
「グハッ!?」
「ゴガバッ!?」
周りに居たRF-8に乗った猟犬部隊も次々と気絶し戦死判定を受ける。
忽ちRF-8は暴走。
互いに衝突し、或いは段差や廃屋、岩や木の幹に突っ込み、爆発四散して行く。
「!?!?」
ピョートルは最早何が何だか分からなくなりかけていると、その眼前に廃屋が迫る!
「!? うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」
反射的にRF-8から飛び降りるピョートル。
戦死判定を受けて気絶していたマーティンを乗せたままのRF-8はそのまま廃屋に激突!
爆発したかと思うと、廃屋を巻き込んで大炎上した。
「マーティン!………クソッ! アイツか!?」
ピョートルは怒りを露わに、立ちはだかったあの大洗歩兵部隊員を振り返る。
「…………」
そこには、立ちはだかったあの大洗歩兵部隊員………愛刀・戦獄を左手に握り、悠然と歩み寄って来る熾龍の姿が在った。
如何やら、擦れ違い様に猟犬部隊を全て居合い切りで斬り捨てた様である。
「テメェは栗林 熾龍! 名将の子孫だか何だか知らねえが、調子に乗るんじゃねえぞっ!!」
ピョートルは怒りを露わに、両手に手斧を握る。
「………犬だけあってよく吠えるな」
熾龍はそんなピョートルに向かってそう毒舌を吐き、静かに居合いの構えを取るのだった。
一方、その頃………
廃屋の1つに楓と共に立て籠もり、ツァーリ歩兵部隊員達を銃撃していた弘樹は………
「………妙だ」
「? 何がですか、舩坂さん」
装填中の竜真を援護する様に発砲していた弘樹がそう呟き、竜真が尋ねる。
「さっき、敵陣の中で戦っていた時、狙撃部隊の攻撃を受けた」
「狙撃部隊、ですか?」
「ああ。幸い位置が掴めたので、砲兵部隊に知らせて砲撃を浴びせて貰ったが………かなりの腕の連中だった。それで全滅したとは考え難い」
「まだ狙っていると? でも、さっきから狙撃らしき攻撃はありませんよ?」
「それが逆に気になるんだ………」
そう言いながらも、ツァーリ歩兵を3人立て続けにヘッドショットする弘樹。
「………やはり気になる。疾河くん、此処を頼めるか?」
「分かりました。援護しますので飛び出して下さい」
「スマンな………」
「気にしないで下さい。御武運を………」
その竜真のセリフを聞くと、弘樹は廃屋から飛び出した!
「! あそこに居るぞ!」
「撃て撃てぇっ!!」
それを見たツァーリ歩兵達が、一斉に弘樹へと銃口を向けるが………
「させませんっ!!」
廃屋に残っていた竜真が窓から姿を見せ、ブルーノZB26軽機関銃を発砲する!
「うおわっ!?」
「まだ居るぞぉっ!!」
「反撃しろぉっ!!」
ツァーリ歩兵達はそれに釣られる様に、竜真へと銃火を集中させる。
「クウッ!………頼みましたよ、舩坂先輩」
一旦身を隠し、もう見えなくなった弘樹へとそう呟く竜真だった。
そして、その弘樹は………
途中で出くわしたツァーリ歩兵部隊を次々に掻い潜りながら、狙撃部隊が居たと思われる狙撃地点らしき森の中へと踏み込んでいた。
「…………」
四式自動小銃を構え、周囲への警戒を最大にしながら、慎重に歩を進める弘樹。
やがて、砲撃が撃ち込まれたと思わしき跡と、その周辺で倒れている狙撃銃や対戦車ライフルを持った白い迷彩服姿のツァーリ歩兵達を発見する。
「! やはり居たか………」
弘樹は警戒を続けながら、その倒れている白い迷彩服姿のツァーリ歩兵達を調べる。
そこで、ある事に気づく………
(………全員が銃を持ったまま戦死しているだと?)
そう………
倒れて戦死判定を受けている白い迷彩服姿のツァーリ歩兵達………雪化粧狙撃部隊員は全員、獲物を持ったままの状態で気絶していた。
(まさかカウンターの狙撃と砲爆撃を受けながらも狙撃を続けていたと言うのか? だとすれば………こいつ等は一体?………)
カウンターの狙撃と砲爆撃を受けながらも狙撃を続ける敵の姿を想像し、弘樹の背に冷たい物が走る。
と、注意が逸れたその一瞬!!
発砲音がして、弘樹の頭目掛けてライフル弾が飛んで来た!!
「!?」
弘樹は反射的に頭を斜めにする様に首を動かした!
飛んで来たライフル弾は鉄帽に命中したかと思うと、角度が浅かった事によって明後日の方向へ弾き飛ばされる!
「! ぐうっ!?」
頭に走った衝撃で一瞬意識が飛びかけた弘樹だったが、持ち前の精神力で強引に引き戻し、すぐさま近くに在った太い木の陰へと隠れる!
直後に、弘樹が隠れた大木の幹に次々と銃弾が着弾して銃創が出来る。
「そこかっ!!」
と、一瞬の銃撃が途切れた瞬間に弘樹は半身を曝し、手榴弾を銃弾が飛んで来た方向へと投擲した!
投擲された手榴弾が地面に落ちると、派手に爆炎を上げる!
その爆発の煙が漂う中から………
シモノフPTRS1941らしき対戦車ライフルを持ったツァーリ歩兵を先頭に、雪化粧狙撃部隊が姿を現す。
「流石は英霊の子孫。あんな方法で銃弾をかわすとは………いやはや恐れ入ったよ」
先頭に居たツァーリ歩兵………ラスプーチンが、不敵に………そして不気味に笑いながら隠れている弘樹にそう言って来る。
「何者だ?………」
弘樹は身を隠したまま、ラスプーチンの姿をコッソリと窺いながらそう問い質す。
「コレは申し遅れました。私はツァーリ神学校の歩兵部隊所属、雪化粧狙撃部隊の指揮官、ラスプーチンです」
ラスプーチンは妙に畏まった態度で弘樹にそう答える。
その対応が返って不気味さを際立たせていた。
「覚えておく必要はありませんよ。何故なら………貴方はココで私に倒されるんですから」
(………妙な奴だ)
慇懃無礼な態度のラスプーチンを見て、弘樹は内心でそう思う。
(だが、この見通しの悪い森の中からアレだけの狙撃をしてきた奴だ………油断は出来ん)
「フッ………」
と、弘樹がそう思った瞬間に、ラスプーチンは手榴弾を投擲してきた!
「!!」
その手榴弾を撃ち抜く弘樹。
しかし………
手榴弾が爆発したかと思うと、辺りに黒煙が広がる!
「!? しまった! 煙幕手榴弾か!?………」
弘樹はすぐにその場から移動を開始。
直後に、次々に発砲音がして、弾丸が弘樹のすぐ傍を掠め飛んで行く!
中にはラスプーチンが撃った物と思われる対戦車ライフルの弾丸もあり、近くに在った木々を薙ぎ倒して行く。
(………態と当てていない………何処かへ誘導する積りか………)
だが、弘樹はその銃撃が自分を誘導する為のものだと気付く。
(だが、この状況では迂闊に動けんか………良いだろう………その誘いに乗ってやる)
敢えて誘いに乗る事を決めると弘樹は、誘導されるままに飛び交う弾丸の中を駆け抜けて行くのだった………
つづく
新話、投稿させていただきました。
いよいよ戦いは大詰め。
ツァーリ歩兵部隊のエース達と対峙する弘樹を初めとした大洗歩兵部隊。
サンショウウオさんチームとアリクイさんチームもIS-1と対決する。
果たして、どちらが先に、相手のフラッグ車を撃破するのか?
さて、今日は大洗で海楽フェスタ。
例によってガルパンイベントがあり、劇場版の新情報が公開されるそうです。
行ける方は是非足を運んでみて下さい。
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。